セッション80%減からV字回復! 現在も最高記録を更新し続ける「読まれる記事作り」の秘訣とは?
旅行会社はコロナ禍の影響を強く受けた業種の代表格だが、海外旅行商品を事業の柱とする旅工房もその1社だ。2020年4月の緊急事態宣言でオウンドメディアのセッション数が80%減少するという悲劇に見舞われた。
しかし国内旅行のツアー企画を開始したことに加え、検索でクリックされ、読まれる記事作りを追求したことで、現在は過去最高セッションを更新し続けるまでに回復しているという。
「Web担当者Forumミーティング 2021 秋」のセッションでは、Faber Company(ファベルカンパニー)の白砂ゆき子氏が聞き手となり、旅工房の根本美咲氏がV字回復のプロセスを語った。
コロナ禍による海外旅行需要の激減
旅工房は、約100か国の海外旅行、国内旅行(2020年6月から)のパッケージツアーや航空券の販売を行う旅行の総合代理店だ。
旅工房としてさまざまなコンテンツや商品購入機能を持つサイトの中で、オウンドメディア「旅Pocket」は、海外の人気観光地に関するコンテンツをメインに掲載して検索エンジンからのサイト流入を稼いでいる。根本氏は、この旅Pocketの編集長を務めており、セッションでは旅Pocketで実施したさまざまな施策が紹介された。
海外旅行をしたい人の検索ニーズを捉えて、さまざまな検索キーワードで上位を獲得していた旅Pocketだが、2020年の新型コロナ感染拡大によって、記事の検索順位は下がっていないにもかかわらず、PV数が激減するという事態が起きた。
観光のための海外渡航が禁止され、海外旅行の需要が大幅に減少したことが原因。たとえば「ハワイ お土産」というキーワードは、検索回数が9割減となり、それに伴ってアクセス数が大幅に下がってしまったという。
この海外旅行領域における危機的な状況に対応するため、旅工房では国内旅行のツアー企画をスタート。同時に根本氏は、以下のような対策を打った。
- 費用・工数がかかっていた、サービスサイト配下の特集記事は休止
- 旅Pocketでは、国内旅行の検索ニーズに対応した記事を作成
オウンドメディアの「旅Pocket」は低コストで早く記事を公開できる投稿機能を持っていた。そこで、旅Pocketで国内旅行関連記事の制作を開始し、記事数を増やすことにした。白砂氏によれば、「Googleトレンドのデータを見ても、国内旅行のニーズは、下がっているとはいえ、海外旅行ほどの減少ではなかった」という。
国内旅行への移行に合わせた記事作り
旅Pocketには、これまでは海外旅行の記事のみが掲載されていた。同じ旅行関連記事とはいえ、国内旅行の記事は新しい取り組みとなる。そこで、以下のような切り口と方法で、検索ニーズを探した。
テーマ選定の切り口
- エリアを絞る:旅工房が販売するツアーがあるエリアや超有名観光地など
- コロナ禍で注目された旅形式:注目されているマイクロツーリズムや脱密など
- シーズン系:花や紅葉など季節で爆発的に流入が増えるもの
キーワードの探し方
- 地名やその土地の特徴的なキーワードのサジェスト(候補)ワードを調べる
- 国内旅行についてのアンケート調査の結果を参考にニーズを把握する
こうして見つけたニーズに沿った記事を作成した結果、「沖縄 海」「北海道 グルメ」「日本 秘境」「関東 ドライブ」といった検索キーワードで上位表示を獲得することに成功した。秘境やドライブなどは、コロナ禍で人との接触を減らして旅をしたいというニーズがあることを示している。
また、徐々に海外渡航が可能になりそうな頃合いを見計らって、早い段階で渡航が解禁されそうな国や地域の記事も作り始めている。
根本氏自身が思い入れのある記事として紹介したのが、コロナ禍でマイクロツーリズムのニーズが高まっていることを踏まえて作成し、「関東 ドライブ」の検索で3位表示となった記事だ。
関東から日帰りで行けるエリアを調べ、そのエリアに対応するスポットをピックアップするのはもちろん、目的地に向かう道中の部分もぜひ楽しんで欲しいということから、道のご案内もしている(根本氏)
Faber CompanyではSEO分析ツール「ミエルカ」を提供しているが、そのデータを見ると、旅Pocketの記事は、通常は公開から検索上位表示まで6か月程度だが、この記事は3か月で上位表示されたことが確認できたという。
クリックされる決め手は検索キーワード以外のフレーズ
気をつけたいのは検索結果の上位に表示されても、必ずクリックされるとは限らないということ。クリックされるかどうかを左右するのは、タイトルに入れるターゲットキーワード以外の言葉だ。
上の図の例では「箱根 観光 モデルコース」というターゲットキーワードの他に「効率の良い」というフレーズが入っているが、これは、検索意図を調査している中で、「短時間で箱根のいろいろなスポットを回りたい」というニーズがあったために思いついた言葉だという。
こちらの例では、タイトル修正時に根本氏が常々サントリーニ島に対して感じていた「永遠の憧れ」というフレーズを入れたことで、ユーザーの共感が得られ、検索1位が獲得できたという。
このように、ターゲットキーワード以外に検索ユーザーが共感できる一言をタイトルに入れることで、クリックされる可能性が上がる。注意点としては、あまり長い言葉を前に入れるとキーワードがタイトルの後半に下がってしまい検索結果上で見えない状態になってしまう。ターゲットキーワードの前に入れる場合は4~5文字程度に収めるのがお勧めだ。
しっかり読まれるための記事構成と解説図
また、しっかり読まれるためには、きちんと記事の構成を練ることや、テキストではわかりにくいことを解説図にすることも重要だという。以下は、Q&A掲示板などでどのようなニーズがあるか調査したうえで、検索意図を定義し、タイトル、検索キーワード、目次を整理した例だ。
テキストで説明するよりも、イラストや表にすればすぐにわかるという内容もあるので、そういう場合は解説図を作ることも重要だ。桜の開花時期や紅葉の見頃の時期などは、文章よりも表にした方がわかりやすい。
さらに、良質なコンテンツを作り続けるための運営体制も重要で、旅工房では外部人材を積極的に活用している。全体の構成を考えるのは、編集長である根本氏と外部人材で実施。外部の人材は、「旅行好き」かつ「SEOができる」という条件を満たす人をクラウドソーシングで見つけてきた。
構成や企画を考えた後、実際の記事制作のライティングもクラウドソーシングを使って依頼。記事に入れる図版などは、旅工房社内のデザイナーが制作し、最終的な原稿のチェックを根本氏と外部の編集スタッフが行う、という体制で運用をしている。
実施結果と今後の施策
以下の図は、「旅Pocket」のセッション数の推移である。最も低くなっているのが、最初の緊急事態宣言が出た2020年4月で、8月に国内記事をスタートさせ、半年ほどで急激に回復していることがわかる。
2021年11月現在の「旅Pocket」のセッション数は60万を超え、成長を続けている。今後は自社ツアーなどの販売にうまくつなげられるように、メディアから“物を売る”という部分のノウハウを蓄積したい。そのために他社の事例などで情報収集して、構成案をアップデートしてきたい(根本氏)
最後に白砂氏が、オウンドメディア成功のコツを以下のようにまとめた。
- 時代(検索ニーズ)に合ったテーマ選び
- 検索ユーザーに選ばれるタイトル
- 検索者にしっかり読まれる構成&UXの提供
- 継続できる体制づくり
旅工房が導入しているFaber Companyのミエルカは、検索意図の自動分類やサジェストキーワード調査などコンテンツ制作を支援する多様な機能が揃っている。ツールだけではなく、Webマーケティングの学習コンテンツやカスタマーサクセスのサポートも充実しているので、これからオウンドメディアを始める、リライトなどテコ入れをしたい場合はまずトライアルしてみるといいだろう。
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