SEOに投資しないことで起こりうる最悪のコストとは? ―― SEOのROI(後編)
この記事は前後編の2回に分けてお届けしている。
前回はSEOによって得られる潜在的な利益の計算について説明した。後編となる今回は、「ROIの予測と検証」や「SEOに投資しないことで生じるコスト」について考えてみよう。
SEOのROI
ROIの予測と検証
ROIを予測して証明するやり方のなかで、特に便利で効果的なツールを改めて紹介したい。すでにSEOに利用している人もいるかもしれないが、それはGoogleアナリティクスだ。
Googleアナリティクスで自分のビジネスにとって重要な目標やコンバージョンを追跡していない人は、SEOの取り組みが利益に及ぼす影響を把握する機会を逃していることになる。
Googleアナリティクスを適切に利用すれば、SEOのROIを、
- 無料
- 比較的簡単な方法
で正確に把握できるのだ。
具体的には、Googleアナリティクスにログインしてビューを選んでから、[管理]内のビューの項目にある「目標」を選び、目標(コンバージョン)設定をカスタマイズしていく。
目標設定では、たとえばユーザーが以下のような操作を完了するたびに、目標達成として記録できる:
- ページを一定の位置まで下にスクロール
- ボタンをクリック
- 購入完了
指定した期間の目標達成状況は、レポートの[コンバージョン]メニューですべて確認できる。
Googleアナリティクスでは、コンバージョン1件あたりの価値(たとえば売上金額)も設定できる(前述の目標設定で「目標の詳細」の「値」に金額で指定)。この設定をしておけば、オーガニック検索トラフィックだけに絞り込んで、達成した目標ごとに1か月あたりの具体的な売上を把握できる。
自分の運営しているサイトがEコマースでないため価格が明確でない人も多いだろう。しかし、目標や達成条件に何らかの金額を設定できるなら、役に立つことに変わりはない。Googleアナリティクスに設定する各目標は、最終的な売上や利益に結びつくKPIであるはずなので、仮説としてでも何らかの金額は設定できるはずだ。
また、商品を販売している人なら、Googleアナリティクスの[コンバージョン]メニューにある[eコマース]から、次のような有益なデータを得られる:
- 月ごとの商品の販売状況
- 前月比で最も効果を上げているクーポン
- アフィリエイトコード
競合他社との比較
SEOのような取り組みに投資することが良いアイデアだと自分や上司に納得させるには、上述のように金額や利益の観点から話すことが最善の方法という場合もある。
しかし時には、自分が検討していることを競合がすでに実施していて、すでに成果を上げていることを認識した方がいい場合もある。
たとえば、SEOをまだ進めていない企業が、業界や競合が次のような状況だと知ったらどうだろうか:
この時点で、ウェブサイトを持っていながらSEOに投資していない組織は、かなり後れを取っている。
現在では、マーケターの60%がインバウンドマーケティングにおける最大の関心事にSEOを挙げている※1。
また、フォーブスは次のように示している:
米国だけで毎年800億ドル以上がSEOに投じられており、この金額は増え続けている
ここからわかることは、言うまでもなく、SERPのスペースを占有している競合に対抗したいなら、相手と同じ土俵で勝負する意志と能力を持つ必要があるということだ。
ただし、これとは別に最近のある調査※2が興味深い。
SEOに投資していると答えたスモールビジネスは49%しかいなかった
近頃では購入行動のほぼ100%が何らかの形でオーガニック検索に絡んでいるというのに、そうしたバイヤージャーニーに組み込まれるのに必要な取り組みを実施している米国のスモールビジネスが半数にも満たないのだという。
もし君がスモールビジネスを運営しているか、代理店として中小企業と仕事をしている立場なら、最大の競合はすでにSEOに投資していると考えて間違いない。競争に加われば、投資という賢明な選択をしなかった他のスモールビジネスには勝てるかもしれない。
こうした統計には多くの可能性が見て取れる。
行動しないことによるコスト
ROIの逆は、「投資しないことによるコスト」、つまり行動しないことによるコストだ。先ほど、そうしたコストの1つとして、SERPで競合に負けることについて見た。
しかし、ツール群に投資せず、SEOの代理店を雇わず、あるいはSEO専任のチームを置かないことを選択した場合に直面するもう1つのコストがある。それは、SEOの定期的なメインテナンスに注意を向けない結果として、次のような事態になることだろう:
- ウェブサイトを停滞させてしまう
- 最悪の場合にはウェブサイトを劣化させてしまう
- カタログから商品を削除すると、内部リンクはすぐに古くなってしまう
すぐに古くなってしまうのは、オンページコンテンツも同様だ。たとえば、リンクを貼ってくれた他のサイトから貴重なトラフィックを得ていたとする。しかし、SEOへの配慮なしに公開済みのコンテンツを変更してしまうと、そうしたリンクは古くなってしまうかもしれないし、リンク元サイトの管理者がリンクを削除してしまっても、それにすら君は気づかないかもしれない。
サイト全体の移行や内部アーキテクチャの再構築などを行う必要がある場合、SEOに関する重要な懸案に注意を払わなければ、悲惨な結果を招きかねない。
社内のSEO担当者やSEO会社を雇うことを検討したことがある人は、そうした定期的なメインテナンスに自ら気を配る時間がないことがわかっていたからだろう。
こうした投資に取り組まず、誰の支援も受けなければ、サイトは問題を抱えることになる。
結論
君が自覚するべきこと、あるいは上司に伝えるべきこととして最も重要な注意点は「SEOには時間がかかる」ということだ。
利益について考え、それらの利益を予測してみるのは本当におもしろいし、潜在的な結果には胸が躍る。しかし前編の例で、チェルシーが取り組んでいたページの改善に必要な作業には時間がかかったことを覚えておいてほしい。
またグーグル側が処理をして、その処理が実際にSERPでの表示順位やその結果としてのクリック率に影響を与えるまでには、さらに多くの時間がかかった。つまり、ツール群に投資した時点から、実際にリターンを得るまでの時点には、開きがある。これはビジネスオーナーにとって、そして特に自らの仕事の正当性を証明しようとしているSEO担当者にとって、非常にもどかしい。
だからこそ、契約締結のプロセスで小切手にサインする前に、タイミングや結果の妥当性に関する期待を管理することが非常に重要となる。それにより、待つことで生じる不満を最小限に抑えることができる。
そのうえで、次のようなSEOの取り組みができれば、同意を得られ、上司に満足してもらえるだろう:
- ステークホルダーに同じ認識を持ってもらう
- 可能な限り最善かつ効果的な結果を得るために学んだ優れた戦術を使う
次のプロジェクト提案が、承認を得やすくなることを願う。
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