ウォーカープラスが実践した、雑誌「Walker」のブランドを活かしたサイトリニューアル手法とは | 角川マガジンズ+ユーザーローカル
セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2011 Autumn」(2011年11月8日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
コンテンツの媒体としてウェブを捉えたときに、雑誌や新聞といった従来の媒体と大きく異なるのは「さまざまなデータを記録できる」点だ。このデータとはユーザーの実態を示すものであり、活用できれば非常に強力な企画の助けとなる。
角川マガジンズが運営する「ウォーカープラス」は、このデータを活かしたリニューアルによってユーザーニーズに応えることができたウェブサイトの1つである。そして、このリニューアルに大きく貢献したのがユーザーローカルのアクセス解析ツール「User Insight」だ。
利用実態を把握することで適切なリニューアルを実現
『東京ウォーカー』や『関西ウォーカー』など、グルメやレジャー、エンターテイメント情報を地域別に発信する媒体として多くの支持を得ている雑誌『ウォーカー』シリーズ。そのウェブ版が「ウォーカープラス」である。ネットらしく、北海道から九州までの「ウォーカー」が並び、全国の地域情報を手に入れることができる。そんなウォーカープラスがリニューアルを行い、大きな成果を上げたという。
ウォーカープラスを担当する角川マガジンズ 次世代情報コンテンツプロジェクト デジタルコンテンツグループ グループ長の鴨生大輔氏は、リニューアルの成功要因を「ウェブサイトの利用分析によってユーザーが望む情報にフォーカスできたこと」と説明する。
ウォーカープラスは、雑誌で築いてきた高い知名度やブランド力、大手ポータルサイトへのニュース配信、検索エンジンでの上位表示などによって、多くのユーザーを集めていた。ところが、リニューアルの話が持ち上がった際に、現状把握のためにユーザーがページのどの部分まで読んでいるのか利用実態を分析したところ、想像とは異なる結果が見えてきたという。たとえば、全体トップページではニュースが掲載されているファーストビューに閲覧が集中し、ページ下部のコンテンツはあまり読まれていなかったが、地域別の情報ページでは、ページ下部に掲載された地域情報まで多くのユーザーが閲覧していることがわかった。
当初、編集部では情報サイトのセオリー的に「最上部にはニュースのヘッドラインがあって、そこをユーザーは見るものだ」と考えていたが、鴨生氏が「分析結果から、東京ウォーカーや関西ウォーカーのような地域別情報ページでは、ユーザーはニュースよりも、各エリアの人気飲食店やアミューズメントのイベントなど地域情報を求めているのではないかという仮説を立てました
」と話すように、編集部が「ユーザーが望んでいる」と考えていたコンテンツではないものが、実際はよく利用されていたのだ。
「『東京ウォーカー』『関西ウォーカー』といった雑誌ブランド名を検索して訪問してきたユーザーがウォーカーというブランドに求めていたのは、ウェブでも雑誌と同様に地域情報でした。以前は、編集部が見てほしいものを出していたのですが、実際のユーザーニーズとはずれていたわけです
」(鴨生氏)
ユーザーが求めているのは地域情報だと、客観的なデータを基に仮説を立てた編集部は、地域情報を強化する方針でウェブサイトのリニューアルを進めた。具体的には、まずニュース記事のリンク数を削減し、縦長のページをよりコンパクトにすることで、ページ下部に掲載された地域情報へとたどり着きやすくした。また、リンクテキストを見直し、映画やグルメの情報では映画タイトルや料理ジャンル名ではなく、渋谷の映画館や新宿の飲食店といったようにエリア名を前面に出す形に改善した。
リニューアルの結果、訪問したユーザーの約50%が地域情報まで閲覧するようになり、各コーナーへのユーザー流入数は大幅に増加した。なかでも「ラーメンウォーカー」は2,186%、「Movie Walker」は116%もアップした。ユーザーニーズに合わせたことで、熟読エリア(ユーザーがページのどこまでをどの程度読んでいるかの度合)が地域情報まで広がったのだ。これらの施策は記事数の削減やテキストの修正程度のため、外注を使わずに社内のみで実施している。
ユーザーがブランドに求めたものは雑誌でもウェブでも同じ
「雑誌メディアとウェブメディア」「オンラインとオフライン」など、その特性やユーザーの違い、あるべき形などについて悩むメディア運営者は多い。角川マガジンズも同様に試行錯誤を続けてきたが、たどり着いたのは「強力な(オフラインの)ブランドを持っている場合は、雑誌と同じことが求められるパターンも多い」(鴨生氏)という結論だった。
今後は、単に情報を提供するだけでなく「ユーザーのその後のアクションにつなげる」という媒体本来の役割をめざし、閲覧後のユーザー行動まで追うことで、よりユーザーのニーズに応えるサイトにしていきたいという。
ユーザーの実態を明らかにしたUser Insight
ウォーカープラスが、「少しの手直し」によって成果をあげられたのは、改善すべきポイントを明確に把握できたからだ。その大きな助けとなったのは、ユーザーローカルが提供するアクセス解析ツール「User Insight」だ。
User Insightの特徴は、分析結果をヒートマップやグラフなどで示してくれるところだ。ユーザーがページをスクロールしてどの部分まで読んだかなど、誰でも直感的に把握できる。編集者やデザイナが見れば、意図した通りに利用されているかどうかわかる。ウォーカープラスの事例でも、ユーザーの「熟読エリア」を鴨生氏や他の編集部のスタッフが把握できたことで、リニューアルすべきポイントが明確となった。
ユーザー行動の可視化とソーシャルメディア対策
ユーザーローカルの渡邊和行氏は、User Insightのような「わかりやすさ」は、企業のWeb担当者にとって大きな味方になると説明する。
「大企業のWeb担当者は、2つの課題を持っています。サイト運営やマーケティングは1人ではなく組織的に行うもので、さまざまな部署や立場の人が関わります。意見が食い違うことも多く、声が大きい人や偉い人の意見が通りがちです。そのような時に客観的なデータを使うことができれば、説得しやすいですし、事実に基づくデータですから効果も出やすい
」(渡邊氏)
User Insightは、ユーザーがページのどこをじっくりと読んでいるか(熟読エリア)、どこまで読んで移動したか(終了エリア)、どこをクリックしたか(クリックエリア)に加えて、その属性(性別、年齢、業界など)も可視化できる。加えて、今後重要度が増すソーシャルメディアに関しても、同じようにわかりやすく示してくれる。
渡邊氏によれば、ある導入サイトでは1年前まで検索エンジン経由のアクセスが大多数を占めていたが、現在はソーシャルメディアからのアクセスが増大しているという。そこで重要になるのが、ソーシャルメディア内の情報分析だ。ソーシャルメディアにおける自社製品の話題を把握したり、ソーシャルメディア経由のユーザーとそれ以外のユーザーの行動特性を分析したりすることがUser Insightでは可能となる。
「ダイヤモンド社のビジネス誌のウェブ版を分析したところ、雑誌のほうは40~50代が多いのに対して、Twitter経由では30代が多いことがわかりました。同じ媒体でも、雑誌では年齢層が高く、Twitter(ソーシャルメディア)では若い年代にアプローチできるということが明らかになりました
」と、渡邊氏はその応用例を紹介した。
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