Web担当者になったら知っておきたい「基本」が学べる Web担ビギナー

Step 2-3 調査・分析手法 (サイト/ユーザーニーズ)

2-3で知ってほしいことは、「サイト調査」「ユーザーニーズ調査」の必要性と主な手法です。

Web担ビギナーの目次を知りたい方はこちら

クイズ

調査・分析手法と聞いて、何が浮かびますか?

たとえば、「カスタマーサービスサイトを訪れたユーザーが望んでいるのは、不具合を起こした商品の修理法をすぐに知ることだ。そのためAIを使うといいな」とあなたが考え、上司が賛成してくれたとしても、情報システム部門が「コストや制作期間を考えたら実現できない」と言えば難しくなります。プロジェクトに関わるメンバー全員でそれぞれの考えを共有して、落としどころを考えていかなくてはなりません。

統計学を使ったデータ解析を思い浮かべると、なんだか難しそうです。確かに、調査・分析にはプロのスキルが必要です。では、分析は専門家に丸投げでいいかというと、決して良い結果は得られません。専門家は調査・分析に優れていても、あなたの携わる事業に関してはあなたの方がよく知っているはずだからです。的外れで立派な調査では、時間もお金も無駄になります。

そのため、何のためにどのような調査があるのか、知っておくことをオススメします。

  • 調査や分析は専門の外注さんに丸投げする
  • 何のためにどのような調査・分析手法があるのかを知っておく

Step 2-3で解説するのは、戦略策定フェーズの「プロジェクトの方向性の決定」のために行う調査・分析手法です。

戦略策定フェーズ1. プロジェクトの発足
2. プロジェクトの方向性の決定
3. Web戦略の策定
設計フェーズ4. サイト設計
開発フェーズ5. サイト制作・開発
6. 運用準備・運用開始
運用フェーズ7. 運用・効果測定・改善

調査の必要性

Step 1で、Webサイトを作る際には、「ビジネス戦略に基づいたWebサイトを作ること」「ターゲットユーザーを絞り、そのニーズを知ること」が大切だと解説しました。では、ビジネス戦略に基づいたWebサイトにするためにはどうすればよいでしょうか? また、ユーザーニーズを知るにはどうすればよいでしょうか?

競合会社のサイトを調べたり、ユーザーニーズを調査したりといった事前のリサーチが必要になりますよね。もちろん、サイトのビジネス活用を担当する事業部へのヒアリングも欠かせません。ただ、ここで1つ注意したいのは、担当事業部にヒアリングした内容と、データに基づく調査結果が異なっている場合があることです。

たとえば、ECサイトのリニューアルを考えている担当部署では、「商品Aは30代の共働きの女性に向けた商品なので、通勤時間にスマホで購入されることが多い」と考えていたとしても、実際に調査してみると50代の専業主婦が、午前中にAを一番購入している場合もあります。また、競合サイトについてユーザーの立場になって調査したことがない担当者も多かったりします。

こうした事業側の思い込みだけに基づいたWebサイトにしないためにも、プロジェクトの方針を決める前に、データに基づく

  • サイト調査
  • ユーザーニーズ調査

を行う必要があります。

サイト調査

サイト調査は、対象サイト別に

  • 競合サイト調査
  • 自社サイト調査

の2種類に分けることができます。

また、調査方法として、

  • ヒューリスティック分析:実際に使ってみて分析する
  • アクセス分析(アクセスログ調査):アクセス解析ツールなどを使って、サイトにどのくらいのアクセスがあったかなど、データを分析する

の2つがあります。

それぞれ、組み合わせて

  • 競合サイト調査(ヒューリスティック分析)
  • 自社サイト調査(ヒューリスティック分析)
  • 競合と自社の比較調査(ヒューリスティック分析)
  • 競合と自社の比較調査(ヒューリスティック分析)
  • 競合サイト調査(アクセス分析)

があります。こうした調査は厳密にいうとプロの目が必要になります。自社内に専門の達人がいなくて、専門部署もなければ、外注することが一般的です。

とはいえ、自分のスキルを磨く意味で、自分でも調査してみるとよいでしょう。特に、実際に使ってみるヒューリスティック分析は、ぜひやってみてください。競合サイトのヒューリスティック分析は次のように行います。

競合サイト調査(ヒューリスティック分析)

同じ市場(マーケット)、同じターゲットユーザーの競合サイトをリスト化し、実際に使って調査してみましょう。その際、次のように何をポイントに調査するのか、調査項目を書き出してからスタートします。

  1. 競合サイトの特定
  2. 調査項目の特定
  3. 仮説を設定
  4. 調査の実施

調査は課題の発見と解決のために行います。そこで、あらかじめ課題と解決策の仮説を立てて調査項目を決め、調査を実施するとよいでしょう。たとえば、金融商品をネットで提供している証券会社の場合、ユーザーがどのような課題を抱えるかを考え、その解決策として想定されるトレーディング機能の充実や使いやすさ、口座開設が行いやすいかなどをメインに調査を行います。

競合サイト調査例
(記事末でサンプルシートがダウンロードできます)

なお、リニューアルの場合は、競合サイトと比べての長所、短所を調べ、短所を長所へと変える施策が必要になります。その際に必要となるのが、ニーズとゴールの設定です。何を求めてWebサイトへ訪れるのか、そして何をもって目的達成とするのかを設定し、ユーザー目線で利用します。

たとえば、急に映らなくなったテレビの対処法を調べたくてメーカーのサイトを訪れたとします。自社サイトでは、会員登録していればすぐに、購入したテレビのFAQを案内できるようにしており、他社よりも利便性が高いと考えていました。

一方、競合A社では、サイトを訪れるとすぐにAIチャットが何を目的に訪れたのかを聞いてくれ、「テレビがこわれた」と書くと型番をきいてきて、対応情報をリスト化してくれるものだったとしたら、どちらがユーザーニーズを満たすでしょうか? 現在の機能を残しつつ、競合A社の方法も取り入れると、ユーザーの満足度は上がるのではないでしょうか? 競合他社の施策を知ることは重要です。

なお、競合サイトの広告出稿状況も調べておくと、予算も承認されやすくなる場合もあります。

競合サイトと自社サイトを比較(ヒューリスティック分析)

自社サイトも、ユーザー目線でヒューリスティック分析をします。その場合は、競合サイト調査同様、調査項目を特定して行ってください。同じ調査項目を設定することで、競合サイトと自社サイトとの比較をすれば、課題・改善点がよりいっそうはっきりします。

自社サイト調査(アクセス解析)

アクセス解析は、サイトにどのくらいアクセスがあるのか、ユーザーはどこから訪れたのか、どのキーワードを検索して訪れたのかなど、ユーザーの残した記録(アクセスログ)を分析することです。さまざまな目的に用いられますが、特にサイトリニューアル前のサイトの状態を知るには必須だといえます。

想定通りにターゲットユーザーが訪れているのか、ユーザーのニーズがあると考えていた機能は使われているのか、ユーザーは何回もサイトに訪れてくれているのかなどを調べて、想定通りではない場合はなぜ違うのかを深堀りしていき、リニューアル項目候補を探っていくわけです。

こうしたリニューアルのための分析以外に、週に1回とか月に1回、定期的な解析レポートを作成している会社は多いものです。解析レポートを見たことがない人は、上司に「定期的な解析レポートがあれば見せてほしい」と聞いてみてください。専門用語も多く、初めてアクセス解析レポートを見た人は思わずため息をついてしまうかもしれません。しかし、まずはPV(ページビュー)数、セッション数(訪問数)、ユニークユーザー数(訪問者数)など基礎用語をおさえて、基本的な解析ツールの使い方を上司や同僚に聞いてみてください。

  • PV(ページビュー)数:ページの閲覧回数
  • セッション数(訪問数):サイトに訪れてから出ていくまでの一連の回数
  • ユニークユーザー数(訪問者数):ある期間にサイトに1回以上訪れたユーザーの数
    ※解析ツールによって、どのタイミングでカウントするか等が異なるため、数値が多少異なります

あきらめずに解析レポートを定期的に見ていると、いつもと違う点などからさまざまな課題を発見できるようになります。そうなると、Web担当者にとって強い武器になってくれます。

アクセス解析ツールには、有料/無料をふくめ、さまざまなものがありますが、Googleアナリティクスがよく使われています。無料で始められるので、ご自分のブログの解析から始めてみるとよいかもしれません。

アクセス解析レポート例。コーポレートサイトにブログから12,786人が来て、ブログにはコーポレートサイトから12,492人が出ていっているといったことがみえてくる

競合サイト調査(アクセス解析)

自社サイトの使い勝手向上のためにも、競合サイトのアクセス解析もぜひ行っておきたい調査です。競合サイトのアクセス解析には、いろいろなツールがありますが、Similarweb(シミラーウェブ)とeMark+(イーマークプラス)が有名です。

どちらも、訪問者数やどのようなキーワードで検索して訪れたのかなどのおよその数値がわかり、無料版と有料版があります。それぞれに特徴があるので、まずは無料版で試してみるとよいでしょう。

ユーザーニーズ調査

ユーザーニーズ調査でよく使われている手法に、

  • アンケート(定量調査)
  • インタビュー(定性調査)

があります。ユーザーやこれからユーザーになってもらいたい人に、アンケートに回答してもらったり、直接話を伺うわけです。

アンケートは、ある商品を「1 とっても使いやすい」「2 使いやすい」「3 ふつう」「4 使いにくい」「5 とっても使いにくい」の5段階などのうち1つを選んでもらうなどして、「量」や「数値」として結果を得ることができます。なので、定量調査の方法の1つです。

一方、インタビューは、使いやすいかどうかを言葉で回答してもらい、数値や量ではない結果を得ることができる方法なので、定性調査の方法の1つになります。

アンケート

アンケートは、ユーザーが望んでいることを知るためによく行われる手法です。「街頭アンケート」や「郵送によるアンケート」もありますが、スマホが普及した現在では、「Webサイトやアプリ内」、「FacebookやLINEなどSNS」でアンケートを行うことが多くなっています。たとえば、これを読んでいる皆さんのなかにも、LINEが協力して行った厚生労働省の「新型コロナウイルス対策のための全国調査」に回答された方が多いのではないでしょうか。

なお、アンケートには、この全国調査のように多くの方に質問をする「オープンタイプ」と特定の人に絞って質問する「クローズドタイプ」があります。たとえば自社のECサイトを利用して商品を購入してくれた方だけにアンケートを行うのがクローズドタイプで、「どこでこの商品を知ったのか」「購入した理由は価格によるものか、〇〇機能があるからか」「本サイトでの購入方法は簡単だったか」などを質問します。実際にサイトを利用して購入してくれた方なので、踏み込んだ質問が可能で、商品のバージョンアップやECサイトリニューアルに活かすことができます。

とはいえ、アンケートに応えてくれる人には偏りがあり、その回答にはバイアスがかかるものだとよく言われます。その点も考慮しながらアンケート結果を読みましょう。なお、アンケートは、マーケティング部や商品企画部が行っていることが多いので、それをプロジェクトに提供してもらうこともよくあります。

インタビュー

アンケートと併せてよく行われるのが、インタビューです。数名の方に集まってもらい、質問者の問いに皆でディスカッションしてもらう方法が一般的です。たとえば、自社の既存商品やサービスのユーザーの方々に集まってもらい、なぜ使ってくれているのか、改善してほしいところはないかなどを聞きます。集まってもらう人は、この例のように顧客だけに絞って募集する場合もあれば、広くオープンに募集する場合もあります。

アンケート同様、インタビューに参加してくれる人もまた、インタビューやアンケートに応えることが好きな人、得意な人であることが多く、本音を引き出すことがなかなか難しいところがあります。リラックスして、言いたいことを語れる雰囲気を作ることが重要だといえるでしょう。

Google検索サイトのキーワード調査

アンケート、インタビュー以外にも、ユーザーニーズを知る調査方法があります。Webサイトへのユーザーニーズを調査するには、Googleなどの検索エンジンにおいて、どのようなキーワードで自社サイトが検索されているかを知る「キーワード調査」を行うとよいでしょう。

ユーザーは欲しい情報を得るために、スマホなどからインターネットを使って検索をすることが多いですよね。最近では、InstagramやTwitterなどのSNSで検索をする人も増えていますが、今でもGoogleなどの検索サイトを利用しているユーザーはたくさんいます。

さて、ここで注意すべきポイントが、日常に起こり得るニーズと、インターネット上でのニーズは異なる場合があるということです。アンケートやインタビューは対象者の絞られた日常に起こり得るニーズですが、インターネット上で求められるニーズを調べるためにはキーワード調査が有効になります。

キーワード調査の方法にはいろいろありますが、次の2つは押さえておきましょう。

  • サジェストキーワードの調査
  • ターゲットキーワードの調査

サジェストキーワードの調査

サジェストキーワードは、キーワードを入力していると表示される候補を指します。ユーザーの検索を助けるためにGoogleが提供している「オートコンプリート」という機能によって、候補が表示されるのです。

サジェストキーワード例

Googleオートコンプリートでは、Google独自のアルゴリズムによって「利用している地域でよく検索される人気の高いキーワード」や、「関連性の高いキーワード」が表示されるようになっています。現在、どのようなキーワードで検索されているのか、参考になります。

ここで間違わないように気を付けてほしいのは、ブラウザ「Google Chrome」を使っている場合です。Google Chromeにログインし、「ウェブとアプリのアクティビティ」をオンにして使っている人は、過去に自分が行った検索も反映されています。

ターゲットキーワードの調査

一方、ターゲットキーワードは、まさにターゲットユーザーが検索しているキーワードのことです。これを調べるためによく使われるツールに、Google広告の「キーワードプランナー」があります。自社商品やサービスに関連するキーワードがどれくらい検索されているかがわかります。

Google広告用のアカウントでログインして使うわけですが、上司に使ってよいアカウントがあれば教えてもらうとよいでしょう。https://ads.google.com/home/にアクセスしてログインし、次のようにツールと設定アイコンをクリックし、プランニング>キーワードプランナーで使えるようになります。

キーワードプランナーを起動

表示された「新しいキーワードを見つける」を選ぶと、次のようなキーワードを入力できる画面になりますから、これからサービスするキーワードを入れて、「結果を表示」をクリックします。

新しいキーワードを見つける

すると次のように、いくつかのキーワードとともに検索ボリュームが表示されます。

検索ボリュームが表示される

たとえば、「可愛い文房具」であれば月間1万~10万の検索ボリュームがあり、競合性が高いキーワードであることがわかります。なお、キーワードプランナーは、Google広告を利用し、広告費を払っている人のためのツールです。1万~10万のようにざっくりとした数値は、広告費を払っていないときの表示方法です。払っていれば、もっと明確な数値になります。

◇◇◇

2-3までで、調査・分析を経てプロジェクトの方針が明確になったところまでのポイントを紹介してきました。2-4では、Web戦略を策定するフェーズについて解説します。

ポイント
2-3「調査・分析手法(サイト / ユーザーニーズ)」のポイント
  • サイト調査には、競合サイト調査と自社サイト調査があり、調査方法には、ヒューリスティック分析、アクセス分析(アクセスログ調査)などがある。
  • ユーザーニーズ調査の方法には、アンケート(定量調査の1つ)、インタビュー(定性調査の1つ)、Google検索サイトのキーワード調査などがある。
復習ミニテスト

Q2-3-1 競合サイト調査に関する記述で正しいのはどれ?
(単一選択)

  • 1. 競合サイトの調査を行い、徹底的に真似たサイトにする
  • 2. 競合サイトの調査を行う際、どのような広告が出ているかを調べることはルール違反である
  • 3. 競合サイトの調査にはヒューリススティック分析やアクセスログ調査という手法がある

3. 競合サイトの調査にはヒューリススティック分析やアクセスログ調査という手法がある

Q2-3-2 ユーザーニーズ調査に関する記述で正しいものはどれ?
(単一選択)

  • 1. キーワード調査を行うためにGoogle広告のキーワードプランナーを活用するとよい
  • 2. ユーザーニーズを知るためのアンケートは役に立たない
  • 3. サジェストキーワードは、自分の検索履歴だけが反映されている

1. キーワード調査を行うためにGoogle広告のキーワードプランナーを活用するとよい

もっと学び、成長するために

ヒューリスティックに競合サイトを調査するためのテンプレートサンプルをご用意しました。

資料ダウンロード
本記事の監修者

濱田 優(はまだ ゆう)

株式会社キノトロープ 執行役員
制作部 部長 プロジェクトマネージャー/システムコンサル

千葉県出身。2006年、オンデマンドCDサービス、音楽配信、CD全国流通・海外プレスの事業を立ち上げ。事業を売却し、全都道府県を巡る日本一周旅行へ。
プログラマとして再出発し、書籍を2冊(『Zend Framework 2徹底解説』(秀和システム)、『JUnit速効レシピ』(秀和システム))出版。
現在は、システムコンサルとして事業会社様の問題解決を行うほか、大学や専門学校での講師、セミナー等での講演も務める。
2020年、キノトロープの連結子会社、株式会社フューチャープランの代表取締役社長に就任。

Twitter:@hamadayuu1

デザイン:三苫慧子
用語集
Googleアナリティクス / Google広告 / SNS / アクセス解析 / セッション / ダウンロード / ページビュー / ユニークユーザー / 検索エンジン / 訪問 / 訪問者
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

eCPM
「eCPM」はeffective Cost Per Milleの略。「有効CPM ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]