広告費は、少なければ少ない方がいい? /今さら聞けないリスティング広告 その3
スポンサードサーチやインタレストマッチを実際に運用するうえで、悩みの種になりがちなのが「広告予算をどう設定すべきか」という問題だ。連載3回目の今回は、広告予算の設定方法のセオリーを説明する。
広告費用は少ない方がいいって本当?
「広告費は、少なければ少ない方がいい」。リスティング広告の利用が初めてのユーザーや活用経験の浅いユーザーはもしかしたら、広告予算は少ない方が儲かると考えているかもしれない。しかし結論から言えばこうした考え方は、半分は正しいが、半分は間違っている。その理由を、できるだけ具体的に説明していきたい。
まずスポンサードサーチやインタレストマッチ(以下「リスティング広告」と総称)の広告予算の考え方は、取り扱う商材の特性によって変わってくる。商材の特性とは、大まかにわけて次の2パターンだ。
A)仕入れ(製造)が容易で、在庫リスクが低い商材
B)販売(仕入れ、製造)数量が限定されている商品
まずAのケースから見ていこう。Aは大雑把に言えば「仕入れが簡単で、売れれば売れるほど儲かる商材」だ。安定したニーズがあり、短期間で急激に価値が変動したりしないので、仕入れすぎて失敗することも少ない。例えば充電式電池やごく一般的なボールペンといった商材は、Aに分類できるだろう。
このような商材の場合、極論を言ってしまえばリスティング広告の予算に上限はない。多くの予算を使えば、多くの売上が得られるという状況が続く限りは、予算の上限は気にせずに広告を出稿しても大丈夫だ。リスティング広告の費用を、広告費というよりは原価の一部(変動費)として位置づけることができるからだ。
このため広告予算も、「総額で○×円まで」ではなく、「商品1個あたり○×円まで」と考えた方がいい。例えば売価1000円の商品があったとして、仕入原価(とその他のコストの合計)が300円だったとしよう。40%の利益を確保したいなら、広告費は300円までの間で設定する必要がある。リスティング広告の指標で言えば、CPA(顧客獲得単価)が300円以内に収まってさえいればOKだ。CPAが300円以内である限り、広告予算の上限は設定する必要はない。売れれば売れるだけ、儲けも大きくなるからだ。逆に広告費用を不必要に削減すると売上が鈍化し、結果的に利益が低下することもありうる。したがってこのAタイプの商材では、「広告費は少なければ少ない方がいい」とは一概に言えない。
では、Bのケースではどうだろうか。Bに類する商材としては例えば、定員に限りがある有料セミナー、スクールの講座、旅行商品などが挙げられる。売上に上限があるため、前述したAタイプの商材とは異なり、予算の総額に上限を設けてきっちり管理する必要がある。こちらも具体例で見ていこう。
1万円のバスツアーを企画し、100名の利用者を目標に募集したとしよう。売上は100万円だが、バスのチャーター料金など、客数に関係なく発生するコストが30万円あるとすると、残りは70万円。ここから40万円の儲けを確保したいなら、総額30万円以内に確実に広告費を収める必要がある。上限CPAは3000円となるが、利益をできるだけ大きくするには、このCPAを可能な限り引き下げる工夫が不可欠だ。Aの商材のように、売上を伸ばして利益を最大化するという戦術を、採用できないからだ。したがってこのBタイプの商材では、目標とする売上を確保できる範囲で、広告費を少なくするのがいいと言えるだろう。
スポンサードサーチとインタレストマッチで
広告費の考え方は異なる
最後にスポンサードサーチとインタレストマッチの広告予算の考え方の違いにも触れておきたい。スポンサードサーチは、見込み客を自社のサイトに誘導して購買につなげるという役割を果たす広告だ。このため広告の費用対効果を考える際は、ここまでに見てきたようにCPAという指標が極めて重要になってくる。一方、インタレストマッチは、見込み客を購買につなげるだけでなく、新たな見込み客の開拓やブランディング広告としての役割も期待できる。インタレストマッチの費用対効果をCPAだけで測ってしまうと、そうした役割を無視することにもなってしまうので、注意が必要だ。
またインタレストマッチは現状では、ある程度インプレッションを多くし、幅広いユーザー層に訴求した方が、効果が高いと言われている。一般的にはスポンサードサーチよりもインタレストマッチの方がクリック率は低い傾向がある。このため予算枠を多めにとり、インプレッションを増やすように運用するのが、1つのセオリーだ。
- 広告予算の考え方は、取り扱う商材の特性によって変わる。商品の特性を見極めて、予算を考えよう
- スポンサードサーチで広告の費用対効果を考える際は、CPAが極めて重要
- インタレストマッチには、新たな見込み客の開拓やブランディング広告としての役割も期待
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