前年比・増減率の計算方法をわかりやすく解説! 昨対比との違いは?
昔から、算数も数学も苦手なアユムは、希望が叶ってマーケティング部門に異動してきました。Web担で見るような「すごいマーケターになりたい!」と胸を躍らせていたが、配属後、理想と現実のギャップに苛まれることに。データ、数字、%、小数。うわぁーん、どうしたら、数字に強くなれるのでしょうか……。
この記事を読むべき人:数字や割合に対して苦手意識を持っている方。分数の計算を少し覚えている方
この記事を読む必要がない人:前年比・前期比を理解しており、計算をできる方
この記事でわかること: 前年比・前期比・昨対比・増減率の意味と計算方法前年度比率が落ちているのに、売上高が微増?
あの会社の決算説明資料、見た?
一昨年から去年は15%増だった売上高が、今年は3%しか伸びていないね。国内消費がだいぶ減速しているみたいだね。
前年度比率がだいぶ落ちているのが気になるよねえ。
ふむふむ。そうなんですね。
一昨年と今の市場環境がずいぶん変わったから、現状の事業構成のままでは伸び悩むままだろうね。新規事業に行くのか、新規市場を開拓するのか……。ちょっと動向をチェックしておこうか。
な、なるほど……。さすが先輩。ところで、先輩、前年度比率が落ちているってことは、売上高は減ったということでしたっけ?
いや、売上高は微増だから、若干は増えている。
微増なんですね……。
そこに現れたのが、大人向け数学教室「大人塾」を運営し、数学苦手な社会人に対して指導をしているモリさん。
前年度比率は落ちているのに、売上高は微増。なんで微増なんだろう。
アユムさん、「ビゾウ」とつぶやいていますが、美しいゾウさんに心を射抜かれたんですか? ゾウさん好きになったんですね。 やったー! 仲間ですね!
モリさーん!! ゾウの話は置いといて……えーっと、先輩の話をよく理解できなかったんですが(今のモリさんの話もですが)、教えてください!
先輩はこんな話をしていました。
- 売上は増えている、微増
- 前年比の数字は下がっている
これっていいんですか、悪いんですか? そもそも、前年比って何ですか?
なんと。残念ながら、ゾウさんの話ではなかったんですね……。
たくさん質問があるようなので、まずは、前年比について解説しましょう。正確には前年度比ですが、ここでは、前年比という言葉で統一します。
お願いします!
前年比とはなにか
前年比、という単語を見つめてください。
(じ~っ)前年と比べる、という文字ですね。
比べるといえば……?
比べるといえば……えーっと、第1回で学んだ割合ですね。これも割合なんですか!?
その通りです! つまり、どういう式になると思いますか?
割合の式は、比べられる量 もとになる量 だから……どちらがもとになるんだろう?
前年と比べる、つまりは、前年が基準という意味ですね。
ということは、今年の売上高が比べられる量、昨年の売上高がもとになる量ということですか!
では、ここでひとつ計算してみましょう。
エレファント商事は今年の売上高が12億円、昨年は10億円でした。さて、エレファント商事の売上高の前年比は?
12 10 =12÷10=1.2ですね。 つまり、前年比120%!
すばらしい! よくできました!
前年比120%は、20%増!? 増減率とは?
でも、先輩の言っていた15%増とは、ずいぶん数字の大きさが違うようですね。あれは前年比の話ではないのでしょうか?
ゾウの話です! (くいぎみに)
えっ、ゾウ? 余計意味がわからないです! (動揺)
ゾウはゾウでも「増加した」の「ゾウ」です。つまり、先輩が話したのは、前年の売上に比べて増加した量について、ですね。それが、対前年増減率です。略して「増減率」ということが多いですね。
ただ「増減率」とでてきたときには、どの時点を比較しているのか確認するようにしましょう。比較対象は前年だけではなく、対前年度、対前年同月などの場合もあります。
では、このエレファント商事の場合は、何%増なんですか?
はい、ここで問題です。エレファント商事の売上高の増減率を求めましょう。エレファント商事の売上高の増加分はいくらですか?
今年が12億円、昨年が10億円なので、差(増加分)は12-10=2億円です!
この数値を比べましょう。
比べるといえば、割合ですね。
比べられる量 もとになる量 ということは……
この場合のもとになる量は、基準となる前年の売上高でいいですか?
はい、前年の売上高に比べてどのくらい増えたかをあらわすのが増減率なので、基準になるのは前年の売上高です。
となると、増減分 前年の売上高 =2 10 =2÷10=0.2
20%ですね! 20%増!
正解だゾウ! (韻を踏んだゾウ! )
売上高、昨年は一昨年の15%増、今年は3%増、一昨年と今年を比べると?
先輩の言っていた「一昨年から去年は15%増だった売上高が、今年は3%しか伸びていない」って件ですけど、これって、売上高が減った、ということではないんですか?
売上増減率は、プラスの数値なので、売上自体は伸びていますね。少し小さい数値で、考えてみましょうか。10000円の15%増加後の値段はいくらですか?
ん? これは、前回やりましたね。15%は伸びた分で、もとの数値も足さなくてはいけないから、10000×(1+0.15)=10000×1.15=11500円ですね。
すばらしい! その通りです。
そうか! ○%増って、値上げと一緒ですね。
そうです! そのまま、結果の値を3%増加させてみましょう。
もとになる量が11500に変わるので、11500×(1+0.03)=11500×1.03=11845円ですね! 確かに、前年より大きな値になりました。
はい、だから、売上は伸びていますね。では、この例で一昨年を100%とすると、今年はどれだけですか。
100×(1+0.15)×(1+0.03)=118.45%ですね。
すばらしいゾウ!!
もし、計算式の意味がわからなくなったら第2回の記事を予習してみてくださいね。
増減率の数値自体は減っていても、売上は増えているんですね。
増減率の数値は、マイナスにならない限り、売上は増えています。
増減率の大きさの違いがわかった気がします。なんかすっきりしました!
減った場合はどういう計算になるの?
ここまでは増えた話をしてきたわけですが、減った場合ってどうなるんですか?
よい質問ですね。それでは、昨年は10億円の売上が、今年は8億円になったとしましょう。前年比はいくらですか?
比べられる量が今年で、もとになる量が昨年だから…… 8 10 =8÷10=0.8、80%ですね。
はい、100%を下回ってますね。これを「前年割れ」などと表現します。割れる、というのは「下回る」という意味です。
お皿が割れる怪談とかじゃないんですね! 安心しました!
(安心するところなの?)では、この場合、減少率はいくらでしょうか。
2億円減ったんですよね。だから、同じように式に当てはめて、2 10 =2÷10=0.2、20%!
はい、その通り。それでは、下の図を見てみましょう。もとになる数は100%ですね。で、減ったあとは80%、減った分は20%となります。
はっ。ということは「100%-前年比=減少率」ということですか。
よいですね。「 前年比+減少率=100%」でもいけますね。この形を理解していれば、応用が利きます。アユムさん、だんだん割合の考え方が身についてきたようですね。
自分の中の、割合の知識が増加してます!
アユムさんもゾウ化、ついにゾウさんになりましたか! 嬉しいですね!
(違う)
グラフでも確認しよう
下のグラフを見てください。増減率の棒グラフです。増えた減ったをグラフにしているので、下のような形になります。
減っている場合は、0より下に棒が伸びるんですね。
このグラフに、2XX0年の売上高が100億円のときの変化を折れ線グラフでつけてみます。
左の軸が増減率、右の軸が売上高をあらわしています。
増減率が0より上のときは、売上のグラフは、折れ線がなだらかでも、値は上がっているわけで、0より下のときに値が下がっているとハッキリわかりますね。
同じような言葉も知っておこう
ところで、よく聞く「前年比」とか「サクタイ」とか「前月比」というのも同じ考え方なのでしょうか?
はい、なにと比べるかで呼び名が変わりますね。
- 前年比:前年と比べて
- 前年度比:前年度と比べて
- 昨対比(サクタイ):昨年の対応する期間と比べて
- 前月比:前月と比べて
うわあ、いっぱいある……。どんなときに何を使えばいいんでしょうか。
何と何を比べたいかを明確にすれば、選ぶ、選ばないではなく、使うタイミングが決まりますね。
たとえば、前月と比べて「増えた、減った」を知りたいときは、前月比です。
1年ごとのくくりで比較したい場合は、前年比。ある期間について、たとえば同じ時期にやるセールの売上比較などでは、昨対比となりますね。つまり、比較したいものを適切に選ぶことが重要です。言葉はあとからついてきます。
なるほど「何と何を比べたいのか」「比べたいもの=もとになるものと比べて増えてるか減ってるか」というのが、○○比ということなんですね!
その通りです。そして、前年比が大きいことが常にいいこととは限らない、ということも頭に入れておきましょうか。
え、そうなんですか? 前年比は大きい方がいいんだと思ってました!
たとえば、体重……。前年比かなり増……。ちょっと気にしてるんです……。
それは、ゾウ~っとする話ですね!
おあとがよろしいようで……。では来月!
今日のおさらい
前年比を求める。
今年 前年
対前年増減率を求める。
増減分 前年
前年比と増減率の関係を求める。
(増加した場合)
前年比-100%=増加率 前年比-増加率=100%
(減少した場合)
100%-前年比=減少率 前年比+減少率=100%
今日の問題をおさらい
Q1.売上高が、今年は12億円、昨年は10億円。
さて、この会社の前年比は?
12÷10=1.2
答え:前年比120%
Q2.昨年の売上高は一昨年の15%増、今年の売上高は3%増。
一昨年を100%とすると、今年は何%?
100×(1+0.15)×(1+0.03)=118.45
答え:118.45%
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