SEOのインハウスvsアウトソース、どちらが良い? メリデメ&ポイント解説+三井住友カードが3年で10オウンドメディアを推進した体制インタビュー

SEOはインハウス(社内)で進めるのがいいのか、専門家にアウトソース(社外に依頼)するほうがいいのか? 判断のポイントは? メリット/デメリットは? 事例インタビューとともにお届けする

SEOはインハウス(社内)で進めるのがいいのか、専門家にアウトソース(社外に依頼)するほうがいいのか? 経営層から「オーガニックSEOを強化しろ」という指示は来るものの、その実現は簡単なことではない。この記事では、

  • インハウスSEOは、どんな事業に向いていて、何をアウトソースすべきで、気づきにくい注意点には何があり、どんなデメリットがあるのか。

  • アウトソースSEOは、どんな企業で進めるべきで、パートナー企業に依頼するときの注意点には何があり、社内でしっかり行うべきことは何で、SEO会社を選ぶ際のポイントは何か。

といったことを解説したうえで、さらに事例として、

  • 三井住友カードが3年で10のオウンドメディアを立ち上げていった体制と、そのインハウス・アウトソース使い分け事情

のインタビューをお届けする。

※本記事は、ナイル株式会社のオウンドメディア「ナイルのSEO相談室」掲載の「SEOはインハウス?アウトソース?」前編・後編と、「【インタビュー】三井住友カード、「セミインハウス」によるサイト作成を実現。事業主とベンダが良好な関係を保つための「2つの愛」とは」の記事を、Web担の読者さん向けに特別に再編集のうえ掲載しているものです。

みなさんこんにちは。ナイル株式会社の高松です(デジタルマーケティング事業部 事業COO)。

今回はデジタルマーケティングに取り組んでおられる企業Web担当さま向けの記事です。

皆さんはご自社のWebメディアへ有効なトラフィックを増加させ、コンバージョンを生み出し、顧客を獲得することに日々腐心されていると思います。その中でも「SEO」「オーガニック」を強くすることは、理想的なCPAを達成する「夢の打ち手」であることは間違いありません。

私も事業会社でメディア責任者を務めていたとき、経営層から「オーガニック強化!」という強いオーダーを受けていました。昨今はこの認識を持たれている経営層の方々も増えています。

SEO強化が経営にとって重要な理由

しかし、そのオーダーを果たすのは現場のWeb担当者の皆さんです。「簡単に言ってくれるなよ…(困)」「そんなすぐにSEOで順位UPしたら苦労しないよ…(困)」と日々頭を悩ませているのではないでしょうか。

この記事では、「SEO・オーガニック強化」を、

  • インハウス(社内独自)で行うか
  • アウトソース(支援会社への発注)で行うか

の判断基準を、メリット・デメリット、注意点などを交えてお伝えしたいと思います。

SEOの大前提は「費用対効果」

この記事の執筆にあたり、ナイルの経験豊富なSEOコンサルタントのメンバーにアンケートを取りました。さすがSEOコンサルタントとして多くの企業さまを見つめてきた猛者達だけあり、非常に示唆に富んだ回答が集まりました。

インハウス or アウトソースにさまざまな意見がありましたが、最も重要なポイントは「費用対効果(ROI)」これに尽きます。

費用対効果の式

インハウスとアウトソースともに、ROI向上に貢献するのですが、それぞれ切り口が違います:

  • インハウス:「投資額」を抑える
  • アウトソース:売上原価に含まれる「人件費」を抑える

どちらのアプローチでも目的はROIを100%以上にすることです。当たり前な話のようですが、「SEOをインハウスするのか? アウトソースするのか?」と考えるとき、ベースとしてこの原理原則が重要になります。

どういうことでしょうか?

このキーワードで自社メディアで1位を取るのだ

という経営オーダーがあったとします。それに対してあなたは、次のように反応していないでしょうか?

わかりました! 絶対に1位をとります!

実は、こうしたシングルイシューな反応は賢明とは言えません。経営サイドからのオーダーが前述のようなものだったとしても、あなたが本来するべき回答は、次のようなものです。

指定されたキーワードを含め関連検索で上位表示されたら、事業への利益インパクトとしてはこのような数値が試算される。

社内で人材を確保して組織を作っていくならばこの程度の人件費をかけることになる。ROIを試算すると1年リクープでこのぐらい、3年リクープでこのぐらい。

固定費としてその投資が厳しい場合は外部の支援会社に依頼することになるが、直接原価としてこれぐらいが見込まれ、さらに外部には任せられないマネジメントとして人件費がこの程度必要となる。

そのうえで「事業」であれば、かけた費用に対して得られる利益が許容できるサイズにならねばなりません。

「SEOはインハウスが良いのかアウトソースすべきなのか」を考察する以前に、まずリターンとなる事業へのビジネスインパクト部分の試算が大前提なのです。

「インハウスSEO」の考察

前述のようなビジネスインパクトの試算ができているという前提で、まずはSEOをインハウスで、つまり社内のリソースを使って行う場合のポイントを検討していきましょう。

「インハウスでSEO強化に取り組む」ということは、「SEO」に取り組むスタッフを独自採用し、事業活動のなかに「自社スタッフ」として組み込み施策を行うことを指します。

まず読者の方が知りたいであろう「どんな場合ならばSEOをインハウスで進めるのがいいか」の答を先に記載しておきます。

インハウスSEOに向いている事業の特徴
  • Webコンバージョンの売上貢献が大きい事業
  • 業界内で自社の強みが確立できている事業
  • 検索流入の依存度が高い事業

コアコンピタンスを内部でコンテンツ化する

コアコンピタンスを内部でコンテンツ化する

SEOをアウトソースではなくインハウスで推進することの最重要因子は、「SEOを徹底的にやればやるほど売上・利益に強い影響がある」ことです。

たとえば、次のような場合です:

  • トラフィックそのものが売上となるWebメディア
  • コンバージョンが直接的売上となるEC小売
  • 高価格帯商材(旅行、不動産、金融、求人など)のリード顧客獲得

事業としてのSEO強化は「自社の強みのコンテンツ化」でもあります。コアコンピタンスがハッキリしている事業は、徹底的にそれをコンテンツとして表現していくことが打ち手そのものになります。

企業のコアコンピタンスを明確に情報発信することは、競争が熾烈な市場ほど大切な経営課題です。自社の他社にない付加価値が顧客に伝わらなければ優位性は生まれません。

たとえば、女性下着で成功されているワコールさんは、当初日本で下着にこだわりを持つ女性は欧米と比較して少なく、彼らがマーケティング活動をスタートさせた時点ではニッチな市場だったそうです。

そのため同社では、商品開発から販売活動に至るまで、消費者への価値提供を徹底的に伝える独自のマーケティング手法を確立されています。これは市場が活性化し競合他社が出現しても、彼らを支える重要な経営資源となっています。

昨今は、前時代のマスマーケティング一辺倒ではなく、マーケティング全体に「デジタル」が溶け込んでいる時代です。企業のコアコンピタンスをコンテンツ化し、さまざまな消費者とのタッチポイントで効果的に展開することが大切です。

さらに、情報鮮度が重要なジャンルの場合は、外注よりも、自社の専門性の高い知識を持つチームでスピーディに意思決定し、コンテンツ運営するほうが有利です。

情報発信元の部門と蜜連携したコンテンツ編集・デジタル発信部隊を組織に組み込んでいる企業も昨今多くなっている印象です。

ここまでは大企業を想起するようなお話でしたが、規模がコンパクトな組織(個人店舗・小型EC・ニッチな業種など)においても、インハウスでしっかりコンテンツづくりに取り組み、マーケティングパフォーマンスを高められているケースも多く存在します。

マーケティング予算が多くない事業こそ、Webやソーシャルを駆使し、コアコンピタンスを精力的に発信することが「投資効率の最大化」に対する決定的な打ち手となります。

事業主体として実施する高速なPDCA

事業主体として実施する高速なPDCA

事業規模の大小にかかわらず、SEOをインハウスするメリットは「高速でPDCAを回せる」ことです。特にSEOを主軸としたデジタルマーケティングは「まず実施してみないとわからない」ことが多く、固定の打ち手を打ち続けていても、施策の歯車が噛み合っていないと成果がいつまでたっても上がらない場合が多くあります。

Webサイト運営やコンテンツづくりを外注していると、どうしてもこのPDCAサイクルが間延びしやすく、市況の敏感な変化に合わせた情報発信においては後手に回ってしまいます。

インハウスで成功されているチームは、日々事業主体者として市場動向、季節変動、ライバルの動向、顧客の動向を敏感に察知し、すばやくコンテンツをリリースし、即効果測定を行える体制を有されています。

インハウス化にかかる見えない「カロリー」

インハウス化にかかる見えない「カロリー」

インハウス化はキャッシュアウト(直接原価の支払い)が少ない打ち手として評価されがちですが、専門的な経験と能力を有したスタッフを採用する、事業組織に定着させるのは、相当なカロリーがかかります。この苦労が経営層になかなか理解されづらいという企業担当者の声もよく伺います。

さらに、SEO人材の採用は非常に難易度が高いのが現実です。人材市場の規模でいえば、プログラマー・エンジニアよりも小さいかもしれません。さらに、即戦力スキルを保有する人材は数が少なく、なかなか人材市場にはでてきません。

弊社でも、ある程度のポテンシャル層を採用し、入社後数か月はみっちりと研修をこなしてもらってからコンサルティングの現場に出るという「オンボーディングプログラム」を導入しています。言い方をかえれば、SEO専門で事業を行っている企業であっても、そうしなければ人材を確保できないということです。

また、会社規模の大小にかかわらず「SEO専任」ポジションを設けることが難しい企業がほとんどで、実際にはなんらかのデジタルマーケティング業務と兼務になる場合が大半ではないでしょうか。

SEOの世界は、非常に変化の激しいところです。インハウス人材として働くと、事業理解・専門性は非常に高くなりますが、幅広い分野の仕事を兼務していると、SEO技術の知識・トレンドをトップレベルで維持することは非常に困難になります。

私自身、事業会社で事業推進に没頭しているときは、最新技術、トレンド、ケーススタディの情報取得量はガックリと落ちていました(同職域な方々との交流がぐっと減る)。そこを補うには、外部の信頼できるベンダーからの情報提供が不可欠で、自分の「知見の生命線」としていたのを思い出します。

インハウスSEOのポイントまとめ

インハウスSEOのメリット

  • 事業の進捗や方向性に合わせたすばやい対応が可能
  • 専門性を持った人材がダイレクトに情報を発信するので情報信憑生が高まる
  • アップデート等による順位変動の対応に即反応できる

インハウスSEOのデメリット

  • 人材採用が困難、人材の退職リスクが大きい
  • SEO専任にすることは難しく他の業務と兼任になる
  • 事業への専門性は高くなるが、SEO技術・知識を高いレベルで維持することが困難

「アウトソースSEO」の考察

次に、SEOをアウトソースで、つまり社外の専門家に依頼して進める場合のポイントを検討していきましょう(記事冒頭のようなビジネスインパクトの試算ができているという前提です)。

まず読者の方が知りたいであろう「どんな場合ならばSEOをアウトソースで進めるのがいいか」の答を先に記載しておきます。

アウトソースSEOに向いている企業の特徴
  • Webコンバージョンの売上貢献が大きい事業
  • 固有の強みはあるが、デジタルマーケティング人材がいない(足りない)企業
  • BPOの有効活用に積極的な経営体質の企業

デジマ守備範囲広大化からくる人材不足

「Webコンバージョンの売上貢献が大きい事業」の項目が、インハウスSEOに向いている事業の一覧にもあったことに気づいた方もいるかもしれません。

要は、SEOを徹底的にやればやるほど売上・利益にヒットする事業ならば、インハウスであれアウトソースであれ、SEOをしっかりと進める価値があるということです。

そのうえで、「アウトソースに向いている」条件を考えると、背景として「デジタルマーケティング人材がいない(足りない・育てられない)」という状況がある場合が想定されます。

特に、次のような場合には、積極的にアウトソースを検討するといいでしょう:

SEO推進を、Web構築・運用系のスタッフがやむをえず兼務している。

もちろん優秀なWeb人材をインハウスで有する企業さまも沢山ありますが、デジタルマーケティングの守備範囲は年々広大化・深化する一方です。ぱっと思いつくだけでも次のような要素があります(私のブログにメモ的な記事がありますので、そちらも参考に)。

デジタルマーケティングの守備範囲

この広大な守備範囲を、数名のデジマ担当者でカバーせざるをえないという、企業担当者さまからの悲鳴ともいえる悲痛な愚痴をよく伺います。正直私も20年Web業界にいますが「デジタルマーケティング人材が十分に足りている!」というケースにお目にかかったことはありません。これは業界全体の課題です。

そのなかでもSEOは特に専門性が強く、トレンドの移ろいが激しいジャンルです。なので、兼務でハイクオリティと成果を維持することが非常に難しいのです。

SEOに限らずインハウス化は事業スピードの観点では理想的ではありますが、それには必ず人材的な限界があり、適切にアウトソースを活用するほうがパフォーマンス・費用対効果・事業成長スピードが向上するケースは非常に多いと感じます。

アウトソースではなく「BPO」

しかし、そこで大切なのは「アウトソースを活用してSEO強化に取り組む」ことの本質を正しく理解することです。

あなたは「SEOのプロにSEO実務を任せる」というイメージでいるかもしれません。しかし実際には、SEOをアウトソースするということは、次のようなことを意味します。

SEOに強い支援会社をパートナーとして選定し、重要業務を「BPO(Business Process Outsourcing)」で行うこと。

BPO

BPOとは何かについては少しあとで解説しますが、ここでただの「アウトソース」ではなく「BPO」と定義したのは、SEOは単純な作業委託ではないからです。

もしあなたが「SEOのアウトソース」とは「グーグル挙動の把握と、外部施策や内部施策などの専門的作業の外注」だと捉えているならば、その考えは少し危険だと警告しておきます。こうした作業にアウトソースが有効であることは間違いありませんが、これらは目的ではなくあくまで手段です。

BPOとは、わかりやすく言うと「外部支援会社に自社の部門として業務を行ってもらう」ことです。戦略策定から実行計画、PDCAサイクルを回すプロセスまで、「便利屋」ではなく「代理」として頼むのです。

インハウスSEOの考察のパートでもお伝えしたように、DX時代のマーケティングの本質は「企業のコアコンピタンスをコンテンツ化し、さまざまな消費者とのタッチポイントで効果的に展開すること」で、事業側担当者の本分はこのコア業務に集中することです。しかし、日々の作業に忙殺され、コア業務がおろそかになっていては、熾烈な競争市場で他社に打ち勝つことは不可能です。

そこで、

  • BPOすることができないコア業務
  • BPOできる専門業務

をしっかり整理・定義し、何を自分が行うべきで、何を(部下やチーム代わりの外部企業に)頼むべきかの判断から始めるのがよいかもしれません。

BPOに対する考え方・文化

ここで重要になるのが、あなたが所属している企業の、アウトソース全般に対する考え方・文化です。

企業文化とBPO

我々もさまざまなお客さまの事業と関わらせていただいていますが、中には、

自分達(事業側)のスタッフが異動になったとしても、ベンダーに知見が残っていれば事業は止まらない

という徹底したアウトソース観を「文化レベル」で持たれている企業さまもおられます(特に、数年でジョブローテーションがルールで決まっている企業さま)。

これとは対極に、

とにかく内制! 社員がやれ!

という文化の企業もあります。外注費としてキャッシュアウトしてPLにヒットするよりも、内部人件費効率の最大化を重きに置く文化です。

どちらが良い・悪いという議論ではありません。事業や経営者の数だけ経営方針があり、利益を生む方法があり「企業の永遠の悩み」であると私は考えています。

今までインハウスだったものをアウトソースに切り替える、またその逆が、さまざまな企業で試行錯誤されています。デジタルマーケティングを大規模に推進している、ある企業では、ほぼ4年周期でインハウス・アウトソース方針が往復しているケースもあります。

ビジネスのどの範囲をどのようにアウトソースするかに関してはさまざまで、

  • 全面的にBPOに振り切るパターン
  • 戦略策定と効果測定をアウトソースにし、スピーディな日々の運用作業をインハウスにするパターン
  • 上流ディレクションをインハウス化し、日々の作業をアウトソースするパターン

などなど、それだけで書籍を1冊書けるほどのバリエーションがあるため、ここでは詳細には解説できません。しかし大切なのは、ざっくり「SEOをアウトソースする」と考えるのではなく、自社ではどのようなスタイルが良いかを考えておくことです。

経営コンセンサスがとれているか?

BPOに対する経営コンセンサス

さて、どのような役割分担でアウトソース(BPO)するにせよ、外部の企業に何かを頼むのですから、必ず支払いが発生します。となると、そのキャッシュアウトに対する「費用対効果」を経営向けに説明しなければなりません。

そのため、企業規模の大小にかかわらず、アウトソースを進めるにあたって重要な点があります。それは、

  • デジタルマーケティングを司る部門
  • 経営層

の双方が、ビジネスを進める方向とその手段について、しっかり議論・検討しており、合意形成が成されていることです。これがズレていると、どんな優秀なベンダーを迎え入れたところで期待するパフォーマンスは生まれません。

大規模なアウトソースを実施したが結果として失敗に終わったケースを観察していると、その根本的原因として次のようなことがあると感じています:

  • 経営と現場の認識相違
  • 経営の期待値と現場実情の大幅な乖離

特に「SEO強化」というテーマはハイコンテクストで、リテラシーや立場の差異による解釈の齟齬が生まれやすいジャンルです。企業としてのコンセンサスが不足していると、各所から懐疑心が生まれやすく「何のための投資?」となる危険性が高いのです。

前編でもお伝えしましたが、SEOの推進目標が「ビックキーワードで1位を獲る!」となっているケースは非常に危険です。それが組織トップからのオーダーだったとしても、プロジェクトが経過し、仮に目標達成していたとしても、投下コストが無駄に肥大していれば「それってROI合ってるんだっけ?」となり、後々間違いなく投資見直し対象となります。

そのため、記事の最初のほうでお伝えした「大前提は『費用対効果』」という点が何よりも大切なのです。SEO強化を「投資」と捉え経営コンセンサスが取れていれば、大きな問題が起こることは回避できるはずです。

アウトソースベンダーの選定

最終的にどうしても重要になるのは「支援会社の選定」です。事業会社が支援会社を選ぶというのは、1つの学問になるぐらい奥深いものです。

ベンダー選定

しかし、SEOの分野で支援会社の選定を語るには、「モラルと法律」「自社の利益とネットという場の利益」などなど、さまざまな大人の事情で断言しづらいことが多いものです。

そのため一般論的になってしまいますが、少なくとも、次のような点が重要になってくると個人的には考えています:

  • 例え安くとも、ただ作業を請け負うタイプのベンダーはNG
  • SEO強化の投資対効果を合理的に設計できる、説明できる
  • 経営コンセンサスを補助してもらえる
  • SEO専門プロジェクトの経験実績が豊富
  • SEO専門の人材が豊富

このテーマは弊社セールスマネージャーの岸が「Stand.fm」で語っていますので、興味のある方はぜひこちらもご参照ください!

アウトソースSEOのポイントまとめ

  • デジタルマーケティング領域は慢性的人材不足
    • 理想はインハウスだが、アウトソースを有効に活用すべき。
  • アウトソースよりもBPOの考え方を
    • 事業側の担当者はよりコア業務に集中すべき
  • 企業の数だけBPOパターンが存在する
    • 自社の文化や状況に適している方式を考える
  • 経営コンセンサスが重要
    • SEOへの「投資対効果」が説明できていれば安心
  • ベンダー選びの極意
    • 安かろう悪かろうはNG
    • SEOの投資対効果を設計できる・実行できる
    • SEOの経営コンセンサスを助けてもらえる
    • 経験・人材豊富に越したことはない

この記事を執筆するにつれ、とても1つの記事では収まらない壮大なテーマだということを改めて認識したのですが、コンパクトにまとめるとこのように理解しておいていただくと大きな失敗はないと思われます。

【インタビュー】三井住友カード、「セミインハウス」によるサイト作成を実現。事業主とベンダが良好な関係を保つための「2つの愛」とは

さて、SEOのインハウスとアウトソースのポイントを解説してきましたが、実際にSEOを推進している事業会社さんはどのように進めているのでしょうか。その一例を、インタビューでお届けします。

この事例は三井住友カード株式会社(以下、「三井住友カード」と記載)さまのSEO体制に関するもので、そのスタイルは「セミインハウス」です。

三井住友カードは、「ゼロからはじめるクレジットカード」をはじめ、約3年のあいだに10のオウンドメディアを立ち上げ、運用しています。

主に、これらのサイト制作や運用は株式会社メンバーズが、集客施策やコンテンツ作成はナイルが手がけていますが、三井住友カードは自らも積極的に施策立案に携わる「セミインハウス」とも呼べる体制を構築しています。

「デジタルマーケティングをインハウスで行うか、アウトソースで行うか」という議論があるなか、三井住友カードはどのような意図で「セミインハウス」の体制を作ったのか、また、事業主側とベンダ側でどのような関係構築をしているのか。三井住友カード株式会社 福田保範氏と、株式会社メンバーズ 佐藤正啓氏、そしてナイルから矢内尚輝 に話を聞きました。

ナイルSEO事例_三井住友カードさま
写真左:三井住友カード株式会社 福田保範氏
写真中央:ナイル株式会社 矢内尚輝氏
写真右:株式会社メンバーズ 佐藤正啓氏

自分たちも当事者として携わる「セミインハウス」という形

――三井住友カードのオウンドメディア制作において、SEO含むデジタルマーケティングのアウトソース化に至った背景についてお聞かせください。当初、インハウス化は検討されたのでしょうか?

三井住友カード株式会社 福田保範氏(以下、福田):検討はしたのですが、リソースとノウハウ蓄積の観点から難しいと判断しました。

インハウス化には、高度な専門知識を持つメンバーを社内に確保せねばなりません。しかし、問い合わせ対応などの通常業務が多いなか、デジタルマーケティングに専念するのは現実的ではありません。さらにジョブローテーションもあるため、ノウハウを持つ人員がずっと同じ業務に携わることも困難です。

社内にはインハウス化を求める声も多かったのですが、費用対効果などを示してアウトソース化へと話を進めていきました。

ナイルSEO事例_三井住友カード株式会社 福田保範さま

――アウトソース化にあたって、どのようなことを意識されて体制を構築されたのでしょうか。

福田:完全なアウトソースというより、どちらかと言えばインハウス寄り、言わば「セミインハウス」な体制を組んでいます

アウトソースは、業務の多くを外部に委託し、事業主側は最終的な決定のみを行うのが一般的です。そうではなく、方針決定や施策立案から当社が主体となって行い、代理店やベンダと共にPDCAを回すようにしています。

――外部に全て丸投げをするのではなく、自分たちも当事者として施策に関わっていくと。

福田:そうですね。事業主側がデジタルマーケティングに主体的に関わるためには、ある程度の専門知識と、自社サービスや商品に関する知識の両方が必要です。インハウスでは前者を極めることが負担となり、アウトソースでは後者の視点が欠けてしまう。セミインハウスが理想的な形ではないかと考えています。

「アウトソースはスピードが落ちる」という誤解

――以前からWebコンテンツ制作をインハウス化する流れがありましたが、最近は三井住友カードさまと同様に、インハウスに課題を感じられているお客さまも多いのでしょうか?

※メンバーズはサイト制作や運用を、ナイルは集客施策やコンテンツ作成を支援している立場

株式会社メンバーズ 佐藤正啓氏(以下、佐藤):インハウスから、アウトソースへの切り替えやアウトソースとの併用へシフトされるお客さまは増えていますね。インハウスでのWeb制作は人材が固定され、業務が属人化しやすい傾向にあります。派遣社員を導入しても、スキルやマインドが不揃いなことが多く、結局教育コストがかかりますから。

ナイル株式会社 矢内尚輝(以下、矢内):デジタルマーケティングの人材が市場にそれほど多くないのもあるでしょうね。SEOに特化した人材ならなおさら。事業主側がデジタルマーケティングのエキスパートを自社内で揃えて完結させるのは、難易度・コストともにハードルが高い……と、さまざまなお客さまで耳にしています。

――インハウス化を選ぶメリットは「社内コミュニケーションによるスピード感」があると思います。アウトソースを成功させるには、事業者側と外部ベンダとの連携が鍵になると思いますが、三井住友カードさまのプロジェクトではどのように解消しているのでしょうか。

佐藤:リソースやノウハウなどの万全な体制が作れるのであれば、インハウスのほうがスピードが出ると思います。セミインハウスの体制構築にあたっては、インハウスの環境に劣らず、かつアウトソースの強みであるリソースの柔軟性も持たせた体制が作れるように心掛けています。

ナイルSEO事例_株式会社メンバーズ 佐藤正啓さま

矢内:事業側と外部ベンダの連携でいえば、三井住友カードさまは担当者のコミット度が非常に高いですね。他のクライアントさまでは、リソースの問題もあり担当者がさまざまなプロジェクトに横断して関わっていて、SEOのプロジェクトに十分にコミットできていないケースがありますが、三井住友カードさまは、それぞれのプロジェクトへの担当者の集中度・コミット度が高く、確実にスピーディに各施策が進行していく印象があります。

佐藤:三井住友カードさまから社内情報を展開いただけるのも大きいですよ。プロジェクトが始まる際には、どういう経緯でこのプロジェクトがあるのか、時間を割いて説明していただけるので、弊社としても施策の提案がしやすいんです。結局、「アウトソースはスピードが落ちる」という話は、やり方次第で回避できるのではないでしょうか。

福田まったくその通りで、「アウトソースだから連携が遅れる」というのは、最終的には事業主側の怠慢なんです。きちんと情報が連携できていなければ、アウトプットの質が担保できないのは当然のこと。もちろんそこには、忌憚なくコミュニケーションができる、良好な関係がベースとして必要だとは思います。

矢内:期初・期末の予算や、サービス・プロモーションの大きな方針など、まとめて僕たちベンダにインプットしてくれる機会があるのは、施策の文脈や、他のプロジェクトの動きなどを把握できますし、提案にも活かせるので、とても助かります。これだけ丁寧に情報共有していただけていると、こちらとしても「知らなかった」という言い訳は許されないので、緊張感を持ってプロジェクトに取り組むことができますね。

事業主とベンダの良好な関係を作る「2つの愛」

――今回の体制構築に当たって、福田様が「良好な関係」を築くために心がけていることはありますでしょうか。

福田:実は、前職ではベンダ側の人間として、デジタルマーケティングを担当していたんです。常駐先のひとつに私の「恩師」とも言える部長がいまして、その方から学んだのが「愛」でした。

――「愛」とは……?

福田:「会社に対する愛」と「チームに対する愛」の2つあります。前者は、結果を出すためには自社のサービスや商品を愛さねばならない、ということ。自信をもって「これはいい」と言えるサービスでないと、お客さまに十分に訴求できません。その部長からは「たとえ納得してないサービスだとしても、好きなところを見つけて、しっかり伝える努力をしなさい」と教えられました。現職でも、他のどの社員よりも自社のサービスを調べて、ベンダには「うちはいいと思っているから伝えてほしい」「もっといいところがあったら指摘してほしい」と言うようにしています。

――「チームに対する愛」についてはいかがでしょうか。

福田:その「恩師」は、3か月に1度、事業や方針について話す場を設けていたんです。そこには必ず代理店やベンダを集めていました。「お互いの案件を奪うという発想ではなく、ひとつのチームとして、クオリティが高いものを出してほしい」と。これには、各社の成果にきちんと対価を払うというのと、チームメンバーとして個人の成長を促すという2つの意味がありました。会社など関係なく、ひとつのチームとして、プロジェクトに入って成長できてよかったなと思ってほしい。私もその想いに共感し、意識しながら仕事しています。

――それは佐藤さんや矢内さんに対しても?

福田:2人が社会人に成り立てのころから仕事をしていますから、私が半分育てたと言っても過言ではないですね(笑) 声を荒らげて怒るときもあるなど、私も恥ずかしい姿を見せてきました。2人に共通して好きなところは、言い返してくれるところなんです。「違う」と思ったときは気合いが入った顔になって、恐れずに議論してくれる。

佐藤:プロジェクトの成果に本気で向き合って、真摯に議論してくださるので、弊社としても中途半端な仕事はできないなと思うんです。成果を出す上で、おかしいと思った所はきちんと反論もします。福田さんは、固いやり取りが続いたあとにウィットに富んだ一言を入れられたりして、プロジェクトメンバーとの関係づくりについては自分も参考にしています。

矢内:クライアントの言うことを受身に唯々諾々に受けてしまうばかり…という代理店も見かけるのですが、それってやっぱり全然面白くないですし、パートナーとして能動的に「こうあるべき」という提案をするこだわりは持っていたいんです。なので、その場を変に収めるだけというようなコミュニケーションはやらないように、と常に心がけています。

ナイルSEO事例_ナイル株式会社 矢内尚輝氏

福田:全然いいんですよ。こちらも議論していて、すごく楽しいんです。私が100%正しいなんて絶対無いし、プロにお願いしているわけですから。あまり事業主側を上に見過ぎないというか、もっと代理店やベンダはプライドを表に出していいと考えています。

覚悟と時間、そして熱があるかどうか

――佐藤さんと矢内さんは、現在の体制ができあがるまでに苦労した点はありますか。

佐藤:各社で用語・ルール認識にズレがあり、それをすり合わせるまで苦労しましたね。

たとえば「校了」という言葉ひとつとっても、「原稿が納品されたタイミング」を指すのか、「事業者側のOKが出たタイミング」を指すのか、お互いに定義が食い違っていたんです。結果として連携がスムーズにいかず、手戻りや確認作業が発生してしまって。些細なことですが、積み重なると最終的に大きなトラブルにもなりかねません。

言葉の定義や運用ルールを統一し、双方が同じ認識を持って仕事を進めていけるようにするため、ナイルさんと何度もミーティングして詰めていきましたね。

矢内:そうですね。立ち位置が異なるメンバーが連携するわけですから、ルール作りは非常に重要でした。また、メールや電話が主体だったやり取りから、Backlogを使って情報連携するようにブラッシュアップしていったのも、コミュニケーションコストの削減にはインパクトが大きかったです。

――事業主側からは、2社のあいだで認識の齟齬が生まれていることを把握されていましたか?

福田:もちろんです。考え方や文化がそれぞれ異なるのは、チームビルディングでも、それこそ友達同士でもあることなので、普通に起きうることと捉えていました。あまりに続くときは、私からうざったいメールを送ることもありましたが(笑) それも意図的なもので、嫌われ役は私1人でいいかなと思ってやっています。

――マニュアル作成が完了するまでは、どれくらいかかったのでしょうか。

福田:完成することはありません。現在も進行中です。できていないことはたくさんありますし、完成させようと思って仕事をしていないですね。

矢内:三井住友カードさまは新しいチャレンジや取り組みに積極的なんです。新しい軸でメディアを作ったり、立ち上げ方を変えてみたり。

佐藤:新しいことを始めれば、それに伴って新しい問題も出てきます。問題がすべて解決するということは、新しいことをやっていない、ということを意味するのではないでしょうか。

――最後に、社内にSEOの知見がある人材がまったくいない場合、セミインハウスを実現するには何から始めるのがよいでしょうか。

福田:当事者として知識を持つ人間が不可欠なので、難しいですね。6か月ほど外部の講師をアサインして社内に専門家を作り上げるか、それとも中途採用に力を入れて人材を確保するか……。いずれにせよ、インハウスやセミインハウスを実現するには、覚悟と時間、そして熱が必要だと思います。トップダウンでそれらを許容できる体制であることも欠かせないでしょうね。

◇◇◇

社外のSEOの専門家との連携は、社内コミュニケーションよりも時間がかかることが多く、挑戦を躊躇される方、現在苦戦している方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような企業さまにとって、今回の記事がSEOで成果を出すための組織づくりの参考になれば幸いです。福田さまがお話されていた「サービス」と「チーム」への愛は我々も、常に持ちながらプロジェクトに取り組ませていただきます。

福田さま、佐藤さま、お忙しい中ありがとうございました。

※取材はZoomで行い、撮影は緊急事態宣言解除後に行ったものです

三井住友カードさま共同セミナーのお知らせ

これからSEOに取り組む事業会社の皆様のお役に立てればと、7/7(火)16時~18時、三井住友カード・福田さま、メンバーズ・佐藤さまを招いて、セミナーを行います。

10本を超えるオウンドメディアの立ち上げ、SEOで成果を出すチーム作り・プロジェクト推進に関心のある方はぜひご確認ください。

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