SEOにも効いて一石二鳥、長文コンテンツの筆が進む設計図のススメ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の486
私だけの朗報
2017年の幕開けです。今年もよろしくお願いします。
リアルのマスコミが、ネット≒誤情報という文脈で引用する「Welq事件」。腹立たしい限りですが、私には「朗報」の面もありました。それはSEOにおける「長文」の優位性が明らかにされたことです。
Welqの手口は賛成しかねますが、一定量のボリュームがある文章はグーグルの「好物」だとの仮説が、ほぼ証明されたといっていいでしょう。そしてこれは今後も変わることがないと見ています。10年前の小欄で「長い文章は読まないという嘘。コンテンツを読ませるちょっとしたコツ」として「長文」を推奨した理由でもあります。
一方、私のまわりでは「長い文章が書けない」というWeb担当者が増えています。短文のTwitter、「いいね!」をクリックするだけでも成立するFacebook、写真に特化したInstagramなどのSNSの普及によって、「長文」を求められるシーンが激減しているからかもしれません。
そこで、2017年最初のコラムは「長文の書き方」について記します。
グーグルの仕組み
まず、「長文がSEOに有利だ」と仮説を立てた理由を紹介しておきます。誤解を生じる前に補足しておくと、単純に「短文だから評価されない」「長文だから評価される」というわけではありません。
先の「Welq事件」が示したように、グーグルはコンテンツの内容(真偽)を評価していません。内容を評価するには、価値観に代表される属人性が不可欠になるからです。たとえば、「目玉焼きに最もあう調味料」への最適解は、「醤油」「塩」「ソース」と人の好みで異なります。専門家などの「権威」を頼るにしても、専門家同士で意見が分かれることが多いのは「憲法改正」を巡る議論に確認でき、いずれかを採用すれば深刻な「ゆらぎ(偏り)」が発生しかねません。
そこでグーグルは「内容」そのものではなく、コンテンツ内のキーワードやページに貼られたリンクなど、機械的に数値化できる(今では200以上のアルゴリズムがあるとされている)「周辺情報」から妥当性を判断しています。
長文ならではの利点
短文と比較したとき、長文コンテンツの利点は検索ユーザーのニーズを網羅的に満たせることにあります。本サイトの読者であれば、キーワードの出現頻度なるものがSEOの都市伝説であることはご存じでしょうが、ある「検索キーワードA」と関連性が高いキーワードが自然な形でコンテンツに含まれることが長文ならではの利点の1つです。
いわゆる「共起語」「関連語」と呼ばれるもので、すでに時期は過ぎてしまいましたが、「おせち」であれば「料理」「レシピ」「通販」「予約」などの関連するキーワードを指します。「おせち」というキーワードのなかには、作り方を知りたい人、注文したい人など、さまざまなニーズがあるものです。
グーグルはコンテンツの内容は評価しませんが、こうしたコンテンツとキーワードとの関連性は機械的に数値化できます。これは実際に長文ブログの執筆をしていて効果を実感します(リンクなどの要因もあるため単純には評価できませんが)。
一方、Web界隈には「短文」を推す声が多いのも事実ですが、これについては先に紹介した10年前の原稿を引用します。
長い文章を否定するのは、そもそも「文章が苦手な人」という可能性が高いのです。老眼で小さい文字が読みづらいという方を除けば、私の取材では(長い文章を否定する人は)単純に「文章読むことが嫌いな人」と見事に重なりました
読者が求める情報が網羅されていれば、むしろ長文コンテンツの方が喜ばれるのは自明。さらにSEOにつながるのですから一石二鳥です。
書けないときは設計図を作る
もちろん、闇雲に文章を長くしてもSEOにはなりません。むしろ、慣れないうちに素人考えでSEOを意識しすぎては、不自然にキーワードがちりばめられた怪しい文章になりがちです。
本命はコンテンツの内容です。本稿では過去に、刺繍、メッキ、工具屋など、さまざまなビジネスを紹介してきましたが、文章を書くときに生きるのが専門分野の経験。そして長文を書くコツは、主題に関係したトピックや関連する説明を織り交ぜていくこと。自らの経験をもとにした文章であれば、自然と関連性のあるキーワードが含まれるものです。
ですが、これだけで苦もなく書き出せるなら、そもそも本稿を読む必要がありません。
人気脚本家の宮藤官九郎さんは、東北でのロケハンの帰りの2時間ほどの新幹線のなかで、同行したスタッフにドラマ「あまちゃん」のストーリーの始まりから終わりを語ったといいます。彼の脳内には「あまちゃん」のすべてが展開されていたのでしょう。しかし、これは天才だからできること。
私のような凡人は、本稿の2500文字程度の分量でも、1つトピックを書くと前のトピックを忘れ、次の段落の書き出しが閃いた瞬間、今の原稿が迷子になります。これを助けてくれるのが「設計図」です。
なすべきことの確認
本コラムには、行き当たりばったりのような拙稿ながら「設計図」があります。設計図とは、「何を」「どの順番で伝えるのか」を記したメモで、以前は樹形図のように書いていましたが、今は「箇条書き」にしています。小説でいうプロット(ストーリー上の重要な要点)に当たるもので、小説家の石田衣良さんはテレビ番組の取材で、双六のようなマス目の設計図を紹介していました。
「設計図」を書くことで、コンテンツの全体を把握することができます。文章は「書きたいこと」と「書かなければいけないこと」に分かれ、エッセイなどは前者だけでも成り立ちますが、ビジネス用のコンテンツで後者の不在は致命傷です。設計図の作成過程を通じて、過不足をあらかじめ確認するのです。
また、本文のなかで専門用語が繰り返されるなら、できるだけ早い段階でその説明を入れるといった「順序」を確認するのにも役立ちます。
どこから始めてもいい
設計図はできるだけ緻密に書くべき……と、自戒を込めて記しておきます。殴り書きの箇条書きレベルの設計図で見切り発車すると、執筆段階で「迷子」になるからです。殴り書きの乱暴さで、考えのまとまっていない自分自身を欺いているのです。
執筆は己の経験を掘り下げ、語彙から言葉をすくい上げる作業で、必然的に自分と向き合う作業を強いられます。その苦しみから逃れるため、自分は自分を騙します。だから、本稿も何度か書き直しております。設計図には自分を「客観視」し、「監視」する効果もあります。
さて、いよいよ「書き出し」です。やはり宮藤官九郎さんが、同じく脚本家の山田太一さんの言葉として「いちばん時間をかけてこだわるのが書き出しである」と「週刊文春」の連載で紹介していたように、始めの一行にかかる重圧は並大抵ではなく、長文になればなるほど重くなります。
これを「設計図」が助けます。全体像が見えているのですから、どこから書き出してもよく、「最後」から書いて「最初」に戻るのもありです。経験則ながら、結論から書き出そうとした瞬間に冒頭の書き出しが閃くことも少なくありません。もちろん途中からでもOK。慣れてきたら、どんなキーワード検索で記事を読みに来るのか、設計図に書き込んでいくといいでしょう。
今年は長文がブームに……なることはないでしょうが、普遍的に使えるSEOとして、設計図を手元に置いて取り組む価値は小さくありません。
今回のポイント
長い文章を書くためには設計図を用意する
書き始める順番は自由
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