「ページオーソリティ2.0」がいよいよ登場、検索トラフィック獲得の予測がより正確に
SEOの成果を判断する指標としてMozが提供している「ページオーソリティ」が、順位だけでなくオーガニック検索トラフィックの獲得予測を軸にリニューアルしようとしている。よりビジネスにおけるSEOの価値を明確にするその指標の裏側とは?
現在、ページオーソリティ2.0の公開は、残念ながら延期しています。予期せぬ問題が生じ、その調査が必要であるためです。厳格なテストの進捗状況とスケジュールの最新情報は、こちらのブログ記事でお知らせします。
みなさん、こんにちは。
わたしはラス・ジョーンズ。Mozで非常勤の検索サイエンティストを務めている。Mozがこの9月、独自の指標であるページオーソリティ(PA)の大幅なアップデートを公開することを発表できることを嬉しく思う。
ページオーソリティは、関連指標であるドメインオーソリティ(DA)ほど注目を浴びてこなかった。しかし、検索結果ページ(SERP)との相関度ではページオーソリティはドメインオーソリティを常に大きく上回っており、検索順位の予測材料として優れている。検索エンジンが把握しているリンクグラフの変化に伴い頻繁に上下するものだったが、今回、まったく新しい算出方法を導入する。
変更点
被リンク数をいくつかの方法でチェックし、それがSERPとよく相関していることを期待する ―― それだけでSEOのリンク評価が済む時代は、はるか昔に終わっている。われわれはMozらしく、優れた結果を求めてページオーソリティの新しい計算方法を開拓していく。どのように変えようとしているのかを、いくつか紹介しよう。
訓練セット
これまで、ページオーソリティのモデルの訓練にはSERPだけを使ってきた。
わかりやすくてシンプルだが、こうしたいという点がたくさん残った。新しいページオーソリティに向けてまず取り組んだのは、訓練セットの再定義だ。
新しいページオーソリティでは、
× あるページがほかのページを検索順位で上回る能力に基づいてモデル化する
のではなく、
○ 検索トラフィックやCPCなどいくつかの指標に基づいてページの価値を積算し、それを基に訓練する
ようにした。実際に起こっていることを単純化し過ぎているところが少しあるが、とにかくこの方法だと、同じSERPに表示されるわけではないページ同士をうまく比較できるようになる。
たとえば、次の2つのページがあるとしよう:
- あるトピックに関するページA
- 別のトピックに関するページB
従来のモデルだと。この2つのページは同じSERPに現れないため、比較ができなかった。しかし新しい方法では、機械学習によるモデルでほかのどのページとも比較できるように、各ページに抽象値を付与する。
再訓練セット
指標を作る際にとりわけ大きな問題になるのは、そのモデルで「何がわかるか」ではなく、「何がわからないか」のほうだ。
ページオーソリティを算出するモデルの訓練にSERPを使うならば、まず考慮すべきは「SERPに登場しないURL」だろう。
SERPに登場しないURLにどんなものがあるか、少し考えてみてほしい。たとえば、次のようなものが考えられる:
- 画像など多くのバイナリ(非テキスト)ファイル
- ペナルティを受けているページ
この問題に対処するための一般的な解決策として、次のようなことを行った:
- モデルを実行する。
- 外れ値を割り出す(たとえば、実際は検索価値がないのにページオーソリティが高いURLなど)。
- そのURLを訓練セットにフィードバックする。
- そのうえでモデルを再実行し、モデルが間違いを学習できるようにする。
これを必要なだけ繰り返せば、外れ値の数を減らせる。
連続性よりも正確性を重視する
「指標の変更変更することで、顧客にどのような影響があるか」について、Mozは常に考えてきた。連続性と正確度はトレードオフの関係にあるが、今回のアップデートでは、ページオーソリティの正確性を重視することにした。
これにより、みなさんのページオーソリティが通常より大きく変わる可能性があるため、独立したスコアとしてではなく、競争相手との関係でページオーソリティを考えることが、これまで以上に重要になる。
ページオーソリティ時代にどう行動するか
ページオーソリティが変わることを、関係者、チームメンバー、クライアントに連絡する
ドメインオーソリティのアップグレード時と同じように、ページオーソリティの変化に驚くユーザーが出てくることだろう。まずは、周囲の関係者に、次のようなことを周知させよう:
- 新しいページオーソリティは以前よりも正確に(そして有用に)なったこと
- 測定の際は競争相手との比較がいちばん大事であること
前より劣ったページオーソリティをわれわれが公開することはない。新しいページオーソリティの数値がかんばしくない場合も、「ページの評価が悪くなった」と考えるのではなく、「SERPにおけるページのパフォーマンスについて、これまで以上に優れたインサイトが手に入るようになった」と考えてほしい。
ページオーソリティを、ドメインオーソリティと同じく相対的な指標として使う
ページオーソリティは本来、比較に用いるものだ。
そのため、自分のサイトのあるページのPAが70だとしても、競合している相手のPAがわからなければ何の意味もない。希望するすべてのキーワードで検索上位に入れるかもしれないが、WikipediaやQuoraとの競争になり、順位がとても低くなる可能性もある。
URLのページオーソリティを分析する際には、競争相手のURLという適切な文脈の中に置くことから始めるべきだ。
ページオーソリティはグーグルと歩調を合わせて変わっていくものだと認識する
ドメインオーソリティの際に明らかにしたように、新しいページオーソリティについても、公開してあとはそのままということにはしない。もっと良い機能やモデルが新たに見つかれば、モデルは継続的に改善していくつもりだ。
モデルの変更に伴う影響は、リンクプロファイルが不自然なページを中心に出るだろうが、少しくらい上下することになるとしても、われわれはグーグルの新しいアルゴリズムに対応していく。
公開の時期
新しいページオーソリティは2020年9月30日の公開になるだろう。それまでにMozが用意しているリソースをよく調べて、クライアントやチームメンバーとの話し合いを準備し、実際に進めていくことをおすすめする。新しいページオーソリティの公開後、10月15日には、わたしも活用法を議論するウェブセミナーを開催する。改善した新しいページオーソリティをMozもとても楽しみにしているので、みなさんも期待してほしい。
新しいページオーソリティの経過報告
同様の検索順位にある2つのURLどちらがオーガニック検索トラフィックを多く獲得するかの予測において、新しいページオーソリティは高い精度を示した。
あるURLが他のURLよりも高い検索順位を示すかに関して、新しいページオーソリティは、多くの順位差において、高い精度または同等の精度を示した。
しかし、著名ブランドなどのナビゲーショナルクエリのもつ非常に多い検索ボリュームが、新しいページオーソリティの精度に影響を与えている部分がみつかった。
次の図は、リンク元ルートドメイン名の数を縦軸に、ページオーソリティ値を横軸にとって、散布図で示したものだ。
多くの部分は、リンク元ルートドメイン名数とページオーソリティ値の相関関係が想定どおりの状態を示しているが、そうではない部分がある:
- 外れ値 ―― ページオーソリティ値から想定されるルートドメイン名数の範囲を超えるものがある(特にページオーソリティ99に顕著)
- ギャップ ―― 想定どおりの範囲と外れ値の間に、データがプロットされていない隙間がある
これらの例外をわかりやすく示したのが次の図だ。
こうしたデータをもって、新しいページオーソリティのモデルが以前のものよりも精度に劣ると判断できるわけではない。しかし、データを参考にする人の判断を誤らせる余地が大きいとMozでは判断した。一部分のデータがおかしな数値を示す傾向が強いよりは、全体的にほんの少し外れているほうがSEOにとっては使いやすいはずだ。
こうした数値が出る原因として、サイトトップページのページオーソリティ値が高くなりがちだということは判明しており、その原因がトレーニング用データにあるだろうこともわかっている。
こうした問題を解決するためのトレーニングをMozでは現在進めており、データを参照する人が適切な判断をできる状態になった時点で新しいページオーソリティ(PA 2.0)をリリースする予定としている。
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