直帰率を下げるためのアクセス解析術――回遊分析(1) [アクセス解析tips]
前回まで4回にわたって流入分析を解説してきたが、今回からは回遊分析についてお話ししていく。回遊分析とは、サイトに来訪したユーザーが目的の情報にたどり着けているかを明らかにするための分析である。サイト内でユーザーが最初に見るページを「入口ページ(ランディングページ、閲覧開始ページ)」と呼ぶが、まずは入口ページでの直帰率が分析ポイントとなる。
何らかの目的を持って来訪したユーザーが、入口ページを見ただけでサイトから出ていってしまうことを「直帰」といい、直帰したユーザーの割合を「直帰率」という。直帰率が高い場合には、いきなりアクセス解析から始めるよりも、まずは基本的なことができているかどうかを確認しよう。一般に直帰率を下げる施策としては、
- 全文表示しないで続きを読ませる(ブログ)
- 商品を多く並べて賑やかにする(ショッピングサイト)
- Flashの多用をやめる
- 画像リンクをテキストリンクにする
といった基本的なことや、下層のページ群でも、
- 会社名やロゴを必ず入れる
- グローバルナビゲーションを入れる
- 関連情報へのリンクを張る
といった基本的な対策をきちんと施すことがまずは大事である。
何よりも、ユーザー視点で実際にそのページから閲覧をスタートしてみることだ。そんな簡単なことから始めてみるだけでも、気づきがあるものだ。自分でなくても家族や、直接関係のない同僚などに試してもらうのもいいだろう。利害関係のない人の意見は時に辛らつで、目を覚まさせてくれるものだ。自分では斬新なデザインだと思っていても、素人にはまったく理解不能で、単に使いづらくわかりにくいサイトでしかないこともある。高価なユーザビリティテストをしなくても、やれることはいくらでもある。
4象限分析による直帰率改善
直帰率の改善施策は、比較的容易に立案できる。下記の4象限の分析によって、問題ページを明らかにできるからだ。
4象限の罠を知っている読者からは、「その手法は使えないと言っていたはずだが?」という声が聞こえてきそうだが、前の記事でも説明したように、絶対値からプロットするのではなく、サイトの平均との比較から見るなどしてプロットするデータを工夫することで、4象限分析は有益な手法になる。今回は、平均との比較とは別に、もう1つの方法をお話ししよう。
コンテンツの種類ごとに入口回数をまとめて分析
同種のページをコンテンツ群としてまとめられるアクセス解析ツールであれば、入口となった回数をグループとしてまとめて集計をしてみよう。
たとえば、
- 製品情報のpdfファイル
- ニュースリリース
- Q&A
- メルマガのバックナンバー
- 用語集
- 事例集
などは、グループ化すると上位にくる場合がある。というのも、これらのコンテンツは、ページごとに見ると一つひとつが大きな入口になることはないが、検索エンジン対策がきちんとできていれば、検索エンジンに登録されやすく、ボリュームも効いてくる種類のコンテンツだからだ。これらのURLも同じディレクトリ配下に置き、ディレクトリ別にデータをまとめてみる機能があれば、入口として機能しているかどうかも比較的わかりやすい。
そのようにして分析してみると、「用語集は相互リンクが張っていないため直帰率が高くなっている」とか、「メルマガのバックナンバーには相互リンクが張ってあるので直帰率が低くなっている」ということがわかってくる。ここから、関連リンクはやはり直帰率を下げるのに効果的だといったことが推測できるわけだ。
あとはトップページやカテゴリートップページなど、他のページへ誘導するような位置づけであるナビゲーションページにおいて直帰率が高い場合は、もっと良いナビゲーションにしたり、そもそもサイトのターゲットと異なるユーザーを誘導してきていないかなどという課題に落とし込んでいったりすることになるだろう。
検索フレーズ別直帰率を分析
検索フレーズ別の直帰率のデータも有効に活用しよう。ここでもいくつかに分類することが重要だ。
検索フレーズの種類 | 誘導先ページ |
---|---|
社名キーワード・キーフレーズ | サイトトップページ |
商品名キーワード・キーフレーズ | 商品トップページ |
一般名詞キーワード・キーフレーズ | 商品トップページや商品詳細ページ |
ユーザーが社名や商品名などブランドワードで検索して来訪してくる場合、指名で来ているので直帰率は低いはずである。もしそうでないのなら、相当歪んだブランド認知がされているか、さもなくば、ページのナビゲーションに相当問題があるのではないかと推測される。
問題は一般名詞を検索して来訪してきたケースだ。一般名詞のなかには、
- 潜在顧客ワード ―― 一般の商品名、通販など行動を促す言葉
- 調べものワード ――用語、人名、作り方など
が含まれている。「調べものユーザー」ではなく「潜在顧客ワード」に注目して可能な施策を講じよう。
指名で来ているユーザーには目的をすぐに達成できるようなナビゲーションを、「潜在顧客ワード」で入ってきたユーザーには、入口ページできちんと信頼感を与え、さらにどこで何ができるかを知らせるナビゲーションを提示するといったことがポイントとなるだろう。
下図は布絵本のロンパーズのECサイトをGoogle Analyticsで計測し、ある期間の検索キーワード別のセッション数と平均ページビュー数を表したものだが、潜在顧客ワードで比較的明確に優良なキーワードとダメなキーワードが分類できた例だ。
図からわかるように、「潜在顧客ワード」の中でも直帰率が高いキーワードと低いキーワードの傾向が出てくる。「出産祝い」はおおむね回遊されるのに対して、「誕生日プレゼント」は直帰率が高い(回遊されていない)。ここから「誕生日プレゼント」のページは検索ユーザーの検索意図とのマッチングができていないことが推測されるため、ページの内容に改善の余地がありそうだ。また、こういった分析結果から、検索連動型広告の出稿ワードの選定を容易に行うこともできるので、あわせて検討してみると良いだろう。
まとめ
- 4象限分析により直帰率の改善施策は比較的容易に立案できる
- コンテンツの種類ごとに入口回数をまとめて分析
- 検索フレーズ別の直帰率のデータも有効に活用しよう。
- 指名で来ているユーザーには目的をすぐに達成できるようなナビゲーション
- 潜在顧客ワードで入ってきたユーザーには、信頼感を与える入口ページ
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