なるほど!アクセス解析ケーススタディ

SEOに使える豊富な分析機能を備えた米国発の老舗アクセス解析/オイシックス+ClickTracks

Oisix/オイシックス株式会社
Powered by ClickTracks(株式会社インフィネット)

アクセス数やデータ量の多いサイトでもコストを抑えた導入が可能
操作がわかりやすく、条件で絞り込んだ解析ができる

有機野菜などの安全な食品を宅配する「Oisix(おいしっくす)」は、インターネットで食品を通信販売するサイトだ。創業(2000年6月)とともにインターネットによるビジネスを始めているオイシックス株式会社では、2007年1月に、よりよいサービスを目指して「ClickTracks」を導入し、サイトの改善やマーケティングに役立てているという。同社がどのようなビジネスを行い、どのようにインターネットマーケティングを行っているのかについて、情報技術チームの松林康博氏に伺った。

野本 幹彦(フリーライター)

オイシックス株式会社の運営サイト「Oisix」の概要や今回導入したアクセス解析ツール「ClickTracks」の概要は記事の末尾を参照。

独自開発のツールの限界を感じ新たなアクセス解析ツールを求める

オイシックス株式会社
情報技術チーム
松林 康博氏

オイシックスは、「より多くの一般のご家庭が、豊かな食生活を簡単に実現できる」ことを目指してサービスを行っている食品販売のサイトだ。特に「一般の家庭」ということにこだわり、より多くの人に安全な食品を利用してもらいたいと、同社の松林氏は言う。「体によい食品の提供は、一般的な流通産業と比べて非常にニッチな産業に位置付けられています。食の安全が叫ばれているなか、限られた人しか利用できないというのはおかしな状況で、みなさんが利用できるような仕組みを作っていきたいと我々は考えています」

松林氏の言うように、利便性を高めることによって多くの人が使いやすいような仕組みとなっている同サイトは、入会金無料で手軽に利用でき、70%以上いるという共働きや単身者のユーザーがほしい物を1品から注文でき、休日も含めた好きな6つの時間帯から配達時間を指定することもできる。また、インターネットを使うユーザー以外にも、比較的高い年齢層でも購入しやすいように、牛乳販売店と提携した配達時に注文を受けての販売も行っている。

食品販売のOisix以外にも、スイーツ販売のOkasix(http://www.okasix.com/)やレシピブログのポータルサイトOixi(http://oixi.jp/)なども運営しているオイシックスでは、創業とともにインターネットによる事業を始め、当初は相互リンクや雑誌社とのタイアップによって、集客を行っていたようだ。インターネット参入当初より、アクセス解析の必要性に気づいていたオイシックスでは、独自にアクセス解析ツールを開発し、サイトのマーケティングに役立てていたが、2年ほど前から新たなアクセス解析ツールを導入する必要性が出てきたと松林氏は言う。「徐々にお客様も増え、データ量も増加していたので、独自に開発したアクセス解析ツールでは解析できない状態となってきました。やはり、市販のアクセス解析ツールを利用する必要があると考え、さまざまな製品を探すことにしました」

購入頻度別のお客様と来訪元のサイトなどの複雑な条件を細分化して組み合わせると、従来のアクセス解析ツールでは処理しきれないような状況になっていたというオイシックスでは、2006年9月から市販ツールの導入を検討し、自社に合ったツールを模索し始めた。

「我々のサイトは多くのアクセスを集めているため、従量課金制のサービスだとコスト的に見合わないものとなってしまいます。今回採用したClickTracksと従量課金制のASP型のサービスを比べると、5年間現状のままのアクセスがあった場合、約5倍のコストがかかってしまうことがわかりました。その5年間で、我々のビジネスがもっと拡大していけば、さらにそのコスト差は広がっていくことになります。もちろん、コストが安いからといって機能的に劣っていないかどうかも細かく見ていきました」と松林氏が言うように、ログ型のアクセス解析ツールを中心に、求める機能を持つツールを消去法で選択していったというオイシックスだが、どのようなポイントを重視していたのだろうか。

「まず、PV制限がないことと、しっかりとした実績を持っているということは非常に重要なポイントでした。また、あるツールを試用してみたのですが、操作が難しく、情報技術チーム以外のメンバーが使うには敷居が高いというものであったため、操作が簡単であるということも重視していました」

マーケティング部署の社員やメルマガの担当者も解析を行っていたオイシックスでは、現場レベルでも利用できるものとして、操作性も重視している。最終的にはサーバーログファイル型でかつ操作が簡単で、細かな条件設定で解析を行えるツール3製品ほどに絞り込んでいる。

コスト的にも安価でありながら十分な機能を得られる

最終的に「ClickTracks」を選択した理由を松林氏は次のように話してくれた。「コストも比較的安価で、十分な機能を提供しているというのが決め手でした。特に気に入った点は、細かな条件を加えて訪問者を絞り込んで解析ができる点です。また、ビジュアルな画面で各リンクのクリック比率を見ることができて、ROIを測定できる点も我々に必要な機能であるといえます」

情報技術チームのメンバーとして上長や各部門に対してレポートを出す必要がある松林氏は、既存のレポート機能は物足りないものの、データを再利用できることには十分満足しているようだ。

「すでに用意されているレポートもありますが、それ以外にもExcelの形式でデータを抽出できるので、マクロなどを利用して独自のレポートを作成することが可能です」

2007年1月から導入を開始したオイシックスでは、当初のバージョン5からバージョンアップを行い、さまざまな機能を利用できるようになったことで、より利便性が上がったという。

図1 最後の訪問日、訪問頻度など4項目から検索ロボットのクロール状況を確認できるロボットレポート。クロール状況だけでなく、検索エンジン別の訪問者数や滞在時間、キーワードごとの表示順位などの比較機能も備える。

「バージョン6から利用できる機能として、検索エンジンのクローラがどのページに来たかがわかるようになったのが非常に便利ですね。検索語と合わせて活用することで、SEOに役立ちます。また、最新の6.5からはウェブAPIを利用できるようになったので、受注システムと連動させたり、ウェブブラウザを使って社内の各担当者に分析結果を公開したりするといった便利な使い方ができるようになりました」

しかし、ASP型のサービスとは異なり、インストール型のソフトウェアは、バージョンアップのたびにコストがかかり、インストールの手間がかかることも考えられる。これらの問題は苦にならなかったのだろうか。

「保守契約を結んでいれば、バージョンアップも安価に行えますし、バージョンアップの手間もそれほどかかりませんでした。2~3時間で作業できますし、専門家でなくてもドキュメントを見ながらやれば誰でもバージョンアップできると思いますよ」

アクセス解析の結果を基にSEOやデザイン改修などを行う

SEO担当者としても業務をこなしている松林氏は、ClickTracksを使って、さまざまな角度からSEOに取り組んでいることを話してくれた。

「オーバーチュアのキーワードアドバイスツールがなくなってしまったので、キーワードの規模感やインパクトを調べることが難しくなってきました。現在では、SEO関連で独自に調べた結果とアクセス解析ツールのデータを照らし合わせて、このキーワードだったらどれくらいのアクセスを望めるといった予測を立てながらSEOをしていっています。食品には多くのアクセスを望めるビッグワードが少ないため、細かなキーワードの積み重ねが重要となるのですが、意外だったのは“餃子の皮”や“筑前煮”といったキーワードでした。これらのキーワードがアクセスを集めるとは思っていなかったのですが、比較的多くのアクセスを集める結果となったのには驚きました」

また、サイト構造やデザインを見直して、訪問者を効率的にナビゲーションするように常に努力しているという。

「2つのページを用意してClickTracksのタグ分析の機能でA/Bテストを行い、どこがクリックされてその後の経路がどのように変わっていったか、コンバージョン率がどのように変わっていったかということを調べていきました。これらの結果をノウハウとして蓄積し、お客様の行動がどのようになっているかを知った上で、デザインやサイトの構造を組んでいくというのは非常に重要だと思います。オイシックスには、“おためししセット”という初めてのお客様が利用しやすいサービスがあるのですが、この“おためししセット”が初めての人にはわかりにくいのではないか、ということもあってA/Bテストを行って改善していきました」

ユニークユーザーが月間100万人(取材時点の発表)あり、多くのアクセスがある同サイトでは、アクセス解析のデータを保管しておくために必要なサーバーの容量を抑えられるという点も気に入っているのだと、松林氏は話す。

図2 ページ内のリンクのクリック率をビジュアル表示して解析できる、ClickTracksのビジュアルインターフェイス機能。訪問者がどのページから来てどこに行くのか、滞在時間などもあわせてチェックできる。

「ClickTracksが保持するログの量を抑えられるというのも、よい点だと思います。インターネットサーバーが吐き出すログよりも1/20くらいのデータ量なのは助かりますね。画像ファイルなども取るように設定している会社であれば、もっとデータ量は抑えられると思います」

一方で、解析速度の面では若干の不満もあるようだ。

「データ量が多く、我々のURLが長くて複雑であるためか、さまざまな条件を加えて解析すると数十分かかってしまうことがあります。それでも以前のツールよりもはるかに速いのですが、もう少しこの時間を短縮できるとありがたいですね」

仮説を立ててからの改善実現にアクセス解析を利用する

オイシックスが新たなアクセス解析ツールを導入することを検討し始めた2年前に、オイシックスに転職してきた松林氏。前職では「プログラムやWebデザインを教えるインストラクターをしていた」という。しかし、ECサイトとして大きな特徴をもつオイシックスに魅かれて転職を決意したと松林氏は話してくれた。

「オイシックスに転職を決めた理由は、ECサイトとして他にはない特徴をもっていたからです。巨大なECサイトでも、定期的にリピーターのお客様が平均十数点もの買い物をすることはまずあり得ません。そのようなサイトのデータを見てみたいという思いがあり、その中でどんなリコメンデーションを行えるかということに興味をもちました。また、大学では農学部で食品流通を専門分野として学んだのですが、卒業研究は青果業のインターネット販売を実際にやってみるというものでした。そのときには“ネットで野菜を買う人はいない”という思いがあったのですが、実際にビジネスとしてオイシックスのようなサイトが出てきて利用者も増えていたので、以前から注目はしていました」

ITに関する知識が豊富であった松林氏は、アクセス解析ツールに興味はもっていたものの、実際に利用するのは同社に入社してからのようだ。2年間、実際にアクセス解析ツールを利用してきた上で、ツールを使っていくコツを次のように話してくれた。

「アクセス解析はリアルな店舗にはないデータをマーケティングに役立てるという点で、非常に興味をもっていました。オイシックスは“問題解決”を行っていくという土壌がある会社なのですが、アクセス解析ツールの使い方に関しても傾向を見るためだけでなく、仮説を立てて、その仮説を検証して問題を解決していくためのツールだと思っています。アクセス解析ツールはお客様の心理や行動を再現するツールであって、アクセス解析ツールから何かが生み出されるというものではありません。仮説というものがなければ、ツールを使う意味はないと言ってもよく、常に“お客様にとって使いやすく、より良いサービスは何か”ということを考え、それを実現するために仮説を立ててアクセス解析ツールを利用するというのが基本的な考え方です」

では、今後どのような仕組みがあれば、もっとオイシックスのビジネスを拡大できると考えているのだろうか。

「アクセス解析とオイシックスのデータベースを連携させたいと考えているのですが、それを行うには大変な作業が必要となってしまいます。これらを簡単に連携させるような手法やツールがあると、もっと便利になると思いますね。リアルの店舗ではPOSなど、売上を分析するインフラはありますが、お客間様の行動と売上を連携して分析するのは難しいです。その点、アクセス解析とデータベースを連携できれば、インターネットならではの使い方ができると思います」

また最後に、同社の今後の方向性についても話してくれた。

「もっと広く一般にもオイシックスを知っていただいて、リピーターを増やしていきたいというのが我々の使命です。これまでは、インターネットやパソコンに対するリテラシの高い人がお客様の中心となってきたのですが、“食の安全”が求められて需要が高まっているなかで、インターネットやPCに慣れていないお客様にも利用してもらえるようにしないと、会社としてもビジネスは広がっていかないと考えています。

もちろん、体や栄養に関する情報なども提供していくことも考えていますが、いたずらにサイトを複雑にするのではなく、シンプルで説明しなくてもわかるようなサイトを目指したいですね。今後は、多品目で小額の商品を直感的に購入できるようなサイト作りが課題になってくると思います。また、最近設立させたばかりなのですが、PC以外の端末でも利用できるモバイルサイトにも力を入れていきたいですね」

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Oisix サイト概要

安心できる食品を宅配するサービスを行っているサイト。入会金無料で希望日時に宅配するようなサービス体系となっており、初めて利用する人は、送料無料でおためしセットを利用できる。過去の購入履歴から商品を選択でき、リコメンデーション機能などもあって、購入しやすくなるような取り組みが行われている。


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オイシックス株式会社の選んだアクセス解析

SEOやROIを効率的に改善し、ウェブサイト運営を支援する

ClickTracks(株式会社インフィネット)
http://jp.clicktracks.com/

ClickTracks(クリックトラックス)は、「ClickTracks Optimizer」と「ClickTracks Pro」の2つの製品体系をもつサーバーログファイル型/インストール型のアクセス解析ツールだ。SEO施策に便利な機能を多数搭載する。キーワード毎のランキングを検索サイト別に表示できるサーチレポート、検索エンジンロボットが訪れたページをどのように見ているかを視覚的に表示するロボットシミュレーションモード、検索エンジンロボットの訪問頻度や特定時間の滞在時間を把握できるロボットレポートのほか、ページレベルの検索キーワード確認や、ビジターがサイト内の検索システムで使ったキーワードをレポートする内部検索解析の機能などを備えている。

上位製品のClickTracks Proでは、経路分析、売上・ROIの追跡調査、グラフィカルなKPIタイムライン、ブラウザベースのレポート共有、Eメールレポート送信、などの機能が追加されており、検索エンジンごとのROIレポートを出せるほか、サイトアーカイブにより、異なるバージョンのページを並列表示して行動パターンを比較するA/Bスプリット機能など、ビジュアルなインターフェイスで直感的な解析/分析が行えるようになっている。

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※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材時点または記事初出時点のものです。

用語集
ASP / ClickTracks / EC / KPI / SEO / アクセス解析 / オーバーチュア / クリック率 / クロール / コンバージョン率 / ナビゲーション / ユニークユーザー / リンク / ロボット / 事例 / 検索エンジン / 訪問 / 訪問者 / 食品
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