ネット広告のインプレッション数は“掲載”から“閲覧可能状態”に移るのか? ビューアブルインプレッション標準策定状況
今日は、ネット広告の「ビューアブルインプレッション(Viewable Impression)」に関する話題を。広告(特にディスプレイ広告)では「何回掲載され(インプレッション数)」、「何回クリックされたか」という指標を用いることが多いのですが、この「インプレッション数」に関して、単に「掲載された」ではなく「ユーザーがその広告を目にする機会があった(閲覧可能状態)」ことを示すのが、「ビューアブルインプレッション」。
ネット広告は、サイトやページによって掲載状態が違ったり、アドネットワークなどを通じてさまざまな媒体に掲載されたりすることで、同じ「インプレッション」でも大きな違いがあります。
ファーストビューにわかりやすく表示されるインプレッションもあれば、記事ページの下までスクロールしなければ見えないインプレッションもありますし、横幅の狭いブラウザを使っているユーザーは広告の存在にすら気づかないようなインプレッションもあります。
ページを訪れたユーザーが興味をもって広告に意識を向けるインプレッションもありますし、システム上は表示したことになっているけれども実際にはユーザーはそのページから直帰していてほとんど目にしていないインプレッションもあります。
現在の広告「インプレッション」は、広告配信システムから広告データが送出されてページ上に「掲載」されたことしか意味していないのです(システムによっては配信したことしかチェックしておらず、掲載されたかどうかすら判定していません)。
そのため、米国の広告業界では、より意義のある指標として、もっと言うと広告費支払いの基準となる「通貨」として、「サイト訪問者がその広告を目にする機会が何回あったか」を示す「ビューアブルインプレッション(Viewable Impression)」という指標を定めようとしていました(同様の動きとして、アドベリフィケーションの動きも進んでいますね)。
その中間報告的なものとして、MRC(Media Rating Council)がビューアブルインプレッションに関するアドバイザリを11月14日に発表しました。
結論から言うと、残念ながら次のようになっています。
ビューアブルインプレッションを指標として用いるのは時期尚早。
解決すべき技術的な問題や、ベンダー間の実装状況の違いがある。
MRCは「広告取引の通貨として使える」ビューアブルインプレッションへの移行を進めるために、IABなど業界の主要なプレイヤーと協力してビューアブルインプレッションの定義策定や実証実験を進めていました。
現在のビューアブルインプレッションの定義は次のとおり。
- 広告のピクセル数(面積)の50%が
- 1秒間以上にわたって
- 閲覧可能状態にあった(ブラウザなどに表示されていた)
この定義に基づいて2012年5月に22のキャンペーン(30億インプレッション)を対象にビューアブルインプレッションの実証実験を行った結果から導かれたのが上記の結論でした。
時期尚早と判断された根拠は次のとおり。
ビューアブルインプレッションを測定する能力がベンダー(ツール・サービス)によって違いすぎる(掲載インプレッション数に対して0%~77%と幅が出た)。
クロスドメインiFrameを利用した広告ではビューアブル判定ができない(業界標準としてのセキュリティ仕様によって、表示ページと異なるドメイン名で提供される広告用iFrame内からは、ページ状態を判定できないため)。
その他にも「非ビューアブル判定」された要因があるため、広告取引の通貨として最終決定するには理解不足。
- など
また、IABが2011年に策定した新しい標準広告ユニットでは、特にビューアブルインプレッションに関して考慮が必要だとのこと。
個人的には、この資料を読み始める前は「おおっ、ついにビューアブルインプレッションへ移行か、Web担もビューアブルインプレッションに移行する準備を始めなきゃ
」と思っていたのですが、「時期尚早」とのことで、ちょっと拍子抜けでした。
とはいえ、方向性は間違いなく「掲載インプレッション数」から「ビューアブルインプレッション数」に進んでいます。特にブランド広告主にとっては、この方向性は切望するものでしょう。
今回は業界全体がビューアブルインプレッションへの移行というわけにはいきませんでしたが、広告主・代理店・メディアはいずれも、世の中がビューアブルインプレッションの方向へ進んでいることは理解したうえで、状況をチェックしておくべきだと思います。
続報が来たら、Web担でも報告するようにしますね。
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