Nikonが出したひとつの応え
Flickrという写真共有サイトがあります。このサイトは主に筆者のような写真の素人がネット上にアップロードして共有するのに便利なツールとして使われているわけですが、プロのカメラマンが自分のポートフォリオページとして使っていることも少なくありません。Flickrは写真共有サイトでナンバーワンシェアというわけではありませんが、写真の質とデジタル一眼カメラの使用率の高さは目を見張るものがあります。最近は一眼カメラの値段が低下したこともあり、プロのカメラマンだけでなく多くの人が質の高い写真をFlickrにアップロードしています。John Watson氏が毎週集計している統計結果によれば、Flickrで使われているトップ10のデジタルカメラのほとんどが一眼レフです。
特にCanon製とNikon製のカメラが人気であることに目をつけたNikonが、Flickrユーザーと興味深いコラボレーションキャンペーンを行いました。
Nikonが発表した今年の新モデルであるD80。性能が良くなったカメラをプロのカメラマンに使ってもらい、作品を広告として使うというのはよくあるキャンペーンだと思います。しかしStunningNikonというキャンペーンサイトでは、なんとFlickrユーザーにD80を譲って実際このカメラを使ってもらった様子が作品といっしょに掲載されています。
参加したFlickrユーザーは趣味として楽しんでいるいわゆるプロシューマーで、どの作品も質が高いだけでなく、彼らが話している感想も、より生の声に近い気がします。質の高い写真をNikon製のカメラで撮り続けているFlickrコミュニティに対するひとつの応えであり、興味深いマーケティング手法だといえます。ウェブサイトだけでなく印刷媒体でも展開されたキャンペーンですが、Flickrユーザーならもちろん反応するでしょうし、たとえFlickrを知らなかったとしても、質の高い写真を撮りたいと考える意識の高いプロシューマーの心を揺さぶるかもしれませんね。
CGMといってもすべて消費者にコンテンツを作らせるのではなくNikon側も製品を提供するかたちで協力しながら作られたコンテンツという意味では大変バランスのとれたキャンペーンだといえるでしょう。製品も貸し出すのではなく、ユーザーへ与えてしまうあたりもコミュニティへの還元というメッセージが含まれているようで好印象です。キャンペーンサイトのほうもD80のスペックやデザインにスポットを当てるのではなく、D80を使うことで得られる体験やカメラマンが撮った作品にフォーカスされている点でも、深みのあるコンテンツになっています。
ブランドは製造元によってのみ作り上げられるのではなく、ユーザーひとりひとりによって成り立っている部分もあることが感じられます。特に長い間カメラを作り続けているNikonはそういった意識は高いのではないでしょうか。カメラの性能だけではないNikonの独自性をStunningNikonというサイトで感じ取ることができます。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.3』 掲載の記事です。
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