顧客志向のエンタープライズ情報アーキテクチャ
顧客志向のエンタープライズ情報アーキテクチャ
また、企業のWebサイト群全体を考えた場合、ブランド戦略に加えて、顧客志向か企業志向かといった方針も大きな影響があります。これは、サイト訪問者がサイトを訪れた際に触れる最初のページ(主に企業サイトのトップページが該当する)を顧客向けサイトにするのか、企業全体のサイトにするのかという選択です。
たとえば、カネボウ化粧品の企業サイトは、訪問者がサイトに訪れると、まず顧客向けのページが表示されます(図4)。
訪問者はそこから製品やブランド情報を得るために個別のブランドサイトに遷移したり、企業全体で提供している顧客向けコンテンツや機能ページを利用したりできます。プレスリリースや採用情報などの企業情報は、ヘッダー部分にある「会社情報」リンクをクリックすることで、企業情報をまとめたページに遷移します。ここでは、ビジネス目的でサイトを訪れた人向けの、製品情報以外の企業情報が閲覧できます。
企業サイトのトップページを顧客向けにし、企業情報ページを別に用意することで、そのサイトを訪れた顧客は不必要な情報に触れることがなくなるため、優れたユーザー体験の提供が期待できます。反対に、企業情報に興味があるサイト訪問者は、もともとカネボウ化粧品という会社は化粧品の会社であることは知っているはずだと考えられるため、トップページが顧客向けのページになっていることに対して、あまり否定的にはとらえないでしょう。そして、識別しやすい場所に企業情報へのリンクを用意することで、ストレスなく求める情報へ遷移できるはずです。
エンタープライズ情報アーキテクチャ戦略の検討
このように、企業の情報アーキテクチャ戦略は、ブランドポートフォリオ軸と、顧客志向軸とを組み合わせた2軸が考えられます(図5)。企業サイトの全体構成を検討する際には、競合企業などのサイト構造をこの図にマッピングしてみることで、業界での標準的な考え方と自社の戦略を定めるための参考になるでしょう。
エンタープライズ情報アーキテクチャ戦略は、企業のサイト全体に関わる検討であるため、改修には大規模なリニューアルがともなう可能性があります。このため、どういった戦略を目指すのか、それにはどの程度の改修が必要になるかといった検討は常に行っておく必要があります。
- EIA as Brand Strategy
著者がIA Summit 2009で発表したエンタープライズ情報アーキテクチャに関するポスター論文
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