毎年12月に発表される、ユーキャン新語・流行語大賞。第35回を迎えた2018年の年間大賞は「そだねー」が受賞し、eBASEBALLなどで盛り上がりを見せた「eスポーツ」や、Twitterでの呼びかけをきっかけに世界的に広がった「#MeToo」などがトップ10入りしています。
新語・流行語大賞では、大賞やトップ10の前に、まずノミネートされた言葉が発表されます。2018年は30語がノミネートされましたが、本当に流行したのか、疑問の声が上がった言葉もありました。知らない言葉をつい検索した方も多いのではないでしょうか。そこで気になるのが、「新語・流行語大賞にノミネートされると、検索ボリュームはどれくらい増えるのか」という点です。
今回は、流行語大賞にノミネートされていた30語について、検索ボリュームの観点から調査を実施。ノミネートに伴う検索ボリュームの変化などを調べてみました。
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ノミネートされたワードと具体的な調査方法
今回の調査は、ノミネートされた30語について、サジェストキーワードも含めて検索ボリュームを出し、合計数の変動を見てみました。
ノミネート30語一覧
2018年にノミネートされた言葉は、以下の30語です。
- (1)あおり運転
- (2)悪質タックル
- (3)eスポーツ
- (4)(大迫)半端ないって
- (5)おっさんずラブ
- (6)GAFA(ガーファ)
- (7)仮想通貨/ダークウェブ
- (8)金足農旋風
- (9)カメ止め
- (10)君たちはどう生きるか
- (11)筋肉は裏切らない
- (12)グレイヘア
- (13)計画運休
- (14)高プロ(高度プロフェッショナル制度)
- (15)ご飯論法
- (16)災害級の暑さ
- (17)時短ハラスメント(ジタハラ)
- (18)首相案件
- (19)翔タイム
- (20)スーパーボランティア
- (21)そだねー
- (22)ダサかっこいい/U.S.A.
- (23)TikTok
- (24)なおみ節
- (25)奈良判定
- (26)ひょっこりはん
- (27)ブラックアウト
- (28)ボーっと生きてんじゃねえよ!
- (29)#MeToo
- (30)もぐもぐタイム
調査方法
ノミネートされた30語のサジェストキーワードを調査し、月別の検索ボリュームをキーワードプランナーで取得。例えば「そだねー」なら、「そだねー 意味」「そだねー かわいい」などの掛け合わせキーワードの検索ボリュームも含めた合計で、推移などを調査しています。
なお、調査結果が2018年11月までの検索ボリュームになっているのは、2018年12月分の検索ボリュームが反映されるのが早くて2019年1月中旬の見込みとなるためです。
全体の調査結果と詳細
30語の検索ボリューム(サジェストキーワードのボリュームも含めた合計。以下、「合計」と記載)をまとめてグラフに表すと、下記のような図になりました。「仮想通貨 ダークウェブ」と「おっさんずラブ」の検索ボリューム(合計)がかなり大きいことがうかがえます。
新語・流行語大賞ノミネート前後の差分を表にまとめると以下の通りで、ノミネート後に最も検索ボリューム(合計)の数値が増加したのは「仮想通貨 ダークウェブ」でした。ただ、伸び率(10月の検索ボリューム/11月の検索ボリューム)を見てみると、「翔タイム」が42000%と最も大きく伸びています。
「#MeToo」や「TikTok」「おっさんずラブ」など、もともとインターネット上で関心を集めていたキーワードは、検索ボリューム(合計)の増加が見られません。
では、それぞれのワードについて、検索ボリュームの推移を詳しく見ていきましょう。
年間大賞「そだねー」&トップ10
そだねー
「そだねー」は、2018年2月に開催された平昌五輪で銅メダルを獲得した、カーリング女子日本代表チームの試合中の掛け声です。北海道の方言で、「そうだね」を意味します。緊迫した試合の中で聞こえてくる、どこかのんびりとした「そだねー」が話題となり、Twitterでもトレンド入りしました。
検索ボリューム(合計)が最も大きいのは、大会のあった2018年2月です。ノミネート前の検索ボリューム(合計)は6,220であるのに対し、ノミネート後の2018年11月には16,820まで増えています。
eスポーツ
エレクトロニック・スポーツの略である「eスポーツ」は、対戦ゲームをスポーツの一種とする名称です。2018年8月18日から9月1日に開催されたアジア競技大会で日本人の優勝選手が出たことや、IOC(国際オリンピック委員会)会長が競技としての採用について言及したことで注目を集めました。
アジア競技大会eスポーツで日本初となる金メダル獲得が話題を呼び、2018年9月に検索ボリューム(合計)はピークを迎えています。流行語大賞ノミネート後の増加はありません。
(大迫)半端ないって
FIFAワールドカップロシア大会で、2018年6月19日に行われた日本対コロンビアの試合で大迫勇也選手が見事な決勝ゴールを決めた際に話題となった言葉です。元々は、2009年に全国高校サッカー選手権準々決勝で鹿児島城西高校と対戦した滝川第二高校の主将が、大迫選手について話したコメントから派生しています。
※「半端ないって」で調査。
大迫選手がコロンビア戦で華麗なゴールを決めた2018年6月に検索ボリューム(合計)は767,590と最も高くなっています。流行語大賞ノミネート後の検索ボリューム増加は見られません。
おっさんずラブ
「おっさんずラブ」は、テレビ朝日系で2018年4月21日から6月2日まで放送されていたドラマのタイトルです。主人公のおっさんを巡る、おっさん同士の恋愛模様が話題となり、「#おっさんずラブ」はTwitterトレンドの世界1位にもなりました。
ドラマ放送以前からも、ある程度の検索ボリューム(合計)があった「おっさんずラブ」ですが、ドラマ放送中の2018年5月に急激に数字を伸ばし、放送終了後に下降しています。その後も一定の検索ボリューム(合計)は維持しているものの、新語・流行語大賞ノミネートに伴う変化は受けなかったようです。
ご飯論法
国会審議での加藤勝信厚生労働大臣による論点をすり替えた答弁から生まれた新語です。2018年5月に法政大学の上西充子教授が論点ずらしについて記事を執筆したところ、ブロガー・漫画評論家の紙屋高雪さんが「ご飯論法」という言葉とともにリツイートし、広まりました。
元のツイートのリツイート数は特筆するほど多くありません。5月に増加した後、次第に下がっていた検索ボリューム(合計)が、新語・流行語大賞ノミネートの影響を受けて急増していることがグラフからわかります。
災害級の暑さ
2018年7月23日に埼玉県熊谷市で41.1℃という観測史上最高気温が記録され、緊急会見で気象庁が日本の記録的な暑さについて、「1つの災害と認識」と述べたことに由来する言葉です。
ずっと0だった検索ボリューム(合計)の数値が、ノミネート後に一気に伸びている特徴的なワードです。気象庁の会見以降、メディアで「災害級」「災害」という言葉は取り上げられていたようですが、「災害級の暑さ」という言葉であらためて認知されたのは、新語・流行語大賞ノミネートの影響でしょう。
スーパーボランティア
全国各地でボランティア活動を行う尾畠春夫さんを評した言葉です。2018年8月、山口県で2歳の男の子が行方不明になり、県警が100人規模で捜索しても見つけられなかったのを、尾畠さんが捜索から30分程で発見したことが話題となりました。
検索ボリューム(合計)は、小畠さんがニュースで取り上げられた8月に急増。新語・流行語大賞ノミネート後も10,410から13,610とわずかに増加しています。
奈良判定
2016年に岩手県で開催された国体で、日本ボクシング連盟の山根明前会長が圧力をかけ、ルール外の判定で審判が奈良県の選手を優遇していた疑惑が持ち上がったことから生まれた言葉です。2018年7月27日に日本ボクシング連盟の関係者ら333人が提出した告発状をきっかけに、助成金の不正流用や権力の一極集中といった問題と併せて明らかになりました。
告発状が提出された7月から検索ボリューム(合計)が増加し、8月にピークを迎えています。その後、5,580まで減っていた検索ボリューム(合計)は、ノミネート後に12,410まで増えています。
ボーっと生きてんじゃねえよ!
2018年4月からレギュラー放送が始まったNHKの教養バラエティ「チコちゃんに叱られる!」で使われているひと言です。5歳児という設定のキャラクター「チコちゃん」が投げかける素朴な疑問に対し、答えられないでいると「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られてしまいます。
「ボーっと生きてんじゃねえよ!」は、サジェストキーワードも含めて検索ボリュームがありませんでした。
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