SNS初心者&迷えるTwitter担当者必読! 東急ハンズSNS担が推薦する”中の人”が読むべき本4冊
顧客とのコミュニケーションに欠かせない存在となったSNS。とりわけ自由度の高い「Twitter」は、多くの企業で導入されている。とはいえ、十分に活用できているという方は決して多くはないだろう。
ビジネスで「Twitter」を活用し、何らかの成果を上げたいと考える方に示唆やヒントを与えてくれる本について、日本企業におけるTwitter活用の先駆的存在である、東急ハンズの皆さんにご紹介いただいた。
撮影:永友ヒロミ
ルールを設けず成果を出す「東急ハンズ流Twitter活用術」
東急ハンズの公式アカウントは、山田さんの所属する広報の3名が運営する「東急ハンズ広報(@HintMarket)」、本田さん小野さんらデジタル戦略部3名が運営する「東急ハンズ(@TokyuHands)」、そして各店舗や各サービス担当者が運営するものを数えると実に30以上に上る。
広報は企業としてのお知らせ、東急ハンズアカウントは顧客とのコミュニケーションというように、それぞれ役割を明確にし、情報の出し分けを行なっています。ただし、共通しているのは一方的な“宣伝”にしないこと。お友だちとして感じてもらえるようなスタンスで、お客様にとって面白い・楽しい・役立つ情報を意識して発信しています。近年、新店舗でもオープン前からアカウントを開設し、お客様の期待感を高めるような取り組みも積極的に行うようになりました(山田さん)
いずれのアカウントも、あえてルールを設けずに担当者の裁量で自由に発信しているというが、万単位のフォロワーを獲得し、「企業におけるTwitter活用のトップランナー」としてメディアに取り上げられ、注目されることも多い。
まさに企業におけるTwitter活用のお手本ともいうべき存在だが、その担当者はいったいどんな本を読み、参考としてきたのか。特にSNSの担当になったばかりの方、効果が出ずに悩んでいる方にむけて、オススメの本を選んでいただいた。
1冊目 「SNSって何するんだっけ?」という方のための福音書
まず初心者向けに紹介いただいたのは次の本。
- 『デジタル時代の基礎知識 SNSマーケティング第2版~「つながり」と「共感」で利益を生み出す新しいルール~』(林雅之、本門功一郎:著 翔泳社:刊)
SNS活用のエキスパートである事業会社の社長と、業界協会理事の共著になる。まさにSNS入門書、いや“福音書”といえる存在だと、本田さんはいう。
若いからとか、インターネットに詳しそうだからというだけで、いきなりSNS担当者にされた人は多いと思います。でも、社内に教えてくれる人がおらず、ノウハウもない…。そんな方が“救いを求める”書といえるでしょう。
SNSの基礎の基礎にはじまり、Twitter、Facebook、Instagramなど各サービスの使い方についても紹介されており、自社にとって使いやすいSNSとそうでないSNSを見極めるのにも大変参考になるはず。テクニカルなことも含めて、ベースとなる基礎知識や全体像を“短期間”で掴むことができると思います(本田さん)
ちなみに本田さん自身がTwitter担当になったのは2009年。多くの企業ではTwitterを遊び道具と認識していた時代だ。部署内のコミュニケーションツールとして使っていたTwitterを、当時の上司が「使えそうだから」と半ば非公式でアカウントを立ち上げたことがきっかけだった。
担当になってからは、まさに手探りで試行錯誤の連続でした。こんなふうに体系立ててまとめられた本があれば、どんなにか助かったろうに…と今更ながらに思いますね。実は、本が出る前にゲラの段階で読ませていただき、フィードバックを求められたのですが、本当によくまとまっていて「自分でもこんな本を書きたかった〜」と著者に嫉妬しました(笑)(本田さん)
2冊目 思わず胸アツ!このマインドに共感できるならSNS担向き
続いて、SNSの運用にも少し慣れてきたという方に紹介したいのが次の本。
- 『寄り添うツイッター わたしがキングジムで10年運営してわかった「つながる作法」』(キングジム公式ツイッター担当者:著 KADOKAWA:刊)
仕事としての在り方に不安を感じたり、意義を見失いそうだったりした時におすすめだという。
Twitter担当者がどんな思いで仕事をしているのか、どんな経験をして、どのように知見として積み上げてきたのか。それがとてもわかりやすく整理され、読みやすい言葉で書かれています。もう激しく共感できることばかりで、安心感と親近感がこみ上げてきましたね。経験者としては十分に腹落ちしますし、これから担当になられる方なら、こんな気持ちで取り組んでもらえればと思います(本田さん)
拳を握って、熱く語る本田さんは「全編、うなずくことばかりだった」という。
本書を読めば、「キングジムさんがフォロワーさんとのコミュニケーションを大切にしていること」がよくわかります。その象徴的な投稿が、「【ゆる募】キングジム公式だけど質問ある?」で始まるフォロワーさんとのやりとり。これって、何十万人ものフォロワーさんに向けたものですから、すごく大変だと思うんですけど、いつも楽しそうにやりとりをしていらっしゃいます。
私も見習いたいと思って、コロナ禍で世の中全体が意気消沈している中、少しでも元気を出そうと「質問ある?」をやってみました。結果ですか? すごく大変でした(笑)。でもすごく楽しかったし、元気が出ました(本田さん)
また、著者がTwitterの中の人である自身を「サザエさんのウキエ姉さん」に例えて、「ふとした時に思い出してもらえる身近な情報通」であろうとしている距離感の取り方などにも共感したという。
逆にいえば、この本を読んでもピンとこないなら、SNSの中の人には向いていないかもしれないですね。若い人は学生時代からSNSをプライベートで使っている人が多いので、テクニカルな部分は問題ないでしょう。しかし、会社の看板を背負って顧客とコミュニケーションをとることの意味や価値については、しっかりと理解してもらう必要があります。
そこについての理解や共感が得られていないと、仕事としても楽しくないでしょうし、成果を出すのも難しいだろうなと。小野はすぐに読み終わって反応も良かったので「おっ、これはイケそうだな」と確信しました(笑)。実際、今すごくいい仕事をしているんですよ(本田さん)
3冊目 他社戦略が参考になる、そして仲間に入りたくなる
本田さんに「東急ハンズの“中の人”を正しく継いでいる」と絶賛される小野さん。「企業のSNSの活用」について興味を持ち、施策としてのバリエーションを知りたいと手にとったのが、複数企業の事例がのっている次の本だ。
- 『自由すぎる公式SNS「中の人」が明かす企業ファンのつくり方』(日経トレンディ、日経クロストレンド:編集 日経BP:刊)
まだ担当になる前でしたが、東急ハンズのSNS担当としてのマインドセットやユーザーとの距離感などについて、他社の事例を見ることで、違いが見えてくるんじゃないかと思ったんです。特に面白かったのは、セガさんのゲームのナレーションのようなツイート。
そのほか、紹介されている6社についても個性が溢れていてそれぞれ面白かったですね。いずれの担当者も異口同音に“同じこと”をいっていて、先ほどのキングジムさんとも通じるものがありました。それは自分がこれからやっていくことにも共通するんだろう、と確信が持てました(小野さん)
インターネットという広い海で、新しい道具を使いながら、それぞれ同じ思いで同じことをしているという安心感。企業によって手法や表現は異なっていても、ユーザーとの共感性を求める気持ちは変わらない。そうした同志のような感覚は、仕事をする上で大きな励みになったと小野さんはいう。
実際、Twitterの担当者は企業の壁を越えてつながりやすい。外食産業が連携した「肉レンジャー」、ヴィレヴァン×ハンズによる「ツイッター大喜利」など、さまざまな勝手コラボが行われている。直近も「#名前一文字変わってても気づかないだろ」には、いろいろな企業が参加し、東急ハンズも「八ンズ」として参戦した。
Twitterの空気感というか、文化、マナーのようなものを感じ取ることもできるかもしれません。決してハウツーではないので即効性はないかもしれませんが、さまざまな企業が場を楽しむことでコミュニケーション効果を上げている、という実感が得られると思います(小野さん)
公式が発信しても買ってもらえない時代の戦略づくり
そして近年、小野さんがSNSマーケティングの手法として注目しているのがWeb担当者フォーラムでもおなじみのホットリンク社が提唱する「ULSSAS(ウルサス)」だという。ULSSASとは、「UGC(User Generated Contents:ユーザー投稿コンテンツ)」を起点にした購買行動モデルのこと。その目的や注目される理由、そしてUGCを生み出すための工夫などをまとめた次の本が出版されている。
- 『僕らはSNSでものを買う』(飯髙悠太:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊)
会社がSNSで自社の製品やサービスの宣伝をすることについて、プラスどころかマイナスに受け取られる時代です。一方、ユーザーが発信した情報ならば、自然と拡散されてファンが増えていく。UGCを起点とした手法にとても魅力を感じました。では、ユーザーのUGCを起こすにはどうしたらいいのか、小売業である東急ハンズはどんなことができるのか、改めて考えるきっかけになりました(小野さん)
その思索を通じて、改めて答えの1つとして導いたのが、「自らユーザーとなり、自分目線で発信すること」だという。実感の伴わない広告的な文言では、会社が用意したLPに誘導し、購入してもらおうという気持ちが見透かされる。自分で使って、主観に基づいた実感を情報として提供すると、共感を得やすいというわけだ。
私が担当する「東急ハンズ」のアカウントは、お客様とコミュニケーションすることが目的ですが、向き合う形ではなく、お客様側に立って気持ちを共有することだと思っています。実際、「いいな」と思った商品は自腹で買うことが増えたので、お財布的にはつらいものがありますが(笑)、投稿する内容の熱量は確実に増えますね。それがULSSASを動かす動力になるように感じています(小野さん)
以上、4冊の推薦本は、企業がSNSを利用する目的や担当者としての考え方などが主たるテーマではあるが、実は細かなテクニックやノウハウも数多く盛り込まれている。とはいえ、「テクニックは使う意味を理解して使わないと価値がない」(本田さん)というのも明白な事実。SNS担当者としてのマインドを追体験で体得しつつ、スキルアップ、レベルアップしていくためにも、次の週末に読んでみてはいかがだろうか。
*本インタビューは、撮影時のみマスクを外しています。インタビュー時には、距離を保ってマスクを装着して、コロナ対策に考慮した取材を行っています。
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