「その他の地域」などというものはない、グローバルジェネラリストがグローバル企業を作る
書籍『グローバルWebサイト&アプリのススメ』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開!
この記事は、第1章「翻訳経済の新しいルール」から、1-5「「その他の地域」などというものはない」と1-6「グローバルジェネラリストがグローバル企業を作る」の内容をお届けします。
「その他の地域」などというものはない
ほとんどのグローバル企業は、一般に世界を「中核市場」「新興市場」「その他の地域(ROW:Rest Of World)の市場」の3つのカテゴリに分類しています。
中核市場は、企業が収入の大部分を得ている、最も確立された市場です。新興市場は、企業が長期に渡って投資をしている、中国やインドなどの成長が見込まれる国々です。
その他の地域には、企業が時間やエネルギー、資金がないためにターゲットにしていない国や地域が含まれます。少なくとも今はまだ、ということです。たとえばある企業は、4つか5つの中核市場と12の新興市場を持ち、残りの150以上の国をその他の地域に分類しています。
実際には、その他の地域などというものはありません。すべての国が重要です。人口がたった300万人の国でも高い収益につながる可能性があります。そして、その他の地域に含まれるすべての国々の人口を集計すると、10億人以上に上ります。グローバル戦略を多様化し、新興市場と中核市場の両方を含める企業は、長期にわたって成功を収めることができます。
「その他の地域」の国々は、企業が国内以外のすべての市場に投資するようになったら消滅する、暫定的なグループと考えるのが一番でしょう。かなり長い道のりになる可能性がありますが、この目標を常に意識することが重要です。私がいっしょに仕事をしている多くの経営者は、ある時点ではローカライズしたWebサイトは12ほどで十分だろうと考えていましたが、数年後、この数字は50以上に増えていました。
すべての国と文化を同じ条件で見ることにより、すべてのお客様に対するより優れた尊重とサポートを将来にわたり維持することができます。
グローバルジェネラリストがグローバル企業を作る
Think globally; act locally.(グローバルに考え、ローカルに活動を)。
覚えやすいスローガンです。しかし実際には、これとは反対が真実だと私は思います。ローカルに活動し、多大な努力をともなって、グローバルに考えます。
グローバルに考えること(少なくともこの言葉の文字通りにそうすること)は、簡単ではありません。世界中の数千もの言語、文化やサブカルチャーを完全に理解できる人がいるでしょうか。新しい製品やWebサイトを作るとき、ケニア、サウジアラビア、アルゼンチン、パキスタンなどの人々がそれをどう使用するか簡単にイメージできますか?
新しい製品、新しいWebサイト、新しいテキストページを開発するとき、私たちが一般に思い描くユーザーは、自分と同じような人たち.つまり同じ言語を話し、同じような文化を持ち、おそらくは同じ国に住んでいる人たちです。これは自然なことです。自分が理解しないユーザーに向けて何かを書いたり作ったりすることは、不可能ではないとしても難しいのです。
それに、すべての人を理解することはできませんよね?
グローバルマーケティングを担当する幹部の苦しみを考えてみてください。この人は世界に向けてのマーケティングの任務を負っています。世界と、そこにあるチャンスと落とし穴について理解することを期待されているのです。
どうしたら、この幹部は正気を失わずにこれほど多くの国や文化に対応できるでしょうか?それには、グローバルジェネラリストになることです。
医療でいえば、一般開業医は体全般を知っているだけでなく、専門医を呼ぶタイミングも知っています。グローバルに成功するには、すべての企業に少なくとも1人、できれば多数のグローバルジェネラリストが必要です。
なぜグローバルジェネラリストになるべきか
文字通りにグローバルに考えることはできませんが、グローバルジェネラリスト、すなわち多数の国や文化、言語について少しずつ知っている人になることはできます。広範な知識の蓄積に集中することで、グローバル化の前に新製品やマーケティング戦略について正しい問いを立てることができるよう、より良い準備ができます。
自分自身を、グローバル化という課題に順応する多様なスキルを磨いた、グローバルなアーミーナイフと考えましょう。たとえば、アジア諸国における特定の色や数の意味を理解していれば、製品名に4という数字を含めるのは良くないことがわかるでしょう(日本や中国では読み方が「死」を連想させるため)。
また、こうした細かい情報を知っていれば、他の市場について同じような質問をすることができるでしょう。とはいえ、仕事を辞めて半年間、世界中をバックパックで旅する必要はありません。もちろん休暇を取るのは良いことですが。
最高のグローバル幹部は、「知りません」と言うのを恐れない人です。恐れることなく質問し、文化や言語の専門家の指導に頼ることのできる人です。製品やビジネスのグローバル化は、本質的に、チームで取り組むものです。
そして、組織をグローバルな成功へと導くのに最適なポジションにいるのがグローバルジェネラリストです。
さあ、グローバルに考えることを始めましょう。
グローバルジェネラリストなWeb担当者を目指して
- 独身の日 !? ブラックフライデーって !?
- 世界が100人なら58人はアジアの人 !?
- 3Gの低速モバイル通信が世界の主流 !?
- 右→左と左→右が混じるアラビア語のWeb !?
すべてに精通したスペシャリストである必要はありません。
あなたのコンテンツやビジネスにグローバルな成功をもたらす事例・考え方・ヒント満載の手引き書が登場。
Webサイト・サービスやアプリケーションなどのプロダクトを提供するのは、今や企業の大小に関わらず、広くビジネス機会を求める上で重要な視点です。そして、それは1つの国や地域のスペシャリストである必要はなく、ジェネラリストとして幅広い国や地域に対して知見を持っておくことが重要です。
この書籍は、そのような観点に立った知識と豊富な実践を解説する書籍です。Webサイト・サービスやアプリケーションなどのプロダクトを、英語圏や中国語圏、中東圏、スペイン語圏などグローバルにマーケティングする際のポイントを、数多いケーススタディにもとづいて解説します。文字表現、デザイン表現、プロモーション戦略などを各地域の商慣習に合わせて細かく例示した他に類を見ない内容となっています。
著者が運営するBlog「Global by Design」の日本語訳を手がける、株式会社ミツエーリンクスの木達一仁氏が監訳! Web担当者、Webマーケター、広報・PR担当者はもちろん、Webデザイン/サービスのデザイナーやアプリ開発者など、幅広く役立てていただけます。
推薦コメント:木達一仁(監訳者)
日本の将来の景気低迷を懸念する記事を多く目にする昨今、日本企業は今後ますます海外に目を向け、インバウンドとアウトバウンドの両面からビジネスの拡大を検討することになるでしょう。ビジネスの、ひいては自社のWebサイトやアプリのグローバル化に取り組もうとされている皆さんにとって、本書が良き手引きとなることを願ってやみません。
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