狙った集客と望ましいページへの誘導
狙った集客と望ましいページへの誘導
では、狙いを定めて良い見込み客をサイトに集めるB2Bサイトの作戦展開の実務を見ていくことにしよう。
B2Bサイトにもいろいろあるが、狙っている相手を、多くの会社の「総務社員」だとしてみよう。なるほど、ターゲットは総務社員である。ただ、それだけでは“日本中の会社にいる総務社員”ということで、まったく絞り込みができない。ターゲットをもう少し細かく見ていくことで、次に打つ手が見えてくる。
たとえば、自社の製品やサービスを使うと、コストダウンになるかもしれない。これは総務社員が求めるポイントだ。また一方、この製品やサービスは、会社運営や総務の仕事を楽にするものでもあるだろう。訪問者は製品内容にまつわるニーズだけで訪れるわけではないのだ。
また、せっかく来てもらっても営業部がフォローできないエリアの顧客では、成約に至る道筋が描けないだろう。逆に言えば、最初から営業所のある地域の人がサイトを訪れると強みを発揮するのである。
では、「この会社は、仙台に営業所がある」という設定で例を作ってみよう。
まず、コストダウンを考えている人のニーズを整理する。軸になる言葉は「コストダウン」だが、これにはいくつもの類語があるので、それをまず、列記してみよう。
- 経費節減
- 経費削減
- コストカット
- 経営合理化
- 節約
- 切り詰め
- 軽減
類語辞典などを使えば、さまざまな言葉を思い出すことができるだろう。一方、「会社運営や総務の仕事を楽にする」という角度で考えてみる。すると、
- 総務向け業務支援
- 総務 サポート
といった直接的な言葉のほか、
- 人事
- 社内連絡
- オフィス レイアウト
- 周年行事
などなど、多様な総務の仕事を表す個別のキーワードが並ぶ。日本では戦後のどたばたの時期を過ぎ、1950年ごろに多数の会社が設立されているわけだが、そうした会社は2010年ごろに60周年を次々に迎える。これは総務社員にとっては、普段の仕事で忙しい上に、大変な作業としてのしかかる。周年行事は10年に一度といった、慣れていない業務だけに、総務社員にとっては大変なことなのだ。大先輩のOB社員に連絡をとったり、多くの取引先ともやり取りが必要だったりで、気を使う仕事でもある。
つまり今、総務社員は助けてほしい、という状況なのだ。総務サポートの製品・サービスを持っている会社にとってはチャンスの大きな時期だと言えるのだ。こうした背景も参考にして、自社の製品に結び付きやすいキーワードを探していこう。
キーワードツールや検索エンジンの活用
キーワードを探すには、GoogleAdwordsやオーバーチュアのリスティング広告のためのキーワードツールや、検索回数の多い組み合わせキーワードを教えてくれる検索エンジン「Ferret」などが便利である。試みにFerretを使って「周年」関連の言葉を探すと、
- 10周年、100周年、50周年、20周年
といった時間の長さや
- 創業
- 周年
などのほか、
- 周年記念
- 周年行事
- 周年記念品
- 周年キャンペーン
- 周年ロゴ
- 周年記念誌
- 周年イベント
- 周年 挨拶
- 周年記念事業
- 周年企画
といった言葉が見つかる。こうしたところに、「顧客のニーズ」というものはあるのだ。総務社員に集まってもらいたいと考えたら、こうした顧客が求めているゾーンに対してアピールをしていかなければならない。こうした仕事のノウハウを持っている会社の、良いサービスがあれば、総務社員は見てみたいし、コストダウン側のサービスも使ってみたいと思うだろう。
もちろん、周年行事でなければ役立たないわけではない。わかりやすい例をということでこれを掘り下げてみただけのこと。自社で提供する製品・サービスに結び付きやすい、総務社員の関心事というのはもっと選ぶことができるはずだ。
キーワードを効率良く含むコンテンツ
さて、狙いを仮に周年行事に決め、それで総務社員を集めようとしたとする。
見つけたキーワード群は、いわばニーズの構造を示している。これを並べ替えれば、「役立つコンテンツ」が浮かび上がる。そうすればサイト構成もでき上がるだろう。
トップ+5ページの企画として図示してみた。「周年」で検索した人がコーナートップに、「周年 ロゴ」ならページ(2)へ、「周年 記念品」ならページ(4)に訪れるようにすればいいわけである。来てほしい訪問者(今回の例では総務社員)が、これらのページを入り口にしてサイトを訪れるようにしたい。このコンテンツによって、やっと狙った訪問者が訪れるサイトになるかもしれないわけだ。
おそらく訪れる人は、あなたの会社のことも製品・サービスも知らない。「あの製品が欲しい」と検索時に思い付いていることは少ないだろう。ということは、最初は「周年 ロゴ」などで検索して訪れ、「良いサイトを見つけた!」「これで助かる」と思ってくれる。そうすれば、次からはリピーターとしてアクセスしてくれる。「周年行事なんてテーマは狭すぎる」と思われるかもしれないが、実際には膨大な検索が行われており、しかも大きな周年行事は5年がかりで準備したりするものだから、意外に検索期間も長い。会社にとっては勝負できるタイミングの作りやすいテーマかもしれない。
アクセス解析の見所
アクセス解析では、
- 狙ったキーワードでの検索回数が増えたか?
- お気に入りなどからの再訪が増えていくか?
などを管理していこう。
もっとも、顧客になりやすい人だからと言っても、ただサイトを訪れて記事を読んで帰っていくだけでは商売にならない。こちらとしては「何が発生すれば、成果として数えられるか」を決めておかなければならないし、そこに向かって訪問者を追い込んでいくのがサイトの役割だ。検索回数や再訪数だけを眺めていても、らちがあかない。次に大切なのは、
- 入り口ページの直帰率は低いか?
- 次のどのページに移動したか?
- 望ましいページに移動させているか?
ということになる。これをチェックして、ページを改善し、望ましいページに移動する回数を増やしていくことができれば、確実に成果を高めていけるだろう。望ましいページに移動する回数を増やすためには、リンクの位置、ボタンの大きさ、色使いの調整を行うのが一般的だが、もっと大切にしたいのは、ボタンの文言だ。
詳しくはこちら
「製品詳細」
こんな文言でリンクしても、クリックしたくならない。リンクの文言とは「お客様との会話」なのだ。B2Bサイトだからといって、そっけない文言にする必要などまったくない。営業マンは日々、言葉を工夫して、営業相手に関心を持ってもらおうと、あの手この手のトークを展開している。ホームページの文言ももっと工夫したい。クリックを誘う文言としては、たとえば、
周年行事には良い記念品が欠かせない!
周年挨拶で禁句となるのはどんな言葉?
など、同じ製品・サービスにリンクするにしても顧客を誘う気持ちで文言を考えれば、結果は変わってくる。サイト全体をリニューアルするよりも、ボタンの文言を変えて結果の変化をアクセス解析しよう。「望ましいページに移動させている」状態が少しずつでも伸びてくれば、効果が出てくるだろう。B2Bサイトでは、こうしたプロセスで、いたずらに人数を集めるのではなく、来てほしい顧客を集め、望ましいページに誘導することが着実にサイトの効果を伸ばすために必要なのである。
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