世界で利用者2000万人超えの「家族アルバム みてね」、175ヵ国で支持される理由とは?
子どもの写真・動画を家族で共有・保存するためのサービスとして、2015年にグローバル向けにリリースされた「家族アルバム みてね(以降、みてね)」。国内の年間出生数における利用率は55%と、2人に1人※1の保護者が利用している人気サービスだ。
2017年には「FamilyAlbum」として、英語版の言語対応を開始し、現在では7言語・世界175ヵ国で展開している。2023年11月には、グローバルでの利用者数が2,000万人を突破した。近年の新規登録者数は、国内よりも海外が上回っているという。
どのようにして「みてね」は世界中のパパ・ママに利用される人気サービスに成長したのか。運営元であるMIXIの白岩優子氏に聞いた。
「シンプル」な操作を追求、AIの自動提案も好評
子どもの写真・動画を中心に家族写真の共有・保存に特化したアルバムサービス「みてね」。無料版でも写真は無制限でアップロードでき、動画は3分までとなっている。
写真のアップロード方法は、次の2ステップだ:
- 該当写真を選ぶ
- 「家族みんなに公開」、または管理者のみの「限定公開」を選ぶ
子育てで忙しいパパ・ママ、スマホ操作に不慣れな高齢者も利用しやすいよう操作性はシンプルである。
写真や動画は、自動で月ごとにグルーピングされます。左にスワイプすると過去の写真をさかのぼって見ることができ、家族が見たら『みたよ履歴』が残るほか写真ごとにコメントのやりとりもできます。忙しくても使い続けられるよう、アップロードなどの操作の手数を減らすことにこだわっています(白岩氏)
写真や動画をアップロードするだけではない。「みてね」には、さまざまなサービスがある。たとえば、アップロードされた写真や動画を1秒ずつ切り取り、つなぎ合わせた「1秒動画」は人気サービスの一つ。3か月に1回、季節ごとに動画が無料で届く。
ほかにもアップロードした写真をプリントしたり、フォトブックやDVDにしたりするサービスもある。これらは、祖父母などへのギフトとして購入されるケースも多いという。
写真プリント:家族全員がそれぞれ毎月8枚の写真を無料でプリントできる。
フォトブック: AIが毎月の写真から自動でセレクトし、本の体裁にして提案する。自動提案から写真を変更することも可能だ。1冊539円〜。
アニバーサリーブック:記念日にぴったりのアイテム。ページ数や写真点数、サイズを自由に選んで作成できる。1冊3,500円〜。
有料プランは「プレミアム」「プレミアムPro」の2つあり、月額480円~。主に次の機能が利用可能だ:
「プレミアム」
- 3分以上の動画アップロード(最大10分まで)
- 子どもごとに写真・動画を閲覧できる
- 1秒動画が毎月や1年ごとに届く
- フォトブック・DVDなど一部商品の送料無料(※写真プリントは対象外)
- アルバムの公開範囲をより細かく設定できる
- パソコンからアップロードできる など
「プレミアムPro」
- 上記の「プレミアム」機能に加えて、動画の高画質保存・閲覧ができる
3分を超える動画を撮影する運動会のシーズンや1年間の動画をつなぎ合わせた1秒動画が配信される12月は、通常より有料会員への加入者が増えるという。
「家族の絆」を感じられるメリットも
「みてね」が人気の背景には、家族の絆を確認しやすい点が挙げられるだろう。
コメント機能は保護者がキャプション的に付けるほか、祖父母が『かわいいね』『子育てがんばっているね』といった感想や応援メッセージを書き込んでいます。そういったコメントを読んで、『離れて暮らしていても子育てを一緒に見守ってくれている気持ちになる』というクチコミがよく見られます(白岩氏)
子どもが成長してからアルバムに書き込まれた保護者や祖父母のコメントを読んで、その気持ちが子ども自身に伝わることもあるようだ。
国内外で「使われ方」はどう違う?
なぜ海外にも展開しているのか。それは国内出生数が右肩下がりであることに加え、子どもが生まれた後の写真・動画整理の課題が海外でも見られたためだ。
子どもが生まれると毎日のように写真を撮影するようになり、すぐにスマホの容量がいっぱいになってしまう。この課題は万国共通であり、『みてね』を使い始める理由は基本的に同じです。違いは『プライバシー保護意識の高さ』『招待する家族の多さ』『利用開始時の有料会員率』でしょうか(白岩氏)
欧米では日本よりも子どものプライバシーの権利・保護の意識が高く、子どもの写真や動画をクローズドで管理したいニーズが強い。そのため、公開範囲を細かく設定できる点にメリットを感じて使い始める人が多い。
さらに「家族」の定義が広い傾向があるため、家族ぐるみで親しく付き合っている友人や親戚、シッターなどをアルバムに招待するケースが国内よりも見受けられるとか。また国内よりも「アプリに料金を支払う」感覚も強く、海外全域で利用開始から課金する傾向がある。
利用者が増えてきた近年は、SNSや掲示板などを通じてクチコミでの広がりが目立っている。
子どもの写真・動画を家族で共有・保存することに特化したアプリとして広告を打ち出しているサービスは、海外でもめずらしいです。市場での差別化と実際に愛着を持って使ってくれている利用者のクチコミがうまく回り始めていることが、成長につながっていると感じています。2023年の自然流入数(月間平均)は前年比で約1.3倍になっています(白岩氏)
今では約4割が海外の利用者で、特に北米エリアに注力している。北米ではデジタルのグリーティング・ギフトカード、デジタルフォトフレームなど商材が充実してきており、今後、さらに海外向けの商品を広げていきたい意向があるそうだ。
みまもりGPSにコールドクター、派生サービスも順調
「みてね」から派生した子育て世帯向けのサービスも好調だ。2021年3月に発売開始した「みてねみまもりGPS」は、小型・軽量のGPS端末を子どもに持たせるとアプリで子どもの位置情報を見ることができる。
2024年1月15日には“音声メッセージの送信機能”を搭載した新モデル「みてねみまもりGPSトーク」の予約販売が開始された。アプリと端末の両方から音声メッセージを送受信できるほか、以前から好評の緊急時に子どもから保護者に通知できる「お知らせボタン」機能も使える(プランによって使える機能が異なる)。本体価格のほか、月額通信費が必要となる。
『みてね』をリリースした2015年に生まれたお子さんが現在は小学生に成長しており、通学や習い事などの見守りサービスのニーズが生まれているため、GPSサービスの提供を開始しました(白岩氏)
2022年4月からは「みてねコールドクター」も提供している。これは夜間・休日の急病時に医師が自宅に出向いて診断したり、オンライン診断や電話での医療相談を提供したりするサービスだ。以前、「コールドクター」はコールドクター社が運営していたが、「みてね」とのサービス連携強化を目的に2022年1月に両社が資本提携を結び、名称が「みてねコールドクター」に変更された。
同サービスは新型コロナが蔓延しているタイミングで、病院に行きづらい、予約が取りづらいといった課題が保護者にありました。実際に、自宅にいながら医師の診断を受けられるのが便利だという口コミを多数いただきました。現在は夜間や休日などの急な体調不良の際に利用する方が増えています(白岩氏)
2022年11月に子どもの写真や成長記録を家族で共有できるアプリ「wellnote(ウェルノート)」が、一括ダウンロード機能の提供なしにサービスを終了すると発表して利用者から不満が続出した際、MIXI社が機能開発の支援を提供している。その後、wellnoteから一括ダウンロード機能が提供された※2。
このタイミングで「みてね」に移行した人も多かっただろう。国内外で順調にファンを獲得している「みてね」の、さらなる進化に期待したい。
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