入門ソーシャルメディアマーケティング(SMM):画像付きで入り口から解説【後編】
この記事は前編と後編に分かれている。前編では、ソーシャルメディアとマーケティングの関係について概論に触れた。後編となるこの記事では、より具体的に、その重要性をつまびらかにしていく。
セクションIII:なぜ今なのか? ソーシャルメディアが突然重要になった理由
なぜ今ソーシャルメディアマーケティング(SMM)なのか、それは、ソーシャルメディアの人気がいま急激に高まっているからだ。
この図は、2007年にユーザー生成コンテンツと参加型のサイトが前年比で大きく伸びたことを示すものだ。そして下半分をみると、マーケターにチャンスがあることがわかる。つまり今なら、大量のユーザーによって1人の声が聞き取れなくなってしまう前に、マーケターはソーシャルメディアに貢献して影響力を持てる。
ここ2年間に行われた調査から、目に付いた内容をいくつか引用する。
主要なインフルエンサーとして「ブランド擁護者」(Brand Advocates)がオンラインに登場している。ブランド擁護者は、2人に1人以上の割合で友人や家族を、自分が買ったのと同じ商品やブランドを買うように変えてしまう……
……ブランド擁護者は消費者との結びつきが強く影響範囲が広いことから、マーケターにとってとても価値がある……
……ソーシャルメディアが鍵だ。調査結果から、ブランド擁護者がソーシャルメディアツールをフルに活用していること、ツールを積極的に使って商品購入へとつなげていることがわかる。インスタントメッセージやチャット、コミュニティサイト、写真共有サイト、ブログなどを通じて、ブランド擁護者はオンラインの広大な交友範囲に影響を及ぼすことができる……
【出典:ブランド擁護者に関するYahoo!とcomScoreの共同調査(2006年12月)】
パッショニスタ(熱い情熱を持った人々)は、普通のユーザーと比べると、電子メールやテキストメッセージ、インスタントメッセージなどを利用した同好の消費者コミュニティで過ごすことがかなり多く、また、情熱の対象について写真、ブログ記事、ビデオなどのユーザー制作コンテンツを作成し共有する傾向が強い。パッショニスタは、情熱の対象ついてデジタルメディアを通じて情報をほかの人と共有することに熱心なため、自然とブランド擁護者になり、支持するブランドについてほかの人に勧めたり感化したりする確率は、普通のユーザーより52%高い。
「ブランドは、情熱を持った消費者のあいだで話題にのぼるようにすることで、信頼された口コミによる信用を通じたプラスを得られる」と、メディアベストのコネクション・リサーチ・アナリティクス部門のジム・カイト氏は述べている。「パッショニスタにオンラインで接触することで、ブランドは、そのような価値のあるグループのメディア消費の習慣を追跡でき、彼らの宣伝力を存分に、しかも説明可能な形で、活用できる」
【出典:パッショニスタに関するYahoo!の調査報告(2007年9月)】
まだ納得できない人は、これを見てほしい。
ブログを 読んでいる | ブログを 読んでいない | インフルエンサーが ブログを読んでいる 割合 | |
---|---|---|---|
日本 | 74% | 26% | 91% |
韓国 | 43% | 57% | 63% |
中国 | 39% | 53% | 53% |
米国 | 27% | 69% | 34% |
英国 | 23% | 75% | 35% |
フランス | 22% | 68% | 37% |
イタリア | 16% | 73% | 30% |
ポーランド | 16% | 85% | 45% |
ドイツ | 15% | 84% | 27% |
ベルギー | 14% | 79% | 41% |
いろんなインフルエンサーがウェブ全般(特にブログ)に深く関与しているということは、インターネットを利用する大半の人からすると不思議なことではない。でも、米国のインフルエンサーが、実はブログ参加では中国、韓国、日本といった国々に後れを取っていること、これは驚きだろう。
セクションIV:どうやればSMMが検索エンジンマーケティングに役立つのか?
遠い昔、検索エンジンがそれほど賢くなかったころのこと覚えてるだろうか? そう、1997年ごろだ。AltavistaやLycosやNorthernLightは、meta keywordsなどのタグを調べて、「ダンシングベイビー 画像」なんてフレーズをひどく繰り返している奴は排除しようとしていた。
ご存知のように、こうした原始的な検索エンジンは長続きしなかった。リンクを元にしたアルゴリズムが進化して普及し、検索エンジンは賢さを増したのだ。
でも、いたちごっこは終わらなかった。リンクが重視されていることを検索マーケターが学習すると、今度は検索エンジンの掲載順位を不正に操ろうと、「内容とは関係なく張られるリンク」がインターネット中にはびこるようになった。こうしたリンクには、クリックしてもらう意図はまったくなかったし、「他サイトのコンテンツの質や関連性を宣伝しよう」という動機もなかった。
「リンクを支持票とみなす」アルゴリズムは、リンクが心からの支持票でなければ有効にはならない。しかし、ページランク(PageRank)というパンドラの箱はウェブに浸透していったので、検索エンジンはどのリンクを有効票として認めるか、より入念に注意深く解析することが必要になった。このため、信用度を計算したり、ページをセグメント化したり、不自然なリンク活動の増加を監視したりして、検索結果の不正操作が発覚した脇の甘い者たちを一律に締め上げたりする、高性能のアルゴリズムが開発された。ブラックハット的行為からの脱却だ。
リンクファーム、相互リンク、有料リンクのネットワークに掲示板にゲストブック、そしてブログスパムといった策略はどれも役に立たなくなり、検索結果で上位に入りたいウェブサイトは、抗生物質に頼らないマーケティングという根本に立ち戻ることが必要になった。こうして、マーケターと信頼されている情報源との間の、古くからある対立に再び火がついた。企業が自社の製品やサービスを、記事に書いて広めてくれる人に見てもらうにはどうすればいいのか。
この対立からは、根本的な疑問が次々と浮上するが、答えももたらされる。
#1 - ウェブでリンクを生み出すのは誰?
それは、次のような人たちだ。
僕はこうした人たちをリンケラティと呼ぶのが気に入っている。リンケラティといっても本質的には、ジャーナリスト、販売外交員、いつもすごい新製品や会社の話をしてくる近所の人たちといった、オフラインの世界にいるインフルエンサーの延長線上にある。ただ、リンケラティには力がある。リンケラティは、内容に基づいて張られたリンク構造をウェブに持っている。そこで、次の疑問が生じる。
#2 - マーケターはどうすればリンケラティに到達できるか?
そこで、ソーシャルメディアマーケティングだ! リンケラティが頻繁に読んでいて影響を受けているサイトやブログを通すことで、コンテンツを基本とした戦略によって適切な人たちに訴求するマーケティングキャンペーンを展開できる。しかし、そうした人たちの目に触れるだけで十分なのだろうか? ブランドが目に入るようになったらあとは受け身になればいいのだろうか? それとも、もっと何かする必要があるのだろうか? そこで次の疑問だ。
#3 - インフルエンサーはどうやってコンテンツを広めているのか?
そう、リンケラティに自分たちのアイデアを広めてほしければ、これを知る必要が出てくる。そしてラッキーなことに、僕の手元にそれを箇条書きにしたリストがある。
- 友達や同僚にメールを送る
- ソーシャルネットワーキングサイト(Facebook、MySpace、LinkedInなど)で広める
- ソーシャルニュースポータル(Digg、Reddit、Newsvine、Mixx、Propellerなど)で投票する
- ブログの投稿やコメント欄からリンクする
- 掲示板やグループで議論する
- 同僚や知人に口頭で直接広める
- 自分のウェブサイトからリンクを張る
- マルチメディア(動画、ポッドキャストなど)で配信する
- 主要メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)
ここに挙げたすべてが追跡可能なわけではないけど、多くは追跡できる。だから、オンラインでやってみて成功と失敗とを比較すると、リンケラティには何が有効なのか、感じがつかめるだろう。
#4 - どんなコンテンツが広がりやすいか?
何か月、何年という経験の末、この最後の疑問が浮上する。そしてたいていの場合、それはあなたがいるその業界や分野によって違う。でもご心配なく、そんな中途半端な答では終わることはしない。ジェーンが新しく作ったリンクベイト・ガイドをリリースしている。プレミアムコンテンツではあるけど、成功したコンテンツと失敗したコンテンツの理由を、詳細にわたって見事に説明してある。その前にとりあえずという人は、次の表が参考になるかと思う。
- 魅力的なデザイン
- 広告なしのコンテンツ
- 商売目的ではないコンテンツ
- 独創的なグラフィック
- 簡潔明瞭な文章
- 高いアクセシビリティ
- 信頼できるソース
- わかりやすいナビゲーション
- 広告がうるさい
- よろしくないサイトアーキテクチャ
- 登録の強制
- できの悪いサイト検索
- 動的生成の長ったらしいURL
- 未熟なデザイン
- 読み辛いテキスト
- 複数ページに分断されたコンテンツ
というわけで、ソーシャルメディアのイロハに関するプレゼンをブログにしてみたけど、楽しんでもらえたかな。PowerPoint形式で全体をダウンロードできるから、そっちがいいという人はどうぞ。
追伸:結局、ラスベガスのPubConではこのプレゼンを行わなかった。聴衆に、基本を扱ったこのプレゼンか、それとも、より上級のソーシャルメディアサイト攻略法がよいか、決を採ったところ、90%以上が後者を選んだんだ。そちらの内容はブログに書いたり口外したりしないようにお願いしたのだけど、とても頭が切れる聴衆から要望があったので(笑)、プレミアムコンテンツとしてだけどダウンロードできるようにするよ。
ソーシャルもやってます!