マーケターの忙しさの原因は「仕事のための仕事」にあった!? 成果を上げるための仕事術とは
デジタルシフトが進む中で、存在感を高めつつあるマーケティングチーム。しかし、長年マーケターとして活躍してきたAsana Japanの内野彰氏は、「マーケターはさまざまな要因から漫然的に疲れており、仕事が正当に評価されていないと感じている人が少なくない」と嘆く。
その理由はなぜか。そして、問題を解決し、マーケターが快適に仕事をしながら成果を出し続けるためにはどうしたらいいのか。内野氏と、同社の青木友氏の両名は、オンラインで行われた「Web担当者Forum ミーティング 2020 春」で、その仕事術について解説した。
マーケターを苦しめる「仕事のための仕事」
内野氏はこれまでの経験をふまえ、マーケティングチームの課題について次のように語る。
デジタルマーケティングの技術が進み、専門性が高まる中で、“成果”もまたシビアに求められるようになってきている。しかしながら、経験から暗黙知として得られる知見やプロセスはいまだ属人的であり、チームの連携や生産性の向上などにおいて、各人が自己流でやるほかなく、失敗も少なくなかった(内野氏)
さらにいま、リモートワークになることで属人的暗黙知は活かしにくくなり、生産性をあげることはおろか情報伝達も難しくなり、結果として仕事の質を損ねているというわけだ。
おもしろい仕事であるはずなのに、常に忙しくて疲弊している。その裏側にある問題の1つが、多すぎる「仕事のための仕事」だ。マッキンゼーが世界のビジネスパーソンを対象とした調査によると、勤務時間の6割以上を内部とのやり取りや情報集め、メールの返信など「仕事の調整」のために費やしているという。クリエイティブであるはずのマーケターもクリエイターも、同じ状況に陥っているのではないだろうか。
実際、1990年代にメールが使われだしてから数年で、情報量とメッセージ数が増え、必然的に情報が散乱する事態に陥っている。
結果、不明瞭な計画やプロジェクトの目的・責任などに振り回され、情報をつなぎ合わせる「仕事のための仕事」が増加する。それがマーケターの忙しさの原因なのではないかと内野氏は指摘する。
上記の例のように、スプレッドシートでのスケジュールとタスク管理は更新するだけでも疲弊し、メールフォルダに溜まったマーケティングメールから必要なものだけを取り出すだけでも一苦労だ。「誰が何をいつまでにやるのか」という情報が錯綜し、管理に手間がかかるだけでなく、抜け漏れが発生しやすい環境にある。
カオスを管理するワークマネジメントツールの活用という解決策
もっと情報管理を効率的に行い、「仕事のための仕事」を減らして、本来の仕事に注力する方法はないものか。その問いに対して、内野氏が提案するのが、ワークマネジメントツールの「Asana」だ。元Facebookの共同創設者と初期エンジニアが開発したタスク管理ツールを基とし、2012年のリリース以来、195カ国に75,000社以上の有料顧客を獲得するまでに成長しているという。
「Asana」は、次の図のように散見するコンテンツや情報をとりまとめ、「仕事を実行する場所」として機能する。
その結果得られる効果の1つが、「誰が何をいつまでに」というタスクを、「何のために行うのか」という目的までをも含めて可視化し、共有できるようになることだ。そして、「すべての仕事の見える化」が実現することで「属人的だった暗黙知」の共有が進み、「質の高い仕事」や「忙しさ」まで可視化されて、評価も行いやすくなるという。
それではどのように実現させていくのだろうか。ここで青木友氏が加わり、実際の画面を用いながら事例を通して解説した。
事例1: すべての仕事の「見える化」を行う
内野氏はかつて自身が体験したBtoBメディアのプロジェクトを例としてあげた。年間800本もの記事を掲載して大きな成果をあげたものの、煩雑なタスク管理に忙殺され、承認や確認をクリエイティブ部門に依存し、効果を報告するレポートにも四苦八苦するなど、苦い思い出も少なくなかったという。
タスク情報の見える化が可能
このプロジェクトは、それまではスプレッドシートなどでタスクを管理していて、追加作業が面倒になりがちだった。ところがAsanaでは、「誰が何をいつまでに」というタスクを追加すれば、その集合体が自動的にプロジェクト管理表となる。そのため常に担当者が情報を簡単に刷新でき、「今の状況」が把握できるようになった。
さらに未完了のもの、担当者ごとなど、用途に応じてリスト表示が変えられ、看板ボードでの整理やタイムラインなど、さまざまな形式で表示することが可能。タスク情報を用途に合わせて「見える化」できるわけだ。そこで、上司や経営層もレポートを待つことなく、Asana上で状況を把握することができるようになったという。
つまり、一次情報を入力するまではスプレッドシートなどと変わらないが、入れた情報をリアルタイムに更新したり、表示を変えて管理ツールやレポートとして変えたり等、柔軟なタスク管理が可能になるのだ。
また、画面上でチャットができるため、タスクと絡めたハイコンテクストなコミュニケーションができ、わざわざ別の場所でやり取りする必要がないという。
これまでは、タスク管理表以外の場所でコミュニケーションやレポートが行われてきた。しかし、その情報統合こそ煩雑であり、ミスや誤解の原因となることも多い。一方で、Asanaはその場でコミュニケーションやステータス管理などが行える。メンバーはプロジェクトをまたいで自分が担当すべきタスクを把握でき、上司への報告のためにレポートを作成する必要もない(青木氏)
毎日使うツール上でのタスク確認が可能
さらに、Asanaはさまざまなアプリケーションと連携できるので、たとえばデザイナーがAsanaをチェックせずとも、紐付けられたPhotoshop上で行うべきタスクを確認できるという。
これまではタスク管理ツールという1か所で管理する方法が主流だったのが、いつでも誰でもアクセスできるだけでなく、毎日使うツール上で確認ができるようになり、仕事の流れを分断することなく作業に集中できるというわけだ。
事例2: テンプレート化でナレッジ共有を行い、最適化を図る
次は「属人的なスキルやナレッジの共有」を実現する方法について、ウェビナーの立ち上げタスクを例にとって紹介された。
ウェビナーといえばパネリストの設定や依頼などにはじまり、さまざまなタスクについて、直接経験者にやり方を聞くのが普通だろう。しかし、細かい部分は暗黙知として属人化され、たとえ書類に細かくまとまっていても日々起きる変化は追跡しようがない。
しかし、Aasnaであれば、以前開催したウェビナーのプロジェクトをそのままテンプレートとして呼び出し、開催日を入力すると、自動的にスケジュールが調整され、タスクやそこに紐付けられた書類なども引き継ぐことができるという。それをなぞって作業すれば、何をすればいいのか、どんなドキュメントが必要なのか、かつての知見を共有できるというわけだ。さらに不明点があればその上でやりとりを行い、それも記録として残すことができる。
マーケターの仕事は繰り返しのプロジェクトが多い。以前のプロジェクトをテンプレートとして更新することで、テンプレート自体が刷新され、最適化されて使いやすくなっていくことにもなると内野氏は語る。
引き継ぎが手軽にできるようになるだけでなく、暗黙知を可視化し、さらに次の担当者の知見なども加えていくことができる。顧客ごとに最適化したり、新規事業所の開設など大きなプロジェクトをテンプレート化したりすることもできるだろう(内野氏)
「透明性のピラミッド」で経営目標への貢献度を可視化
そして最後に、「いい仕事が評価されるような仕組みをどのように作るのか」について解説された。そもそも「いい仕事」とは、会社の目標を正しく理解し、そこに貢献することだといえる。さらに仕事の量や忙しさなども可視化できれば、社内のリソースを有効利用することも可能だろう。
Asanaなら日々のタスク管理を行うだけで、「担当が今日やる仕事の一覧」「過去に達成した仕事の一覧」というように、さまざまな条件でまとめた情報をレポート化することができる。さらに必要な時間を可視化することも、負荷のかかり方も一目瞭然となる。
さらに仕事量だけでなく、その仕事が組織全体の目標にかなっているのかを確認することも可能だという。次の図のような「Pyramid of Clarity(透明性のピラミッド)」と呼ばれる概念で捉え、タスクの集合体がプロジェクトとなり、その上位がポートフォリオ、経営目標、企業理念へとつながるという考え方だ。
たとえば、経営目標の中に「ブランド認知向上」という目標があるとしたら、そのためのプロジェクト、そのためのタスクと細分化していくことができる。つまり、あるメンバーがタスクを行うことが、どのプロジェクトに関与し、最終的に経営目標や理念に結びついているかを可視化できるわけだ。逆にいえば、ある目標について貢献度の高い人まで見えるということでもある。貢献度が見えにくいマーケターの自信にもつながるのだ。
マーケターはなかなか貢献度が見えにくい。個人としても自分の仕事の目的や目標を見失うこともある。しかし、組織の目標や戦略などを常に意識して、そこに貢献しているという実感が得られれば、チームや個人の自信になっていく。それが組織全体の活力になるのではないか(内野氏)
最後に内野氏は、「マーケターの本来の仕事はメッセージを届けて共感を生み、それによって顧客との関係を深め、継続的に収益性を改善していくことだ。そうした関係性=エンゲージメントを高めるためには、テンプレートを使いこなして効率性を高め、会社やチームのゴールと紐付けてタスクが評価されることが重要となる。それをAsanaが実現し、感謝されるような組織、チーム、そして個人になることを願っている」と語り、結びの言葉とした。
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