コンバージョンと見込み顧客へのリーチを両立させる「ハイブリッド広告」がさらに重要に。2019年以降の運用型広告を支える新たな広告戦略とは。
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滝井です。
今回は、運用型広告のちょい複雑で、歴史も範囲も広い話になります。
1995年に Windows 95 がリリースされ、「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始した1996年にインターネット広告の歴史は始まります。
もう23年も前になりますが、私自身も Yahoo! JAPAN や Excite、infoseek などにテキスト広告の掲載を発注し、広告掲載費が1週間で50万円ほどかかっていた記憶があります。
Urchin(アーチン)というインストール型のアクセス解析ソフトウェアが優秀だという話を聞いたものの、40万円もするということで決裁が下りず悔しい思いをしたものです(その後、Urchin は Google が買収。後に Google アナリティクスとなり、無料で提供されるようになった)。
当時はコンバージョン計測なんて概念は無かったし、アクセス解析もロクなものがありませんでした。
「インプレッション数とクリック数だけを成果としてよいものなのか?」という疑問が拭い去れず、当時の上司と「インターネット広告は市場が小さすぎてダイレクトな反応を得るのにも、マス広告として認知を広げるにも中途半端で使えない」と結論付けていました。
しかしそれから20年以上経過し、今、インターネット広告には大きな波が来ているんですね。
インターネット広告のマス化と複雑化が同時にはじまった
本記事では、
- 「インターネット広告のマス化が始まっている」
- 「同時に今までになかった広大なチャンス(機会)が生まれている」
という主旨を展開します。
ですが、その前にまずはインターネット広告のこれまでの推移を辿ってみましょう。
1996年から2018年のインターネット広告
1996年のインターネット広告費はたったの16億円
下記はインターネット広告が始まった1996年から2018年までのインターネット広告費(市場規模)の推移です。
2018年には1.7兆円を超えましたが、初年はたったの16億円。22年でなんと100倍以上の市場規模になったわけです。
運用型広告のはじまり
運用型広告は、Google AdWords およびオーバーチュア(Yahoo! プロモーション広告の前身となる広告プラットフォーム)が日本でサービスを開始した2002年に始まったといってよいでしょう。
サンクスページにタグを埋め込むだけで、各キーワードごとの費用対効果がわかるという仕組みはまさに革命的でした。
2004年に大きく伸びているのは、ネット環境の安定(ADSLや光回線の普及など)も大きかったと思いますが、なにしろ運用型広告の伸びがけん引したことは間違いありません。
2007年にはインターネット広告費の約30%を運用型広告が占めるようになり、その後毎年120%前後の成長を続け、2012年には50%以上が運用型広告となりました。
特にリーマンショックと東日本大震災という試練を乗り越えた後の伸びはすさまじいものがあります。
運用型広告がインターネット広告を押し上げた
2009年のリーマンショック時は、新聞やテレビなどのマスコミ広告費が10%以上減少するなか、インターネット広告だけは微増しました。
運用型広告が、厳しいビジネス環境の中でも費用対効果がはっきりわかる広告として力強く前進したことがよくわかります。
その後も、インターネット広告における非運用型広告が毎年減少していく一方で、運用型広告は毎年120%以上の成長を続け、インターネット広告全体では2018年にテレビメディア広告(テレビCMなど)をあと少しで逆転するところまでに至りました。
2018年に起こった変化
「インターネット広告のマス化」が起きている
インターネット広告費が年々増していく中、一貫して減少傾向にあった「非運用型広告(純広告など)」が、2018年にわずかではありますが増加に転じました。
インターネット広告がテレビメディア広告を逆転しようかという規模にまでなり、「認知目的」に使えるようになったと企業側も判断し始めたと考えてよいでしょう。
まさに、「インターネット広告のマス化」が始まった転換期にあるというわけです。
コンバージョンを目的としない運用型広告が増えている
さて、ここからがとても重要な議論となります。
一口に運用型広告といっても、検索広告での固有名詞やキラーキーワードのような、出せばその日のうちに狙ったCPA以内でのコンバージョンが期待できる広告もあれば、Youtube 動画広告のように、1日で数千万円の広告投資はできてもおよそ目標CPA以内での直接コンバージョンは獲得できないような広告もあります。
近年の運用型広告の伸びには、「即コンバージョン」を狙わない、認知や欲求喚起を目的とした広告が増えていると推測できます。
この背景には、Facebook 広告の高精度なターゲティングの台頭から、Google や Yahoo! もそれに追従する形で、10年前には考えられないような高精度で、デモグラ(属性)や興味・関心でのターゲティングができているのにもかかわらず、ケースによってはクリック単価10円以下の割安で広告が出せるようになったことが大きいでしょう。
さらには、Criteo のような動的を含むリマーケティングが強力になったために、「すでに需要が発生しているターゲットを獲得する」広告から「需要を喚起させる広告で一度サイトに訪問してもらい、リマーケティングでコンバージョン獲得する」という流れが以前にも増して成立しやすくなっていることも大きいでしょう。
「刈り取り広告」以外の運用型広告がとても重要になる時代
運用型広告は現在、大きく4つに分類できる
運用型広告においては、常にCPA(顧客獲得単価)と、市場規模(広告を出せる量)とのバランスを考える必要があります。
下記は、その相関をイメージしたものです。
実際には、図の下の方、検索広告や動的リマーケティングなどの「CPAは低くとれるが量を出せない広告」の規模感はずっと小さく、デモグラや Facebook の興味・関心などの「CPAは高くなるがいくらでも配信量を伸ばすことができる広告」の規模感は莫大ですが、お客様や社内へざくっとイメージしてもらうためによくこの図を使っています。
私は、運用型広告は現在、大きく4つに分類できると考えています。
- 認知広告
- 種まき広告
- 刈り取り広告
- ハイブリッド広告
特に、「ハイブリッド広告」については、これからの運用型広告を語るうえで非常に重要になります。それぞれについて解説していきます。
認知広告
現在の運用型広告において、認知目的の広告の代表は YouTube 広告です。
YouTube 広告の場合は「視聴単価」という考え方になりますが、ターゲティング設定や動画の質によっては3円以下に抑えることが可能なので、単純な認知だけの目的なら効率はよいといえます。
300万円あれば100万回以上の視聴も可能になるので、もはや新種のマス広告といえると思います。
ただし、YouTube 広告はクリックが生まれにくく、クリック単価に割り戻すと100円以上になったりと「サイト流入を増やす」という目的は達成しにくいのが難点です。
上記ファネル図の「刈り取り」「ハイブリッド」「種まき」をやり尽くして初めて実施を考えるというスタンスでよいでしょう。
種まき広告
需要が顕在化しているユーザーだけに広告を出していても、必ずいつか目標CPA内でのコンバージョン数獲得は頭打ち状態になります。それどころか、縮小均衡していってしまう可能性すらあります。
リピートが発生しやすいビジネスの場合などは、既存ユーザーばかりに広告が出てしまい、新規ユーザーの流入がないままビジネスをしていればコンバージョン数が減ってしまうのは当然です。
そこで、おもに「新規ユーザー」を狙って、30円以下(できれば10円以下)の低いクリック単価でサイトに来てもらい、リマーケティングや固有名詞検索などでコンバージョンを狙うのが「種まき広告」です。
デモグラ(属性)を使ったターゲティングや、YDN のインタレストカテゴリ、Criteo Customer Acquisition などがここに入るでしょう。
今すぐのコンバージョンはほぼ見込めないため、初月のCPAが非常に悪いということになりがちなので、目標設定を CPA やコンバージョン数にするのではなく、種まき広告経由での流入時の滞在時間でユーザーの質を判断し広告の調整をするこで中・長期的な売り上げ増加につながりやすいです。
刈り取り広告
人の欲求がすでに強く発生している数少ないゴール間際のユーザーに対して出す広告(検索広告など)なので、「刈り取り」と呼ばれます。
「刈り取り」という言葉がしっくりこない人は「今すぐのコンバージョンの発生が確実に狙えて、CPAもある程度低くコントロールできる広告」と捉えるといいでしょう。
CPA(顧客獲得単価)を低くすることは狙えるものの、対象となるユーザーの数は限定的になります。
ハイブリッド広告
先述の「種まき広告」と「刈り取り広告」の両方を同時に実現できる広告です。
Google広告 のカスタムアフィニティ、コンテンツターゲット、YDN のサーチターゲティング、Facebook の興味・関心ターゲティングなどは以前より存在する媒体メニューでしたが、その精度は上がり「今すぐのコンバージョン数」を確保できる上に、クリック単価も50円以下で広告を配信することができ、多くのクリック数(= ユーザー訪問数)を生むことになります。
これが、リマーケティング対象のリスト増加へつながり、購買ユーザーへの育成となっていくことにもつながります。
「今すぐコンバージョン」と「見込みユーザーの流入増加」の両方の目的を達成できるため「ハイブリッド広告」というわけです。
Google広告 の新メニューである「ファインド広告(現在はベータ版)」もここに入りそうです。
広告効果を最大化するには「実施する順番」が大事
これから運用型広告を始める場合、当然ながら検索広告の固有名詞(ブランドキーワード)や、動的リマーケティングなどの「確実にコンバージョンを獲得できるであろう広告」から攻めていきます。
その次に、検索広告の一般名詞(ジェネラルキーワード)で商品・商材に近いものであったり、サーチターゲティングなどが続いてきます。
この辺りの広告メニューは、最適化のノウハウをしっかり持った担当者が運用すれば、とても広告費用対効果が高くお客様を獲得できる(売上が上がる)わけですが、最大のデメリットとして「出せる量(広告投資額)に限界がある」というものがあります。
要するに、「CPA が低く確実にコンバージョンを獲得できる広告」だけをやっていても、いずれ頭打ちになってしまうということなんですよね。
そこで、「インターネットのマス化」が起こっている背景から「投資効率は悪いけど、クリック単価が低くたくさんの見込み客をサイトに訪問させて、ゆっくりとコンバージョン増加に貢献させていく」広告を上手に組み合わせていく方法が機能し始め、実際に効果が出るようになっています。
厳密にいえば、「Facebook 広告の類似ターゲティングは即コンバージョン狙いなのか、種まきなのか」といった細かい議論はあるのですが、広告展開をしていくうえで、「この広告投資分は種まき」「この広告投資分については刈り取り狙いで」と明確に分けていくことは後の広告成果を検証する上でも重要と思われます。
閾値(いきち)の問題
「種まき広告」や「ハイブリッド広告」にどれくらい広告投資すればよいかというと、実は数万円程度ではあまり効果がありません。
現実には最低でも月額50万円、クリック単価5円と仮定して10万のクリック数を生むくらいのインパクトが必要になると考えられます。これくらい出さないと閾値を超えないんですね。
最低限のテストだとしても20万円程度は必要です。
閾値というのは、わかりやすくいえば「ある一定の刺激がないと反応が得られない境界線」のことです。
例えば、手のひらを軽くボールペンでつっついたとして、ある程度強くすると「当たっている感触」から「痛み」に変化すると思います。この「痛み」を感じるポイントが閾値という考え方です。
広告も同じで、ある一定の物量を投下しないと「ひとつのコンバージョン」というのが生まれる閾値を超えにくいんですよね。
ただし、いわゆるテレビCMなどのマス広告で認知効果を出すためには最低でも月に千万単位の投資が必要だった時代から考えれば、信じられないほど低額で「今すぐ需要以外の見込み客」をサイトに連れてこれるようになったことは、大きな時代の変化といえるでしょうね。
さて、この「種まき広告」や「ハイブリッド広告」ですが、今とても有効に機能している媒体、メニュー、方法論があります。
詳細は、後編でお届けしたいと思います。後編が公開されたらお知らせしますのでぜひともメールマガジンにご登録ください。
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