大手新興企業はどこで、どのようにリンクを獲得しているのか
ベンチャー企業は、どこからどんなリンクを獲得しているのか。リンクの状況は、資金調達のフェーズによってどう異なるのか。彼らが得ているのは自然なリンクか、不自然なリンクか、そして、リンクビルディングはどのような形が良いのか。データから探る。
被リンクという視点から新興企業について話すのは、新興企業の創設者として変な気分だ。なんといっても、心配すべきことは他にたくさんあるのだから。キャッシュフローはどうなっているか。従業員はきちんと給料を受け取っているか。ディールフロー(潜在案件の流れ)はどうなっているか。当月あるいは当四半期の目標は達成できるか。ウェブサイトやアプリがこんなに遅いのはなぜか。あのベンダーは、滞納していた多額の支払いをもう終えただろうか……。
でも、僕が、リンクの獲得やコンテンツの作成など確固としたSEOの実施を背景に資金調達を成功させる企業を見てもきたし、支援もしてきたと言ったら、どう思うだろうか。PRやアウトリーチ、コンテンツ戦略にSEOを組み込むことで数々のすばらしい成果を挙げている新興企業の実例もある。
新興企業はマーケティングを考慮すべし
新興企業は、マーケティングも考慮しなければならない。僕が住んでいるサンフランシスコのベイエリアでは、「グロースハッキング」(growth hacking:成長させる仕組みを製品やサービスに取り込むこと)が大きな注目を集めていて、一部の著名な投資家は新興企業に対しマーケティングに注力しないよう助言しているが、僕はそれにはあまり同意できない(僕はマーケターなのだから当然だ!)。
新興企業がPRや有料広告による顧客獲得に取り組むべきかどうかは、この記事では多くは語らない(僕なら両方を少しずつやるべきだと主張したいが)。しかし、SEOというものは、PRやコンテンツ、Eメール、有料広告といった多くの「マーケティング」活動全体にわたる場合もあれば、これらの活動と常に議論を重ねながら展開する場合もあるという点で、すばらしい施策だ。会社を成長させて、新製品のフィードバックをもっと早く得たいと思うだろうか? それなら、SEOを検討するべきだ。
包括的なマーケティングプロセス
しかし、周知のように、さまざまなマーケティングチャネルはどれもSEOに関係してくる。コンテンツをネットに公開して、検索結果でどのキーワードでどのくらいの順位をとれるか予測するような時代は終わった。
SEOのためのリンクを構築したり、逆にサイトに呼び込む参照トラフィックを促進して、常に大事な登録や購入を増やそうとするうえで、PR活動はきわめて効果的な取り組みになり得る。
新興企業にとって、訴求力を示すことはMattermarkやTracxn、PitchBookなど、ベンチャーキャピタル(VC)の投資案件に関する情報サイトで言及してもらう機会を増やす助けになる。
これらのサイトで言及してもらえれば、さらに広く伝わる機会が増え、リンクを構築して参照トラフィックを促進できる。
まさに好循環だ!
僕は、新興企業がどのように訴求力を身につけて企業を形成していくのかに大変興味があるので、PitchBookの評価基準(データ提供はロブ・トレド氏)で新興企業のトップ100に挙げられている企業が、どこからリンクを獲得しているのか知りたかった。
この記事の狙いは、次の2つだ。
- 最近の新興企業がどのようにリンクを構築しているかを知ってもらうこと
- 新興企業がリンクを獲得するべき場所を示すこと
もちろん、競合相手がやっていることをただ真似するだけではいけないことも、きちんと指摘しておきたい。実際にターゲットオーディエンスの目を捉える言葉を考えてほしい。僕たちはだれもがTechCrunchに掲載してもらいたがっているが、真の顧客がVCや他の新興企業でない限り、ここからは大きな効果が得られる可能性は低いだろう(ただし、これらの訪問者をすべてリターゲティングし、メールアドレスを獲得することでマーケティングファネルに組み込めるようにすることは必要だ)。
では、すべてがクリアになったところで、さっそく始めよう!
新興企業の抽出方法
ここでリンク元ドメインを取得した新興企業をすべて列挙しても仕方がない。というのは、リストが無駄に長くなるだけで、この記事の論点からは外れるからだ。僕たちが新興企業の選択に用いた基準はいたってシンプルだ。誰もが知っている大手新興企業(Uberなど)ではなく、ある程度の訴求力を持ち、資金調達ラウンドを完了することができた新興企業を選びたかった。基準は次の通りだ。
- エンジェル投資家によるシリーズBの資金調達ラウンドを完了した企業を、
- 評価額の順に並べ替えて、
- 2014年1月1日から現在までの期間に資金調達した上位100社を抽出する。
このようにして、今も健在で企業形成の過程にあると思われる現存の企業を揃えた。たとえば、Porch、Tilt、ZipRecruiter、Tune、Mapboxなどだ。
もう分かった。さっさとリンク元を検討しよう!
まあ、待ってくれ! 以下の表は、新興企業のトップ100の被リンクレポートで、表示回数が多いドメインの上位55件だ(もちろん、Open Site Explorerから取得)。
ドメイン名 | 表示回数 |
---|---|
techcrunch.com/ | 56 |
blogspot.com/ | 42 |
xconomy.com/ | 41 |
prnewswire.com/ | 40 |
vator.tv/ | 40 |
businessinsider.com/ | 38 |
constantcontact.com/ | 33 |
pinterest.com/ | 33 |
thenextweb.com/ | 32 |
medium.com/ | 31 |
huffingtonpost.com/ | 29 |
mashable.com/ | 29 |
wordpress.com/ | 29 |
youtube.com/ | 29 |
entrepreneur.com/ | 28 |
tumblr.com/ | 28 |
businessinsider.com.au/ | 27 |
meetup.com/ | 26 |
pivotl.com | 26 |
weebly.com/ | 26 |
fortune.com/ | 25 |
inc.com/ | 25 |
github.io/ | 24 |
yahoo.com/ | 24 |
examiner.com/ | 23 |
flavors.me/ | 23 |
prlog.ru/ | 23 |
reddit.com/ | 23 |
wsj.com/ | 23 |
zdnet.com/ | 23 |
buzzfeed.com/ | 22 |
eventbrite.com/ | 22 |
internetdealbook.com/ | 22 |
prweb.net/ | 22 |
wired.com/ | 22 |
fastcompany.com/ | 21 |
tinyletter.com/ | 21 |
virtual-strategy.com/ | 21 |
allmyfaves.com/ | 20 |
itjuzi.com/ | 20 |
marketwired.com/ | 20 |
stackshare.io/ | 20 |
businessinsider.co.id/ | 19 |
whogotfunded.com/ | 19 |
wmtips.com/ | 19 |
hubspot.com/ | 18 |
recode.net/ | 18 |
socialmediatoday.com/ | 18 |
stackoverflow.com/ | 18 |
techcrunch.cn/ | 18 |
time.com/ | 18 |
tracxn.com/ | 18 |
trendhunter.com/ | 18 |
brit.co/ | 17 |
cnbc.com/ | 17 |
これらの多くは聞いたことのあるサイトだろう。テクノロジ業界に身を置く僕たちの多くが(好むと好まざるとにかかわらず)読んでいるサイトがほとんどだからだ。
僕は次に、これらのリンクの種類に興味を持った。そこで、全体に目を通し、種類に基づいて分類した。思い出してほしいのだが、ここにあるのは別個の55のドメイン名であり、必ずしもリンクのすべてを代表する分類とは言い切れない。とはいえ、自社へのリンク網を築こうとしているのなら、どういうリンクが効果的なチャネルなのか、この作業によってイメージできるようになるはずだ。
群を抜いて多いのはPRからのリンクで、次にウェブ各所のプロフィールページに新興企業自身が設置するリンク(CrunchBaseを考えてみよう)、それから次には記事の中に記述されるリンクが続いている。興味深いことに、デフォルトで一般にメールを送信する(MailChimpなどの)メールプロバイダーがクロールされて、リンクがカウントされていることもわかる。
被リンクのプロフィールはどれほど「普通」か?
次に僕が自問したのは、こういった被リンクのプロフィールがどれほど自然に見えるかということだ。これを探るため、僕はこれらのサイトへのリンクとしてOpen Site Explorerから取得した、すべてのドメイン名のドメインオーソリティをグラフにした。なお、可能な限り正確にするため、グラフにする前にドメイン名の重複を排除した。
何年もSEOの世界にいる僕たちの多くにとって、このグラフはよく見慣れたもののはずだ。
以前は、自然なリンクのプロフィールをよく話題にして、ドメインオーソリティの高いサイトに対して積極的なリンクビルディングを行っていないサイトがいかに多いかを指摘していたし、そういった企業のリンクプロフィールは左側に偏った釣鐘曲線を描くことが多かった。それがまさに上のグラフだ。
基本的に、こういうグラフになるだろうと予想できる理由は、ドメインオーソリティが指数関数的なものだからだ。0から20に行くのは非常に簡単だが、以後はだんだんと目立った変化を起こすのが難しくなる。これはページランクの動きとよく似ている。そのため、ネット上の多くのサイトはドメインオーソリティが30~35未満で、それより高いサイトは少ない。
ただ、正直に言うと、僕が多くのサイトのリンクグラフを見ていたのはかなり前になる。そこで、上のグラフを、ある程度のリンクを獲得している他のいくつかのサイトと比較してみよう。ただし、ここでの目的は単に指向的なパターンを探ることであって、処方箋を探しているわけではないことを忘れないでほしい。
おわかりのように、新興企業トップ100のリンクの分布は全体として、「普通」と見なせる状況によく合致している。個々のサイトのレベルでは例外が見つかるだろうが、全体として見れば、ごく自然だ。
この点が重要なのは、つまりこれらの新興企業の少なくとも大多数は、将来困ることになるかもしれないような方法で故意にリンクグラフを操作したりしていないことを意味するからだ。要するに、Thumbtackの二の舞いを演じてはならないということだ。
リンクは企業の段階によって異なるか?
最後の疑問点は、新興企業各社のサイトのドメインオーソリティや、リンクしているルートドメイン名の数は、企業の段階(シード、シリーズA、シリーズB)によってどのように異なるかということだ。
僕の直感では、企業の段階が進むにつれて獲得するリンクの数が増え、一段と強力なサイトになると思う。しかし、これをデータで証明できるだろうか。
このデータを得るため、僕はMozscape APIを利用し、多くの場所からGoogleドキュメントで評価基準を集約した。最終的に有効な基準は、Distilled Londonのティム・アレン氏に送ってもらった。ティム、ありがとう。
次に、Mattermarkの企業プロフィールページから、シリーズ段階(エンジェル、シリーズA、シリーズB)の情報を取り出した。その際、Open Site Explorerでリンクの評価測定値が得られなかった2社は削除しなければならなかった。1社はシリーズAの企業で、もう1社は資金調達状況が不明の企業だ。
以下は、資金調達シリーズ別の平均リンク数だ(リンクしているルートドメイン名の数ではない)。
ただし、このグラフにはちょっと問題がある。というのも、シリーズAの企業1社(Crowdrise)とシリーズBの企業1社(Porch)には、このデータセットの他のサイトよりずっと多くのリンクを獲得しているからだ。Mozによると、Porchの外部リンクは14万2000件、Crowdriseの外部リンクは4万件だという。この2社の次にリンクが多いのはCanvaの1万8500件で、PorchおよびCrowdriseを除いた残りすべての平均は1695件となっている。
PorchとCrowdriseを例外値としてデータセットから削除すると、全体像がはるかに明確に見えるようになる。例外値を除いても、シリーズAの企業は平均でシリーズBやCの企業より多くのリンクを獲得しており、これはテクノロジ系のブログが増加していることや、2013~2015年に起こった資金調達ブーム(現在は沈静化しているように見える)で説明できるかもしれない。以下がそのグラフだ。
まとめ
では、これらすべてから何がわかるだろうか?
第1に、リンクというものは、実際の成功のあとから現れる評価指標だが、ある程度までは人気を測る指標であるということだ。そしてもちろん、リンクの質やオーソリティが高いほど、検索順位は高くなる。
第2に、最初のグラフを思い出してほしい。新興企業のトップ企業がリンクの構築に利用している手段は次の通りだ。
- PR
- 設置リンク(プロフィールなど)
- 記事
- ブログ
新興企業向けリンクビルディング策としてのソーシャルブックマークは終焉を迎えたようだ。僕はこのことに勇気づけられている。なぜなら、新興企業は、トラフィックももたらしてくれる場所からのリンクに(するべくして)注力しているように見えるからだ。
リンクの構築方法に関することでアイデアを求めている人や、さらなる方策を探している人は、Moz Blogの「リンクビルディング」カテゴリーをぜひチェックしてみてほしい。
この記事で、君にはどういった収穫があっただろうか。また、何か疑問はあるだろうか。
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