GAにおける集客分析の基本の型を身につける! 量・質・成果を一気通貫で見る方法とは?[第35回]
今回は、Googleアナリティクスの「集客」セクションを見るうえで筆者が推奨する「量」「質」「成果」を一気通貫で見る方法を紹介しよう。レポートの見方の基本となる型なので、ぜひ身につけていただきたい。
そして「集客」セクションのレポート群を一般的にどのように見ていったらよいのか、ということも解説する。分析をしていく手順は、「大ざっぱな把握から詳細へドリルダウンする」のが基本だ。
- 「集客」セクションにあるレポートの見方がわかる
- 「量」「質」「成果」を一気に見る方法がわかる
「大ざっぱな把握」→「詳細」へのドリルダウンが基本
Googleアナリティクスを使う目的は、Googleアナリティクスをいじることが楽しいからではもちろんない。Webサイトを利用してくれるユーザーに良い体験をしてもらい、最終的に自社のビジネスの売上や利益といった貢献に結びつく施策のヒントを得たり、問題解決の糸口を発見したりすることが目的だ。
簡単に言えば、良い点が見つかればそこを伸ばし、悪い点があれば改善してその割合を減らせばよい。つまり最初はさまざまな分析軸で、良いところと悪いところを発見することから始めればよいのだ。そしてその方法は、大ざっぱに見ることから始めて徐々に深く見ていくのが基本だ。
「集客」セクションのレポート群の見方も同じだ。まず[集客]>[すべてのトラフィック]>[チャネル]レポートを見ることから始めよう(図1赤枠部分)。「チャネル」レポートは本連載の第27回でも解説したとおり、集客系で一番大きな分類の「Default Channel Grouping」(図1青枠部分)別に見ることができるレポートだ。なお「Default Channel Grouping」の各値(図1緑枠部分)の意味がわからない場合は第27回を参照してほしい。
まずこの一番大きな分類レベルで、集客の原因となっているのは主にどのチャネルなのかを見よう。図1の例では、次のようなことがわかる(図1黒枠部分)。
- 全体で月間約3,000セッションの訪問がある
- そのうち6割(全体の58.65%)が自然検索(検索エンジンの検索結果画面)からの訪問
- ソーシャルメディアからの集客は3%(全体の2.75%)とごくわずか
「月間に約3,000セッションの訪問」という全体のボリュームについては、どのようなビジネスをしているのかによって評価は変わってくるだろう。先ほど書いた「良い点が見つかればそこを伸ばし、悪い点があればその割合を減らしたり改善したりする」に照らし合わせて考えれば、たとえば次のようなことが考察できる。
- 検索エンジン対策はそこそこできている
- ソーシャルメディアからの集客はまだできていない
全体をつかんでからそれぞれの項目を見る
自然検索の割合が多いということは、「検索エンジン対策がそこそこできている」と考えられる。その成功している原因を突き止めることで、この良い点をさらに量的・質的に改善することができるかもしれない。ただし、特定のキーワードでの集客に大きく依存しているようであれば、検索エンジンの検索結果画面での掲載順位の変動がリスク要因にもなりえる。そのあたりの実態把握もしっかりしたうえでの判断が必要になりそうだ。
ソーシャルメディアからの集客ができていないので、「もう少しソーシャルメディアでの活動を活発化する余地があるのではないか」あるいは「PR活動やプレスリリースなどを活発に行う必要があるのではないか」と考えられる。割合としては低いが、少ないなりにソーシャルメディアからサイトへ訪問しているケースは、いったいどのようなルートで訪問し、ソーシャルでは何が話題になっているのだろうかという視点もあるだろう。
このように、まずは大ざっぱに状況をとらえたうえで、それぞれを課題化し、次にどう深掘りしていくのかを考えながら分析してこう。実際にどのように深掘りしていくのかについては、次回以降にそれぞれ解説していきたい。
「量」と「質」と「成果」を一気通貫で見よう
もう1つ、別の視点について話しておきたい。それは「量」「質」「成果」という3つの分類でレポートを見る方法だ。これは基本となる型で、今後分析の話をするなかでおそらく毎回のようにくり返すことになる。ここでは[チャネル]レポート(図2)をもとにして説明しよう。
図2は[チャネル]レポートのデータ一覧表示部だ。まず一覧表示部に表示されているデータをおさらいしておこう。
一番左の列がディメンション(分析軸。詳細は第10回で解説)だ。[チャネル]レポートだと集客チャネルの「Default Channel Grouping」がディメンションになっており、集客チャネル別のデータであることを表している(図2赤枠部分)。その右側にある9列はすべて指標で、計数評価軸になる(図2青枠部分)。
そして指標名の下にある1行がサイト全体の各指標の値が(図2緑枠部分)、さらにその下に集客チャネル別の各指標の値が表示される(図2黒枠部分)という構造になっている。
この9個ある指標群を「量」「質」「成果」で3分類してざっくり見るのだ。Googleアナリティクスにおける分類は「集客」「行動」「コンバージョン」の3分類(図3赤枠部分)なのだが、筆者は若干違う分類にして見ることを推奨している。詳しく説明していこう。
「量」はセッションのボリュームを見る
[チャネル]レポートにおける「量」の部分はセッション(図3青枠部分)、つまり「何訪問あったか」というボリュームの視点が1つ目だ。これはGoogleアナリティクスのレポートが標準でセッションの大きい順に並んでいることからもわかるとおり、量が多いことが重要度の高さになる。同じ率で改善することができるのであれば、量の多い順に実行すべきであるという単純な理由で「量が多いことが偉い」のだ。
「成果」はコンバージョンの指標を見る
順番が前後するが、1つ飛ばして2つ目は「成果」を見ていこう。「成果」に該当するのは、「コンバージョン率」「目標の完了数」「目標値」の3つ(図4赤枠部分)で、Googleアナリティクスにおける分類の「コンバージョン」と同じだ。
当たり前のことだが、量がいくら多くても成果がゼロであれば掛け合わせてもゼロでしかない。量だけでなく成果も含めて成果の絶対額と効率を見ることが重要になるので、「目標値(コンバージョン金額合計)」「目標の完了数(コンバージョン数)」「コンバージョン率」の順に重要度が高くなる。
なお、eコマースサイトで購入(トランザクション)データを収集している場合は、トランザクション系の指標に表示を切り替えることが可能だ。一覧表示部の右上にあるプルダウンから「eコマース」を選択(図5赤枠部分)すれば、3つの指標の表示は「eコマースのコンバージョン率」「トランザクション数」「収益」となる(図5青枠部分)。それぞれは購入率、購入回数、売上金額を意味する。
「質」はユーザーの特徴と閲覧行動の質を見る
そして最後が「質」だ。これはさらに「ユーザーの特徴」と「閲覧行動の質」の2つに分けられる。ここでは覚えやすいように両者を合わせて「質」とすることで、合計3分類にしている。
「質」を表すのが、図6の赤枠部分だ。「ユーザーの特徴」は「新規セッション率」と「新規ユーザー」の2つの指標が該当する(図6青枠部分)。新規の量と割合の2つの指標だ。つまり「新規が多いのか少ないのか」というサイト訪問者の特徴を示している。
残りの「直帰率」「ページ/セッション」「平均セッション時間」はどれも訪問者の「閲覧行動の質」を表している(図6緑枠部分)。次のような場合を「質が高い」と評価するのが一般的だ。
- 直帰率が低い
- ページ/セッション(1訪問あたりのページビュー数)が多い
- 平均セッション時間が長い
またこの3つの指標はその特性上、ほぼ相関して変化すると考えてよい。直帰率が低ければ、サイト内で2ページ以上閲覧することになるので、「ページ/セッション」は多くなり、ページ閲覧数が多ければ大体滞在時間は長くなるのが自然だからだ。
「3つの分類がそれぞれどうか」という視点で見る
分類について話が長くなったが、「どのように分類するのか」が重要なのではない。「分類したうえで、どうデータを見るのか」という話が重要だ。
冒頭の[チャネル]レポートの例に戻って考えてみよう。自然検索とソーシャルメディアからの集客について、「量」「質」「成果」の3つの視点でそれぞれ〇△×の評価をしてみるとどうなるだろうか?
- Organic Search(自然検索)の場合(図7赤枠部分)
量は〇、質は新規ユーザーを多く連れてくるという点で〇だが閲覧行動の質は△、成果は△ - Social(ソーシャルメディア)の場合(図7青枠部分)
量は×、質は△、成果は率の観点だけで見れば○
各集客チャネルの評価は、「量」「質」「成果」それぞれに○△×を付けると、すべてで27通り(3×3×3)ある。この見方をすれば、その27通りの「どこに重点的に投資すべきか」というポートフォリオ戦略を立てるのはそれほど難しくはない。実際はこんなに単純ではないかもしれないが、「まずどこに重点投資すべきか」「次はどこを狙うべきか」「放っておいていいのはどこか」という判断は比較的容易だろう。
たとえば上記の「Organic Search」と「Social」場合、圧倒的に量の多い「Organic Search」のコンバージョン率を1ポイント上げることでアップする目標値は26,645円と計算できる(コンバージョン率1%分の目標値=325,600÷12.22で計算)。
もしこれと同額の目標値を「Social」の量の増加で実現しようとすれば、集客量を67%増加しなければならない((39,800+26,645)÷39,800=1.67で計算)。それぞれを実現するための施策といくらかかるかの費用を勘案し、量の多さのメリットに軍配が上がれば、前者を優先すべきと判断することになる。
このように分類することで「どこの分析に時間をかけるべきか」という分析投資でも同じ考え方を適用できる。「次にどのデータを詳細へドリルダウンするのか」という判断もしやすくなるので、「量」「質」「成果」という分類の仕方はぜひ身につけてほしい。
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http://xfusion.jp/train.html
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