企業ホームページ運営の心得

ネットショップ開設前に知っておきたい「商品コード」と現場ノウハウ。JANコードに隠された暗号

ネットショップで販売する商品とデータを紐づける「商品コード」の活用法について
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の325

サイトはいつも未完成

ネットビジネスの必勝法を1つ挙げるとするなら「まず、始めてみること」につきます。サイトは絶えず改善が求められ、完成することがありません。つまり、どの時点でも「未完成」であれば、とにかくスタートすることが肝心だということです。

通販にしても同じです。どのショッピングモールを選ぶべきか、「おちゃのこネット」のようなカートシステムをレンタルするのが合理的なのか、「Zen Cart」のようなオープンソースなどを駆使して自前で揃えるのがよいのか……と考える前に、まず「売る」のが正解です。

まず売るのであれば、サイト上に商品と売価を掲載し「詳しくはお電話ください!」でもOK。もちろん、これで売れるほど甘くはありませんが、甘くないと知るだけでも意味があります。ただし、はじめから知っておいた方がよい知識もいくつかあり、その1つが「商品コード」。今回は、まさしく本稿以外では論じられることのないであろう「現場のノウハウ」です。

商品コードとは鍵

ほぼすべてのカートシステムにおいて「商品コード」が必要となります。カートによっては「管理番号」「ID]などと呼ぶこともありますが役割は同じです。ショップ運営者以外にはあまりなじみはないでしょうが、これが商品情報を示す「鍵」となります。多くの場合この「鍵」は任意で設定できますが、「任意」と「適当」は異なるというのが現場のノウハウです。

ほとんどのカートシステムは「PLU」の概念で設計されています。PLUとは「Price Look Up(プライス・ルック・アップ)」の頭文字で、商品コードを「鍵」として、データベースから価格や商品名などの情報を拾い出す仕組みです。同じ「JANコード(バーコード)」でも、店舗によって異なる価格で処理されるのは、鍵は同じでも各店舗内に設置されたロッカー(商品情報・マスター)が異なるからです。

カートシステムの商品コードも同じです。あくまで商品情報を開く鍵に過ぎないのですが、だからといって適当につけると作業効率を低下させます。

すべては人のために

商品コードを何も考えずに「連番」で割り当てた場合、001~014までがトレーナーで、015~018が携帯ストラップ、019~025までが再びトレーナーになるという事態が起こります。

商品コード商品カテゴリ
001トレーナーA
002トレーナーB
…… 
015携帯ストラップA
016携帯ストラップB
017携帯ストラップC
018携帯ストラップD
019トレーナーC
020トレーナーD

同じカテゴリの商品コードが「飛び番」になったからといって、カートシステムが誤動作を起こすことはありません。しかし、管理する側の人間が混乱すること請け合いです。

完全コンピュータ管理による入出庫が実現されている環境ならば、商品コードが飛び番でも不都合はないでしょう。しかし、一般的な通販事業者の環境においては、適当な商品コードの割り当ては、発送作業に加え「棚卸し」の作業効率を悪化させます

商品名だけでも管理できますが、似たような名称、色やサイズなど微妙な区別に役立つのが「商品コード」で、一定のルールをもってナンバリングすることで作業効率を高めるのが「現場のノウハウ」です。

トレーナーの取り扱い

まず先のケースのコード設定の条件を3桁の数字のみとします。

先頭の一桁目を「商品種別」に割り当て、「1」をトレーナーとして「101」「102」「103」と割り振ります。そして携帯ストラップの商品種別を「2」として「201」から連番にする、というのもありですが、先の例ではトレーナーが21種類で、携帯ストラップが4つであることから、定番品、主力品でない可能性が高いと推定できます。ならば「その他」として「9」や「0」を割り当てるのです。

こうした「ルール」を作ることによって、先頭の数字を見ただけで、コードが表す商品を「人間」がイメージできるようになります。

  • トレーナーの商品コード:101、102、103……
  • 携帯ストラップの商品コード:901、902、903……

実際のカートシステムでは、商品コードにアルファベットや記号が使えるものも多く、トレーナーを意味する「T」に、西暦二桁と製造月として2013年8月の「1308」を加え、国内の製造工場を表す「N」で、

T1308N-001

とすると、商品コードが「ビジュアル化」されます。

バーコードの概念は同じ

バーコードも同様にそれぞれの数字に意味を持たせており、「国別コード」「企業コード」「商品アイテムコード」「チェックデジット」で構成されています。チェックデジットとは、バーコード内の数字をある計算式にかけて導かれる数字で、コードの整合性を取るためにあります。いまどきのWebしか知らないと、面倒な手続きに思えるかもしれませんが、コンピュータ関連機器の精度が低い時代、コード自体にチェックを付け、信頼性を高めたのです。

ちなみに「商品アイテムコード」は、コードを取り仕切る一般財団法人流通システム開発センターの用語を使っています。日本語の日常会話では「商品」も「アイテム」も同じように使われていると、約四半世紀前のプログラマ時代の上司に理由を尋ねると「製品も含むから」と回答。流通業と製造業による呼称の綱引きからの曖昧決着とのこと。酒席の説明だったので、真贋は定かではありませんが。

応用範囲が広いアプローチ

最後に余談をもう1つ。「書籍JANコード」の場合は二段目の下2桁から、5桁までに価格が埋め込まれています。いわゆる「ピッ!」のない書店でも本の値段がわかるための工夫です。POSレジを導入していない書店がまだ多数を占めた時代に策定されたからです。

カートシステムによっては、カテゴリや型番をアルファベットで細かく分類して指定するものもあり、そちらを活用する方が便利ですが、基本的なアプローチは同じです。そして請求書や納品書、お客様番号や注文番号にも応用できます。いちいちネットに接続して、データベースにアクセスしなければならない単純な連番と異なり、ビジュアル化によってコード(番号)を見ただけで概要を把握できるのです。一見ささやかなようですが、現場の作業効率を飛躍に高める「現場のノウハウ」です。

今回のポイント

商品コードをビジュアル化する

適当につけると後で後悔すること多々

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