ブランドパーパスをどう明確化するか? 生活者は「環境問題」より「身近な生活の安全」を実際は重視【博報堂調べ】
博報堂は、「ブランドパーパスに関する生活者調査」の結果を発表した。
ブランドパーパス(Brand Purpose)とは、企業そのものや企業の持つブランドについて、その存在目的・存在意義に焦点を当てる考え方。CSR活動とも密接しており、ブランドパーパスを明確化することで、生活者側もブランドに対する共感が生まれやすくなる。また従業員に対しては、勤続意向や仕事のモチベーションを高めことができると思われる。
この調査では生活者2,000人を対象に、「関心のある社会課題」「共感する生き方や暮らし方「共感するブランドに対する意識や行動」などを聴取している。
生活者が関心を持っているのは、実は「環境問題」より「身近な生活の安全」
まず「生活者に共感されるブランドパーパスのテーマ」を探るため、「関心がある社会課題」を聞くと、「個人情報の保護」83.2%が最多で、以下「感染症防止対策」80.4%、「安全な街づくり」80.4%など、暮らしに密着したテーマが上位を占めた。一般的に企業が理念としてあげることが多い、環境問題や社会福祉は比較的割合が低かった。
また「共感する考え方」については、20~30代女性では「ジェンダーの平等」「男女で役割を決められたくない」「協力し合う社会」など“格差是正”に対する共感がとくに強かった。「男女で役割を決められたくない」は30代と40代では10ポイント以上の差が生じている。一方で60代男女と、性別・年代を変えると、「大気汚染の抑制やオゾン層維持に貢献する」「資源のリユースやリサイクルを促進する」といった環境への共感が大幅に増加している。
企業がブランドパーパスを設定する際・計画化は、社会的な位置や年代によって共感ポイントが大きく異なることを考慮する必要があるだろう。
共感するブランドがある人は1割前後、広告視聴や検索の頻度が増える傾向
次に「生活者におけるブランドパーパスの重要度」を探るため、「商品購入時に、企業やブランドが掲げるビジョン・理念・思想(ブランドパーパス)をどの程度重視するか」を聞いた。その結果、女性より男性のほうが、高齢層より若年層のほうが、ブランドパーパスを重視していた。「重視する」の合計は、女性は25.5%だが、男性は28.2%。年齢別では60代が24.5%なのに対し、20代は29.4%にまで達している。
「共感する企業・ブランドに対して、どう行動するか」を聞くと、ブランドパーパスを重視する人たちは「ブランドの広告を意識的に見る」「ブランドのことを調べる」「定期的にブランドの情報を得る」「少しぐらい値段が高くても購入する、利用する」「周りの家族や友人に話す、すすめる」という行動が、平均より多かった。
ただし実際に「共感するブランドがある」という人は全体の11.4%にとどまっている。
ブランドパーパスは従業員の行動も左右する
一方で、従業員側が自社のブランドパーパスを認知しているかを探るため、「自身が働いている会社・組織が掲げる企業ビジョン・理念・思想を知っているか」を企業勤務者816人に聞くと、そのうちの641人(78.6%)は「理念を知っている」と比較的高い数字を示した。しかし理解度や印象までを聞くと「理念に共感している」とした人は201人(24.8%)に留まった。
当然ながら、理念に共感しているという従業員ほど「今の企業で働き続けたいと思う」32.1%(全体平均は13.4%)と高いモチベーションを示したほか、勤続理由についても金銭や人間関係より、「仕事が楽しい」「自分が成長できる」といった回答が多く見られたという。
調査概要
- 【調査対象】全国20代~60代の生活者
- 【調査方法】インターネット調査
- 【調査時期】2020年9月
- 【調査数】2,000人
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