企業ホームページ運営の心得

ホームページがある会社の基本。久米島でみつけた心得

ホームページは会社そのもの。ホームページをスタッフが見ていないと、客の不振を買うことことがあります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百参十七

ネットで予約の時代

遠出に備え、駅前の旅行代理店でパンフレットを集め、返す刀で書店に寄り、「じゃらん」などの旅行雑誌を購入してプランを比較検討します。雑誌にドッグイアーをつくり……これは書籍の端を折り目印にすることで、年(イヤー)ではありません。詳細は旅行代理店に電話で確認し、店頭に足を運び申込書に記入して旅行の申し込みが完了します。今はネットですべて行えますが、数年前までの旅行代理店は「ネット活用」に積極的ではなく、各ホテルもパンフレットを転載しただけの痒いところに手が届かないものばかりで、こうした「アナログ」が主流だったのです。

総選挙の最中、仕事で久米島に行きました。取材ポイントをネットでチェックし、宿泊先のホテルのホームページを確認して申し込みます。朝6時15分羽田発の出発便のため、空港近くのホテルを探したのもネットです。便利になったものだとしみじみと噛みしめ、久米島で「心得」と出会います。

「政権交代。」の先に

少し余談にお付き合いください。足を運ぶことで「地方の疲弊」を体感します。島内に人影はまばらです。9000人にも満たない人口(久米島役場ホームページより)から当然かも知れませんが、一年前に訪れた時よりも観光客は少なくなっているようで、1000円乗り放題の高速道路が、飛行機移動の観光地に打撃を与えたという報道を実感します。島内のあちらこちらでは、いわゆる公共工事である道路や橋が作られ補修されています。島内のメインストリートは「政権交代。民主党」の看板で埋め尽くされており、同党応援の国民新党の候補者のものですが、「公共事業削減」のマニフェストとの違和感は拭うことができませんでした。東京を離れると見えてくるものがあります。

島内の取材を終えホテルに向かいます。チェックインの手続きを終えると、部屋のカギと共に一枚の印刷物が渡されます。そこにあったのは、

「タオルは1枚100円」

説明責任を果たさなければ詐欺

多くのリゾートホテルでは施設内のプールや隣接するビーチ用のタオルを無料で貸し出しています。昨年までこのホテルも無料でした。そこで訊ねます。

いつから? ホームページに載ってなかったけど

悪びれもせずに受付の女性は回答しました。

今年の春です。施設案内には載っているはずですが

情報を見落としていたのなら、ホームページ屋として恥ずかしい話です。部屋に入り「ネットで検索」します。最近のホテルは各室LANが普及しており、パソコンさえ持っていけばどこに出張しても足立区にいるかの如く仕事ができるので便利です。サイトをダウンロードしてテキストエディタで「100円」を検索しますが、どこにも掲載されていません。

割高でも意地を通す

「What's NEW」にも施設案内にもありません。プロ野球球団のキャンプイン情報はあっても有料タオルを見つけることはできません。結論を述べれば受付の女性は自社サイトを見ていないということです。

そのまま「久米島 ホームセンター」で検索すると、ホテルの近くにあることがわかり、そこで「10枚1,029円」の薄っぺらなタオルを購入。たかだか100円のことですし、結果的には割高かも知れません。しかしホームページを粗末に扱う会社に1円でも儲けさせるのは職業倫理としてイヤです。また抗議し、交渉して譲歩を引き出すのは営業出身の私にとってさほど難しいことではありません。しかし、時間を費やすことは損失ですし、なによりこうした「客の声」はホテルに財産を与えることになります。無言でいることが一番残酷なのです。そして二度と利用しないと心に決め、これはネタだと気がつきます。

電話番号が違っている!

我が社の専務は「クーポン券」や「割引券」が好きで、外出先の「お得情報」をネットで検索し、必要とあらばプリントアウトして持参しますが、スムーズに使えるのは7割ほどで、残りは説明を要します。また、ホームページに掲載されているサービスを聞くと「いまはやっていないんだよね」と露骨にイヤな顔をされることもあります。自社サイトの情報を現場の人間が知らないことは珍しいことではありません。

ある日のこと、「電話番号が違っている」とクレームが寄せられました。確認すると6か月前に社内の組織変更から新設された電話番号で、こちらにその連絡はありませんでした。

「相談役の名前が違っている」。他の業者が数年前につくっていたサイトをリニューアルしたもので、お名前は間違いを避けるため「コピペ」で処理していたものです。どちらも肩書きを持つお偉いさんが何かの拍子(主に暇つぶしですが)に「自社サイト」を見て大騒ぎしたのです。

全社員の共有認識として

ホームページは社外に公開されています。それは会社そのものといっても過言ではありませんが「そのもの」を社員やスタッフが見ていないことで、客の不信を買うこともあるのです。たとえば久米島のホテルで「非掲載」だと知っていたならば受付の女性の態度も違ったのでしょうが、彼女は公開されているものとして、言外に私の見落としだと指摘し、一組の客を失います。こうしたヒューマンエラーはCMSやLPOでも解決は不可能です。余談ですが、今回の衆院選挙で有権者が政策について訊ねると答えられない立候補者もいました。政策ぐらい党のホームページをみて丸暗記してほしいものですが、そんな彼でも当選した状況がこの国の未来を暗示します。

ホームページがある会社ならこれは基本です。

スタッフ全員が確認しなさい

複数の目でチェックすることにより情報漏れや間違いに気がつきやすくなります。また客に近いスタッフからあげられる「声」は最高のコンテンツです。気づいたことは遠慮なく発言させ改善していくのです。ちなみに、今でも当該ホテルのホームページに「貸し出し100円」は掲載されていません。

最後にプチ情報を2つ。水辺では薄っぺらなタオルはすぐ乾いて便利です。次にホテル選びを間違えなければ久米島は食事も旨く、リフレッシュに最高の環境です。特に「アーラ浜」は俗世を忘れます。

今回のポイント

社内都合は客には通じない。

新設・更新時は全社員で閲覧するルールを。

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