好事例に学ぶ!「アクティブサポート・アクティブコミュニケーション」の勘所
企業・団体のSNS担当者のみなさん、日々のアカウント運用、大変おつかれさまです。お忙しい日々を送られるなか、良質で大量な情報インプットを続けることはできていますか?
当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこがすぐれているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、みなさんのSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しますので、よろしければどうぞお付き合いください。
今回取り上げるのは、SNSで「アクティブサポート」「アクティブコミュニケーション」をうまく実施することで成果を上げている事例です。
難易度高めだが大きな成果も期待できる「アクティブサポート」「アクティブコミュニケーション」
前回の記事『企業のコール&ユーザーの即レスポンスで大盛り上がり!SNSの「問いかけ型投稿」のポイントを解説』でご紹介した「問いかけ型投稿」とは別のアプローチですが、「アクティブサポート」と「アクティブコミュニケーション」も、SNS公式アカウント運用においてフォロワーや他ユーザーとの双方向コミュニケーション」創出を目指せる施策です。
アクティブサポート
主に自社商品やサービスに関して「困っているユーザー」「疑問・不満・要望を投稿しているユーザー」をソーシャルリスニングによって見つけ出し、企業公式アカウントの方から話しかける施策です。ユーザーのトラブル解決を助けたり疑問や不満の解消を図ったりすることで、満足度向上や企業や商品のファンになってもらえるといった効果が期待できます。
アクティブコミュニケーション
主に自社商品やサービスについての購入/利用報告や感想などを投稿しているユーザーをソーシャルリスニングによって見つけ出し、「お買い上げありがとうございます」「嬉しいご感想をありがとうございました」といったような返信や引用などを行う施策です。企業から感謝や喜びの気持ちを伝えることで、企業に親しみを感じてもらえる、ファンになってもらえるといった効果が期待できます。
「アクティブサポート」「アクティブコミュニケーション」は、X(旧Twitter)やInstagramで見かけることが多く、(後述しますが)難易度が高めの施策です。今回は「アクティブサポート」「アクティブコミュニケーション」を巧みに実施して成果を上げている好事例をご紹介していきます。
他社ユーザーにも手を差し伸べる神対応
富士通FMVサポート窓口
富士通パソコン「個人向けFMVサポート窓口」のX(旧Twitter)公式アカウントでは、FMV利用にあたっての疑問点やトラブルなどについてサポートしています。「富士通」「FMV」「LIFEBOOK」といったブランド名や機種名が含まれた投稿をソーシャルリスニングによって見つけ出し、以下のような対応を行っているようです。
- 困っているユーザーのサポート
- 質問への回答
- 要望への一次返信
- 製品購入者へのお礼
- 関心を寄せてくれているユーザーへの気軽な挨拶
参考にしたい点はいろいろありますが、常に相手の属性や状況にあわせた対応をとっており、いわば「テンプレ感がない」のが好印象です。たとえば、クレームを書き込んでいるユーザーや、今まさにトラブルで困っているユーザーには、相手の立場や境遇に寄り添い、細やかな心配りを感じさせる返信をしています。
また、製品についてポジティブな感想を投稿しているユーザーが「♪」を使っていれば返信に「♪」を使うなど、親近感を高めるテクニックも随所に見られます。ちなみに「ふくまろ」とは、FMVを会話で操作するアプリケーションのキャラです。
同アカウントは、自社ブランド名・製品名・サービス名だけでなく、広い関連ワードで検索していることがうかがえます。これを裏付ける実例をもう1つ紹介します。ユーザーの投稿にはメーカーや機種名などの記載がないにも関係なく、迅速かつていねいなアクティブサポートを提供していた例です。
おそらく同社は、「パソコン」というワードでもソーシャルリスニングを行っており、「パソコンが起動できなくなった」など緊急度が高そうな状況で困っているユーザーに対しては「(メーカーを問わず)一般的な対処方法」を伝えているようです。
他社製品ユーザーかもしれない相手に対しても、親切な対応をコツコツ続けている富士通FMVサポート窓口。ここまでのアクティブサポートは、競合他社がやっていない分、いっそうユーザーの記憶にしっかりと刻まれることでしょう。
オープンで明るいコミュニケーションが信頼感を醸成
CanvaJapan
オンラインで使える無料のグラフィックデザインツール「Canva」を提供するCanva JapanのX(旧Twitter)公式アカウントでは、ユーザーからの質問・要望に応えています。
メインとなるのはCanvaの機能に関する要望・質問への対応ですが、ユーザーからのエラー(バグ)発見報告に対してもきちんと反応しているのが特徴的です。
通常、製品の不具合に関する情報がSNSに投稿されると、炎上に発展したりブランドや製品イメージ低下につながったりするリスクもあるため、「できれば伏せたい」「DMなどのクローズドな方法で情報を受け付けたい」と考える企業もあるでしょう。しかし、Canva Japanの公式アカウントでは、エラーを報告するユーザーの投稿も、それに対するCanvaの返答も、どこか明るくむしろやりとりを楽しんでいる雰囲気すら感じさせます。
以下の例では、
ユーザー:(バグを見つけて)笑いました
Canva Japan:またおもしろいバグがあったら待ってます
という和やかなコミュニケーションが展開された上に、Canva Japanはこのバグ報告を隠すどころか、リポスト(再投稿)して拡散しています。
ユーザーとの間にここまで良好でフレンドリーな関係が構築できている理由の1つは、Canvaという製品そのものがユーザーに愛され支持されているためでしょう。そしてもう1つは、同社がSNSを通して、製品ユーザー/フォロワーとの良好な関係づくりにつながるコミュニケーションを継続してきたことが奏功したと考えられます。
たとえばCanva Japanは、noteにも公式アカウントを持っており、ユーザーに喜ばれる投稿をここでも続けています。
たとえば2022年6月には、「日本語テンプレートの改善を始めたところ、残念なテンプレートが見つかりました!ということで、あえて残念なテンプレート達をご紹介していきたいと思います」というユニークな記事を公開。あえて「弱み」をさらけ出し、楽しく親しみやすく伝えることで、ユーザーから共感を集めていました。
製品の不具合や不出来な部分を隠そうとせず「これは仕様です」と開き直ることもせず、ユーモアも含めてオープンにさらけ出しユーザーの共感を集める――。Canva Japanのこの情報開示戦略はそう簡単に真似できるものではありませんが、「親近感」「信頼性」を醸成するヒントを見つけていただけたら幸いです。
Z世代に人気の店舗はSNSでのコミュニケーションも巧み
梅体験専門店 蝶矢
チョーヤ梅酒が運営する梅体験専門店「蝶矢」のX(旧Twitter)公式アカウントでは、蝶矢を利用してくれたユーザーや、蝶矢に関する投稿をしているユーザーを対象に、カジュアルなアクティブコミュニケーションを実施しています。「蝶矢」はZ世代を中心に支持されており、なかなか予約が取れない人気店です。そんな店舗でも、SNS上でコツコツとユーザーとのコミュニケーションを継続しているという点にぜひご注目いただければと思います。
また「蝶矢」だけではなく、「チョーヤ」「梅酒」といったワードでも検索しているようです。以下の例では、投稿本文に「蝶矢」「チョーヤ」といったワードは含まれていませんが、「梅酒」というワードと画像から蝶矢利用者であることを確認し、感謝の言葉を返信しています。
さらに「蝶矢」は、Instagramでもアクティブコミュニケーションを実施しています。キーワード検索をはじめハッシュタグ・メンション・場所でも検索を行っているようですね。
X(旧Twitter)同様、近すぎず遠すぎずな距離感で、短めの文章でのコミュニケーションが基本のようですが、やり取りするのが初めてではないユーザーに対しては少しフレンドリーな対応を見せる巧みさがあります。
以下の例では、直前の投稿でもやりとりしたユーザーが投稿したコアラのぬいぐるみ写真に対して「何かうったえるような眼差し」とコメントしています。この、蝶矢にも梅酒にも無関係な書き込みには、広告宣伝色もテンプレ色もない一方、「中の人」の人となりが伝わってきます。ユーザーとの心の距離を縮めることにも成功したといえるのではないでしょうか。
アクティブサポート・アクティブコミュニケーションの注意点
アクティブサポート・アクティブコミュニケーションを安全かつ効果的に実施するには、いくつかのポイントがあります。以下を参考にしてみてください。
話しかける相手は慎重に選ぶ
サポート対象となりそうなユーザーを見つけ次第とにかく話しかけるのはリスクがあり、お勧めできません。
まずは、サポート対象候補ユーザーについて以下の項目をチェックし、からんでも問題のないユーザーか否かを精査してみましょう。
- SNSのプロフィール
- 過去投稿(返信も含む)
- 「いいね」している投稿
- フォローしているアカウント
過去に他アカウントとよくトラブルを起こしていたり、かかわることで問題が起きそうだったりするユーザーは、サポート対象から外すのが賢明です。「からんでも問題のないユーザー」と判断できた場合は、次の項目もチェックしましょう。
- 自社商品・サービスの購入状況(まだ購入したことがない・今回が初購入・ヘビーユーザー)
- 過去のアクティブサポート履歴(今回が初めて・今回が2回目・今回が3回目以上)
※2回目以上の場合は、過去のやり取り内容も確認する
距離の取り方を間違えない
「相手に話しかける際のマナー、口調」は、SNSでも実生活でもほぼ共通と心得ましょう。初対面なのに馴れ馴れしく接すると嫌われたり警戒されたりしますし、過去にもやりとりしたことのある相手に対して「初めまして」と話しかけてしまうのは失礼にあたります(こうした不手際を防ぐためにも、アクティブサポートの実施記録を残しておくのがお勧めです)。
「営業・宣伝」よりも「サポート・感謝・提案」
通常のSNS投稿でも、営業・宣伝色が強い内容ばかりだとユーザーの心は離れがちです。アクティブサポートにおいても「営業・宣伝」より、困っているユーザーへの「サポート」、日頃のご愛顧への「感謝」、商品/サービスを探しているユーザーへの「提案」などを重視しましょう。
なお、「想定問答集」や「テンプレート」をあらかじめ用意するのは良いのですが、いかにもテンプレどおりの返信ばかり行っているとユーザーから嫌われ逆効果になりますのでご注意ください。
まとめ
「アクティブサポート」「アクティブコミュニケーション」の難易度は高めですが、うまく行うことでクレームをチャンスに変えたり潜在顧客をロイヤリティの高い顧客に変えたりといった成果が期待できます。時間もリソースも確保できそうであれば、好事例も参考にしつつチャレンジしてみてくださいね。
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