絶対数と相対数
絶対数と相対数
Webサイトのリニューアルにおいて、目標をコンバージョン数(絶対数)の増加としているサイトをよく見ますが適切ではありません。なぜなら、コンバージョン数やページビュー数、ユニークユーザー数、訪問回数などの絶対数は、流入数(集客施策)に影響を受けるため、Webサイトリニューアルに対しての指標としては適切ではないからです。
Webサイト単体の指標としては、コンバージョンを伸ばすために必要な要素が何であるのかをセグメント化してとらえ、その上で平均ページビュー数、平均滞在時間、コンバージョン率などの相対数を指標にする必要があります。
ECサイトであれば、多くのサイトが売上をコンバージョンに設定していると思いますが、売上を伸ばすのに必要なのは新規ユーザーの集客なのか、カートページの離脱率の改善なのかなどを考えます。有効な施策を実施するためには、Webサイトの現状を分析して、アクションとして何が最適化なのかを見極めなくてはいけません。
発注側自身で分析する余裕がなければ、外注に分析を依頼するのも有効です。そのときには、ビジネスの目的・目標が何であるのかをきちんと伝え、分析結果に基づいた有効なキャンペーンを検討するようにしましょう。
CPAは広告目標として正しい?
広告ではCPA(Cost Per Action:コスト・パー・アクション)が指標としてよく使われます。名称のとおり、アクションを含んでいて、単純な例として、10万円のバナー広告を経由して10人がコンバージョンしたとすると、CPAは1万円になります。
前回の役割の話を繰り返しますが、広告が担う役割はコミュニケーションです。CPAを目標にするなら、訪問者のアクションを起こす気持ちを促進するためのインセンティブとして「今なら○○プレゼント」などの提示も含めて考えておく必要があります。ただし、CPAだけを指標にすればいいわけではありません。特に中長期的なブランディングを目的とした場合には注意が必要です。なぜなら、中長期的なコミュニケーションの成果として、次のようなユーザーの行動パターンも想定されるからです。
- 一般名称で検索、または他の広告で認知
- 興味
- サイト訪問
- サイト離脱
- 後日ブランドワードで検索
- コンバージョン
このような場合、CPAだけを指標にするとブランドワード(ブランド名、サービス名などの固有名称を含むワード)以外の広告は費用対効果が悪いと誤った判断をする可能性があります。ブランディング目的の場合は、検索連動型広告のブランドワードの扱いにも気をつけましょう。特にBtoBの高額商材の場合は、検討期間が長期にわたるため中長期的な視点での目標や指標の設計が重要になります。
施策の先にある成果を考える
SEOの目標としては何が最適でしょうか。GoogleやYahoo!の検索エンジンで上位表示される、または1位に表示されることでしょうか。SEOを依頼した外注のレポートでは、順位遷移のレポートが提出され、「今月は○位上がりました」などの報告を受けますが、発注側の課題は「検索の上位に自社が表示されないこと」ではありません。検索エンジン経由の流入の増加によって達成したい目標があるから、SEOを選択しているのだと思います。検索順位ばかり気にするのではなく、流入数とその先にある成果につながっているかをしっかり追っていきましょう。流入数を測る事で、誘導単価(コスト/流入数)が算出できるため、他の集客施策との費用対効果も比べることができます。
一般的に多く目にする指標は、実は外注が美味しい思いをする指標が多いです。CPAを除くほかの指標は、大抵が投下コストと比例して上昇する仕組みです。ページビュー数の神話は典型例で、
といったように、一見成功しているように見えて、実は発注側は成果を上げていないという魔法にかかってしまうのです。多くのサイトにおいて、ページビュー数の増加は目標達成のための手段でしかありませんから、目標にあわせた正しい指標を決めないと、外注だけが儲かってしまうのです。
目標は外注にコントロールされて決めるのではなく、発注側のビジネス目的に適切なものを設定するものです。外注に提案をもらうのであれば、目標を明確にした上で本当に必要な指標を決め、発注側の成功につながる施策を練るようにしましょう。
- アクセス解析ツールの指標を鵜呑みにしない
- 外注任せの指標を採用するのではなく、発注側の成功につながる指標を設定する。
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