通信業界の大きな変化に合わせて、QRコード決済への参入、「au ID」のオープン化の検討などを進めるKDDIグループ。消費者のライフスタイルにより一歩踏み込むために欠かせないのがコマース領域で、その役割を担うのが総合ショッピングモール「Wowma!」だ。運営会社のauコマース&ライフの八津川博史社長に取材。3月に行われた戦略発表会の資料をベースに2018年度の振り返り、そして、2019年度の戦略をまとめた。
KDDIがめざす「スマートマネー構想」
KDDIは2019年、スマートフォンを軸に「預金」「決済」「投資」「ローン」「保険」といったあらゆるサービスの入り口とし、スマホ・セントリックな決済、金融体験を総合的に提供する「スマートマネー構想」を始動した。
そのための推進組織として、2019年4月1日付で決済事業や金融事業などを手がけるグループ会社を再編。じぶん銀行、KDDIフィナンシャルサービス、ウェブマネー 、KDDIアセットマネジメント、KDDI Reinsurance Corporationの5社を中間金融持株会社「auフィナンシャルホールディングス」の傘下に移管した。
この組織の下、リアル店舗での買い物時に利用できる決済サービス「au WALLET」を軸に、通信やEC、電気、保険、預金、投資といったサービスを、スマホを中心として総合的に展開していくのが「スマートマネー構想」。

スマートマネー構想
「au WALLET アプリ」を4月から段階的に刷新し、スマホ決済サービス「au PAY」をスタートした。2019年夏以降、「au ID」「au WALLET ポイント」「au WALLET アプリ」「au PAY」といったサービスをauの携帯電話ユーザー以外も利用できる「オープンID」化を進め、対象を順次拡大する。

「au WALLET」の基盤
総合ショッピングモールの「Wowma!」はこの構想の出口戦略の役割を担う。八津川博史社長はこう言う。
「Wowma!」もオープンID化した「au ID」で購入できるようになる。KDDIグループは「au WALLET」を起点とした金融サービスで経済圏を拡大する。そして、リアルの世界では「au PAY」が攻めていく。auユーザー、他の消費者が「au ID」でさまざまなKDDIグループのサービスを利用し、たまった「au WALLET」を使う場所として「Wowma!」を育てていきたい。
2018年度の振り返り
2018年度(2018年1~12月)の流通総額は前年度比31%増。購入ユーザー数は同48%増えた。
2年半前のサービス開始時と比較して、出品数は44%増。出店者数は約3倍の規模となった。

「Wowma!」の流通総額、購入ユーザー数に関する伸び率
店舗運営の効率を高める新管理システム「Wow! manager」の提供を始めたのは2017年10月。商品・在庫・受注などに関する各種API(自社システムとの連携)、画像管理、出荷時自動売上請求といったバックヤード業務に関する機能をメインに搭載し、2018年度は40以上の新機能をリリースした。

2018年度の「Wow! manager」開発機能
新規顧客獲得のためのツールの機能強化などで、ユーザーベースは拡大。auユーザーの購入者数は同80%増となった。

auユーザー購入数などについて
サービスレベルの向上施策としては、ポイント表記などユーザーペインの解消を強化。「満足度という定量観点では、他のモールとは大きく劣後するような状況ではなくなった」(八津川社長)。

「Wowma!」が行ったサービスレベルの向上施策
2018年6月からauユーザーへのポイント施策の強化として、最大15倍を付与する取り組みをスタート。また、12月からは「Wowma!」で販売している商品の掲載カタログ「by W」をauショップで配布している。
2019年1月16日からは「Wowma!」での買い物金額に応じて、携帯電話の利用料金が割引になる「au通信料金還元」もスタートした。

競合モールとのポイント付与施策の比較

「Wowma!」が取り組んだ販促施策の一部
2019年度の戦略
KDDIコマースフォワードとルクサが合併→auコマース&ライフ
ECモール「Wowma!」のKDDIコマースフォワードと、フラッシュセール型ECサイト「LUXA」を運営するルクサが4月1日付で合併し、コマースサービスを合併会社「auコマース&ライフ株式会社」に集約した。
高級レストランやエステ、ブランド家電などの非日常の商品などをタイムセール形式でおトクに販売する「au WALLET Market powered by LUXA」も新会社に集中。「Wowma!」へユーザーを集中させていく。
なお、「auコマース&ライフ株式会社」は「Wowma!」と、旧ルクサが運営していた「LUXA」の2ブランドで展開する。

今後の「au」ブランドを冠したコマースサービスは「Wowma!」へ一本化する
KDDIグループとして、物販と役務のECすべてを1社で網羅。4000万人の顧客基盤を軸に、コマースサービスへauユーザーを誘導していく。
事業戦略とサービス戦略
「Wowma!」が2019年度に力を入れるのが「店頭連携強化」「店舗スコア制度」「タイムセール機能強化」「タイムライン提供」である。

「auベストコマース」は、「auユーザー」へのベストコマースを推進し、auユーザーベースのフル活用していくといった意味がある
店頭連携強化(auベストコマース)
2019年12月1日からはスタートしたのが全国約2500のauショップに来店した客に「Wowma!」を紹介する取り組み。メインの来店客である50~60代のユーザーに対して、「Wowma!」の説明から利用方法までを説明。アプリのインストール、ログイン設定などを店頭でサポートしている。
店頭でサポートを受けたユーザーは、ログイン設定なども終えているので最初から簡単に買い物ができる環境が整っている。ブラウザを使うユーザーよりも、購入単価、リピート率といった指標で高い数値が出ている。(八津川社長)

店頭連携強化施策
店舗スコア制度の導入(auベストコマース)
「しっかりした顧客サービスを提供してもらいたい」。八津川社長がこうした思いでスタートしたのが「店舗スコア制度」。さまざまな指標から10段階で店舗をスコアリングする制度で、スコアが高い店舗を今後、さまざまな点で優遇していく。

「店舗スコア制度」は出店店舗をさまざまな指標から評価する制度
店舗スコアが高ければ、商品検索の上位表示、モールが主催するキャンペーン企画への優先参加などが優遇策の例としてあがっている。

スコアが高い店舗を今後、さまざまな点で優遇する
「店舗スコア制度」は「基本要素」と「追加要素」、そして「ペナルティ」で構成。2019年4月に基本要素の中身を公開した。「店舗レビューの引き上げ、納期遅延率、キャンセル率、クレーム数の改善をして下さいと伝えている」(八津川社長)。

「店舗スコア制度」の算出につちえ

基本要素について
たとえば店舗レビューの評価。平均レビューが4.3以上あればレビュースコアは7以上となり、「優秀」と評価される。

店舗レビューの評価について
もう1つの「店舗スコア制度」の構成要素である「追加要素」では、売上向上アクション(タグ設定率、送料無料商品率など)、サービス充実度(発送日の短さ、お届け日指定、決済方法の数など)、売上実績(伸長率、リピート率、商品レビューなど)といった利便性と店舗成長が評価指標となる。

「追加要素」の例
なお、ペナルティの例としてあがっているのは規約違反、未払い、音信不通など。

ペナルティの例
7月には「基本要素」を基に店舗スコアを検索順位に適用する予定。秋には「追加要素」をスコアに加えて、「良い店舗を優遇していくようにする」(八津川社長)。

今後のスケジュール
タイムセール機能の強化(エンゲージメント強化)
タイムセール企画「毎日がwow!」購入者の「wowma!」再購入率が高いったことなどからタイムセール機能を強化。たとえば、店舗側がタイムセール設定をすると、「毎日がWow!」に自動表示されていく仕組みなどを搭載した。

「毎日がwow!」購入者の「wowma!」再購入率が高い
タイムラインの提供(エンゲージメント強化)
お気に入りの商品や店舗を「お気に入り」に登録できる会員限定機能を使うユーザーが増加しているという。その数は購入者数を上回っており、その差分である「好意を持つ未購入層」を開拓する機能として、タイムラインの提供をスタートした。

「Wowma!」ではお気に入りの商品や店舗を「お気に入り」に登録できる会員限定機能を使うユーザーが増加している
「タイムライン機能」は、お気に入り登録した商品や店舗の最新情報を、ユーザーのアプリ上にタイムラインとして提供する機能。お気に入り登録した商品の値下げやポイントアップ情報、店舗が開催するポイントアップやタイムセール、クーポン情報をタイムライン上に表示する。

「タイムライン機能」について
たとえば転換率5%の商品があった場合。欲しいと思ってお気に入りにいれたけれども95人が未購入だったケースでは、その95%にタイムラインで追客することができるようになる。(八津川社長)

「タイムライン機能」は興味・関心の高い未購入者への訴求につながるという
登録した商品に合わせて、店舗側はカスタマイズしたメッセージを配信することが可能。ユーザーの好きなタイミングで通知を一覧できるといったタイムライン上での接客を可能にする。

タイムライン上で自由な接客ができるようになるという
「Wowma!」全体の流通総額の半分がアプリ経由で、ロイヤリティが高いユーザーが多い。そのユーザーにタイムライン上でアクティブな接点を作っていって欲しい。今後はSNSのようなコミュニケーション機能を搭載することも考えている。(八津川社長)
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オリジナル記事:KDDIグループのECモール「Wowma!」2018年度振り返り&2019年度の戦略まとめ | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ
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