2025年のSEOトレンドを専門家23人が予測: AI、多角化、グーグル次の一手(前編)
SEO担当者にとって、2024年は非常に波乱に満ち、ドラマチックな展開が次々と起きた1年だった。
グーグルが「AIによる概要(AI Overviews)」を導入し、事実上の「強調スニペット2.0」が登場した。
また、グーグルの内部文書が流出し、同社のコンテンツ順位決定に対して私たちが長い間抱いていた疑念が裏付けられた。
その後間もなく、寄生SEOの存在が明らかになり、大手ブランドがその手のサイトを利用して検索結果ページ(SERP)のほとんどを独占していたことが判明した。
理解すべきことは山ほどある。
では、2025年の検索に備えるにはどうすればいいのだろうか。変化の激しいSERPへの依存を減らし、将来にわたって有効な戦略を展開するには、何を優先すべきなのだろうか。
この記事では、23人のSEOやコンテンツの専門家が考える2025年のSEOのトレンド予測を紹介しよう。これから起こり得る変化に備え、将来に向けた道筋を描くのに役立つはずだ。
AIが検索に及ぼす影響力の拡大
1 検索行動における3つの重要な変化に備える
予測2025年には、検索の分野で次の3つの重要な変化が起こると見られる。
重要な理由
こうした変化のために、ブランドは従来のSEO戦略の見直しを迫られるだろう。ブランド認知度を高め、商品詳細ページを最適化し、検索結果でのビジビリティを細かく追跡することが、変化する環境で競争力を維持するために不可欠となる。
実行すべき対策
ブランド認知への投資 ―― 情報リソース、構造化データ、コミュニティの構築を通じてオーソリティを高める。
商品詳細ページの最適化 ―― 詳細な構造化データ、ユーザー生成コンテンツ(UGC)、高品質の画像や動画を利用する。
検索機能の追跡 ―― 追跡用ピクセルを利用してビジビリティとクリック数の変化を監視し、成果をもたらす取り組みに合わせて戦略を変えていく。
アレイダ・ソリス氏によるその他の情報
2 AIの回答におけるビジビリティを優先する
予測2025年には、SEOの焦点が検索順位ではなく、AIが生成した応答におけるブランドのビジビリティの確保に移るだろう。
重要な理由
AIツールによって、ユーザーが情報を見つける方法は大きく変わりつつある。そのため、AIの回答においてブランドのビジビリティを確保することが不可欠となった。新たな指標や手法が登場するだろうが、デジタルフットプリントの拡大といったおなじみのSEO戦術も、依然として関連性やオーソリティを確保する鍵となるだろう。
実行すべき対策
AIクロールへの最適化 ―― 自社サイトを、技術的に健全でAIがアクセスしやすいものにする。
価値提案の明確化 ―― ブランド独自の価値を明確に伝えるメッセージで、オンページSEOを強化する。
プレゼンスの向上 ―― 業界のプラットフォームやビジネスディレクトリに自社ブランドを掲載する。
デジタルPRやアウトリーチの活用 ―― AIが読みやすいプレスリリースやゲスト投稿を作成し、ソートリーダーと協力する。
コミュニティへの参加 ―― 話題性と関連性が高いコミュニティに参加して、オーソリティとビジビリティを築く。
アンディ・クレストディナ氏によるその他の情報
3 AIツールでのビジビリティがSEOの成功に不可欠となる
予測「AIによる概要」や生成AIツールに対するユーザーの信頼が高まるなか、2025年にはこうしたツールでビジビリティを獲得することがますます重要になるだろう。
重要な理由
AIの急速な進化は、ウェブサイトにとってまだ大きな脅威とはなっていないが、ユーザーがAIの情報をますます頼りにするにつれ、AIの影響力は拡大するだろう。
ブランドが注目を集め続けるには、AIが情報を処理して表示する方法に合わせて自社の戦略を変え、ユーザーのニーズと信頼できるAIの基準を確実に満たさなければならない。
実行すべき対策
AI検索と自然言語処理(NLP)への最適化 ―― キーワード調査の際に、人々がどのようにAIを使って検索しているのかを考慮する。よくある質問に対応し、回答をわかりやすく提示し、必要に応じて詳しい説明を提供できるようにしよう。
自社サイトを信頼できる情報源としてアピール ―― 被リンク、スキーマ、正しい専門知識などの信頼シグナルを構築することで、AIが自社のコンテンツを利用する可能性を高める。
「AIによる概要」を監視して対応 ―― 「People Also Ask」(PAA:他の人はこちらも検索)への最適化と同じように、ターゲットキーワードにおけるAIの優先度を把握し、取り上げられている情報に合わせてコンテンツを編集する。
ゾーイ・アッシュブリッジ氏によるその他の情報
4 「AIによる概要」によるゼロクリック検索の増加で、ブランド認知度が低下するかもしれない
予測2025年には、AIの普及と「AIによる概要」の世界的な展開によってゼロクリック検索が増加し、ブランド認知の構築が難しくなるだろう。
重要な理由
AIが生成する回答は、購買プロセスにおけるさまざまなユーザーの意図にすべて対応できるわけではないため、コンテンツ戦略を多角化する必要性は変わらない。ただし、グーグルはユーザーをトランザクション型検索の結果ページに留めようとしているため、ブランドは「Google Merchant Center」、最適化された商品データフィード、構造化マークアップのようなツールに投資する必要が出てくるだろう。
同時に、オーガニック検索だけでなく、「YouTube」「TikTok」や電子メールといったプラットフォームへの多角化を進めることが、ユーザーエンゲージメントのトレンドの変化に対応するために極めて重要となるだろう。
実行すべき対策
包括的なコンテンツ戦略の採用 ―― 動画、ブログ、画像などさまざまな形式を組み合わせて、ファネルの上部、中部、下部に合わせたコンテンツを作成し、あらゆる段階のユーザーに対応する。
トランザクション型の検索への最適化 ―― Google Merchant Centerを活用し、商品データフィードとスキーマを強化することで、ビジビリティを維持する。
SEO、ユーザー体験(UX)、コンバージョン率最適化(CRO)の統合 ―― ユーザー獲得、ユーザーエンゲージメント、およびコンバージョンのための戦術を組み合わせて、シームレスなカスタマージャーニーを構築する。
5 厳選された信頼性の高いコンテンツがAI検索で優先される
予測AI検索の普及により、2025年のマーケターは、質の高い複数の情報源から得た知見を厳選したコンテンツの作成に重点を置くようになるだろう。オーディエンスによるコンテンツの選別が進むなかで、本当に価値ある情報を提供して彼らの共感を得るためだ。
重要な理由
AIによる情報収集の質が高まるにつれて、凡庸なコンテンツの価値は失われていくだろう。ブランドが競合他社に差をつけるには、多様な視点を取り込み、オーディエンスに対する深い理解を示すコンテンツを作成しなければならない。
オーセンティックであること、すなわち、正しい情報を引用し、専門家の知見を提供し、ユーザーの視点を考慮することが、AIによる検索結果において極めて重要になるだろう。
実行すべき対策
多様な意見の反映 ―― 専門家の知見、ユーザーの意見、独自の視点をコンテンツに取り入れ、真実性と多面性を高める。
オーディエンスに対する深い理解 ―― オーディエンスによって微妙に異なるニーズや好みに直接訴えかけるコンテンツを作成する。
プロセスの効率化 ―― 知見を収集する作業や、オーセンティックでありながらAI検索結果に表示されやすいコンテンツを作成する作業を効率化する。
アマンダ・ジョーダン氏によるその他の情報
グーグルだけに頼らない多様化
6 ソーシャル検索の登場で、コンテンツのばらまきと使い回しに取り組んだ企業が勝者となる
予測2025年には、検索におけるソーシャル検索の役割がさらに大きくなるだろう。コンテンツクリエイターや仲間にアドバイスやレビューを求めるユーザーが増えているからだ。コンテンツを多様化し、コミュニティを育成するブランドが勝利を収めるだろう。
重要な理由
リリー・レイ氏はMozのウェブセミナーで次のように述べている:
私はいつの間にか、レビューをチェックするときに、グーグルよりTikTokやInstagramに目を向けるようになっていた。大手のブランドより小規模なクリエイターから直接得られる知見のほうが、信頼できるように思えるからだ。
AIコンテンツの登場で検索が細分化され、ユーザーはTikTok、Instagram、YouTubeなどのプラットフォームで信頼できるアドバイスを求めるようになっている。同時に、変化の激しいSERPや「AIによる概要」によってオーガニックトラフィックが奪われているため、ブランドは従来型のSEOへの依存を減らさざるを得ない。
実行すべき対策
さまざまな形式のコンテンツの作成 ―― 動画、ポッドキャスト、ウェブセミナー、インフォグラフィックを利用してコンテンツを多様化し、使い回しやクロスプロモーションの方法を見つけ出そう。
たとえば、私は複数のショート動画やグラフィックを使ってマイク・キング氏のウェブセミナーを4部構成のブログシリーズに作り変え、ソーシャルメディアプロモーションに利用した。
コミュニティの育成 ―― ニュースレター、ウェブセミナー、ソーシャルプラットフォームを通じてコンテンツを直接オーディエンスに提供することで、オーガニックトラフィックへの依存度を減らそう。コミュニティを構築することでロイヤルティが高まり、安定したコンテンツ配信チャネルが実現する。
社内の特定分野の専門家(SME)や社外のソートリーダーとの提携 ―― 自社ブランドをアピールしながら信頼性を高めるコンテンツの作成を社内のSMEに促し、業界で尊敬されている人たちの声を届ける場を提供しよう。同じように、信頼できる社外のリーダーと協力することで、リーチとオーソリティを高めることもできる。
ソーシャルへの積極的な参加 ―― ユーザーの関心を集め、ウェブサイトにシームレスに誘導するプラットフォーム固有のコンテンツを作成しよう。Zikokoのようなブランドの取り組みがヒントになる。同ブランドはユーザーにストーリーを最後まで読んでもらうため、Instagramで魅力的なフックのあるカルーセルを利用して、ユーザーを自社サイトに誘導している。
チマ・メジェによるその他の情報
7 コンテンツ戦略の多角化が成功に不可欠となる
予測2025年は、ブランドがグーグルへの依存度を減らし、アルゴリズム変更の影響から身を守るために、コンテンツ戦略の多様化に注力する年になると予測している。
重要な理由
この1年で、トラフィックをグーグルに依存することのリスクの高さが明らかになった。アルゴリズムのアップデートがブランドの収益に壊滅的な打撃をもたらす可能性があるからだ。2025年には、ブランドは戦略を多角化し、グーグルへの依存を減らし、回復力を高めなければならない。
今後は、SEOの役割がより幅広い「オーガニックな成長」を目指す役割へと徐々に変化し、複数のオーガニックチャネルの成長に重点が置かれるようになると考えている。YouTube、TikTok、LinkedIn、ニュースレター、ポッドキャストなどのプラットフォームが、新たなオーディエンスを引き付け、コンテンツの価値を最大限に高め、さらに強力でエンゲージメントの高いコミュニティを築く機会を提供するだろう。
実行すべき対策
新しいプラットフォームの学習 ―― 利用したことのないプラットフォームのアルゴリズムやコンテンツスタイルを学ぼう。
コンテンツの戦略的な使い回し ―― 既存のコンテンツをさまざまなプラットフォーム向けにカスタマイズすることで、リーチを最大化する。
テストと改良 ―― 新しいプラットフォームから得た知見を活用することで、オーディエンスを引き付け、強いつながりを構築する。
ケイトリン・ハサウェイ氏によるその他の情報
8 SEOが複数の検索エンジンへの最適化にシフトする
予測2025年には、新しいAIプラットフォームが登場するなかで、SEOの焦点が「グーグルのみへの最適化」から「複数の検索エンジンの採用」へと移るだろう。
重要な理由
「ChatGPT search」をはじめとするLLMベースの検索エンジンなどのツールが支持を得るにつれて、グーグルの優位性が弱まる可能性がある。さまざまな検索プラットフォームでブランドが競合他社に差をつけるには、信頼性、権威性、専門性を確立しなければならない。
SEOにおいては、「ググられること」よりも「ユーザーが検索を行う場所に最適化する」ことが重要になるだろう。
実行すべき対策
LLMを介した参照トラフィックの追跡 ―― このデータを「Googleアナリティクス4プロパティ」(GA4)で確認すれば、どのLLMが自社サイトにトラフィックをもたらしているのかを詳しく把握できるため、ユーザーがよく訪れる場所に対する理解が深まる。
デジタルPRとソートリーダーシップへの投資 ―― ソートリーダーシップと評判構築の取り組みを通じて、ブランドオーソリティを強化する。
機動性の維持 ―― 複数の検索エンジンでアルゴリズムのアップデートを監視し、自社の戦略を適応させる。
グーグルの次の一手は?
9 グーグルは強調スニペットを段階的に廃止し、「AIによる概要」を優先する
予測2025年には、グーグルはAI機能を強化し、「AIによる概要」に表示される広告や商品リストを増やすだろう。また、「AIによる概要」が文脈に沿った回答を提供する信頼性の高いソリューションとなるにつれて、グーグルは強調スニペットを段階的に廃止すると予想される。
重要な理由
「AIによる概要」が注目されるようになれば、強調スニペットのような従来の検索機能は不要になるかもしれない。グーグルがおすすめの商品や文脈に沿った回答の表示においてAIを優先的に利用することで、検索結果に表示される内容は変わるだろう。
ブランドがこの変化に対応するには、「AIがどのようにクエリを処理して回答を生成しているのか」を理解し、コンテンツの関連性を維持しなければならない。
実行すべき対策
AIのクエリスペースの調査 ―― 「AIによる概要」に表示される可能性が最も高い情報型クエリを特定する。
コンテンツソースの監視 ―― グーグル(またはGemini)がAIによる検索結果の情報源として何を挙げているのかをチェックする。
文脈全体を考慮した回答の提供 ―― 個別のキーワードをターゲットにするのではなく、クエリの文脈全体を考慮したコンテンツを作成する。
ドクター・ピート・マイヤーズによるその他の情報
10 グーグルが小売業者にとって究極のカテゴリページになる
予測2025年には、商品グリッド、リッチリザルト、コマース重視の検索機能の改善により、グーグルは小売業者にとって事実上のカテゴリページとなるだろう。
重要な理由
グーグルは今もeコマースの検索結果を優先しているため、ビジビリティをめぐる競争が激化するだろう。
小売業者は、商品ページを最適化したり、商品データフィードや構造化マークアップのようなツールを活用したりすることで、対応しなければならない。厳しさが増す市場で優位性を維持するには、パフォーマンスを他の小売業者と比較することが不可欠になる。
実行すべき対策
商品ページの最適化 ―― 詳細でわかりやすく、コンバージョンにフォーカスした商品ページを作成する。
構造化マークアップの活用 ―― 包括的な構造化データを利用して、検索結果における商品の表示を改善する。
商品データフィードの改良 ―― 商品データフィードとGoogle Merchant Centerのリストを、定期的に更新および最適化する。
競合他社の追跡 ―― パフォーマンスを他の小売業者と比較し、必要に応じて戦略を調整する。
クリス・ロング氏によるその他の情報
11 関連性を欠く大手アフィリエイトにグーグルのアルゴリズムがペナルティを与える
予測グーグルがアルゴリズムを変更し、「関連性のないコンテンツで検索結果を独占する大手ブランド」ではなく「トピックとの関連性が高いサイト」が表示される機会がもう少し増えることが予想される。
重要な理由
アフィリエイトと商品レビューが、グーグルにとって慎重に取り組むべき分野であることに変わりはない。Amazonとの競争が激化する状況では特にそうだ。グーグルは、「サイトの評判の不正使用に関するポリシー」など、大手ブランドに影響を与えることが多いペナルティ戦略を継続しているため、小規模ながら話題性があり、すでに検索順位が高いサイトは、さらに成長するチャンスを得られるかもしれない。
とはいえ、グーグルの「ヘルプフルコンテンツアップデート」(HCU)の影響を受けている場合には、完全な回復は期待できない。他のチャネルを利用するほうが依然として安全だ。
実行すべき対策
リスクが高い戦術の回避 ―― 大手ブランドにとって、今はアフィリエイトレビューに参入する時期ではない。
多角化戦略の維持 ―― 小規模ブランドは、複数のソースからのトラフィックを維持して、リスクを減らす必要がある。
トピックのオーソリティを重視 ―― SERPでの順位を高めるため、関連性のある充実したコンテンツを作成する。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。後編となる次回は、
- コンテンツ戦略の変化
- マルチモーダル
- パーソナライゼーションとハイパーローカライゼーション
- AIの倫理と信頼性
について、専門家らの予測を紹介する。→後編を読む
ソーシャルもやってます!