データクリーンルームは、なぜ注目されている? マーケターが知っておくべき4つの理由
世界的にプライバシー保護の動きが強まる中、プライバシーを守りつつ、データを活用できるデータクリーンルームに注目が集まっています。
データクリーンルームとは、大手プラットフォーマーにおいて、個人を特定することなく、プライバシーを保護しつつ、データの分析・活用ができるクラウド環境のことです。
2017年、GoogleがAds Data Hubの提供を開始。その後、Facebook(現Meta)やAmazonがデータクリーンルームの提供を始めました。
今回は、データクリーンルームの定義、現状、今後の展望について解説します。
データクリーンルームはなぜ必要とされているか?
データクリーンルームが必要とされるようになった背景には、さまざまな要因があります。
- データ漏洩や不正アクセスなど、サイバーセキュリティに対する脅威の増加
- 生活者の間でデータプライバシー意識の高まり
- GDPR(一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)といったデータプライバシー法の施行
企業は、あらゆる脅威から顧客データを保護し、データプライバシー法を遵守しつつ、データを適切に活用することが、ブランドの信頼性に直結するようになりました。
データクリーンルームの4つの利点
データクリーンルームとは、データのプライバシーを保護し、セキュリティを確保しつつ、異なる企業間でデータを共有・分析するためのデータ共有環境のことを言います。
この環境では、生データに直接アクセスすることなく、統計化されたデータやインサイトを抽出することが可能です。データクリーンルームには、以下のような利点があります。
- プライバシー保護:共有されるデータから、個人を特定できる情報(PII: Personally Identifiable Information)を除去または匿名化できる
- セキュリティ:データは暗号化され、アクセス制御が適用されることで、不正アクセスやデータ漏洩を防止できる
- 制限つきデータアクセス:データクリーンルーム内では、生のデータに直接アクセスすることはできない。集計されたデータやインサイトにしかアクセスできないので、データの不適切な利用や漏洩リスクが軽減できる
- データの利活用:異なる企業間でデータを安全に共有することで、マーケティング効果の最適化、新たなビジネスインサイトの発見、顧客理解の向上など、データをより効果的に活用できる
こうした利点を持つデータクリーンルームは、企業がプライバシー規制や顧客の要求に対応し、データプライバシーとセキュリティを維持しながら、データドリブンな意思決定を行うための重要なツールとして、急速に普及しています。
現状のデータクリーンルームの活用について
現在、データクリーンルームは、おもに広告配信データや自社サイトアクセスデータの分析といった用途で活用されています。
広告主企業は、大手プラットフォーマーのデータと、顧客の属性やサイト内行動データを分析することで、効果的な広告戦略を立て、ターゲティングを最適化し、その広告効果を測定して、PDCAを回すことができます。
また、異なるデータを保有する企業(例えば、アンケート会社)のデータと連携すれば、企業は顧客をより詳細なセグメントで分析できます。これにより、顧客ニーズに合わせた製品やサービスの開発や、より精密にパーソナライズされたマーケティング活動が可能になります。
さらに、データクリーンルームを、企業がデータを販売または購入するためのデータマーケットプレイスとして利用すれば、企業は自社のデータ資産を活用して、新たな収益源を得ることもできます。
今後のデータクリーンルームの広がりの方向性について
元々は大手プラットフォーマーのデータを活用するための環境であったデータクリーンルーム。最近では企業が自らデータクリーンルームを構築し、提供することも増えてきています。
さらに今後は、プラットフォーマー以外のクラウドサービスプロバイダーがデータクリーンルームを提供するようになり、マーケティング以外の領域にも広がっていくことが見込まれます。
例えば金融、医療、製造業など、さまざまな事業領域でも、企業は独自のインフラを構築することなくデータクリーンルームを活用し、データセキュリティとプライバシーを守りつつ、データを活用できるようになります。
データクリーンルームが普及する企業や業種が増えれば、多領域・異業種でのデータ連携も広がっていくでしょう。業種を越えたデータ活用が一般的になり、今までは見つけることができなかったようなインサイトを発見できるかもしれません。
今後もデータクリーンルームは、テクノロジーの進化や規制の変化に適応しながら、企業間のデータ共有・データ分析・データ活用に欠かせないソリューションに進化していくと予想されます。
まだデータクリーンルームを使ったことがない、または十分に活用できていないマーケティング担当者の方は、ぜひ早いうちに一度触れてみることをおすすめします。
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