広告クリエイティブの事前テストやユーザー年齢層の把握もできる! YDNバナー広告のユニークな応用技
YDNを使うと、キャンペーン本格開始前に
どのバナー広告のクリエイティブが効くか
事前の比較テスト(A/Bテスト)でチェックできる!
YDNのターゲティングを活用すれば、
Webサイト訪問ユーザーの年齢層も把握でき、
ユーザー理解に基づいてプランを設計できる!
この2つは、株式会社デジタルアイデンティティによるYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)の活用事例だ。YDNは前回説明したようにレスポンスを目的とする広告だが、そのターゲティング機能や配信ネットワークを使うと、このような応用も可能になる。
株式会社デジタルアイデンティティは、SEMを中心にネット広告全般を扱う代理店だ。社内にはSEMの黎明期から関わっている経験豊富なスタッフもおり、特にユーザー設計と分析には高い自信を誇る。
最近では、SEMだけでなくプロモーションプラン全体を手掛けることも増えており、その中で実施したのが2つのユニークなYDN活用法だ。同社取締役の石田孝之氏、経営企画の近藤皓氏、シニアコンサルタントの飛鳥田直也氏に詳細を聞いた。
プレミアム広告の事前評価にYDNのバナー広告を応用
1つ目の事例は、ある健康食品のプロモーションだ。このクライアントは知名度の高い食品メーカーだが、オンラインショップのみで販売する新製品を出すことになった。
ネットマーケティングには以前から取り組んでおり、リスティング広告やアフィリエイト、純広告の経験もある。しかし、今回はこれまでになく大規模なプロモーションになるため、過去のデータは参考にならない。
大きな予算が付いたものの、効果的な施策を展開できるかどうかは未知の領域だった。もちろん仮説を立てて訴求メッセージやクリエイティブを考えるが、確信があるわけではない。このような場合、他の媒体用のクリエイティブを流用するケースが多いが、それがWebのバナー広告としても最適かと問われると心許ない……。
クライアントのプロモーション担当者の悩みを聞いて、近藤皓氏が目を付けたのが、YDNのバナー広告だった。
「今回のプロモーションは、リスティング広告による獲得施策だけでなく、純広告も活用して認知を高めるというものでした。
ただ、リスティング広告はよいとして、純広告はヒントになるものがなくてクライアントは不安をお持ちでした。それを解消するために提案したのが、YDNのバナー広告を使った純広告のためのクリエイティブ比較テストです。
純広告としてYahoo!プレミアム広告を使うにあたり、候補となる複数のバナーをYDNで出してその反応を参考に絞り込みました。純広告でも、プライムディスプレイのようなネットワーク系ならYDNと掲載条件が近いので十分参考にできるというわけです。テストによって効果の高い広告がわかりますし、判断の根拠にできるのでクライアントも安心できます。
クライアントとしては、これまでにない規模感で慎重にならざるを得ず、何か手がかりが欲しかったという状況でした。純広告の実施に踏み切れずにいたクライアント社内の関係者にも納得していただけました
」(近藤氏)
純広のためのテストなので純広を想定したバナー画像を使用
純広のターゲット(購入対象)と近い層に向けてターゲティング
YDNのバナー広告で8パターンをテスト
顧客のニーズ違い、ニーズを載せる/載せない(商品のメリットだけ)、商品画像の有無などの組み合わせで8パターン
YDNで反応のよかった2パターンを純広告として採用
テストの指標は「クリック率×コンバージョン率」
テストを実施したところ、わずか2週間で明確に差が出て、2パターンに対して高い反応があったという。プロモーションの進行上早めに判断したかったが、期待以上に短期間で十分なデータが取れたのは、YDNで大量の出稿ができたおかげと分析する。
近藤氏は、YDNバナー広告で比較テストを行うときのポイントとして、次の3点は事前にクライアントと取り決めておくべきだという。
- 判断を下すための指標
- 中止するときのアラートライン
(「これ以上悪化する場合は止める」という損切りラインを明確に決めておく) - 判断を下すために最低限必要なサンプル数
「YDNは細かくターゲティングできますが、配信効率を重視しすぎるとテストの数値にばらつきが出てしまうので、比較できるように一定化するための運用が重要です。
また、純広告であるYahoo!プレミアム広告のバナーとYDNのバナーは仕様が異なる部分もありますが、基本的な訴求メッセージやビジュアル要素をそろえて、Flash広告の場合は切り替わった最後の画像として採用しています。YDN、純広静止画、純広告Flashのいずれも、同じパターンの反応が高くなりました。
テスト後も、YDNのバナー広告は集客目的で純広告と併用しています。純広告もYDNも設定していた目標を大きく上回っているので、継続することにしました
」(近藤氏)
ターゲティング機能を使って訪問ユーザーの年齢層を把握
2つ目の事例は、防犯商品のプロモーションだ。クライアントは、これまでPC向けサイトで製品訴求を行ってきたが、昨今のスマートフォンユーザー急増に対してサイトのスマートフォン対応を検討することになった。
しかし、防犯商品はその性格上「持ち家や家族のある30~40代以上」がターゲットの製品で、価格も高いため若年層にはめったに売れない。「スマートフォンユーザーの中心は若年層」といわれているなかで、わざわざサイトを用意させる意味はあるのだろうか?
モバイル向けWebサイトに訪れるユーザーの年齢層はどのようなものか?
これを把握するために使ったのがYDNだ。飛鳥田直也氏は、施策の経緯を次のように説明する。
「スマートフォンユーザーを集客する必要性や、そもそもどのような年代のユーザーが訪問するのかを確かめるためにYDNを使いました。
年齢層がわかれば、効果のあるコンテンツも明らかになります。たとえば『製品をお使いになったお客様の声』でも、年齢層が近い方のコメントのほうが響くはずです。また、スマートフォンに割くべきコストも判断できます。
YDNのテキスト広告で、年代ごとに細かく区切ってターゲティングし、PCとスマートフォンで条件をそろえて実施しました。各年代のクリックやインプレッションの多さから検証した結果、PCとスマートフォンではやはり年齢層が異なることが明らかになりました。スマートフォンユーザーは、世間でいわれているように若い。さらに、PCでは女性が多い(家庭で奥さんが調べる)のですが、スマートフォンは男性比率が多くなりました。
サイト内での行動にも違いがあり、PCではいろいろなページを見るのに対して、スマートフォンでは導入の流れや細かいFAQを見る傾向がありました
」(飛鳥田氏)
- YDNで年代ごとに細かく区切ってターゲティング
- 他の条件をそろえてPCとスマートフォンで実施
- 各年代のクリックやインプレッションを分析
- PCサイトとスマホサイトのユーザー行動を分析
- 把握できたスマホユーザーの特性に基づいてプラン修正
結果を受けて導き出した結論は、「スマートフォン対応はするが直近の見込顧客ではないとして、PCとは異なるコンバージョンを設定する」というものだった。
「PCサイトでは、『この製品はよいものなのでぜひ資料請求してください』というメッセージを出していました。スマートフォンの場合は、コンバージョンを資料請求ではなく診断テストコンテンツにしてハードルを一段下げました。
また、興味を持っていただいたとしても、やはり年齢層が異なると売れない商品なので、スマートフォン用の予算を下げました。ただし、スマートフォンユーザーを無視するのではなく、若年層への啓蒙を目的としてYDN広告は継続しています。将来の見込顧客ですし、スマートフォンの利用世代も広がりつつあるので、やる意味はあるという判断です。
こういう長期的な視点で取り組めるところは、ネットワーク系広告の中で非常に安いクリック単価(CPC)で集客ができるYDNの利点ですね
」(飛鳥田氏)
指名検索に結び付くYDNの応用法を模索中
紹介した2つの事例はYDNのトリッキーな使い方といえるが、これはデジタルアイデンティティの特徴を表している。「テクノロジーはあくまでも道具。使いこなして初めて価値が出る
」と石田孝之氏は語る。
「弊社が得意とするのは、ユーザー設計と分析です。ユーザー設計は、リスティング広告前提でキーワードで考えることが多いですが、それに加えてどういうユーザーがその商品を探しているのかという興味関心の領域まで含めて、仮説を立てて集客プランニングに落とし込むことが重要です。
テクノロジーは日々新しいものが登場しますが、それを使うのは人です。仮説を立てる段階からしっかり考えて検証していく部分をきちんとできる組織でありたいと思っています。
テクノロジーは使いこなしてこそ意味があります。コンサルタントとしてお客様のニーズをきちんと把握したうえで、ユーザーがどう考えているのかを読み解く“人の部分”が重要だと考えています
」(石田氏)
デジタルアイデンティティでは、YDNを使ったさらなる応用のアイデアもある。
「今、指名検索を増やすためにYDNが使えないか研究しているところです。指名検索は、通常ならテレビCMを打つのが一番簡単ですが、テレビCMはどの企業にもできるわけではありません。ビッグワードの検索だとリスティング広告の比較検討になってしまいますし、価格も高騰しているので、安いYDNが使えるなら理想です。
また、指名検索を増やせるということは、Webでのコンバージョンに限らず、単純に認知を増やす目的にも利用できます。認知向上に結び付くようなYDNの使い方が見えてくると、お客様にとっては新たな顧客層の開拓につながるかもしれません。
さらに、YDNで集客したユーザーが検索するだけでなく、どの属性に配信したユーザーだとより検索をしてもらいやすいか、どのクリエイティブを出したときに検索してもらいやすいか、ビッグワードで検索したときに、競合と比べて選んでもらいやすくするには事前にどんな初回接触をしておくべきかなど、突き詰めていければと思います
」(石田氏)
- 本社所在地 ● 〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南1-15-1 A-PLACE恵比寿南3F
※移転にともない記載住所を更新しました(2013年8月23日)
- 事業内容 ● デジタルマーケティング事業、インターネット広告代理店業、インターネットメディア事業、Webサイトの企画・設計・制作・構築など。
- URL ● http://digitalidentity.co.jp/
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