コンテンツ戦略、マルチモーダル、AI倫理: 2025年のSEOトレンドを専門家23人が予測(後編)
この記事は、前後編の2回に分けてお届けしている。→まず前編を読んでおく
2025年のSEOのトレンドを解説するこの記事、前編では「AIが検索に及ぼす影響力の拡大」「グーグル一辺倒からの脱却」「グーグルの次の一手」について紹介した。
後編となる今回は、次のトピックについて、専門家らの予測を見ていく:
- コンテンツ戦略の変化
- マルチモーダル
- パーソナライゼーションとハイパーローカライゼーション
- AIの倫理と信頼性
また、記事の最後では、全体を整理したうえで重要なポイント「SEO戦略の多角化とグーグルへの依存度の低減」についても触れる。
コンテンツ戦略の変化
12 コンテンツ戦略は20%のクリエイティビティと80%のブランドストーリーテリングになる
予測2025年に優れたブランドは、AIが真似できないコンテンツを使って真の会話やソートリーダーシップを確立するだろう。基本的な作業はAIに任せ、ストーリーテリングを通じて独自のコンセプトや正しい専門知識をアピールすることで競合他社に差をつけたブランドが勝者となる。
重要な理由
「それなりの品質」のコンテンツを作成する目的でAIを使う必要はもうない。競合他社も完璧に最適化されたコンテンツを大規模に生成できるようになったからだ。残された唯一の強みは、AIにはできないこと、つまり人間のリアルな体験に共鳴する、台本のない本物の瞬間を作り出すことだ。
今後は、会話型コンテンツやポッドキャストのような形式が主流となり、TOFU(購買ファネルの上部)でブランドへの愛着を構築するといった価値を提供するようになるだろう。
さらに、検索結果ページのランキングは変化しやすい状況が続いているが、ブランドが強力なコンセプトやクリエイティブなキャンペーンを打ち出し続ければ、ゼロクリック検索の結果でビジビリティを獲得する新たな機会がもたらされる。
実行すべき対策
コンテンツのエコシステムの構築 ―― 単にブログ記事を寄せ集めるのではなく、動画、音声、テキストをブランドストーリーに結び付ける。
真の会話の活用 ―― ポッドキャストや台本のない瞬間を通じて、ファネルの上部でエンゲージメントを促進したり正しい専門知識を獲得したりできるコンテンツサイクルを生み出す。
ソートリーダーシップへの投資 ―― 専門分野のエキスパートを育成し、人間主導のコンテンツ制作を優先することで、AIコンテンツとの差別化を図る。
ゼロクリックの機会への適応 ―― 「AIによる概要(AI Overviews)」やゼロクリック検索結果の信頼できる情報源として自社ブランドを位置付けるコンテンツを作成し、ブランドの信頼性を高める。
技術的な作業の自動化とクリエイティブな作業の人間化 ―― 技術的な作業をAIツールで自動化し、リソースをストーリーテリングやブランド独自のコンセプトの構築に振り向ける。
ジョー・キャメロンによるその他の情報
13 コミュニティ重視のコンテンツが2025年の流れを形作る
予測2025年は、ブランドがコンテンツマーケティングにおける信頼と相互主義の原則を再発見する年になると思っている。コンテンツを贈り物と捉えることで、オーディエンスとの関係を再構築し、コミュニティの絆を強め、有意義で永続的なつながりを生み出すことができる。
重要な理由
コンテンツマーケティングが道を踏み外してしまったポイントは、オーディエンスに与える価値よりアルゴリズムを優先する指標に焦点を当てたことにある。このようなアプローチは信頼を損ない、失望から生まれる行動を助長する。
優れたコンテンツとは、オーディエンスとの関係を構築できるような、価値が高く、示唆に富み、ブランドの価値観に合ったものであるべきだ。
生成AIは、オーディエンス重視の体験を創造する新たな機会を提供する。ただし、これを実現できるのは、ブランドがユーザーに奉仕するという考え方に立ち、購買を促すのではなく役立つコンテンツを提供する場合に限られる。
実行すべき対策
コンテンツを贈り物として作成 ―― プロキシメトリック(代理指標、本質ではないが間接的な指標)を重視するのではなく、オーディエンスが得られる価値を優先し、学習機会、インスピレーション、サポートを提供するコンテンツを作成する。
信頼と信用の構築 ―― 専門知識をアピールし、コンテンツをブランドのコアバリューと一致させる。
コミュニティの育成 ―― コンテンツを使ってオーディエンスとの関係を強化し、自社ブランドをオーディエンスのコミュニティの一員と位置付ける。
AIの効果的な活用 ―― 生成AIを活用し、オーディエンスに深く響くようにコンテンツを調整する。
測定方法の変更 ―― コンテンツの長期的な影響や信頼の構築状況を追跡する定性的指標を開発する。
14 人間中心のコンテンツへのシフト
予測2025年のSEOでは、AIを取り込んで高度な最適化を行いながらも、人間が作成した本物のコンテンツを優先するようになる。
重要な理由
グーグルは、大量生産された凡庸なコンテンツではなく、専門知識や独自の視点を提供するコンテンツを優先している。同時に、AIがますます強力なツールとなり、複雑なタスクを処理できるようになった。
その結果、人間の体験を重視としたコンテンツを優先し、オーディエンスとの信頼関係を築く機会がSEOチームにもたらされている。
実行すべき対策
時間のかかる作業にAIを活用 ―― データ分析、キーワード調査、サイト内リンクの追加といった時間のかかる作業をSEO向けのAIツールに任せることで、チームは戦略やストーリーテリングに集中できる。
「AIによる概要」に適したコンテンツの作成 ―― コンテンツを最適化し、グーグルの「AIによる概要」やゼロクリック検索結果のようなAI生成スニペットでビジビリティを高める。
人間の専門知識のアピール ―― 個人的な経験や実例を紹介することで、コンテンツに深みを持たせよう。チームメンバーの知識をアピールすることで、オーソリティや読者の信頼を獲得できる。
発見チャネルの拡大 ―― オーソリティを高め、自社にふさわしいオーディエンスを惹きつけるために、さまざまなプラットフォームで慎重にプレゼンスを獲得する。
イリーナ・マルツェワ氏によるその他の情報
15 コンテンツマーケターではなく、ドキュメンタリー制作者のように思考すべし
予測2025年にマーケターが成功を収めるには、コンテンツ制作からストーリーテリングにシフトし、自社ブランドが最も得意とする独自のストーリーを見つけ出して伝えることが必要になる。
重要な理由
AI生成コンテンツがインターネット上にあふれるなか、競合他社に差をつけるためにコンテンツを増やす必要はない。その代わり、マーケターはキュレーション、ストーリーテリング、オーディエンスエンゲージメントを取り入れ、ひしめくライバルの先を行く必要がある。
従来のようなコンテンツマーケターではなく、ドキュメンタリー制作者のように思考することで、ブランドは有意義なアイデアを探求し、オーディエンスとのつながりを深められるようになる。
実行すべき対策
独自のストーリーの発掘 ―― オーソリティと専門性に根ざしたブランドストーリーを発掘する。
有意義なコンテンツの厳選 ―― ツールキットを活用して多様な視点を取り入れ、オーディエンスの共感を呼ぶアイデアを探る。
オーディエンスの参加の促進 ―― ストーリーテリングのプロセスに参加する機会をコミュニティに提供し、彼らとのつながりを強める。
16 人間中心のコンテンツがエンゲージメントを強化する
予測2025年には、関連性の高い人物を取り上げたコンテンツ(動画、ポッドキャスト、インタビュー)が、AIコンテンツよりもはるかに大きなインパクトをもたらすと確信している。
重要な理由
「AIによる概要」や「ChatGPT search」のようなツールが普及するにつれて、ユーザーは動画、ポッドキャスト、インタビューのような人間中心のコンテンツ形式を好むようになる。SEOがキーワードからエンティティやコンセプトとの関係にシフトすることで、ブランド構築や心理学に基づいた戦略が成功に不可欠となるだろう。
実行すべき対策
人間中心のコンテンツ形式の優先 ―― 動画、ポッドキャスト、インタビューに重点を置くことで、オーディエンスを引き付ける。
ブランド構築の重視 ―― オーディエンスとの強い感情的なつながりを生み出す戦略を展開する。
SEOの変化への対応 ―― キーワードだけでなく、エンティティとの関係や幅広いコンセプトを取り込んだコンテンツを作成する。
カルメン・ドミンゲス氏によるその他の情報
17 目的の明確なコンテンツ戦略が成功をもたらす
予測2025年には、AIでは簡単に真似できない体験中心のコンテンツを充実させて自社サイトを強力なコンバージョンエンジンとして活用したブランドが、競合他社に差をつける。
重要な理由
「AIによる概要」の台頭や「ヘルプフルコンテンツアップデート」(HCU)などのアップデートによって、グーグルのみに依存することが裏目に出るケースが散見される。
こうした状況に対応するために、ブランドはAIが真似できないようなコンテンツを作成しなければならない。具体的には、独自の調査や専門家の知見、それにBOFU(購買ファネルの下部)向けの情報を掲載したコンテンツの作成を検討すべきだ。
同時に、プラットフォームに特化したネイティブコンテンツを作成してE-E-A-Tを生み出しながら、発見を促す多様なチャネルを構築しよう。
実行すべき対策
ウェブサイトへの投資 ―― ファネル下部でオーディエンスの疑問を解消してコンバージョンを促進する、価値の高いオリジナルコンテンツに重点を置く。
プラットフォームの戦略的な活用 ―― コンテンツを見境なくばらまくのではなく、各プラットフォームの強みに合わせたコンテンツを作成する。
マルチモーダルはSEOの未来
18 マルチメディアコンテンツがSEOの成功を再定義する
予測2025年には、テキストだけがSEOコンテンツではないことを企業が認識するようになるだろう。検索エンジンがマルチモーダル動画に対する分析能力を高め、生成AIが多様なコンテンツ形式に対応できる能力をアピールしているからだ。
重要な理由
検索エンジンが動画コンテンツや音声コンテンツの分析能力を高めているため、動画や音声はSEOにとって不可欠な形式となっている。
メタデータ抽出機能の向上で埋め込み動画が検出される可能性が高まる一方、ショート動画はソーシャル専用のアセットからコアなビジネス戦略へと進化するだろう。
ブランドが競争力を維持するには、コーナーストーンコンテンツ(基盤コンテンツ)に動画を組み込み、マルチモーダルでSEO目標をサポートする方法を再考する必要がある。
実行すべき対策
マルチメディアコンテンツの制作 ―― 動画やポッドキャストに注力して、コンテンツの多様化と強化を図る。
戦略的な動画の組み込み ―― YouTubeなどのプラットフォームに限らず、主要なページや記事に動画を組み込む。
ショート動画を活用 ―― ソーシャルプラットフォームやビジネス向けコンテンツの主要な戦略の一環として、ショート動画を活用する。
19 パーソナライズされたマルチモーダル検索の台頭
予測2025年には、AIの進化と質の高いコンテンツに対するユーザーの需要により、検索はさらにパーソナライズされたマルチモーダルなものになるだろう。
重要な理由
PerplexityやChatGPT searchのようなAIツールは、高度にパーソナライズされた検索結果を提供できるまでに進化しており、ユーザーとやり取りするたびにそのユーザーについて学習する。そのうち、映画『Iron Man(アイアンマン)』に登場するAI「J.A.R.V.I.S.(ジャービス)」のような、直感的で没入感のある検索体験が実現するかもしれない。
また、マルチモーダル検索が進化して、テキスト、画像、音声、ファイルが組み合わされるようになれば、検索の方法や検索に対応できる形式に変化が起こるだろう。
実行すべき対策
パーソナライゼーションの最適化 ―― ユーザーに対する理解を深め、会話型に移行し、コンテンツ戦略を洗練させ、個々のユーザーのニーズに対応する。
マルチモーダル検索への備え ―― テキスト、画像、音声、構造化データなどさまざまな形式にコンテンツを対応させる。
品質の重視 ―― 十分な調査に基づくオリジナルのコンテンツを作成して、専門知識をアピールする。
AIの採用 ―― 調査、アイデア出し、感情分析などの作業にAIコンテンツツール利用する。AIを自分のアシスタントにして、さらに多くの仕事をサポートしてもらおう。
検索におけるパーソナライゼーションとハイパーローカライゼーション
20 検索の細分化とパーソナライズ化が進む
予測2025年には、検索結果がますますパーソナライズされるだろう。ユーザーに表示されるSERPは、そのユーザーの好みや過去の行動、およびさまざまな検索チャネルでのやり取りに合わせてカスタマイズされるようになる。
重要な理由
ChatGPT searchのようなAIツールは、すでにユーザーの興味や行動に基づいて結果をパーソナライズしており、この傾向はさらに強まるだろう。グーグルや新興の検索エンジンは、ブランドアフィニティや過去のやり取りに基づいた結果を優先するようになる。
ブランドがビジビリティを維持するには、複数のプラットフォームでオーディエンスと強いつながりを築き、ブランド検索と一貫したエンゲージメントを促進しなければならない。
実行すべき対策
ブランドアフィニティの構築 ―― ブランド検索やブランドコミュニケーションを促すコンテンツやチャネルを通じて、オーディエンスを育成する。
ブランドインパクトの測定 ―― ChatGPTやPerplexityなどのAIツールから実行されたブランド検索の数や送信されたトラフィックを追跡する。
コンテンツ戦略の変更 ―― ブランドロイヤルティを高め、オーディエンスとのつながりを深める魅力的なコンテンツの作成に注力する。
21 ハイパーローカライゼーションがナショナルブランド(NB)に戦いを挑む
予測2025年も、グーグルは検索結果でハイパーローカルを優先するだろう。そのため、全国規模のEコマース事業者にとっては、地域の実店舗との競争がさらに難しくなる。
重要な理由
2024年は、「(商品名またはサービス名) オンライン」のようなクエリでさえナショナルブランドが地域の競合他社より下位に転落するなど、地域のランキング格差が広がる傾向が明らかになった。グーグルが地域的な関連性を重視していることから、地域内競争の激化に見舞われている業界では特に、ナショナルブランドがビジビリティを維持するための対応を迫られている。
実行すべき対策
地域ごとの検索順位の監視 ―― さまざまな主要市場の検索順位を定期的に追跡し、地域ごとに変動を把握して対応する。
ローカライズされたコンテンツの作成 ―― 地域に特化したランディングページを作成し、その地域で獲得した認定資格や顧客の声を掲載する。
地域のオーディエンスとの関与 ―― ユーザー生成コンテンツの作成を奨励し、地域「ならでは」の活動を詳しく紹介して、その地域における信頼性を高める。
トリー・グレイ氏によるその他の情報
AIの倫理と信頼性
22 信頼性の問題に割く時間はもうない――たとえグーグルであっても
予測あふれるAI生成コンテンツとの差別化を図るには、信頼性が高く、明確な意図を持ったコンテンツを優先しなければならない。グーグルは信頼できる知見や経験が掲載されたコンテンツに報酬を与える一方、過剰に最適化された使い回しのコンテンツにはペナルティを与えるだろう。
重要な理由
クロールを減らして関連性を優先することを目指しているグーグルは、個人的な知見や実際のデータでユーザーの意図に応えるようなコンテンツを好んでいる。信頼できる体験を推進するグーグルの姿勢は、ユーザー体験の重要性を高めるものだ。
ジョン・ミューラー氏がアドバイスしているように、SEO担当者は過剰な最適化をやめ、関連性とユーザーの意図に焦点を当てる必要がある。
実行すべき対策
ユーザーの意図の重視 ―― ユーザーの疑問に対する答えをすぐに提供し、ユーザーが行動を完了できるようなコンテンツを作成する。キーワードは副産物であり、目標ではない。
信頼できる体験の提供 ―― AI生成コンテンツの正確性を検証し、信頼性が高く実用的な知見に基づいてページを作成する。
エンゲージメント指標の追跡 ―― マクロコンバージョンとマイクロコンバージョン、または類似の指標を使用して、コンテンツが検索意図にどれほど合致しているかを測定する。
事実に基づいた正確なコンテンツの配信 ―― オーソリティの向上を目指すグーグルの取り組みに対応するため、検証済みデータを用いたプログラマティックSEOを活用する。
23 AIの利用に関する明確なポリシーがマーケティング戦略を保護する
予測2025年のマーケターは、厳格なAI利用ポリシーを導入しなければならない。信頼性を確保し、トラフィックを維持するだけでなく、検索エンジンからペナルティを科せられたり倫理違反を犯したりする事態を避けるためだ。
重要な理由
ブランドが規制なしにAIを利用すれば、コンテンツの盗用で訴えられたり、環境面で批判されたり、労働者の権利侵害で反発を受けたりすることになる。検索エンジンは独創性のないコンテンツや非倫理的なコンテンツにペナルティを科すため、ブランドのビジビリティや信頼性が脅かされる。
ユーザーやクリエイターに損害を与えることなく、責任あるAIの利用を実現するには、明確なルールを設定することが必要だ。
実行すべき対策
AIに関する明確なルールの設定 ―― AIの利用を始める前にあらゆる選択肢を検討し、意思決定においては常に倫理を優先することをチームに義務付ける。
人間による監視の継続 ―― コンテンツ作成のすべてのステップに人間を関与させ、AIの出力結果をそのまま公開することを禁止する。
倫理的な品質の優先 ―― ユーザーの役に立ち、検索エンジンの標準に従った、オリジナルで害のないコンテンツの制作に注力する。
重要なポイント: SEO戦略の多角化とグーグルへの依存度の低減
2025年に成功を勝ち取るには、SEO戦略を多角化して、グーグルのSERPへの依存度を減らすべきだ。
また、オーディエンスと直接やり取りできるコミュニティを構築する必要もある。
動画のようなマルチモーダルコンテンツに投資して、ソーシャル検索を活用すれば、ユーザーがいる場所でユーザーに出会えるようになるだろう。
最後に、新たなチャネルに適したコンテンツを作成して、生成AI検索に備えよう。
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