楽しさ重視の「リール」で、新たなユーザーへのリーチ拡大を目指そう[最終回]
好評を博した前シリーズから引き続き本連載では、「企業のSNS担当者なら絶対押さえておきたい基礎知識」から「Instagramだからこそできる効果的な活用方法」「Instagramの最新トレンド」まで、これを読めば“明日にでもInstagramアカウント運用をスタートできる”よう、最前線のノウハウをわかりやすく解説します。
前回の記事では、2021年10月にフィード動画とIGTV動画が統合された「Instagram動画」について解説しました。今回は、2020年8月にローンチされ、今では広く使われている動画投稿機能「リール」を解説します。
エンターテインメント性・楽しさ重視の「リール」
「Instagramは、もはや写真共有アプリではない」として、本連載でもこれまでにInstagram動画、ストーリーズといった、Instagramの動画投稿機能を紹介してきました。今回ご紹介するのは、2020年8月にローンチされた動画投稿機能である「リール」です。
「リール」には、各種音源やARカメラエフェクト、動画編集用ツールが提供されており、簡単にエンターテインメント性の高い短尺動画を作成したり発見して楽しんだりできます。
一般ユーザーらは、ダンスや歌、ペット、料理やコスメなど、縦型フルスクリーン動画を投稿して自分を表現したり、発見して情報収集や暇つぶしを楽しんだりしています。
企業のリール活用と事例
企業のリール活用方法については、定番の「勝ちパターン」こそまだ出てきていませんが、商品紹介・お役立ち情報・調理/メイク動画・コーディネート紹介・スタッフのオフショットなど、いろいろなテーマで楽しいリールを投稿し、ブランドの認知拡大・好意度向上を目指す使い方が増えているようです。以下から参考事例を2つご紹介します。
ドミノ・ピザ公式
試したくなる・誰かに教えたくなる裏技にユーモアをまじえて紹介した動画が広く閲覧されました。担当者が自前のスマートフォンで撮ったような雰囲気の動画にも親近感が湧きます。
土屋鞄製造所
「雪だるまを運ぶためのバッグ」という遊び心ある商品を、ユニークなコマ撮り動画で楽しく表現しています。リールの機能や各種アプリを使えば、こうしたコマ撮り動画も作りやすいので、皆さんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
「Instagram動画」「ストーリーズ」「リール」完全比較
縦型短尺動画といえば「ストーリーズ」が有名ですが、リールとストーリーズには多くの違いがあります。どちらにもエフェクトやスタンプはありますが、ストーリーズで使えるようなコミュニケーションを促進するスタンプや外部サイトへ誘導できるスタンプはリールにはありません。一方、ストーリーズは基本的にフォロワーに閲覧されるものですが、リールは、フォローしていないユーザーに「おすすめ」表示されるチャンスが多いのが特徴です。まとめるなら、ストーリーズは「フォロワーとのコミュニケーション」を目的に、リールは「新たなユーザーへのリーチ拡大」を目的に、それぞれ使い分けることができそうです。
その他、「Instagram動画」「ストーリーズ」「リール」の比較表を作りましたので、参考までにご覧ください。
Instagram動画 | ストーリーズ | リール | |
---|---|---|---|
動画の長さ | 0.5秒~60分 | 0.5秒~60秒 | 0.5秒~60秒 |
表示期間 | 制限なし | 24時間 | 制限なし |
外部サイトへの遷移 | できる(URLが有効化する) | できる(リンクスタンプを利用) | できない |
投稿後のキャプション変更 | できる | できない | できる |
表示場所 | フィード(プレビューのみ)・動画タブ | ストーリーズ | リール・フィード・ストーリーズ・発見タブ |
ハッシュタグ検索結果に | 表示される | 表示されない | 表示される |
足あと機能 | なし | あり | なし |
「リール」の視聴方法
リール投稿は、以下に挙げるようなInstagram内のいろいろな場所で視聴できるようになっており、フォロワー以外のユーザーに見てもらえるチャンスが大きい投稿機能であることがうかがえます。
- フィード(投稿者が「フィードにもシェア」を選択して投稿した場合)
- ストーリーズ(投稿者が「ストーリーズにシェア」を行った場合)
- 投稿者のプロフィール
- リールタブ
- 発見タブ内
- ハッシュタグ検索結果のトップタブとリールタブ
投稿者のプロフィール
リールタブ
各ユーザーに「おすすめ」のリールが表示されます。上にスワイプすると、次々と他のリールに切り替わります。
発見タブ内
各ユーザーに合わせた「おすすめ」のフィード投稿やリールが表示されます。
ハッシュタグ検索結果のトップタブとリールタブ
「リール」の投稿方法
ここからは、リールの基本的な投稿方法をステップ・バイ・ステップで解説します。
(1)ホーム画面の右上にある「+」ボタンをタップ。表示されるメニューから「リール」をタップ
(2)左側のクリエイティブメニューを調整。カメラ長押しで撮影または保存済みの動画を開く
「音源」メニュー
リールに付ける音源を選べます。おすすめの音源から選んだり、曲名やアーティスト名で検索したりできます。音源右側にある○ボタンをタップするとプレビュー再生が可能です。リールに付けたい音源を見つけたら左側のアイコンをタップしましょう。
「長さ」メニュー
リール投稿の長さを変更できます。15秒・30秒・60秒から、タップして選択できます。
「速度」メニュー
動画の再生速度を変更できます。0.3倍・0.5倍・1倍・2倍・3倍からタップで選択可能です。iOS版では4倍も選べます。
(3)保存済みの動画/画像を選択
スマートフォンに保存されている動画を選びます。実は、動画ではなく画像(静止画)を選ぶこともできますのでぜひお試しください。
画面上でピンチアウトすれば拡大・ピンチインすれば縮小ができます。
画面下部のコマ表示部分で、動画のトリミングが可能です。画像の場合は「表示させたい時間調整」ができるとお考えください(表示させる時間を短くすれば、その分多くの画像をリールで表示させることができます)。
動画/画像のトリミングや拡大縮小などが完了したら、画面右上の「追加する」をタップします。
(4)動画/画像を追加することも可能
(3)で追加した1本の動画/画像クリップだけで編集を進めたい場合は、右下の「プレビュー」をタップして次の画面に進みましょう。続けて他の動画/画像も追加したい場合は、(3)の作業を繰り返した後、「プレビュー」をタップします。
(5)動画/画像にスタンプやテキストなどを追加する
ストーリーズと同じような編集メニューを使って、スタンプや図形描画、テキストやエフェクトを追加できます。
リールの場合、テキストツールで追加した文字をどのタイミングで表示・非表示するか設定が可能です。以下にその方法を解説します。
テキストツールでテキストを入力し、画面下に表示された文字をタップし、コマ送り表示部分で「テキスト表示したい部分」のみ選択します。編集が完了したら画面右下のチェックマークのボタン(V印)をタップします。
この「テキスト追加&表示時間の設定」を繰り返すことで、動画再生中に字幕が時間差で切り替わるようなリールを作ることが可能です。
たとえば以下のキャプチャのように設定すれば、リール動画再生時に「リールでは」→「文字を時間差で」→「表示できます」というメッセージを時間差表示できます。
(6)キャプションを追加し、すべてが整ったら「シェア」ボタンをタップすることで投稿完了
キャプションには、文字だけでなくハッシュタグも30個まで付けることができます。URLはリールでは有効にならないので、入れないほうがよいでしょう。
「フィードにもシェア」をオンにすると、フォロワーのフィードにも表示されます。
すべてが整ったら、画面下部の「シェア」をタップすることでリール投稿が完了します。
「リール」の効果測定
Instagramインサイトから、「リール」投稿の結果を確認できます。
確認できる指標は以下のとおりです。どんなリールだとユーザーはより楽しんでくれるのか、保存したいと思ってくれるのか等、まずはいろいろ試しながら正解を見つけ出しましょう。
- リーチしたアカウント数
- 再生数
- いいね! 数
- コメント数
- シェアされた数
- 保存された数
リールとライブ配信のインサイトを追加、ビジネスやクリエイターのアカウント運用をより効果的に | Metaについて
https://about.fb.com/ja/news/2021/05/reelsandliveinsights/
「リール」のアルゴリズム
2021年6月に、Instagram公式ブログに「Instagramの仕組みを解き明かす」 という記事が公開されました。このなかでInstagram責任者のAdam Mosseri氏は、フィード・ストーリーズ・発見タブ・リールの各機能それぞれに合わせた個別のアルゴリズムについて言及しています。
アルゴリズムとは「コンテンツをランク付けするテクノロジー」のことを指し、このアルゴリズムによって、各投稿がユーザーに表示されるか否かが決められています。
本稿のテーマである「リール」のアルゴリズムについてのみ紹介すると、「リール」と「発見タブ」両機能では、ユーザーが気に入りそうな投稿をAIが収集し、ユーザーの興味度合いを予測して内部的にランク付けを行っています。さらに、リールでは「楽しさ」も重視されているという点には注目すべきでしょう。
以下より、リールにおいてアルゴリズム上重要なシグナルを重要度順に解説します。「企業ができる工夫・対策」も追記していますので、よりユーザーに表示されやすいリール投稿の参考にしてください。
ユーザーのアクティビティ
ユーザーが最近「いいね!」やコメントをしたり、アクションをとったりしたリールを調べ、それを参考に、ユーザーとの関連性が高そうなコンテンツを判断しています。特に、以下に挙げたようなアクションに注目し、特定のリールをユーザーが「楽しい」「おもしろい」と感じていると予測を立てているそうです。
- リールを最後まで見る
- 「いいね!」する
- 「楽しかった」または「おもしろかった」とコメントする
- 音源ページに移動する(同じ音源を使ったリールをさらに見たくなった・自分も同じ音源でリール投稿してみたくなった、と評価されます)
フィードやストーリーズ投稿と同様に、「ユーザーが反応したくなるような内容」「ユーザーが最後まで見たくなるような構成」を目指しましょう。ユーザーが興味をそそられる音源を使うことが効果的だと考えられます。
ユーザーと投稿者とのやり取りの履歴
「発見タブ」と同様に、フォローしていないが過去にやり取りしたことがある投稿者の(リールを含む)投稿に対して、ユーザーは関心を持つ可能性があるだろうと判断されています。
フォロワーだけでなく未来の顧客となりうるユーザーとのコミュニケーションにも努めましょう。リールだけでなくフィードやストーリーズでの「いいね!」やコメントのやりとり、ストーリーズの質問フォーム・クイズ・アンケートなど双方向コミュニケーションが可能なスタンプの活用などを検討してください。
リールに関する情報
動画の解像度やフレームレート(1秒間で見せるコマの枚数)などの情報、リールで使われている音源、人気度なども重要なシグナルとして扱われます。
高い解像度で品質の高い動画を投稿に使う、人気の高い音源を使う、など工夫してください。
投稿者に関する情報
「発見タブ」と同様に、日頃から魅力的なコンテンツを投稿していて人気のある投稿者のリールは、「おすすめ」表示されやすくなっています。一方、政治的問題を扱ったリール、政治家、政党、政府関係者やその代理人が作成したリールなどは、おすすめの対象からは外されます。
その他、ユーザーが不快に感じるコンテンツやセンシティブなテーマを扱うコンテンツなど、Instagramの「おすすめ」に関するガイドラインを満たさないコンテンツは表示されにくくなります。
- 人々が戦う様子など、暴力を描写している可能性があるコンテンツ
- タバコや電子タバコ、成人向け商品やサービス、医薬品など、特定の規制対象商品の仕様を奨励するコンテンツ
- 美容整形を奨励または描写するコンテンツ
- 痩身サプリの宣伝など、健康関連の主張に基づき商品やサービスを販売しようとしているコンテンツ
- クリックベイトやエンゲージメントベイトを含むコンテンツ※クリックベイト:リンクを投稿するときに、何が表示されるのかをほとんど知らせないまま、クリックして詳細を確認するよう促す見出しや本文を付けること※エンゲージメントベイト:エンゲージメントを人為的に増やす目的で、「いいね!」、シェア、コメント、その他のリアクションを促す戦略のこと
- コンテストや景品を宣伝するコンテンツ
日頃からユーザーに喜ばれるInstagram投稿を続けて人気を得る努力をしましょう。TikTok等に投稿した動画をそのまま使い回さず、高解像度の動画を使い、「おすすめ」対象から外される可能性のあるコンテンツは動画に含めないでください。
その他、詳細はInstagramのヘルプを確認してください。
コラム:選ばれしリールにのみ与えられる「注目」ラベル
ごく一部のリール動画には 「注目」というラベルが付きます。この「注目」ラベルは、エンターテインメント性が高い動画や、視聴したユーザーにインスピレーションを与えてくれる動画だと、Instagramが選び出した動画にのみ付けられます。
自分の投稿したリール動画に「注目」ラベルが付けられ、「おすすめ」リール動画として発見タブに表示される場合には、本人に通知が届きます。具体的な選定基準などは不明ですが、より多くのユーザーに見てもらえる絶好のチャンスですから、「注目」ラベル取得を目指していきたいものですね。
コラム:Instagramの進化は止まらない!
Instagramは進化の著しいSNSです。今回ふれることはできませんでしたが、たとえば以下のような、企業にとっても有用と思われる新機能が次々とローンチされてきましたし、おそらくこれからもローンチされていくことでしょう。ぜひみなさんには引き続きアンテナを高くはっていただき、Instagramのトレンドやニュースをキャッチアップいただくことを願ってやみません。
Instagram、短尺動画のリールでもショッピングを楽しめるように(米国時間2020年12月10日)
https://about.fb.com/ja/news/2020/12/shopping_in_reels/
https://about.fb.com/ja/news/2021/04/remixtool/
https://about.fb.com/ja/news/2021/10/collab_superbeat_3d_dynamiclyrics/
好評だった前シリーズに続き、全8回にわたりステップ・バイ・ステップでInstagramのビジネス活用に役立つ情報をお届けしてきましたが、今回で当連載はいったん終了です。毎回お読みいただいたみなさん、SNSでシェア・リツイートしてくださったみなさん、本当にありがとうございました!
連載中に、Instagramの親会社であるFacebook社がMeta社へと社名変更するという大きな変化もありましたが、Instagramの人気と将来性は今なお健在です。「キーワード検索」や「ライブショッピング」など、これから本格実装が楽しみな機能も多くあります。企業のSNS担当者のみなさんにおかれましては「自社はInstagramをどう活用できるのか」「どう活用するのが効果的なのか」を学び続け、実践し、貴社ビジネスを成功へと導いてください。
改めましてご愛読ありがとうございました。また別の形でみなさんと再会できるのを楽しみにしております。
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