ヒト・モノ・カネが限られた地方の中小企業こそ、Web集客に「戦略」が必要な理由
こんにちは。株式会社アクシスの瀬川です。
前回の記事「問い合わせの9割がトップ営業経由。岐阜の小さな会社がWebから大型受注できるようになった理由」では、私たちがWeb集客に取り組むようになった理由とその過程についてご紹介しました。
第2回の今回は、Web集客の「戦略」についてお話ししていきます。中小企業のWeb担当者さんからは、よくこんな声を伺います。
Web集客をあれこれ頑張っているんだけど、思うように成果につながらない
こういった場合の多くに共通しているのは、Web集客における戦略がないこと。戦略がないゆえに、とりあえず流行っている施策をやってみたり、思いつきで施策を打ってみたりしてしまうのです。そこで本記事では、Web集客に戦略が必要な理由、そして戦略を考えるコツについて紹介していきます。
Web集客になぜ戦略が必要なのか
前回の記事でお話ししたとおり、Web集客を強化しようとした私たちは、とりあえずお問い合わせを獲得しようとLP(ランディング・ページ)を作りました。
LPへ誘導するためのリスティング広告を数か月実施し、トータルで数十万円の広告費を費やし、あれこれ訴求を工夫してみたり、LPを改善してみたりしましたが、まったく成果が得られませんでした。
今でもLP施策の失敗は、苦い記憶で代表に報告をした時のことを鮮明に覚えています。
LP施策で成果が得られなかったことを報告すると、会議室には重たい空気がたちこめ、「高い勉強代だったね」と言う代表の一言に自分の力不足を実感しました。
しかし、そこで気づいたのです。
ただ施策をこなすだけではダメだ。Web集客には“戦略”が重要なんだ
地方企業は、基本的にお金、人、時間のいずれも余裕はありません。
Web集客に使える予算が月に数十万もあれば良い方ですし、Web集客をする専任の担当者がいるケースは稀でしょう。さらに、結果が出るまで経営者は何年も待ってはくれません。
また、Web集客となると商圏が一気に全国に広がるため、当然競合の数も増えます。これまでは全く出会わなかった、遠く離れた企業と戦うことになることもあるわけです。すなわち、地方のWeb集客では「早く・安く・人手をかけずに成果を出す」という半ば無茶な挑戦をしなくてはいけないのです。
この難題を解決するには、ともかく頭を使うしかありません。
自分たちはいつまでに、何を達成したいのか。今どんな資源(ヒト・モノ・カネ)が手元にあって、どうすればその資源をより有効活用できるのか。
戦略をきちんと考えることが、地方の中小企業がWeb集客で成果を出す上での近道なのです。
現状把握せずに立てた戦略は、的外れになる
とはいえ、この記事を読んでいる方の中には、「戦略が重要なことはわかったけど、どう考えたらよいかわからないよ…」と思っている方もいるかもしれません。
そういった方は、まず現状分析から始めることをおすすめします。なぜなら、現状把握をせずに立てた戦略はたいてい絵空事になり、結局役に立たないことが多いからです。
実際、私がWeb戦略をつくる時も現状分析から始めました。
顕在化している課題を洗い出し
まずは顕在化している課題を紙に一通り書き出してみました。書き出したあとは、それらの課題をグルーピングしていきます。
すると、以下のように大きく4つの課題があることが見えてきました。
- 商談獲得がトップ営業や紹介に依存していること
- Webからのお問い合わせに対する受注率が低いこと
- Webサイトの情報がアップデートされておらず、陳腐化していること
- 顧客情報が整理されておらず、お客様の反応率も低迷していること
営業マネージャーにヒアリング
さらに営業マネージャーにヒアリングを行い、商談の失注理由の分析も行いました。過去数年分の商談記録を1件1件見ながら、どういった理由で失注したのかをまとめていったのです。
すると、「費用が合わない」「とりあえず相談した」が失注の大半を占めていました。これらの分析から、次のような仮説が見えてきました。
- 私たちのお客様になる確率が低い人に、アプローチをしている
- 私たちの提供するサービスの価値を、お客様に正しく伝えられていない
見えてきた課題をさらに深掘り
そこで以下の論点を設定し、さらなる検討をしていくことにしました。
- 私たちに相談してくるお客様は、どのようなことに困っているのか
- 私たちの強みや提供価値は何なのか
- 実施している施策には何が欠けているのか
1. 私たちに相談してくるお客様は、どのようなことに困っているのか
現状分析の第一歩として、お客様の課題を知ることから始めました。私たちにご相談いただく企業の多くは、中小企業です。ですから、中小企業庁が発行する「中小企業白書」の統計データをはじめ、さまざまな関連資料を検索エンジンを使いながら調べていきました。
中小企業白書には、中小企業を取り巻く環境や取り組みの状況などについて紹介されています。調査によると、中小企業の多くは、IT投資の必要性を理解しながら、人材不足や導入効果が見えないといった理由で投資に踏み切れない、といった具体的な課題が書かれていました。
さらにお客様のニーズを探るため、営業マネージャーと一緒に、過去にいただいたお問い合わせ理由を集計していきました。
集計してみると、以下の理由が多いことがわかったのです。
- (Web集客で)何をすればよいか分からない
- 今やっていることが正解か分からない
- 採用を強化したい
- 既存(Web)サイトの集客改善(をしたい)
また現場の状況を知るために、何回か商談に同席しました。お客様がどういった経緯で、お問い合わせしたのかを注意深くヒアリングしました。
そこで見えてきたのは、お客様自身でWeb集客の施策を試してきたが、やっていることが正しいのか、もっと伸ばす方法はないのか、プロの目から見て客観的なアドバイスが欲しいと思っている企業が多いことでした。
こういったニーズに対して自社のサービスの価値をうまく見せられれば、きっとお問い合わせは増やせるはずと思いました。
2. 私たちの強みや提供価値は何なのか
次に私たちの企業にはどんな強みがあるか、またどういった価値を提供できるのかを検討していきました。
代表をはじめ営業や現場のマネージャーたちに声をかけて会議室に集まり、みんなで議論したのです。それぞれ「私はこう思う」と意見が出て議論が錯綜しかけた矢先、あるメンバーからこんな提案がありました。
長くお取引してくださっているクライアントは、なぜ続いているんだろうね
そこで実際にホワイトボードに1社ずつ名前を書いて、どんな点で私たちが評価されているのかをまとめてきました。わからない部分は、担当している社員に話を聞いて、情報を書き出していったのです。
書き出してみると、私たちが評価されているのは「Web集客をトータルで見て、一緒に考えてくれること」でした。
世の中には、SNS運用が得意な会社、SEOが得意な会社、広告運用が得意な会社など、施策ごとに専門的な知識を持つWebの支援会社が多く存在します。こういった支援会社に頼む企業は、すでに自社の強みや弱み・強化すべき課題が把握できていて、次に何をすべきかが明確になっているところです。
一方で、自社の課題を解決するために、何をしたら良いかもわからない…。具体的な施策を実施する前に、まずは今までの施策をきちんと振り返りたい…。こういった企業では、「Web集客とはどんなことをするのか?」「最初はどういった施策をやるのか?」「次はどんな施策をやるべきか」などについて、客観的にアドバイスしてくれる専門家の存在が望まれているのです。
私自身の経験として、意外と自分たちでは自身の強みに気付きづらいです。自分たちが強みであると思っていたことがお客様にはさほど響かず、全く違ったことが響くことはよくあることです。
だからこそ、お客様目線で自身を見つめ直すことが重要だと思います。
3. 実施している施策には何が欠けているのか
次に、実施している施策に何が欠けているのかを調査していきました。
具体的には、取り組んでいる施策をリストアップしていきます。その上で、お客様が認知から購買に至るまでの時系列に沿って、それらの施策をマッピングしていきました。
実際にマッピングしてみてわかったことは、次の通りです。
- リード(将来顧客となる可能性がある人)を獲得する力が圧倒的に不足している
- リードに対するフォローアップが不十分
B2Bの取引は、商材単価が比較的高く、購買の意思決定には多くの人が関わることが多いです。それゆえ継続的にお客様と接点を持ち、検討のタイミングで思い出してもらうことが不可欠です。
しかし現状のWeb集客を見てみると、興味・認知の部分では自然検索やリスティング広告で自社サイトに誘導するのがメインで、そもそもの入り口が限られていました。また商談につながるコンバージョン地点も、リアルセミナー参加、お問い合わせしかありませんでした。
さらには、月1回程度しかメールマガジンを配信できておらず、私たちのサービスに興味を持っていただく機会は限定的だったのです。また、SNSもアカウント自体はありましたが、開設しっぱなしの状態であまり活用されていませんでした。この現状では、お問い合わせが大きく増えるはずもありません。
Web集客は年々難しさを増しています。かつてはリスティング広告だけ、SEOだけすればある程度成果を上げられました。
しかし、多くの企業がWeb集客に取り組むようになった結果、もはや1つの施策だけで成果がでることはありません。複数の施策をうまく組み合わせて進めなくては、売上や利益といった成果まで良い影響を与えることは難しくなっています。
だからこそ、施策と施策をうまく繋いで、Web集客のあり方をデザインしていくことが極めて重要になっているのです。
方針を決めるとは、何かを選び、捨てること
先述のように現状分析を通して、今のWeb集客を改善するアイデアが出てきたところで、次にWeb集客を進める上での方針を決めました。
方針を決めるとは、何かを選び、何かを捨てることです。
当時の私は、社内で1人だけのWeb担当であり、使える人員も自分のみでした。さらにはWeb集客にかけられる予算もさほど多くなかったため、できるだけ手間なく、お金をかけずに成果が出る施策を選ぶ必要があったのです。
当時の私は、以下のように方針を立てました。
- リードを獲得するためのコンテンツを増やす
- メルマガの強化&ウェビナー実施で、お客様と継続的に接点を持つ
- Webサイトのリニューアルで、自分たちの強みをきちんと打ち出す
Web集客を進めていると、「自分がやっていることが本当に正しいのだろうか…」と不安になります。しかし、こういった方針を立てて、やる、やらないのラインを明確にすることで、迷いなくWeb集客の施策に取り組めるようになりました。
また方針を立てた際に、代表をはじめとする経営層とも認識のすり合わせを行いました。Web集客は経営と直結しています。事業の方向性と集客がずれてしまえば、どんなにWeb集客を頑張ったところで、望む結果にはつながりません。
事前に経営層と話をしておけば、急な方針転換に悩まされることも少なくなるはず。これからWeb集客戦略をつくる方は、ぜひ経営層を巻き込んで議論を進めてみてください。
おわりに
今回の記事では、Web集客戦略を作る重要性と考えかたについてお話ししました。地方の中小企業がWeb集客で成果を出すためには、手持ちのお金、人、時間をどう使うかがとても重要です。その際に核となる「Web戦略」があるかないかでは、大きくその後の結果を左右します。
「自分の会社にはWeb戦略がないな…」と感じられて方は、ぜひこの機会に作ってみてください。最初から完璧を目指す必要はありません。作ってみて少しずつブラッシュアップしてみましょう。
次回の記事では、Web戦略を施策に落とし込む際に重要となるペルソナとカスタマージャーニーマップについてお話していきます。
ぜひ合わせてお読みください。
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