企業ホームページ運営の心得

オールナイトニッポンに学ぶメルマガ。私的なつぶやきが読者の心を掴む

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の伍十九

歴史が繰り返すIT界

これからは○○だ。

と、IT系の流行予言を聞いたら眉に唾を塗ってください。本当に流行るものは、メルマガ、アフェリエイト、ブログ、SNSも予言以前に広まっており、バズワードの可能性が大きいからです。IT業界の「予言癖」は、結論ありきで論を進める五島勉さんの「ノストラダムスの大予言シリーズ」に通じるものがあります。

さて、予言よりも確実に未来を掴む方法があります。「歴史は繰り返す」というのはIT界も例外ではありません。パソ通のフォーラムのような交流をSNSに見ることができますし、日記型掲示板はブログに直結します。一世を風靡した(社会に受け入れられた)サービスやコミュニティは必ず「繰り返す=復活」するのです。

そこで今回は「メルマガ」に注目してみます。

メルマガが残る理由

メルマガの退潮が囁かれた2003年頃から「これからはポッドキャスト」「RSSだ」と声高に叫ばれました。ポッドキャストは「音声メルマガ」と持ち上げられ、RSSはプル型とプット型の「イイトコ取り」でユーザーニーズに応え、主流となると予言されました。ところが、素人ポッドキャストの「1人語り」は聴取に耐えられるものが少なく、毎日のようにインターネットを使う専門家やマニアのような情報収集をしない庶民にとってRSSは過ぎたオモチャでした。

一方のメルマガは、小泉純一郎元首相のメルマガ「らいおんは~と」の貢献も大きく、日頃から「メールしかしない」といったライトユーザーが「情報源」となることを知り、今日に至っています。

そしてメルマガが完全に廃れないのは「共感力」によります。

オールナイトニッポンとオールナイトフジの違い

人気のメルマガには「私的なつぶやき(雑感)」が織り込まれています。冒頭に近所の猫の話題を持ち出したり、文中で「余談ですが」と先日食べた鍋のうまさを語り、紙面構成から脱線できない場合は「編集後記」で失敗談をおもしろおかしく紹介します。

これが「メルマガは死んだか? 炎上しないツールとしての価値」で触れた「人柄」の演出で、私的雑感が「共感」を生み出します。それは学生時代に聞いたラジオの深夜放送から感じた他愛のない共感です。他人の恋愛相談に自分を投影し、くだらない駄洒落に腹をよじり、深夜に「1人じゃない」と感じた“あれ”で、オールナイトニッポンにあり、オールナイトフジにないものでした。携帯もインターネットもない時代、深夜に襲う漠然とした孤独をラジオが埋めてくれました。昭和の話かも知れませんが。

また、恋人や友人、知人と同じ「窓口」に届くメールは、「自分宛て」という無意識の錯覚によって共感が増幅されます。共感だけならブログやSNSでも重なるところがありますが、「誰でも見られる場所」への掲示と「自分宛て」の違いは埋められません。

読者の反応を上げる方法

メルマガの最大の武器である「共感力」を活かすためには工夫が必要です。

ラジオでは頻繁に「リスナーの声」を紹介し、逆に紹介しない番組を探す方が大変です。ラジオパーソナリティーの玉川美沙さんは「番組はリスナーと作る」と言っていましたが、これはメルマガも同じで共感力を強くします。ラジオはメルマガ作りにさまざまなヒントを与えてくれるのです。メルマガの中で読者の声を紹介をするのは、話しやすい空気を作ってあげることで、ここもメルマガとラジオが重なります。

そうはいってもという声が聞こえてきそうですが、読者からの声、すなわち反響がない場合です。そして現在発行している多くのメルマガが同じ悩みを抱えています。

そこでこんな手法があります。店頭に訪れた「お客様の声」を紹介するのです。読者の声ではありませんが、「お客様の声」として紹介すれば嘘にはなりません。それが「呼び水」となります。

たった1人に届ける手紙

読者の声が集まるようになると、モチベーションも上がり情報もネタも読者が提供してくれるといった善循環へと移行します。しかし、メルマガの解説書などではこの過程がさらりと語られているのですが、実際は「お客様の声」を使っても、反応がない日は多く「このままでいいのか」と不安におびえ「ネタ」もなくなっていきます。

そんなときの秘策です。たった1人の読者に向けて語りかけてください。特定のお客さんでも、彼女でも、兄妹でも自分自身でも結構です。

ネタが枯れると当たり障りのない情報や、自分の言説に酔い、業界を動かしているかのような大言壮語となってしまう傾向があります。共感力が成否を握るメルマガで心のこもっていない文章は読者離れを引き起こすので要注意です。

そんなときは、1人の「誰か」に向けて語ります。ネタがなくても家族や恋人、友人とは話をするようにです。

得てして読者はそんな「私的な話」のほうに食いつきます。

メルマガは商売に向いているという事実

メルマガの衰退が叫ばれた一因に「スパムメール」がありますが、いまだに増え続けるとはいえメーラーやプロバイダの迷惑メールフィルタは強化され、Gmailやヤフーメールといったフリーメールでも対策が講じられたことで、実際に受けとる数の体感値としては横ばいから減少してきています。

いつ「メルマガ復権」が訪れるかわかりませんが、次のブームの前兆すら見えないときがチャンスです。歴史は必ず繰り返しますし、「共感力」は人が寂しがり屋である限り強いものです。

最後にブログかメルマガかで悩んでいるのでしたら「両方」です。今時のブログにはRSSが標準装備されているので、こちらもカバーできますので。また、最近の無料メルマガスタンドではバックナンバーを「ブログ風」にして公開していますから議論自体が成立しなくなるのではないでしょうか。

ブログやRSSが街角で配られる無料チラシだとすれば、メルマガは会員登録してくれた人に届くダイレクトメールです。個人情報を提供してまで情報を得たいと思ってくれた人と通りすがりの人。どちらが「客」となる確率が高いかは明らかです。

♪今回のポイント

ブームの終わりが次の波のへの仕込み期間。

下火の今だからメルマガに取り組む。

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