「SEOスプリント」のススメ ~マーケティング活動全体と連携する、非サイロSEOの5ステップ
困難な時代に直面し、手っ取り早く結果が出る分野に予算をSEOから振り替える企業が増えている。
しかし、SEOでも短期間で成果を得られるし、小さな予算でも業界のより大きなプレイヤーにも対抗できる。
今回の記事では、SEOスプリント(短期集中のSEO)を実施する際に僕が用いている枠組みを紹介する。次の2部構成だ。
まず、グーグルの機能を活用してインデックス化と上位獲得を迅速に達成するための方法を説明する。
そのうえで、ある眼鏡チェーンで実施したSEOスプリントのケーススタディを紹介する。この事例では、視力検査の予約が73%増加した。
SEOスプリントで成果を出すためのグーグル理解
しかし、その前にまず、グーグルSERP(検索結果ページ)1ページ目のレイアウトがどうなっているのかを見ることにしよう。もちろんクエリの種類にもよるのだが、大半のクエリでどうなっているのかだ。
グーグルがユーザーのためにデザインするとき、SEOのことなどまったく考慮してくれない。そのため、この数年でSERPが「10件の青いリンク」から「ポータル」に移行するなかで、1ページ目のオーガニックな検索結果は、少々下に追いやられてしまった。
ざっと見て、次のような特徴がわかる:
現在は、検索結果ページのトップに位置する4件のGoogle広告が、スクロールしなくても最初に見える「ファーストビュー」のかなりの部分を占めている。
画面がGoogleショッピング広告に覆われることも多い。
広告以外にも、強調スニペットのほか、グーグルのプラットフォームであるYouTubeやGoogleマップなどのSERP機能が1ページ目にはひしめき合う。
業界によっては、Google FlightsやGoogle Hotelsのような予約検索エンジンがトップにくる場合がある。
この数か月はPCからのトラフィックが増えているが、全体的にはモバイルへの移行が進んでいる。758ピクセルしかないiPhoneの画面では、オーガニックな検索結果がファーストビューに表示されるのは不可能に近い。
われわれSEO担当者は、SEOのやり方を考え直す必要がある。
グーグルの問題点
みなさんはCTRの数字を把握しているだろうか。
ある検索クエリで1位になったら、クリックスルー率(CTR)はどれくらいだろうか。20%? それとも25%? CTRのベンチマーク研究ではこれくらいの推計値になっていることが多い。しかし、実際のところ、競争が激しいクエリだと実際のCTRはずっと低い。つまり、みなさんのビジネスケースは間違った数字に基づいている可能性がある。
僕なら、ブランド名を含まないキーワードで1位を獲得した場合のCTRを知るにGoogle Search Consoleのデータを確認することをおすすめする。
たとえば小売業界。僕のあるクライアントは月間検索ボリュームが2800回程度の一般的な語句で検索ボリューム1位を維持している。このCTRはどれくらいかわかるだろうか。
なんとオーガニック1位でもCTRは3.8%しかないのだ!
CTRが低いのはこのクライアントだけではない。調べてみると、このクエリのCTRは3位が1.1%、4位が2.4%であることが判明した。
CTRがもっと高かったころ、僕はビッグキーワードを追求した。このいわゆる「ビッグキーワード」時代の僕のピークは、デンマークのグーグルで、銀行業界の最大のキーワード「Ln(ローン)の1位を獲得したことだ。グーグルの3ページ目のいちばん下から1年半をかけて1位に上り詰め、クライアントの投資は十二分に元が取れた。
このときの戦略は正攻法で次のような施策に注力していた:
- テクニカルSEO
- オンページ要素
- オフページ要素
要するに僕らが常に取り組んできたSEOだ。しかし、サイロ化した(縦割りでチーム間の連携がない)“SEOだけ”の仕事に僕の不満は募った。分野や部門を横断して協力すれば、もっと良い結果をもっと早く得られるのにという思いがあった。
2018年10月、新たな発見が、SEOに対する自分の考え方を書き換えるきっかけになった。結果、SEOとほかのマーケティング活動とを連携させる新たな枠組みを構築するに至った。
重要な発見:グーグルのインデックス化と上位掲載がスピードアップしている
時をさかのぼって2000年、グーグルのインデックス更新は5~8週間ごとだった。このためSEOは忍耐が大切で、長期プロジェクトになる分野だとされていた。こういった理解は、業界内ではまだ一般的であり、結果が出るまでに1年や2年はかかるとクライアントに忍耐を求めているSEO業者がいまだに多い。
しかし、正しくやれば今はもうそんなことはないのだ。
2018年に時計を進めよう。僕はこの年、グーグルがギアを切り替えたことを発見した。
2018年10月からマーケティングキャンペーンを開始する予定のクライアントがいた。うちのSEOチームは、誘われたのが遅かったため、クライアントと顔を合わせたのがキャンペーン開始のわずか2週間前だった
この期間で成果を上げられると思うほど楽観的ではなかったが、とにかくやってみることにした。
そして、結果に驚いた。インデックス化されていない状態から20日以内にメインのキーワードでトップ3に入ったのだ。
これには当惑した。僕が知っているグーグルではなかった。
この発見は大きかった。だとすると、SEOを従来のサイロから解放し、ほかのマーケティング活動に組み込めるのだ。
こうしてSEOスプリントのアイデアが生まれた。
SEOスプリントとは?
少し立ち止まって考えほしいことがある:
マーケティングキャンペーンでSEOが無視されることは、どれくらいあるだろうか?
SEOのデータは実はマーケティングの中核要素になれる。SEOのデータによってグーグル検索者の心の中が明らかになるからだ。このデータは、定性調査でもなかなか手に入らない。
メンションからリンクへの転換をPRキャンペーンの何か月も後になって試みたことがないだろうか?
取り組んだSEOプロジェクトでPPCチームにいっさい相談しないことがなかっただろうか?(コンバージョンにつながるキーワードなど、SEOの仕事に使える貴重な情報をPPCチームは持っているのに)
ビジネス戦略をしっかり把握せず、その結果としてSEOタスクの優先順位を知らないまま、長大なToDoリストを使って技術監査を実施したことがないだろうか?
こうしたことは、SEO業務がサイロ化してしまっている(または自らサイロ化してしまっている)例だ。サイロ化によって知識が無駄になり全体像が見失われる。そうではなく、SEO活動はマーケティング計画と歩調を合わせて実施するべきだろう。
ビジネス戦略を支えるキーワードや検索意図でグーグル検索の上位に入るには、マーケティング部門とのチームワークが欠かせない。
ここにSEOスプリントが関わってくる。会社のビジネス戦略に基づいて、SEOスプリントをマーケティングミックスに組み込むのだ。SEOスプリントはマーケティングキャンペーンを支えるSEO活動であり、キャンペーンでは特定のカスタマージャーニーのために、グーグルの最重要タッチポイントにおけるプレゼンス構築を目指すのだ。
SEOスプリントは以下の5つのステップで構成される
- 戦略
- データ
- インサイト
- 実行
- 計測
各ステップは後半のケーススタディで掘り下げることにしよう。
成功するSEOスプリントの秘訣
2018年の終わりにほかにもSEOスプリントを実施したことで、SEOには別の取り組み方の可能性があることが自分のなかで証明された。
たとえば、新年のキャンペーンでは、インデックス外だったクライアントのメインキーワードが、10日も経たずに1ページ目のいちばん下まで順位を上げた。トップ3には入らなかったが、買い物をしようとしているオーディエンスから6%のCTRを得られた。
では、短期間でグーグルの順位を上げるにはどうすればいいのか。リンク、コンテンツ、ページスピードに注力するのだろうか。それも重要な要素ではあるが、それだけではない。
順位決定のいちばんの要因は競争だ。1位になれるかどうかは競争がカギを握っている。このことを直視しよう。競争相手がこちらとは違う方向性でSEOに注力している場合、順位を上げるには競争がとても重要になる。
僕の経験上、上位いるのがメディアサイトやフォーラム(掲示板)であるのは良い兆候であり、競争があまり激しくないことを示唆している。理想的なシナリオは次のような状態だ:
- 競争がほどほどである
- グーグルの検索結果の変動性が低い(大きく変動しない)
この2つが満たされていることを、グーグルの順位をすぐに上げ、長いあいだ上位を維持できる状態の目印にしている。
どのキーワードでも上位を目指すべきではあるが、覚えておいてほしいのは、このセオリーだ:
まずは競争が少ない重要キーワードを見つけて優先し、早急に結果を出すことが大切。
結果をだしてマーケティング部門も納得して地歩が固まったら、局所的なオーソリティを増強して競争が激しいキーワードを狙えるようになる。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。SEOスプリントについて説明した今回を踏まえて、後編となる次回は、ケーススタディとしてデンマークの眼鏡店チェーンで実施したキャンペーンについて見ていく。→後編のSEOスプリント事例を読む
ソーシャルもやってます!