SEOチームを率いるリーダーに必要な7つのポイント――SEOに詳しいだけでは「マネージャー失格」
多くのシニアSEO担当者やデジタルPR担当者は、確かなスキルとすばらしい経歴があっても、リーダーとしての役割を担うことに苦労している。僕は、他社の求人に応募する場合であれ、社内で昇進を目指す場合であれ、この課題に直面しているプロフェッショナルと話をする機会が多い。
真の問題は、次のことだ:
SEOのリーダーにとって「フルスタック」のスキルとは具体的にどのようなものなのか。
この記事では、以前SEOを担当していたヘッドハンターとしての僕の経験と、エージェンシーの創設者や採用責任者から得た知見に基づき、SEOのリーダーとしての役割にステップアップする上で役立つ7つの重要な検討事項を紹介する。
事実: 僕はSEOのリーダーとして2回失敗した
僕がSEO担当者としてのキャリアをスタートさせたのは2008年で、すぐにチームを管理する立場に昇進した。しかし、実際のところ僕にはまだ早かった。時間管理が下手で、対人スキルも不足していたことで、大失敗につながったのだ。
そこから教訓を得たはずだと思うだろう?
ハズレ!
2013年まで話を進めよう。場所はVerve Search。僕はテクニカルSEO担当からデジタルPR担当に変わり、新しい部署の立ち上げを任された。無邪気なことに、僕はそれを引き受けた。
メンバーを採用して3人から58人に増やし、チームとして賞も取ったが、人の管理には苦労した。僕はKPIを重視し、チームをサポートすることよりも最高のデジタルPR担当者になることに注力した。メンバーの1人はミーティングで僕のことをマネージャー失格だと罵倒した。そして、それは正しかった。
この時は教訓を得た。
SEO担当のリーダーとして2回失敗したことで、成功するために本当に必要なことは何かを学んだ。現在はWithfrontierの創設者として、採用とチーム構築のスキルを磨き、世界規模で最高のSEOリーダーを配置できるよう支援している。
僕にとって効果的だった戦術に基づく、SEOリーダーになる方法
そうした経験からみえてきた、SEOのリーダーとしての役割にステップアップするうえで役立つポイントがある。次の7つだ:
- 経験だけでなく、リーダーシップのスキルを重視する
- 効果的に人を率いるためのビジネスセンスを磨く
- ROIを証明するための分析スキルを磨く
- チームの育成と成功を優先する
- 業務スキルと戦略スキルのバランスを取る
- 常に現場で関与し続ける
- SEOのリーダーシップには、ステークホルダーに関わるスキルが不可欠だ
それぞれ説明していこう。
1. 経験だけでなく、リーダーシップのスキルを重視する
多くのSEO担当者は、経験さえあればそれだけでリーダーシップの役割を担う資格があると考えている。しかし、1部署を率いるには、SEOの専門知識だけでは足りない。Hallamでオペレーションディレクターを務めるジョン・マーティンス氏は、リテンション戦略に関するMozの記事で、「すべてのSEO担当者がリーダー職に適性があるとは限らず、時には別の役割の方が適している場合もある」と述べている。
同氏の言うとおりだ。
リーダーの役割は、サービスライン全体、つまり企業内の事業を運営することにある。リーダー候補として他者と差をつけるには、SEOに費やした時間だけでなく、チームの管理、戦略の指導、ビジネスの結果責任といったリーダーシップの経験を示す必要がある。
豪メルボルンにあるStudio Hawkでゼネラルマネージャーを務めるローレンス・ヒッチズ氏が、これをうまく言い表している。
2. 効果的に人を率いるためのビジネスセンスを磨く
SEO担当者のなかには、高額で輝くばかりの新しいツールを集めておきながら、十分に活用できていない人もいる。どのようなマーケティングチームにも、過剰なアカウント管理より創造性と結果を優先する専門家が必要になる。収支のバランスを取るために、君はこうしたことに注意を払えるだろうか?
優れたSEO担当者でも、ビジネスセンスがなければ十分ではない。君は担当部署の責任者として、チームをより大きな組織の中の事業部門として運営する必要がある。成功するには、収益性、アカウントの成長、新規事業への取り組みを統括する役割について理解することが求められる。
- チームのキャパシティと収益性を観察する
- サービスのアップセルを行い、クライアントのアカウントを成長させる
- クライアントのビジネスモデル、製品、目標を理解し、戦略を調整する
- 新しいビジネスプロセスを主導し、サービスパッケージを承認する
3. ROIを証明するための分析スキルを磨く
優れたSEOリーダーは、SEOの実施にとどまらず、部署内の取り組みの投資利益率(ROI)を証明できなければならない。自分の仕事の価値を証明し、スキルギャップを特定し、チームのキャパシティを効果的に管理するには、高度なデータ分析が不可欠だ。
- 担当部署の仕事のROIを示すためのデータ分析について学ぶ
- キャパシティの数値に基づいて、チームの作業負荷と採用のニーズを観察する
- Monday.comやHarvestなどのツールを使って、チームの効率性を追跡する
では、この方向のスキルでレベルアップするにはどうすればいいだろうか? 次のようなものがある:
LinkedInラーニングでデータ分析のコースを受講することをお勧めする。30日間の無料トライアルがあるので、申し込む前に試してみることもできる。
Moz Academyは、SEOレポート作成などのスキルを学ぶのに最適なリソースだ。
Propellernetのルイーズ・パーカー氏がアドバイスしている言葉も噛みしめておくといいだろう:
収益性について理解し、チームの時間を計画することが鍵を握る。「相手は人間であって、単にスプレッドシート内で区切った時間ではない」ことを覚えておく必要がある。
4. チームの育成と成功を優先する
僕はチームの育成よりKPIの達成を重視していたため、SEOリーダー失格だった。真のリーダーシップは、自分だけでなく、チームの成長と成功に投資することから生まれる。
僕は成功を「業界最強のチャネルスペシャリストになること」だと誤って定義していた。悲しいことに、これはチームの進歩を犠牲にして得られたものであり、僕はすぐにチームの中で孤立してしまった。
当たり前のように聞こえるかもしれないが、リーダーには人材管理の経験が必要だ。僕はキャリアを通じて、3人以上の従業員を管理した経験のない多くの人と話してきたが、部署全体を管理しようとするのであれば、それは実績として十分ではない。
5. 業務スキルと戦略スキルのバランスを取る
僕はこれまで数百人のSEO担当者をヘッドハンティングしてきたが、最高の戦略家であっても、チーム全体の効率や収益性を高めるプロセスを確立した経験がない場合が多い。たとえば次のようなものだ:
- オフページSEO
- テクニカルSEO
- SEOに関連する技術
- コンテンツ
そういったスキルを持ち合わせていない場合でも、このスキルを徐々に伸ばしていく簡単な方法がある。それは、「現在のチーム内で業務上の具体的な課題を特定する」ことだ。たとえば、テクニカルSEOチームとオフページチームの間にギャップがある場合は、定期的なミーティングや共有ドキュメントを導入して、共同作業を強化することを検討しよう。
このように考えることで、より業務に重きを置き、リーダーとしての役割に備える助けになる。
6. 常に現場で関与し続ける
部署の責任者であっても、必要に応じて実務に携わることは非常に重要だ。多くの経験豊富なSEOリーダーは、日々の業務から離れてしまう。しかし、効率化された専門性の高いエージェンシーの台頭に伴い、業界ツールやShopify、Magento、WordPressなどのCMSプラットフォームに精通していることが不可欠となっている。
Distinctlyのマネージングディレクターを務めるトム・シャーヴィル氏は、次のように述べている:
当社では、必要に応じて実務を担える部門責任者を見つけるのに苦労している。SEO部門の責任者は実際に提供している仕事から離れていることが多いため、両方の能力を兼ね備えた人材を確保するのは難しい。
だが、SEOリーダーはどうすれば最新の状態を保てるのだろうか?
独立系オーガニック検索エージェンシーWhitworth SEOのチャーリー・ウイットウォース氏は、次のような知見を紹介している:
定期的にブレインストーミングのセッションや研修を実施する ―― SEO業界は、アルゴリズムが頻繁に更新されるため、目まぐるしい速さで変化している。定期的な研修を行うことで、チームは業界の変化にも後れを取らず、パフォーマンスを高める新しいアイデアを生み出せる。
テストに重点を置く ―― SEOは変動要因に満ちあふれており、推測に頼るだけでは不十分だ。SEOをテストすることにより、データを使って戦略を検証でき、推測ではなく実際の結果に沿って取り組めるようになる。
ダミーサイトや個人的なプロジェクトで実験する ―― SEOの実験では、新しい戦術をリスクなくテストできる。そうしたテストを事前にすることは、クライアントのサイトに適用する前にアプローチを改善するのに役立つ。また、自分のスキルが鈍らないようにして、適応性を保つこともできる。
アルゴリズムの更新情報を常に把握する ―― 検索エンジンは頻繁にアルゴリズムを更新しているため、最新情報を入手することで、戦略を最新の検索順位決定要因に合わせることができ、エージェンシーは競争優位を得られる。
7. SEOのリーダーシップには、ステークホルダーに関わるスキルが不可欠だ
君はSEOまたはデジタルPRの責任者として、クライアント企業のシニアステークホルダーに対応する窓口となる。しかし、特に英国では、シニアストラテジストとクライアントの間に他の担当者を挟むエージェンシーが多く、重要なコミュニケーションスキルが不足することになる。
SEOやチームを率いるリーダーシップに優れていても、ROIを効果的に伝えたり、クライアントに継続的に情報を提供したり、問題を沈静化させたりできなければ、リーダーシップの役割を果たすのは難しいだろう。
- まだの場合は、ビジネスの話に加わる
- 部署、運営、営業の各責任者などのシニアリーダーと話をする時間を取る
- クライアントとの協議に同席させてもらう
- シニアリーダーらがどのようにクライアントとの関係を築き、収益性を管理し、損益計算書を処理しているかを観察する
SEOのリーダーとしての役割を担ううえでの障害
SEOのリーダーとしての役割を担うには、特定のチャネルに特化したスキルに優れているだけでは十分ではない。多くのSEO担当者は、「専門的ではなく、チャネルに特化しているわけでもない能力」に欠けていることが多い。こうした傾向は、採用候補者やエージェンシーのオーナーに共通して見られるものだ。不足している能力とは、たとえば次のようなものだ:
- ステークホルダーの管理
- ビジネスセンス
- リーダーシップ
しかし、そうした能力に欠ける原因は、本人にあるわけではない。多くの場合、自分ではコントロールできない状況に原因がある。
たとえば、一部のエージェンシーでは、SEO担当者とクライアントの間にアカウントマネージャーを配置しているため、SEO担当者はステークホルダーやビジネスの経験が得られない。また、長年この業界にいるにもかかわらず、単純にチームを管理する機会がなかったという場合もある。
僕がLinkedInで最近実施したアンケートでは、オーガニック検索のシニアスペシャリストの65%がレベルアップに積極的に取り組んでいると回答したが、部門責任者としての役割を担うために必要なスキルを現在すでに持っていると考えている人は30%しかいなかった。
このテーマについて、eコマースに特化したSEOエージェンシーNOVOSの設立者であるサム・ハーレー氏は次のように述べている。
「チームを管理する」のと「部署を率いる」のとでは、期待されるものが異なる。
チームを管理するマネージャーは、専門外のスキル(SEO/デジタルPR以外のスキル)を伸ばすための時間を取れないこともある。
しかし部署を率いる責任者としては、特定の分野で秀でているよりも、リーダーシップ、コミュニケーション、人材管理、戦略といった専門外のスキルが重要であることは間違いない。
まとめ: 優れたSEO担当者が優れたリーダーになるとは限らない
僕自身が証明しているように、いくら経験豊富でスキルのあるSEOの専門家でも、1部署を率いるのに十分な資格があるとは限らない。失敗した場合の代償が大きすぎる。
バランスの取れたSEOリーダーは、人を第一に考えるリーダーシップ、ビジネスセンス、分析的思考、そしてシニアステークホルダーと関わりながら説得力のあるストーリーを語れる能力など、あらゆるスキルを兼ね備えていなければならない。
これらのスキルが欠けていると、その部署は苦境に立たされる。しかし、今回取り上げたように、オンラインコースを受講したり、経験豊富なリーダーと行動を共にしたり、問題解決や戦略的思考に徐々に考え方をシフトしていったりすることで、これらの重要な分野でレベルアップできる。
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