Facebook広告には「第2の品質スコア」がある! 検索連動型広告との違いや特性を分析
日本でもますます人気の高まるFacebook。そこで出稿できるFacebook広告を、検索連動型広告(キーワード広告)と比較して分析した解説をお届けする。実は、Facebook広告には、「第2の品質スコア」と呼ぶような特徴があるのだ。
検索エンジン業界の二大イベントの1つであるSMX(Search Marketing Expo)の上級者向けカンファレンスである「SMX Advanced」が、2011年6月7日と8日の2日間、今年もシアトルで開催された。今年も中心的な話題はソーシャル、特にFacebookだった。多くの参加者のPC画面ではFacebookが開いていたし、セッションでもFacebookが話題になることが多かった。キーノートスピーカーはMicrosoft Bingの担当ディレクターであるStefan Weitzで、BingとFacebookの提携の状況や今後について積極的に語っていた。
というわけで話題には事欠かないFacebookだったが、特に2日目のセッション「Facebook広告と検索連動型広告の出会い(Facebook Ads Meets Search Ads)」というセッションで、Facebook広告に特化したアメリカの広告代理店SocialCode(ワシントンポスト社の子会社)のAddie Conner氏が行ったプレゼンから、興味深かった点をピックアップして解説してお届けする。
検索連動型広告とFacebook広告はどう違う?
検索連動型広告とFacebook広告には共通点もあるが、異なる点の方が多いと考えられている。筆者もまったく違うものだと思っている。まず、そもそもの特性に大きな違いがある。
検索連動型広告 | Facebook広告 | |
---|---|---|
広告の 表示 | ユーザーの問い合わせ(クエリー)に対し、広告主が回答する形で表示 | 広告主がデマンドを創出。ユーザーのプロフィールにマッチする形で表示 |
フィルタ リング | キーワードでフィルター(表示も除外も) | ユーザープロフィールと広告内の言語でフィルター |
目的 | 情報パスまたはコンバージョンパスへとユーザーを誘導する | 長期の関係性を築くための最初の接触を確立する |
Facebook広告をエコシステムで考えると下記の図のようになる。広告主としてのFacebookを活用する目的は、
- ファンベースを構築・拡大する
- ファンのエンゲージメント(関係構築)を促す
- ファンから収益を得る(マネタイズする)
ということになり、その手段としてFacebookページ、アプリ、アンケート、広告がある。つまり、Facebook広告は、長期の関係性を築くための、特に最初の接触を確立する1つの手段に過ぎないのである。
ユーザーの意図があるのが前提の検索連動型広告と、デマンドを創出するFacebook広告は、そもそも大きく違うということになる。
広告の要素とターゲティング
広告の要素は現在では大きく変わらないまでも、ターゲティングの方法は随分異なる。
検索連動型広告 | Facebook広告 | |
---|---|---|
広告の要素 | タイトル、説明文、表示URL、電話番号、Google +1ボタンなど | タイトル、説明文、イメージ、いいね!ボタン、アンケートなどのソーシャル機能 |
ターゲティング | 言語、地域、キャリア、デバイス、検索エンジン/パートナーサイトなどでターゲティング | 地域、年齢、性別、誕生日、恋愛対象、交際ステータス、言語、学歴、学校、専攻、卒業年、勤務先、興味・関心 |
ロングテールの概念 | ヘッド:検索数の多い広義なキーワード、テール:検索数が少ない狭義のキーワード | ヘッドもテールも自分で作り、リーチや精度は広告やターゲットをどう設定するかによる |
Facebook広告の特徴は、その属性情報の細かさから実現できる詳細なターゲット設定である。米国ではよく「マイクロターゲティング」と呼ばれる。たとえば海辺の高級リゾート地分譲の広告を表示するのならば、「東京の30から50歳までの、◯◯大学を卒業した会社の社長/代表で、旅行、海、リゾートが好きな人」に対してだけ広告を表示できるのだ。
検索連動型広告はこういったターゲティングまでは、高い精度ではしづらい。キーワード検索をするユーザーの中で、そういった属性の人が何パーセントいるのかを推定するのも難しいし、キーワード単位でというのは現実的ではない。そういう意味ではFacebook広告のターゲティングの細かさは、かなりパワフルだ。
ただ、この細かさ故に、実際のプランニングと運用はなかなか骨が折れる。
たとえばこういうキャンペーンがあったとしよう:
- オーディエンス: 30-60歳の男性、女性で、競合トップ5が好きと興味・関心で示している人
- 地域: 米国50州
- テキスト広告: 10種類
- イメージ広告: 10種類
- タイトル文: 10種類
目的: 競合別、州別、年齢別、性別で、広告のコンビネーションそれぞれの相対的な回答率を見たい
こうなると、最も細かく分類すると、年齢30種類 × 性別2種類 × 競合5社 × 州50個 × テキスト広告10種 × イメージ広告10種 × タイトル10種 = 1500種類の広告バリエーションになる。
Facebook広告の管理画面は極めてシンプルな作りなので、これらを手動で管理するのは極めて大変である。
検索連動型広告も、小売りなど、キーワードが多い業種などの場合の管理の手間は大きい。ただ、新しいキーワードは日々生み出されるが、実際に検索数があるキーワードは有限に近い。
Facebook広告の場合は、広告とターゲティング要素のコンビネーションを、実質どれだけでも作り上げてしまうことができる。そのため、どこまで緻密にやるかを考えた上で実施しないと、キリがなくなってしまうことに注意が必要だ。
入札と順位
検索連動型広告と同様、Facebook広告も入札型の広告である。
検索連動型広告 | Facebook広告 | |
---|---|---|
入札方式 | CPC | CPCかCPM |
順位 | 基本的には入札金額と総合的な「質」で掲載順位が決定する | 順位に対する透明性はなく、検索のような順位という枠の概念は乏しい |
入札と トラフィック の関係 | 入札とトラフィックは、ある程度リニアな関係性 | Google Display Networkに近く、入札で掲載位置が変わるだけでなく、バックエンドの広告配信、トラフィックの質や種類に影響される |
実際、Facebookにおける入札は非常に複雑のようで、コンバージョン率とROIを照らし合わせて見るだけでは済まず、入札金額に応じて、最適なインプレッション、クリック(率)、コストを見極める必要がある。そういう意味では、Facebook広告においても、検索連動型広告における自動入札ツールのような、入札金額別のシミュレーションが必要になってくるだろう。
また、下のグラフは一日の中でのFacebookのユーザーの誘導数、コンバージョン率、Facebookアプリの使用率である。朝から午前中はアプリの利用率がグッと上がり、誘導数は激減する。このユーザー行動も入札金額に影響することを考えると、ますます手動管理は難しいと思わざるを得ない。
品質スコア
品質スコアの考え方も、両者ではかなり異なる。
検索連動型広告 | Facebook広告 | |
---|---|---|
品質の要素 |
| 基本的にはユーザーのフィードバックをベースにしている |
品質の影響 | 掲載順位、First Page Bidなど | 広告掲載? |
興味深かったのが、Conner氏が「Facebook広告の第二の品質スコア」と呼んでいた「広告疲労/広告効果低減(Ad Fatigue)」だ。図のように、CTRの落ちに比例してフリーケンシーも減っている。また、CTRが下がると、ユニークインプレッション数も下げ、露出するユーザーを減らしている(いずれも相関関係からの想定)。これは1日分のデータを見て、翌日反映しているという。
公式に発表されているわけではないが、Facebook広告においても品質スコア的な概念があり、その中心となっているのは検索連動型広告と同様にCTRであると考えることができる。
Facebook広告キャンペーンの成功のヒント
Conner氏は最後に、Facebook広告キャンペーンを成功させるための3つのポイントについて言及していた。
ユーザーエクスペリエンスを考えよう
- ユーザーとの長い関係性を考える
- FB Connectなどを使って参加にあたっての壁を低くして、Facebook内にエクスペリエンスをとどめよう
リレーションシップ構築に対する投資と捉えよう
- Facebook広告をコンバージョン直結型のクリックを稼ぐための方法だと考えたら、それはうまくいかない
- ユーザーに価値を提供し、その後、ユーザーから価値を得るという考え方が大切
効果を計測する方法を身につけよう
- アトリビューション分析で価値を割り当てることが重要
今後に向けて、どう捉えるべきなのか
Facebook広告が検索連動型広告とはかなり異なる広告手法であることはご理解いただけたと思う。まったく特性の違うものであるが、それであるからこそ、併せて使うと効果が高いのだ。
eMarketerの最新調査によると、Facebookの2011年の米国におけるディスプレイ広告の純収入は80.9%増の21億9000万ドルとなる見込みで、Facebookは、2011年のオンライン広告市場で17.7%のシェアを握り、トップに躍り出ることが判明している。この数字から見ても、検索連動型広告とFacebook広告の連動利用はますますさかんになると考えられる。
検索連動型広告の自動入札を行ってきたツール群は、Facebook広告の入札管理機能も取り入れ始めており、全体で最適なキャンペーン運用ができる統合型キャンペーンプラットフォームへの道を進みつつある。検索連動型広告とFacebook広告を連動させたキャンペーンの成功事例についてもSMXでは発表されていた。今後も増えていくのは間違いない。
日本でもFacebook広告を利用した事例も徐々に出てくると思われるが、そのためには、両方の共通点、違い、得意分野を理解し、試行錯誤してみることが重要だ。そうすることで連動利用のノウハウを溜める時期だと、SMXに参加して改めて感じた次第である。
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