―何を解析すればいいのかわからないあなたに―
Webサイトの“見える化”&“カイゼン”講座
検索キーワードリストから見つけ出すコンテンツ企画
今回は検索語句のリストをじっくり見ていこう。リストの上位だけを見ていると、会社名など、「うちのサイトに多く訪れるのは当たり前」といった言葉ばかりだが、下位まで見ると、このリストが宝の山だと気づくだろう。それは成功につながるコンテンツを教えてくれる“魔法の鏡”なのだ。
自分のサイトのデータをもとに、仮説検証型で運営しよう
アクセス解析を行うと、1つの表からだけでも多くの指針が得られる。ただし慣れるまでは、なかなか難しいかもしれない。それは「他社との比較」ができないからだ。同業他社のサイトがどんな数字になっているか、標準的な数字を得ることはできない。仮に1社や2社のデータが得られたところで、どう比較したらいいのかわからないだろう。ライバルの数字が大きいからといって、すぐに同じにできるタイプの数字でもない。
基本的には自社のサイトの数字を見て、そこに潜む問題を見つけ出すことから出発しなければならない。そして、問題点に対して仮説を立てること。問題点を改善する目標と方法を持って、対策をやってみること。その反応をもとに次の作戦を繰り出すこと。つまり、いわゆるPDCAのサイクルを実践することが大切だ。
検索語句のリスト
1,000位まで見たことありますか?
検索語句 | 訪問者数 |
---|---|
山田 | 1,000 |
山田産業 | 520 |
イカ | 315 |
タコ | 150 |
山田産業株式会社 | 120 |
イカ レシピ | 100 |
yamada | 95 |
山田産業 イカ | 60 |
イカ 冷凍 | 52 |
タコめし | 35 |
業務用 | 30 |
グルメフェア | 28 |
さて、今回見てみるのは「検索語句での訪問者数のリスト」だ。表を見てもらいたい(表1)。
これは架空の会社「山田産業」のサイトの検索語句ランキングの上位部分だ。語句ごとの差が非常に激しく、一番多い会社名関連での訪問は1,000回もあるのに、リストの末尾は28回と非常に少なくなっているのが特徴的だ。主力商品である「イカ」「タコ」といった語句も比較的多く検索されているようだ。
ランキングリストというのは上位だけ見ると「当たり前」に見える。このサイトでも、「うちのサイトで会社名が多いのは当たり前だ」「主力商品のイカやタコが多いのは当たり前だ」ということになる。ここだけを見ていると「だからどうした」という結果にしか見えない。しかし、下位まで見ると「業務用」「グルメフェア」といった、ちょっと違うタイプの語句が見られる。ほとんどの会社がこういった状態になっている。上位には会社名や主力商品関連語が多く当たり前の結果だが、下位には意外な語句が並ぶのだ。
実は、下位の検索語句にこそ、次に作るべきコンテンツのヒントが隠されている。ここをきちんと見るかどうかで、サイトの“次の一手”が変わるのだ。一度、1,000位ぐらいまでのリストを見てみよう。
検索の「フレーズ」と「キーワード」
違いを理解して対処しよう
検索語句を意味する言葉は、厳密には2つある。「フレーズ」と「キーワード」だ。「フレーズ」というのは、1単語でも、複数の単語を「イカ 冷凍」のようにスペースでつないで検索した場合でも、その検索に使ったものをまとめて「フレーズ」と呼ぶ。フレーズは実際に検索されるときに使われている姿だ。「イカ」で1回、「イカ 冷凍」で1回と数えていくので、フレーズランキングは実際に検索された回数がわかるものだと考えられる。ところが、この数え方では、他のさまざまな言葉と組み合わせて検索された語句を見落とす可能性がある。たとえば、次のような場合だ(表2)。
検索フレーズ | 回数 |
---|---|
イカ 冷凍 | 2回 |
タコ レシピ | 1回 |
タコ 冷凍 | 1回 |
このように検索されている場合に「イカ」と「タコ」にだけ着目したとしたら、ランキング上位にある「イカ」が重要な語句だと、単純に思い込んでしまうかもしれない。しかしここでもっとも多く使われている語句は、実は「冷凍」である。これに気づけば、冷凍のものが多く求められていると感じ、冷凍食材についてもっと重視したコンテンツ作りを考えることができるだろう。企業は製品である「イカ」や「タコ」に注目しているためになかなかこうしたことに気づかない。フレーズをいったんバラバラにし、単語ごとに再集計したものが「キーワード」と呼ばれている。この例をキーワードリストに直せば、次のようになる(表3)。
検索キーワード | 回数 |
---|---|
冷凍 | 3回 |
イカ | 2回 |
タコ | 2回 |
レシピ | 1回 |
これで、より直感的に「冷凍」という語句を見直すことができるだろう。
ただし、キーワードリストでは、検索回数の合計が実際の検索回数よりもはるかに多くなってしまう。元は全部で4回の検索回数だったのが、この表では合計8回となっている。しかし、キーワードリストでは全体の回数を気にすることはない。むしろ、キーワードリストにしたとき、回数が増えて見える語句ほど、他の多くの語句と組み合わせて検索されているものなのである。それを発見できれば良いリストだといえる。
表2のリストは「フレーズ」ランキング、表3のリストは「キーワード」ランキングとなるが、まずは実際に検索された言葉遣いや実数を実態どおりに把握するため、最初はフレーズランキングを見るといいだろう。あわせて、キーワードランキングを見て、注目すべき語句を探っていけばいい。
検索語句を見るときの3つのポイント
こうして、上位1,000位までのフレーズランキング、さらにキーワードランキングを見ていくと、次のことに気づくだろう。
重要なのに下位に留まっている語句がある。
力を入れていないのに、意外に多く訪れている語句がある。
まったく顧客にならないタイプの語句がある。
(1)は大切だ。ランキングの上位だけを見ていると気づかないが、大切だと思っているにもかかわらず、下位になってしまっている語句。これはサイトの中で意外に使用が少ない語句になってしまっている恐れがある。いろんな方に「検索語句のランキングとは何が反映されたものか?」と聞くと、「検索エンジンでの順位の反映」という回答がとても多い。これはSEOに注意が行き過ぎているためだと思う。検索エンジンでの順位は影響は確かに大きいが、それは元々の事情ではない。元々は「サイトにその語句がどれだけあるか」「コンテンツの中で重視されているかどうか」によるものなのだ。訪問されたキーワードは、サイトの現状を映し出す魔法の鏡なのだ。
大切に思っている語句であるはずなのに、サイトでは実際にはあまり使用していない。そういうことが実は非常に多いのだ。「大切なことを書く」という基本よりも「ホームページらしいものを作ろう」という気持ちが強かったり、あまりにも当たり前で盲点となっていたりするためだ。機械部品のスイッチを扱うある会社が、品番でばかりサイトを作成していて、ほとんどサイト内に「スイッチ」という語句が出てこなかった、なんていう例もある。こうしたことに気づけば、今のサイトを直したり、コンテンツを追加したりすることで、その語句でもっと多く訪れてもらえる、という方向性が見えてくる。
(2)は見過ごされがちだが、これも勝利へのチャンスだ。力を入れていないのに10人、20人がサイトを訪れているということは、よほど全体的に検索回数が多いか、個々の検索者のニーズが強いかだろう。実際検索エンジンでその語句で検索してみると、100位ぐらいまで見ても自社サイトが現れないことも多い。この人たちはいったい何位まで調べているのだろうかと不思議に思うが、それぐらい、検索者は一生懸命に探し物をしているのだ。
となれば、ちゃんと力を入れて、そうした語句でコンテンツを拡充すれば、さらに多くの人が訪れるだろう。しかも彼らは、一所懸命に情報を探している人たちだから、顧客になりやすい。つまりコンバージョンレートが上がりやすいのだ。広告で興味のない人まで大量集客するより、よほどコストパフォーマンスも良いだろう。
(3)は別に放っておいてもいいようなものだが、少し注意が必要だ。たとえば、本文などではなく、ちょっとしたエピソードとして書いたような文章内の語句がヒットして、多くの訪問者が訪れる場合もある。B2Bサイトなのに一般消費者らしいキーワードで多数訪れていたりする。これでは総訪問者数を基にコンバージョンレートなど計算しても仕方がない。社業とまるで関係ない場合は、訪れた人が顧客になる確率は非常に低いからだ。今10万人訪れているといっても、半分は一般消費者だった、なんてことも珍しくないのだ。
「キーワードKJ法」でコンテンツ発見
1,000位までのランキングリストで(1)(2)(3)をひととおり見たら、次はキーワードリストをプリントアウトしたい。社員にそれを配って、どの語句が増えたらいいと思うかなどアンケートして見ると、意外な語句を大切にしている事業部があったりしておもしろいだろう。
さらに、このプリントアウトをはさみでチョキチョキ切ってしまおう。1語ずつ、1,000枚の紙片を作成して、大きな会議机に向かう。順不同に1枚を手に取り、机の真ん中あたりに置く。続いて2枚目を手に取り、1枚目の語句と似ていると思えば近くへ、似ていないと思えば遠くへ置いていく。後は次から次へ、似ているか似ていないか、直感だけを頼りに1,000枚の紙を机に置いていこう。30分程度でたくさんのかたまりができ、中には1、2枚で孤立した紙片もあるだろう。注意すべきは「直感だけを頼りに」という部分で、あまり理性的に整理していると「こんな語句、要らないよ」と排除してしまって、創造的な答えが見つからなくなる恐れがある。これを「キーワードKJ法」と呼びたい。直感を頼りに置いていくというところが、「KJ法」と呼ぶゆえんである。なお「KJ法」自体は、文化人類学者・川喜田二郎氏が開発した発想工学の手法である。さらに興味のある方は検索されたい。
さて、この作業が終了したら、改めて机にどんな語句の地図ができているかを見ていこう。“このあたりはこれ関連”“こちらのかたまりはこの傾向”といった具合に、かたまりに見出しを付けていく。大切なのは1、2枚で孤立した紙片である(図4)。
この孤立したキーワードは、実際に検索からサイトを訪れてはいるが、コンテンツが足りないためにあまり総数は多くない語群だ。もし商品の特長につながるなら、それを中心にしたコンテンツを計画しよう。おそらくそれは非常に個性的な語句で、ライバルサイトではまだそのコンテンツを持っていないかもしれない。これは大きな成長のチャンスなのである。
1,000位までが大変なら、とりあえず300位ぐらいまででいいから、一度やってみてほしい。吹き飛ばされないよう、風のない部屋で、ゆっくりした気持ちでチャンス探しをするのだ。
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