ビジネス目的を達成するための成果指標と測定方法
前回の記事では、企業のビジネス目的とWebサイトのあり方についてお話ししました。今回は、Webサイトに求めるべき「成果指標」とその「測定方法」について解説していきます。
企業活動には成果が求められる
飲食店などの実店舗には売り上げ目標が、コールセンターには「1コール当り2分以内」「月間○○○件対応」などの成果目標があります。広告宣伝費は、売り上げ目標の○%という算出方法をします。企業活動で成果が求められないものはないのです。ということは、今や企業にとって重要なチャネルとなったWebサイトに、ビジネスとしての成果を求められないはずがないのです。企業活動の一部として維持・継続するからには、Webサイトにも「成果」が求められて当然なのです。
成果が明確でないことによる弊害
「Webサイトは関係ない」と、社内の関係部署が見向きもしてくれないと嘆くWeb担当者も多いのではないでしょうか。事実、企業の担当者に「あなたの悩みは何ですか?」という質問をすると以下のような意見が寄せられました。
- いつも最後にしわ寄せが来る(突然緊急対応を要求される)。
- Webの予算が付かない、人員を充ててもらえない→ボランティアで対応せざるを得なくなる。
- いろいろな部署からいろいろな依頼を受けるがまとめられない。
Webサイトの現場で、こういった社内の無関心な対応や下請け的な運用がなくならない理由を突き詰めていくと、そのほとんどの場合、成果が明確でない・共有されていないことが根本的な問題として浮かび上がってきます。企業という組織において、各部署は常に成果に対するミッションを抱えています。自らが所属する部署・個人は常に成果に対する貢献度や達成度で評価されるものです。自らのミッションや求められる成果に結びつく活動や関連する事柄には熱心で協力的になり、そうでない事柄には消極的で無関心になるのは、企業に所属する社員としては当然です。
企業のWeb担当者は、自らの「嘆き」を解消するためにWebサイトがいかにビジネスに貢献し、関係各部署の業務にとって重要なものであるかについて説明する責任があるのです。
Webサイトの成果とは
「Webサイトの成果は決めているし効果測定も毎月実施している」というWeb担当者も多いと思います。数年前にくらべて「効果測定ツール」を導入している企業も増えてきました。そういった企業に「御社のサイトは何を成果にしていますか?」と質問すると、大抵の企業は「アクセス数」「ページビュー(PV)」を挙げます。
では、これらの数値はビジネス上の成果といえるでしょうか? アクセス数やページビューをWeb担当者以外の人に報告して「凄い!」と言われるでしょうか? きっと次のように言われることのほうが多いのではないでしょうか……「だから何?」と。
単なる「ページビュー」「アクセス数」「検索順位の上位表示」は、ビジネスの視点で見た場合それだけでは何の意味も持たないのです。ページビューはユーザーがサイト内で迷子になったら増えるし、来てほしくない人が来ていたらアクセス数が増えてもトラフィック負荷でしかない。検索エンジンに上位表示されても、訪れたページがユーザーの意に沿わなければ逆営業になります。成果とは、Web担当者の自己満足であってはなりません。何をそのWebサイトの成果とするかは、ビジネスの視点で考えなければならないのです。
「成果」とはWebサイトの目的そのもの
前回の記事では「ビジネス目的に基づいたWebサイト戦略」のお話をしました。自社のビジネスにおいて、Webサイトの位置付けを明確にしなければならないといった趣旨で説明しています。つまり、企業のWebサイトは必ず「そのWebサイトで何を成し得るか」があってしかるべきです。そういった観点がないのであればまず、Webサイトの位置付けや目的を明確にしなければなりません。
そうして戦略が立てられ「Webサイトで何をすべきか」の目的が定まったのであれば、次はその目的に応じた測定指標を立てます。売上向上、経費削減、業務効率化……いろいろな目的がありますが、Webサイトの目的と成果、測定すべき事柄を整理してみるとおおよそ以下のようになります。
成果目標 | 測定指標 |
---|---|
売上向上 | 「Webでの売上」「客単価」「高額商品比率」「直販率」「購買への誘導率」など |
経費削減 | 「FAX・郵送→Web」「紙媒体→Web」「広告→Web」など |
業務効率向上 | 「マーケティング業務」「サポート業務」「営業業務」など業務時間と質の関係改善 |
顧客満足度向上 ブランディング | 「自社サイト比率」「リピータ率」「購買回数向上」「アクティブ会員比率」など |
個別に詳しく見ていくことにしましょう。
- 売上向上
多くの企業にとって最も重要なものが売上向上です。直接Webサイトで購入できる商材やサービスの場合は、ずばりWebサイトでの売上高が成果といえます。また、Webサイトで購入する割合が全体の売上に対してあまり高くない場合は、「客単価」「高額商品比率」などで比較してみるといいでしょう。たとえば、クリスマスに1泊数十万円するホテルのスイートルームは、旅行代理店経由や電話予約経由よりもインターネットでの販売率が高い傾向があります。
自社のWebサイトで直接購入してくれる人は、見方を変えると自社ブランドでの指名買いをしてくれるロイヤリティの高いユーザーといえます。わざわざ自社のWebサイトを探し出してきてくれるユーザーがどれぐらいいるのか=直販率という見方もできます。直接的にWebサイトで購入ができない商品(不動産のマンションなど)も購買への誘導率を測定することで売上への貢献度を測定することができます。Webサイトで商品やサービスを理解して、モデルルーム訪問などをしてくれた場合の成約率などを測定することができれば、売上向上への貢献度が測定できます。
- 経費削減
別の媒体で実施していたことを、Webサイトで行うことによって経費削減ができる場合があります。たとえば、それまでFAXで受け付けていた事柄があるとします。FAXデータをデジタル化するには費用がかかり、人為的ミスによるロスも費用として含めて考えなければなりません。このFAXでの受付業務を、Webサイト上のフォームで行うことによりそれらのコストを削減するというものです。
- 業務効率向上
企業活動にはさまざまな業務がつきものです。Webサイトをうまく使うことでそれら業務に要する時間や質の改善を行うことができます。たとえば、マーケティングデータの収集はこれまで膨大なアンケートの実施やグループインタビューの実施などが主でした。アンケートは集計する労力や時間がかかり、めまぐるしく変わる市況のスピードに追いついていけないなどの問題があります。グループインタビューも、消費者が多様化する現在ではあまり効果的な手法とはいえないのが実情です。
そこで、代わりにWebサイトをつかったマーケティングを実施することで、業務にかかっていた時間やコスト、効果を改善することが可能です。自社サイトでのアンケートを行い、資料請求や問い合わせをしてくれた人のデータを収集・解析し、閲覧されているコンテンツの傾向などからマーケティングデータを収集することが可能です。
サポート業務の改善としては、「質」の改善に効果があります。たとえば、コールセンターが対応する問い合わせのうち、同じような問い合わせが多いものをWebサイトのQ&Aやコンテンツで対応できれば、その分、スタッフが直接対応すべき問い合わせにリソースを当てることができ、結果として売上向上や顧客満足度向上につなげることができます。
- 顧客満足度向上・ブランディング
これまで述べてきた、売上向上や経費削減、業務効率向上の結果、最終的に達成できる事柄です。特にブランディングはWebサイト以外の媒体ではなかなか数値化しにくいものですが、前述したそれぞれの目標をなしえること=ブランドの向上とみなすことができます。たとえば、大手ポータルサイト経由で自社製品を購入する人より自社サイトで直接購入してくれる人が増えたら、指名買いをしている人が増え「ブランドが向上した」とみなすことができます。
Webサイトは、本来数値化しづらい事柄を数字にすることで変化率や伸びを比較しやすくなります。つまり、よりビジネス的側面からWebサイトの成果を捉えることができれば、Web担当者以外の人々にとっても重要で価値のあるデータとして提示できるのです。
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