特別寄稿① グローバルWebサイト構築の勘どころ――対応しておきたい言語の数と、押さえておきたい7つのポイント
書籍『グローバルWebサイト&アプリのススメ』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開!
書き下ろし特別寄稿: ジョン・ヤンカー(Byte Level Research)
すべてのWebサイトは、生まれながらにしてグローバルなものです。しかし、世界中のコンピューターやスマートフォンからアクセスできるからといって、世界中の人々とコミュニケーションが取れるとは限りません。インターネットはコンピューター同士をつないでいるかもしれませんが、人々をつなぐのは言語です。
あなたの運営しているWebサイトが、日本語と英語の両方をサポートしているとしましょう。これは、インターネットユーザーの約26%がコンテンツを理解できることを意味し、取っかかりとしては悪い数字ではありません。
しかし、あなたのサイトを本当の意味でグローバルにするには、より多くの言語に対応することが求められます。
英語は世界の第二言語
英語表記は、世界のどこであっても高い確率で目にします。しかし、ほとんどの人々は英語を流ちょうには話せませんし、また決してそうならないでしょう。英語は国際共通語かもしれませんが、ほとんどの人々にとっては第二言語であり続けます。最も重要なのは母語です。
次に示す円グラフは、38億人におよぶインターネットユーザーの母語の割合を示したものです(最新の2018年版調査データから)。
単一の言語として最も高い割合を占めるのは中国語で、英語、スペイン語があとに続きます。たとえ円グラフに記載のある中から10言語をサポートしても、非常に多くのインターネットユーザーからのアクセスを逃す結果になるでしょう。
円グラフで最も高い割合を占めているのは「その他の言語」で、オランダ語、スウェーデン語、タミル語を含む100以上の言語が含まれます。今後10年のうち、新たに10億人がインターネットを使い始めるのに伴って、「その他の言語」の割合は増え続けるでしょう。
いっぽうで、英語の割合は減り続けることになります。全インターネットユーザーの90%以上とうまくコミュニケーションを取るには、40以上の言語をWebサイトでサポートしなければなりません。
どれだけの数の言語をWebサイトでサポートすべきか?
過去15年にわたって私は毎年、200以上の代表的なグローバル企業のWebサイトをレビューしてきました。レビュー項目には、次のようなものがあります。
- サポート言語
- デザイン
- グローバルでの一貫性
レビューを通じて得たデータは、企業が全世界に向け自身をどれだけうまく表現しているかをベンチマークしている『Webグローバリゼーション・レポート・カード』の土台となっています。
次に示す最新のグラフでおわかりのように、代表的なグローバル企業がWebサイトでサポートしている言語の数は、過去10年間で2倍に増えました。
どの言語をサポートするかは、グローバルな成長戦略に基づいて決めるべきです。一般的にどの言語がグローバルな言語と見なされているかを考えるヒントとして、代表的なグローバル企業で共通してサポートされている10言語を以下に示します。
- 英語
- 中国語(簡体字)
- フランス語
- ドイツ語
- 日本語
- スペイン語(ラテンアメリカ)
- ポルトガル語(ブラジル)
- ロシア語
- イタリア語
- 韓国語
このリストがなぜ重要かといえば、世界中のWebユーザーはこれらの言語がサポートされていることに慣れており、つまりあなたのWebサイトでも同様にサポートすべきであることを意味するからです。
あなたが翻訳しなくても、あなたの顧客がする
Google翻訳は今や100以上の言語をサポートしており、全インターネットユーザーの99%以上をカバーしています。日々1,000億語以上を翻訳し、世界中の数多くのインターネットユーザーにコンテンツを解放しています。
これが、あなたのWebサイトにとって意味することは何でしょう?
第一に、Google翻訳で翻訳したらWebサイトがどうなるかをチェックすべきということです。もし文字を画像化している箇所があるなら、その文字は翻訳されません。それこそは、画像化文字を避けるべき重要な理由です。
また、あなたのサイトの訪問者がどこからやって来て、どのように接しているのかを注意深く調査すべきです。そのデータは、どの言語なり市場をサポートすべきかの拠り所となります。
世界の国々に対応する考え方
私たちは皆、個々の言語や文化、国家が複雑に絡み合った様を通じて世界を見ています。しかし、だからといって、Webサイトやモバイルアプリをグローバル化する際に検討すべきポイントがまったく分からないわけではありません。
たとえば次のようなポイントがあります。
Webサイトのデザインは、文字量が増えるにせよ減るにせよ、異なる言語への翻訳に対応していますか?
Webサイトのビジュアル要素は、ローカル(各地域)のユーザーにとってふさわしい内容でしょうか?
ローカルユーザーに問題をもたらすリスクはないでしょうか?
掲載しているアイコンは、グローバルスタンダードに則っていますか?
翻訳元となるテキストは、グローバル化にふさわしい内容になっていますか?
具体的には、特定の地域に特化した言い回しや喩えといった翻訳で困難を伴うようなものを避けるように書かれているでしょうか? また、翻訳者が理解しやすいよう、文は短く平易でしょうか?
一般則として、もし翻訳者が理解に苦しむようであれば、元のテキストを書き直すことを検討すべきです。
インターネットへの接続が低速な環境を利用するユーザーであっても快適に閲覧できるよう、Webサイトは(表示に必要なファイルの総容量的に)軽量にできていますか?
各ローカルWebサイトの成否を測るための指標は定めていますか? 単に訪問者数だけでなく、ニュースレターの購読者数や見込み顧客数、直接の売上額などが考えられます。
製品を販売するサイトの場合、それぞれの国や地域の通貨、EC向けプラットフォーム配送サービス、サポートや返品に対応しますか?
これらは、新しい市場向けにWebサイトをローカライズし始めるにあたり、あなたが検討すべき数多くのポイントのごく一部に過ぎません。
グローバル化の成功は心の持ちよう
「グローバル化」という言葉が意味するものは、「グローバルな状態であること」でもありませんし、「グローバルに考えること」とも異なります。
「グローバル化への希望」と「グローバル化の実際」のあいだには大きな溝があり、そこには失敗したWebサイトや浪費されたお金、失われた仕事が多く横たわっているものです。自社の製品やサービスをできるだけ多くの国や地域で売りたいと誰もが考えはしますが、多くの企業にとって実際の市場参入プロセスは、架けるにはあまりに遠い橋となります。
あなたとあなたの勤務先の皆さん、とりわけ経営層が、課題やコストの意識をはっきり持つことが重要です。
グローバル化は一種の旅であって、道にでこぼこは付き物です。あなたが運用する日本語のWebサイトが日本語圏において新たな機会をもたらしたのと同じように、ローカライズしたWebサイトも同様に機会をもたらします――経営層から現場で働く人々、顧客サポートの部門に至るまで、あなたの組織がその取り組みを一丸となって支えられれば。
グローバル化は、他国の言語や文化、慣習に対してオープンであることを必要とします。ある国でうまくいったことが、どこでも通用するとは決して考えないことです。新たな市場に参入する際には、大事にしてきたブランドや製品であっても、名前や位置づけを変更したり、場合によっては廃棄することにすら備えてください。
あなたの属する組織が一致団結して、他国の文化を理解することに重きを置くべきです。すでに私たちが知識経済の時代にいたとして、それを実践する従業員や企業こそ最も「グローバルを知る」存在であり、また最も成功に近い存在といえるでしょう。
書籍『グローバルWebサイト&アプリのススメ』について
広く信じられていることに、次のような話があります。
グローバルに成功するには、グローバルの大家でなければならない――たとえば6ヶ国語を話し、ページの追加されたパスポートを持ち歩き、見るからに空港の出発ラウンジで産まれたような。
実際のところ、グローバルな成功を収めるには、あなたが思うよりずっと少ないマイル数で済みます。グローバルな成功に求められるのは、あなたがいる世界の外側の世界を理解したいというシンプルな欲求です。
書籍『グローバルWebサイト&アプリのススメ』は、
できるだけ効率的に、失敗や浪費することなく、新たな市場への参入を実現したい
と考えている人々のために書きました。同時に本書は、そうした市場で働いている人々への敬意をあらわしたものでもあります。
たとえば自社製品を新しい市場に投入したり、マーケティングキャンペーンをグローバルに立ち上げる際には、聞かれることになるであろう問いをあらかじめ知っておけるよう、それぞれの国や文化について触れながら、グローバル化のプロセスを理解していただけるよう本書を執筆しました。あなた自身の旅において、本書が良いスタートとなることを祈ります。
最後に、本書の出版に携わった株式会社ミツエーリンクスの木達一仁氏、ならびに本書の出版社である株式会社ボーンデジタルに感謝します。
書籍内容の一部転載に加えて特別に提供いただいているこのコンテンツ、次回は、監修者であるミツエーリンクス木達氏による、グローバルWebサイト構築の勘どころ「実践経験から考えるグローバル案件の難しさ」として、日本企業での取り組み例を紹介する予定です。
グローバルジェネラリストなWeb担当者を目指して
- 独身の日 !? ブラックフライデーって !?
- 世界が100人なら58人はアジアの人 !?
- 3Gの低速モバイル通信が世界の主流 !?
- 右→左と左→右が混じるアラビア語のWeb !?
すべてに精通したスペシャリストである必要はありません。
あなたのコンテンツやビジネスにグローバルな成功をもたらす事例・考え方・ヒント満載の手引き書が登場。
Webサイト・サービスやアプリケーションなどのプロダクトを提供するのは、今や企業の大小に関わらず、広くビジネス機会を求める上で重要な視点です。そして、それは1つの国や地域のスペシャリストである必要はなく、ジェネラリストとして幅広い国や地域に対して知見を持っておくことが重要です。
この書籍は、そのような観点に立った知識と豊富な実践を解説する書籍です。Webサイト・サービスやアプリケーションなどのプロダクトを、英語圏や中国語圏、中東圏、スペイン語圏などグローバルにマーケティングする際のポイントを、数多いケーススタディにもとづいて解説します。文字表現、デザイン表現、プロモーション戦略などを各地域の商慣習に合わせて細かく例示した他に類を見ない内容となっています。
著者が運営するBlog「Global by Design」の日本語訳を手がける、株式会社ミツエーリンクスの木達一仁氏が監訳! Web担当者、Webマーケター、広報・PR担当者はもちろん、Webデザイン/サービスのデザイナーやアプリ開発者など、幅広く役立てていただけます。
推薦コメント:木達一仁(監訳者)
日本の将来の景気低迷を懸念する記事を多く目にする昨今、日本企業は今後ますます海外に目を向け、インバウンドとアウトバウンドの両面からビジネスの拡大を検討することになるでしょう。ビジネスの、ひいては自社のWebサイトやアプリのグローバル化に取り組もうとされている皆さんにとって、本書が良き手引きとなることを願ってやみません。
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