良質のコンテンツがどんどん減り、そうしたコンテンツを所有する価値がなくなってきている。
Media 2.0、Web 2.0、Community 2.0、オープンソース開発などのおかげで、コンテンツの作成が簡単になり、配信を妨げる障害も薄れてきた。コンテンツの日用品化(コモディティ化)が進んでいる。
さらに、いまだコンテンツの作成プロセスを締め付けているサイトは、ユーザーコミュニティの絶大なネットワーク効果を利用している競合相手よりもコストがかさむ。コミュニティでは、ユーザーがコミュニティの責任を負い、システム全体を構築し、管理し、ネットワーク化し、磨きをかけている。ユーザーが文化を創り出し、コミュニティの歴史を守る。
コストの問題だけではない、価値そのものが信用にかかっている。オープンコミュニティでは、信用がメンバーと管理者を結ぶ絆で、その信用がコミュニティを育て、ユーザーを読者に変え、そして信用こそがメッセージの到達範囲を拡大する。コミュニティサイト(とマルチメディア)は、2006年にもっとも成長した分野の代表だ。
コミュニティの成功例:(futureofcommunities.comより)
- バイクメーカーのDucatiは、自社のマーケティング部門を廃止して、製品の設計やマーケティングコミュニケーション、そして総合的なブランド体験作りまで、マーケティング全般を担当する中心的な顧客コミュニティグループに仕事を任せることに成功した。
- ドイツでは、既存ユーザーを顧客コミュニティに参加させることによって、eBayが売り上げを56%増やすことに成功した。
- そしてP&Gは、(従業員、顧客、潜在顧客、さらにライバル企業さえも関与する)Connect and Develop戦略を通じ、自ら育てたコミュニティから技術革新の35%と何十億ドルもの売上を得ることに成功した。
コミュニティはどのようにして作られるのか?
コミュニティは強い目的意識のもとに集まる。その目的は、社会問題から教育、商売、プロジェクトの開発までさまざまだ。目的がはっきりしていると、すべての利害関係者が追求する共通の目標ができる。コミュニティは正しく運営すれば、ひとりでに発展し、やがて厳しい管理やコミュニティ外からの管理が要らなくなる。そして、ある組織のメンバーだったり、似たような業界で働いているなど、ユーザー同士に実社会でのつながりがあると、オンライン・コミュニティの成功する確率はとても高くなる。
個人が大事。成功しているコミュニティは、作業グループ主体ではなく個人が中心になって成立しており、各ユーザーがプロフィールを作ったり、環境の構成要素をカスタマイズしたり、個性を発揮できるようになっている。さらに、コミュニティのメンバーになって貢献すれば、個人がある程度利益を得るようでなければならない。新たなウェブの世界では、個人の創作者が中心となり、すべてが外に向かって流れていく。作業グループが中心のコミュニティでは、個人同士が容易に交流できず、ネットワーク自体の力が弱まってしまう。
コミュニティには、管理者と遵守すべき一連の倫理規範が必要。コミュニティには、交流のルールとシステムを用意し、コミュニティ内のコミュニケーションの質を維持するためにこうしたルールを実際に守らせる必要がある。テーマから外れた会話はもちろん、宣伝や悪用はコミュニティの価値を下げ、積極的な参加の割合が減るおそれがある。ただし、ブランドや製品に基づくコミュニティは、公平でオープンなフォーラムを持つ必要性と品のあるやりとりの必要性との間でバランスを取るべきだ。
コミュニティ管理の4つの指針
コミュニティの目的
コミュニティの目的を明確に定義して伝え、個々のメンバーのやりとりを目的に添ったものに誘導することが、管理者の目標だ。コミュニティの参加者
管理者は、コミュニティ内でメンバーが個性を発揮し、ほかのメンバーとの違いを示す機会を常に提供しなければならない。管理者は、プロバイダとコミュニティ間の信頼が増すよう常に努力することも必要だ。コミュニティを作るためのプラットフォーム
管理者は、交流の手段(ブログやフォーラムとか)を提供するなど、コミュニティ用のプラットフォームの調子や適合状態を監視しなければならない。コミュニティの管理
コミュニティが進化するにつれ、コミュニティ内のさまざまな交流手段の管理にユーザーの果たす役割が大きくなる。とはいっても、管理者による方向性が明確な介入は常に必要だ。
どのようにしてコミュニティを盛り上げることができるのか?
サイトのページにある要素は、コミュニティの発展を促したり妨げたりする上で重要な役割を持つ。なかでも大事な特徴は次の点だ。
インターフェースの使いやすさ
コミュニティのあらゆる交流手段(ブログやフォーラムなど)を含め、ユーザーにとってサイトの機能がどれくらい使いやすいか。匿名の投稿を認めているか、それともユーザーは最初に登録しないといけないのか。システムが徐々に適応したり、新しい機能に順応しやすいか。システムエラーが多くないか。そして、おそらく最も大切な点は、ユーザーが別のユーザーに接触するのは簡単かということだろう。インターフェースはシンプルで、できるだけ一貫性のあるものにしておこう。
プロフィール
成功しているコミュニティは、必ずその中核要素として、個々のユーザーがそれぞれの個性を表現し、自分自身の独自性を出せるようになっている。具体的には、写真のアップロード機能や、略歴および職業上の経験の記述機能、ハンドルネームの作成機能などが挙げられる。
メンバーになることの特徴とメリット
サイトでメンバー登録したり、手数料を払ったりして何が得られるのか。サイトの全体的な機能から見て、メンバーであることがどんな意味を持つのか。そして、登録することあるいは登録してもらうことで、誰がより大きなメリットを享受できるのか。それはサイト側なのか、ユーザー側なのか。
メンバーの増加
メンバーが参加し続けるよう仕向けているか否か。多くのサイトは、ユーザーを絶えず活気づけるために、ポイント制や参加レベル変動制のシステムを設けている。
迷惑行為
サイト全体で迷惑行為に対して、どのように対処しているか。全般的な方針や行動規範を見つけやすくしているか。誰かの行為を抑制する場合、ユーザーにはどの程度の権限を与えるのか。
サイトに関する議論
成功しているコミュニティサイトでは、サイトの1セクションをサイトに関する議論専用に割り当てており、ユーザーがサイト管理者とのオープンな対話の中で、意見を言えるようになっている。新しい機能を勧めたり、既存の機能改善といった内容を議論でき、全体的には自分たちのサイトだという意識を、管理者とユーザーの間で共有できる。
コミュニティサイトは、ユーザーの交流を活性化し、一層の貢献を促進するために多くの手段を提供できる。たとえば、次のような手段が考えられる。
- ブログ
- ウィキ(Wiki)、ユーザー参加型の百科事典
- 製品、特集コンテンツ、ほかのメンバーなどに対し、ユーザーが評価する機能
- ユーザーによる批評
- P2Pファイル共有
- ユーザーがお気に入りのコンテンツを送って表示できる、コンテンツ共有機能
- ユーザーのコメント機能
- トラックバック。つまり、あるブログが誰か他所のブログを参照する場合に使う機能
- ユーザーが個人的に気に入っているブログをリスト化したブログロール機能
- 個人プロフィールの作成機能
- 人気コンテンツのランキング機能
- 検索性と閲覧性を大幅に高めるタグ付け機能
- ソフトウェアや情報データのオープンソース開発
- ポッドキャスティングやビデオブログなど、多様なコンテンツ提供形式
- チャットまたはインスタントメッセージ
- フォーラム
参考資料(英語)
- http://www.futureofcommunities.com/、コミュニティ管理およびマーケティング評議会(CMMC)のブログ。
- 同サイトが掲載している資料「コミュニティ・デザイン:コミュニティ管理の4原則」(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院、Patrick Duparcq著)。
- http://infotangle.blogsome.com/2006/04/07/community-20/、Community 2.0の概要。
- http://elearning.typepad.com/thelearnedman/social_networking/、The Learned Man!というブログのソーシャル・ネットワーク関連記事。
- http://www.uxmag.com/strategy/93/this-is-media-20、Media 2.0の概要。
- http://www.digital-web.com/articles/building_an_online_community/、オンライン・コミュニティ作りの秘訣。
- http://customerevangelists.typepad.com/blog/2006/05/charting_wiki_p.html、コミュニティに積極関与するユーザー比率の考察、1%の法則とは。
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