会社の顔になる! 広報の基本のキから、先を行く広報戦略までおさえられる7冊!
バンダイナムコホールディングス、バンダイナムコアミューズメントの広報を兼務されている小野薫さんは、広報経験20年以上。各種メディア対応、ブランド戦略策定、CSRマネジメントと、さまざまな切り口でコーポレートコミュニケーション業務に携わってきた。
会社や世の中の変化にあわせて、小野さん自身、その時々で必要な情報を収集し、学んだことを実務に活かしてきたそうだ。そこで今回は、小野さんに広報初心者から中級者に向けておススメの書籍を教えてもらった。
*写真:永友ヒロミ
バイブルとして、常に手元においておきたい2冊
大きな組織の場合、人事異動で他部門からいきなり広報に配属されることがある。小さな組織では、Web担当者が広報を兼任することもある。これまでPRのための文書を書いた経験がほとんどないのに、プレスリリースを書かなければならず、どう書けばよいのか、検討もつかないということがあるだろう。そんな場合に頼りになるのが次の書籍だ。
- 1冊目:『広報担当者のためのプレスリリースの書き方』(共同通信社、共同通信PRワイヤー、電通パブリックリレーションズ:編集 共同通信社:刊)
業務としてプレスリリースをどういう風に書けばよいかを、簡潔にポイントを抑えて紹介している。
薄い本なので読み手のハードルが低く、しかもプレスリリースの"基本のキ"がまとまっている良書です。宣伝とは違うプレスリリースをどう書くのか、記者の目に留まる見出しの付け方、写真の扱い方、締切りなどスケジュールに関することなど、実務に即した内容が書かれているので、手元に置いておきたい一冊です(小野さん)
- 2冊目:『記者ハンドブック 第14版 新聞用字用語集』(一般社団法人共同通信社:編著 共同通信社:刊)
おススメの2冊目は、用語や漢字の使い方をまとめた新聞用字用語集だ。ちょうど、今年改訂版の第14版が発売された。例えば、「下さい / ください」「超える / 越える」の使い分け、「恐い→怖い」「縮少→縮小」の統一などが辞書的にまとまっている。
プレスリリースは、主に新聞社、通信社などの報道メディアにニュースとして取り上げてもらうために作成するものです。取り上げてもらう可能性を高めるためにも、彼らのルールに則って作成しておくべきです。記者ハンドブックを手元に置いておき、用語の使い方に迷ったときにさっと確認できるようにしておくとよいでしょう(小野さん)
読まれる、取り上げられる! 戦略的なプレスリリースのための2冊
基本をおさえて、体裁を整えたプレスリリースが用意できるようになったら、次のステップとして、ニュースに取り上げてもらう、さらに取材をしてもらうための施策を知っておきたい。そのために役立つのが次の1冊だ。
- 3冊目:『サニーサイドアップの手とり足とりPR』(吉田誠、亀山一樹、サニーサイドアップ社内マニュアル編集チーム:著 クロスメディア・パブリッシング<インプレス>:刊)
プレスリリースの配信だけでなく、「プレス向けの発表会を行う」「メディアキャラバンを行う」といった際にはどういう準備をするのか、具体的な実務が紹介されています。著者のサニーサイドアップはPR会社で、彼らのノウハウを惜しみなく出しています。一人で広報を担当している人でも、これを読めばやるべきことを把握できるでしょう(小野さん)
- 4冊目:『新 プレスリリース道場』(井上岳久:著 宣伝会議:刊)
4冊目は、月刊誌「広報会議」の人気コーナー「実践! プレスリリース道場」を書籍化した第二弾。実際のプレスリリースをケーススタディとして、その良し悪しを解説しており、さまざまな業界の大企業から中小企業までのプレスリリースが取り上げられている。さらに、そのプレスリリースがどんな風にメディアに取り上げられたのかまで紹介している。
プレスリリースの着眼点、表現方法、仕上げ方まで具体的な指南があって参考になります。他社の良いところを、自社のプレスリリースを書くときのヒントにできます(小野さん)
広報担当者としてさらにレベルアップするための3冊
広報担当者としての基礎知識が身についたら、さらにその先を目指してスキルアップが必要だ。そんな時に参考になる書籍を紹介してもらった。
- 5冊目:『ナラティブカンパニー 企業を変革する「物語」の力』(本田哲也:著 東洋経済新報社:刊)
5冊目は、「時代に合わせ進化する! 成長し続けるバンダイナムコの広報姿勢」や「上から目線のマーケティングはもう古い! 企業と顧客が共創する「ナラティブ」が注目される理由」でも紹介した書籍だ。著者である本田さんはセガから独立された方で、本書でいうナラティブとは、企業と顧客との「物語的な共創関係」を指している。
著者の本田さんは、ナラティブとストーリーとの違いの1つに、「演者」つまり主人公が異なる点をあげられています。コロナ禍でコミュニケーションが変わり、情報の送り手と受け手が同じ方向を向いて関係を構築し、価値を物語的に一緒に紡いでいく時代になっています。SNSはその代表ですが、「企業対お客様」といった関係を超えるコミュニケーションを考える上で役立つ本です(小野さん)
- 6冊目:『広報DX 次世代の社会を担う情報発信の新指針』(秋葉賢也:著 宣伝会議:刊)
6冊目は、「広報DX」というタイトルに引かれて手にとった本とのこと。この書籍は自治体広報がメインで、企業広報とはアプローチが異なるが、そこが参考になるという。
自治体は、お子さんからお年寄りまで幅広い世代、ターゲットを対象として発信しています。これまでの企業広報とは異なる視点を与えてもらえました(小野さん)
- 7冊目:『メディアを動かす広報術』(松林薫:著 宣伝会議:刊)
7冊目は、広報と記者との関係について解説した書籍だ。昔は、記者とは飲みニケーションで関係を作って、メディアに取り上げてもらうようなことがあったが、最近はそうした関係の作り方はほとんどなくなっている。
著者は元記者の方で、広報と記者との関係の変化を踏まえて、戦略的に関係構築をする方法について解説しています。広報担当者というよりも、課長以上の広報部門の責任者の方にぜひ読んでいただきたいです(小野さん)
広報担当者のネットワークを広げ、「広報」を学び続けよう
会社の顔ともいえる広報は、トレンドに合わせて学び続ける必要がある。学び続けられる広報担当者のコミュニティなどはあるだろうか。
小野さんは、まずは「FacebookなどSNSの広報関連コミュニティが入りやすい」とアドバイスしてくれた。
「広報」を含んだキーワードで検索してみるとグループが見つかります。グループの目的などをみて、自分に合いそうなものに参加してみると良いでしょう。もしもグループに友だちが参加していれば参加者として表示されるので、その人にグループの雰囲気を聞いてみると安心ですね(小野さん)
一般社団法人企業研究会が主催する異業種交流研究会の「コーポレートコミュニケーションフォーラム(https://www.bri.or.jp/cc/)」や、100社限定で運営されている「若手広報担当者の会(https://www.wakatan.jp/)」があるので、ここに入ることもおススメだという。
勉強会やセミナーが開催されています。私も若いころ企業研究会のフォーラムに参加していました。いろいろな業界の担当者と集って、日ごろの悩みを相談し合うということもありました(小野さん)
また、日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)(https://prsj.or.jp/)が運営しているPRプランナーの資格に挑戦すると、人脈も広がる。
私もPRプランナー資格取得者の一人です。PRプランナーたちが交流する会が開催されているので、ここでもいろいろな規模、業界の担当者と交流できます(小野さん)
PRプランナーの認定資格を得るには、計3回の試験合格と3年以上の広報・PR関連実務経験が必要で、広報業務の経験やスキルが求められる。その分、経験豊富なメンバーが多く、プロフェッショナルな議論ができているそうだ。
他には、イベント・セミナー管理サービスのPeatix(ピーティックス:https://peatix.com/?lang=ja)で、広報やPRのセミナー、ウェビナーを探して、興味があるものに参加してみると良いと話してくれた。
広報担当者の仕事は幅広く、会社の顔としての責任が重い。まずは基本を抑えて発信を行い、その土台の上に新しい考え方を取り入れていくことになるだろう。今回紹介された7冊は、広報担当の初心者、中級者が成長するのに役立つ書籍ばかりだ。広報担当者のネットワークの広げ方もぜひ参考にしてほしい。
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