Web 2.0上級編――米国小売業界でのWeb 2.0/リッチアプリケーション活用状況レポート
今週前半、インターネット活用をテーマにした小売業界イベント「Shop.org Summit」で話すことがあってラスべガスにいたのね。そこで「Web 2.0上級レベル(Web 2.0: Advanced Level)」というセッションに出席したの。
ちょっとしたマイクトラブルがあったり(マイクが切れては、耳をつんざくピーッという音が鳴り続けた)、コンベンションセンターの無線LANの利用料金に驚かされたりした。
とにかく気を静めてプレゼンターの話に集中したわ。さまざまな小売サイトにおける、新しいユニークなWeb 2.0の実装に関する話だったの。
Joe Chung氏(Allurent)が、まず、オンラインショッピングにおけるWeb 2.0について話をした。Chung氏はまずTim O'Reilly氏のWeb 2.0論で使われた「Web 2.0ミームマップ」を示し、Web 2.0はさまざまな考え方からなる巨大でまとまりなきもので、相反する概念を含んでいることがわかると説明した。
それから「リッチメディア、リッチアプリケーション、およびソーシャルメディアが組み合わさっている」と、Web 2.0をよりシンプルに定義してみせた。Chung氏は社会的交流を促進する衣料品サイトを例に挙げた。自分の衣類情報をFacebookで友人と共有できるのだという。
Gian Fulgoni氏(comScore)(ほんのちょっぴりダスティン・ホスマンに似ていると思う)が、次に、現在の小売業界におけるWeb 2.0ということで話をした。
Fulgoni氏によると、Web 2.0には写真、動画、ブログ、ディレクトリ/リソース、ソーシャルネットワークなど、カテゴリや定義が数多く存在している。
また、Fulgoni氏はWeb 2.0ユーザーに関する興味深い統計を準備していた。
- 2007年8月、1億5800万人(オンライン人口の87%)がWeb 2.0のサイトを訪問した。
- 3か月のスパンでは、オンラインの全人口がWeb 2.0のサイトに関係した。
- Web 2.0のサイトの滞在時間は1人平均で210分、セッションあたりの平均ページビュー数は516だった。
2007年8月の、Web 2.0のトラフィックの内訳は以下のとおり。
- ディレクトリ:1億2100万
- 動画:9300万
- ソーシャルネットワーク:8100万
- 写真:5600万
- ブログ:4800万
Flashコンテンツを提供しているEコマースサイトの利用者は、1億5500万人を上回る。大手では、Wal-Mart Stores、Target、Office Depot、Old Navy、Best Buyあたりが、サイトにFlashコンテンツを採用している。Flashの使われ方はさまざまで、見本表示に使っているところもあれば、ホームページ上でサービスや商品を循環して掲載するのに利用しているところもある。
Fulgoni氏は続いて、Web 2.0ユーザーのオンライン消費を利用カテゴリ別に紹介した。
- ヘビーインターネットユーザー:
- 人口:Web 2.0ユーザー全体の50%
- 消費:オンライン消費全体の58%
- ブログユーザー:
- 人口:インターネットのユニークビジター数の44%
- 消費:オンライン消費全体の56%
- 動画ユーザー:
- 人口:インターネットのユニークビジター数の67%
- 消費:オンライン消費全体の79%
- ソーシャルネットワーク利用者:
- 人口:インターネットのユニークビジター数の56%
- 消費:オンライン消費全体の59%
ユーザー作成コンテンツ(UGC)のサイトに掲載される広告は、広告が扱う商品によってユーザーの受け入れ意思が大きく違ってくる。具体的には、余暇製品(音楽、映画、娯楽、家電製品など)だとユーザーが受け入れてもよいとする比率が高くなり、日用品(金融情報サービス、処方薬、市販薬など)だと低くなる傾向がある。
Fulgoni氏のプレゼンテーションはデータが充実していてたいへんすばらしかった。私が特に興味を引かれたのは、メディア消費の20%がインターネットで行われているにもかかわらず、広告費は5%しかオンラインに移行してきていないという話だった。チャンスなんじゃないかな。
Doug Mack氏(Adobe)は、リッチメディアについて話をした。
ここでもWeb 2.0ミームマップが参照され、Mack氏は、リッチなユーザー体験、ユーザーの行動をあらかじめ設定するよりもユーザーのやり方にまかせること、再構成する権利、そして遊びの要素でEコマースへのギャップを埋めることがここで強調されていると指摘した。
これからのリッチメディアのテーマとして、リッチアプリケーションとの融合、コミュニティの権限の強化、デスクトップへの回帰、コンテンツそのもののインターフェイス化などがあるとMack氏は言っている。「リッチメディアとリッチアプリケーションの融合」の例としてMack氏はTeamwork Athleticを挙げた。このサイトでは、サイト上のモデルにユニフォームを着せ、色、カット、ロゴを変更してチームのユニフォームをデザインできほか、自分の画像をアップロードし、ユニフォームにプリントした様子を見ることもできる。
デスクトップへの回帰について、Mack氏はほんの触りだけ話をした。ソフトウェアの最良のものとインターネットの最良のものが組み合わさり、新しい体験が誕生するかもしれないとMack氏は言う。オーディエンスの大半には標準的なウェブ体験を提供しつつ、Web 2.0のユーザーには新しい体験を提供できる。彼が例として挙げたのは、eBayの、流れるようなインターフェイスのデスクトップアプリケーションで、かなりすばらしいものだった。ただ、Mack氏が注意していたけど、デスクトップアプリケーションはサイト側の開発作業に数か月を要することが少なくないという。
こうした新しい方向性を導入すると、顧客が混乱して及び腰になり、迷子になってしまう危険がある。Mack氏は、コンテンツそのものをインターフェイスにするという発想を強調していた。コンテンツが自ずとわかるものになれば成功。確認として、リッチメディア・アプリケーションあるいはリッチメディア体験を現実のプロジェクトのように考えてみる。投資基準を引き上げ、顧客はサイトをどのように使うかメタファーを再考してみる。きちんと設計する時間をとったら、顧客がどこで迷子になっているかをよく見て、それに合わせてサイトを修正していく。新しいものを出すと、顧客がそれを学習するまでしばらく時間がかかるものだから。
David Towers氏(Avenue A/Razorfish)は、続いて、リッチアプリケーションについて話をした。Towers氏はリッチアプリケーションの定義として、買い物客に好きに買い物してもらうという従来の伝統や規範から外れて、買い物客を案内し、ユーザー体験を向上させる販売ツールだとした。たとえば、サイトでエスプレッソ・マシンを販売するのならば、サイトでマウスを使ってノブを回すと蒸気が出てくるなど、他のサイトには(さらには実店舗にも)ないやり方で製品を試せるようにする。Towers氏はまた、ユーザーの家庭にあるものに似せたキッチンをサイト上で再現できるアプリケーションを作る話もした。これだと、台所器具やガジェットを実際のキッチンに置いたらどのようになるかをチェックできる。
Towers氏は会場の参加者に、顧客がどのように買い物をするかをよく考えてイメージを膨らませ、追加販売がよりうまくいく方法で設計を行うよう強く訴えた。サイトの最適化を顧客体験に優先させてはならないのだという。Towers氏はまた、ブラウザを使わずユーザーを獲得するアプリケーションの構築も勧めた。これは非常にターゲット化の度合いが強い手段だ。ガジェットあるいはウィジェットで顧客のデスクトップに直行できれば、顧客はブラウザを開かずともこちらとつながるわけで、それだけで大きな勝利になる。アプリをデスクトップに置くほど気に入ってくれるのは顧客全体のたかが1%かもしれない。それでも1%は1%でゼロじゃない。
Brian Sugar氏(Sugar Publishing)が最後に登場して、自ら手がけたSugar Networkについて話をした。Sugar Networkは18~35歳の女性をターゲットにしたサイトの集まりで、各サイトはばらばらのトピックを扱っている。たとえば、PopSugarは有名人とゴシップが話題の中心で、FabSugarはファッションとショッピングを専門にしている。TeamSugarという、他のネットワークサイトすべてに機能を提供するソーシャルネットワークは、春に開設された。プロフィール、グループ、チャンネル、ブログ、投票、写真、動画、ブックマークなどの機能を提供するTeamSugarを使い、ユーザーは互いに交流し、商品や情報を共有する。
Sugar氏の会社はスタートして1年とちょっとしか経っていないけど、サイトのユニークビジター数は毎月500万人に達している。先週、同社は初めてキーワードを購入し、初めてメールを送信した。今の今まで、広告にはいっさいお金を使っていなかった。Sugar氏によれば、すばらしい製品やコンテンツさえ提供すれば、顧客はそれに反応するのだという。
会場でかなり浮いた感じだった(タイピングでメモをとっているのは私ひとりだった)のだけど、セッションは本当に楽しかった。プレゼンターはみんな博識で説得力があったし、小売業界におけるWeb 2.0についてすばらしい実例を示してくれた。
この日はセッションがすべて終了してから、Hitwiseがスポンサーのレセプションに出席するためナイトクラブのMix Loungeに行って、歓楽都市ラスベガスの見事な夜景と喧噪をたっぷり楽しんだわ。
さようならベガス。今度はPubConで!
ソーシャルもやってます!