企業・団体ならこう使おう! 「ネットミーム」をうまく取り入れるポイントと事例を紹介
当連載では、企業・団体のSNS担当者のみなさんにお役立ていただけそうな良質なSNS活用事例をピックアップし、「どこが優れているのか」「なぜ話題になったのか」などをやさしく解説していきます。企業・団体のSNS投稿やSNS施策のなかでも、比較的最近の事例や再現性のある事例を取り上げ、みなさんのSNSアカウント運用の参考にしていただけるような記事を目指しますので、よろしければどうぞお付き合いください。
「ネットミーム(ミーム)」とは
昨今、注目を集めているのが「ネットミーム」――SNSを中心に拡散されるおもしろい画像や動画、フレーズです。時に爆発的な話題性を生み出すネットミームを企業が活用することで、認知拡大や親近感醸成に繋がる可能性があります。一方、安易なネットミームの利用は、炎上やブランドイメージ毀損といったリスクもともないます。
もともと「ミーム(meme)」とは、“文化的な情報や行動様式が、集団内で人から人へと模倣され、伝播していく”という概念です。インターネット上のミーム、いわゆる「ネットミーム」は、この概念がデジタル化したもので、画像、動画、テキストなどのコンテンツが、SNSや掲示板などを通して急速に模倣、改変、拡散されていく現象を指します。たとえば、ある画像におもしろいセリフを付け加えたもの、印象的な動画の一部分を切り取ったもの、独特な言い回しのフレーズなどが例として挙げられます。
特徴としては「強い拡散力」「常に変化する流動性」「ユーモアと共感」などがあり、その流行は短期間で終わる場合もあれば、長く愛され続けるものもあります。なお近年はネットミームを「ミーム」と呼ぶケースも増えているようです。
企業がネットミームを利用するメリット
企業の公式アカウントがネットミームを活用することで、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
認知拡大
トレンドに乗るほど話題性の高いネットミームは拡散力が非常に高く、ふだんリーチできない層への認知拡大につながる可能性があります。「あの企業がミームを?」とユーザーが話題にしてくれるケースもあるでしょう。エンゲージメントの向上
タイムリーな上にユーモアがあるネットミームは、ユーザーの興味を引き共感を集めやすいといえるでしょう。結果的に「いいね」、コメント、リポストなどのエンゲージメントを高める効果が期待できます。親近感の醸成
硬いイメージを持たれがちな企業アカウントがネットミームを上手に活用することで、親しみやすく、人間味のある印象をユーザーに与えられます。
企業がネットミームを利用するデメリット
一方で、企業がネットミームを利用する際には以下のデメリットも存在します。
炎上リスク
社会問題や差別的な内容を含むミームを活用したり、ミームの文脈を誤解して使ったり、不適切な形で活用したりすると、ユーザーからの反発や批判を招き、炎上につながる可能性があります。ブランドイメージの毀損
自社のブランドイメージと合わないミームを活用するとブランド価値を損なうリスクがありますので、特に、高級感や信頼性を重視するブランドは慎重さが必要です。また、企業が無理やりトレンドに乗ろうとしている姿勢はユーザーに見抜かれやすく、「痛々しい」といったネガティブな印象を与えてしまうことがあります。著作権/肖像権の侵害
ミームによっては、著作権や肖像権が存在する場合があります。無断で利用することで権利侵害にならないよう、注意が必要です。流行の速さと陳腐化
ネットミームの流行り廃りは非常に速いため、活用するタイミングが重要です。流行のピークを逃すと、古臭い印象を与えてしまい逆効果になるリスクがあります。
ネットミームを利用する際のポイント
企業がネットミームを活用する際には、以下を心掛けるとよいでしょう。
ミームの文脈を正確に理解する
そのミームがどのような背景で生まれ、どのような意味合いを持っているのかを十分に理解しましょう。自社のブランドイメージとの適合性を検討する
ミームの持つ雰囲気やトーンが、自社のブランドイメージと合致するかどうか、ブランドイメージを毀損しないかどうか、を慎重に検討しましょう。タイミングを見極める
流行のピークを見極め、適切なタイミングで活用するにしましょう。ピークを過ぎた(鮮度が落ちた)ミームは使わないことがお勧めです。オリジナリティを加える
単にミームをそのままコピーして使うのではなく、自社ならではの要素や視点を加えるようにしましょう。リスク管理を徹底する
ミームの誤った利用には炎上リスクがあります。不適切な表現がないか、誤解を招く可能性はないかなどを事前に確認しましょう。
ネットミームをうまく活用していた企業や団体の事例
【ヤンマー建機 【公式】】- 硬いイメージを塗り替えるスゴ技動画
怖いか?私のリフティングの才能が https://t.co/mJMelpMtxD pic.twitter.com/yN8frwuEHK
— ヤンマー建機 【公式】 (@YanmarCE_Japan) June 21, 2024
ヤンマー建機の公式Xアカウントでは、「怖いか?私の〇〇が」構文とも呼ばれるネットミームを取り入れた投稿を行いました。このネットミームの元ネタは、一般ユーザーの投稿です。
ヤンマー建機が投稿した動画はわずか6秒と短いものでしたが、ショベルカーでの華麗なリフティングは多くのユーザーに驚きを与えたようです。「うますぎる」「すごすぎ」といった賞賛のコメントが大多数で、公式アカウントがこうした投稿(ミームを取り入れた投稿)をするのを好ましく感じるという声もありました。
あまりにも現実離れした神業のため、CGやAI生成動画ではないかと疑うコメントもありましたが、リアルな動画であると返答している点も好印象です。

同社の認知拡大、同社が販売する重機への信頼性向上をかなえただけでなく、「建機メーカー」という硬いイメージを良い意味で裏切り親近感を与えた事例だと言えるでしょう。
【トリピー@鳥取県マスコットキャラクター🍐】- ミームで来県意向の向上も実現
怖いか?40種そろう鳥取のちくわ売り場が pic.twitter.com/izkjc1CJZx
— トリピー@鳥取県マスコットキャラクター🍐 (@tottoripref) June 28, 2024
鳥取県公式の「トリピー@鳥取県マスコットキャラクター」の公式Xアカウントも、「怖いか?私の〇〇が」構文のネットミームを取り入れた投稿を行っていました。ミーム自体の盛り上がりは落ち着きつつある時期でしたが、「40種そろう鳥取のちくわ売り場」のインパクトに、好意的なコメントが多く寄せられました。「圧巻です」「さすがだ」といった驚きの声に加えて、「帰省したら行かなきゃ!」「鳥取に行ったら買い漁りたい」など、鳥取県を訪れたい気持ちになったユーザーもいたようです。ネットミームをうまく活用しつつ、鳥取県の魅力をアピールできた好事例といえるでしょう。
【Expo2025大阪・関西万博】- キャラクターの好感度も向上
エッホエッホ
— Expo2025 大阪・関西万博 (@expo2025_japan) February 26, 2025
いよいよ再来月に開幕するってみんなに伝えなきゃ
エッホエッホ pic.twitter.com/0wSku8oYzn
今年の2月下旬から一気に拡散したネットミームといえば「エッホエッホ」ではないでしょうか。元ネタは、まだ飛べないメンフクロウの雛が一生懸命走っているように見える写真、それを紹介したXの投稿でした。
出典:
Photographer Captures Baby Barn Owl Mid-Run | PetaPixel
https://petapixel.com/2021/10/25/photographer-captures-baby-barn-owl-mid-run/
地面を走るメンフクロウのヒナ。まだ飛行能力が発達していない段階のようです ©Hannie Heere pic.twitter.com/CNlSBZNk9I
— Masayuki Tsuda (@MasayukiTsuda2) February 23, 2025
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の公式アカウントは、このミームの盛り上がりのピーク時に、ミャクミャクが「エッホエッホ」と走っているように見える画像を投稿しました。写真の構図やミャクミャクのポーズなど、全体を通してオリジナル投稿を忠実に模倣しているのが印象的です。このミームにおいて「エッホエッホ」に添えられることの多い「●●ってみんなに伝えなきゃ」のフレーズは、宣伝色や押しつけがましさがなく情報を伝えられるため、企業や団体の公式アカウントでも取り入れやすかったことでしょう。
公式、しかも公的なアカウントが話題のミームを活用したことに対しては好意的なコメントも多く、さらに「過去一可愛いミャクミャク」「初めて可愛いと思えた」「可愛いキャラクターに見えてきた」など、ミャクミャクの好感度までも上がったようです。また、公的組織でありながら、ミームが盛り上がったタイミングを逃さずスピーディーに投稿できていた点も注目に値します。
まとめ
ネットミーム(ミーム)は、打ち上げ花火のように華やかに光り輝き、ユーザーをひきつけます。さらに花火(ミーム)を見たユーザーたちが自分なりの花火を次々打ち上げるため、しばらくは花火大会のように盛り上がるのです。ただ、花火ですから長続きはせず比較的短時間で消えてしまう点に注意が必要です。
企業や団体も、ネットミームをうまく活用することで認知拡大や親近感醸成などの効果が期待できます。しかし、使い方やタイミングを間違えば炎上やブランドイメージの毀損といったリスクがあることも忘れてはなりません。
「トレンドを素早くキャッチする」「オリジナリティを加えた投稿案をスピーディーに作り、組織内で確認する」などを心掛け、自社のブランドイメージにふさわしい内容で、適切なタイミングに投稿することが成功のカギです。みなさんの公式アカウントでも、ネットミームの活用にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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