企業ホームページ運営の心得

魔女の宅急便とクロネコ。書き続けるための心得 Ver.201

ネタがないことは日常です。ブログは書き続けるコツは自転車操業で、ネタは貯めずに書いたらすぐだします
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百壱

最後はコンテンツ

昭和時代には「パソコンはソフトなければただの箱」といわれました。何でもできるといわれるコンピュータも「ソフト(アプリケーション)」をいれなければ何もできないという意味で、自動車や洗濯機といった、従来は機械だけで機能を果たした「ハード」との違いを鮮明にするための比喩でした。主語を「インターネット」に、ソフトを「コンテンツ」に置き換えてもおなじです。

その「コンテンツ」を作る手軽な方法の1つが「ブログ」です。ブログを続ける目的は「コンテンツを増やすこと」といってもいいでしょう。ページ(投稿)数はPVに連動し、PVと商機は(係数は違っても)同義です。しかし、ブログを書いていて、

ネタがない

と筆が止まった経験はないでしょうか。コラムで何度か話したこともありますが、店長ブログがいつの間にか子育て日記や廃墟ブログになっていたということは珍しくありません。

連載201回を数えて、しみじみと思うのは「続ける」ことの難しさです。そこで、今回はブログを続ける上での「心得」について、2011年版として改めてお伝えします。

出し惜しみ厳禁

ブログを始める前に何本か原稿を先に書く人がいますが、このやり方で連載が続いた人を寡聞にして知りません。商業誌などでは、実際の連載はじまる前に何本か先に入れますが、それは作者の力量を確かめ、連載の方向性を固めるためのものです。個人の裁量で始めることができるブログなら、こうした「予定稿」は不用です。書いたらすぐに公開する「自転車操業」で始めた方が長続きします。続けるには「書く」と同時に「ネタを見つける」という能力が必要で、「自転車操業」にすることで両者を鍛えることができるからです。そしてもっとも避けるべきは「とっておき」です。

「とっておき」のネタはすぐにはきだします。貯め込んで良いことはありません。残酷な真実を述べれば、素人の「とっておき」に読者が喜ぶことはまれだからです。仮に本当にレアなネタだとしても、切り口、構成、文章表現がともなわなければ、その価値を読者に伝えることは困難ですし、「これ面白いだろ」という作為がにじみでる文章に仕上がればネタの価値は半減します。

ネタは熟成させる

ネタを発表するタイミングと、ネタの鮮度を天秤にかけても、「とっておき」はとっとと発表するのがいいでしょう。タイミングは外部要因に左右されプロでも判断が難しいのですが、鮮度が良ければとりあえず好印象をもってくれるのは居酒屋の「鯵の活き作り」と同じです。先に報じておくことで、運が良ければ「第一人者」になる可能性も生まれますが、反対に同じ内容を「著名人」がテレビやブログで紹介した後になれば「パクリ」と非難されるリスクすらあるのです。これについては何度も「煮え湯」を飲まされております。

次に「ネタ」は少し寝かせます。「とっておき」とは、すでに寝かせている状態ですから、両者は対立しません。この仕入れたネタを寝かせる「間」の取り方が連載を続けるコツでしょう。ママチャリのペダルのように、右と左のペダルには交互に「漕がない時間」があり、それが次の踏み込むエネルギーを生み出すという意味からも「自転車操業」なのです。

ネタの本末転倒はあり

最低でも1日は寝かせるようにして下さい。その間に、さらに美味しくする調味料や調理道具のような情報に出会うことがあります。これはオカルトではなく、「脳科学」の領域で説明できます。ネタに関連した情報を、脳は無意識下で探そうとする機能があるからです。そして、ネタを寝かす訓練をしていると、もっと面白い「ネタ」を見つけて、本末転倒させることはよくあることです。

意外に思われるかもしれませんが、続ける上で「ネタ」はそれほど重要ではありません。たとえば、「クロネコが目の前を横切った」という他愛のないネタでも、「英国では幸運のサイン」とポジティブに切り替え、「クロネコといえば宅急便、“宅急便”はヤマト運輸の登録商標」と展開し、アニメ「魔女の宅急便」のタイトルにまつわるエピソードで結べば完成です。「ネタ」からみれば本末転倒ですが、それを禁じる理由はありません。

ツイッターなどやるな

どうしても原稿が書けないこと……など日常です。そんなときはネットを切断します。有線接続ならコードを抜き、無線LANならスイッチを切ります。物理的にできないなら、ツイッターのタブを閉じ、ミクシィからログアウトし、フェイスブックもニュースサイトもクローズします。これらは筆を止める悪魔たちです。

「友達と仲良く」と幼稚園の砂場で教えられた私たちは、マイミクの溜息や、フォロワーのつっこみを無視することに罪悪感を覚えます。そこにコミュニケーションや情報収集という「大義名分」があると蛇がエバ(あなた)に囁くように誘惑します。そしてエバは「いいわけ」という「禁断の果実」を口にします。しかし、マイミクやフォロワーがあなたの代わりに原稿を書いてくれることはありません。

ちなみに「リツイート」がコンテンツになるのはタレントぐらいで、冷静に見るとツイッターを超絶賛しているWeb業界の著名人たちの多くは、今でも「ブログ」を続けています。

凡人でも成功できる

心得の最後は「評論家」にならないことです。

1億総評論家時代と呼ばれて久しく、ネットの普及により誰もが「一家言」を発言できるようなりましたが、増えすぎた「評論」に客はうんざりしているのです。テレビをつければ弁護士が芸能人の不倫を批評し、ネットで検索すればオープンソースプログラマがハリウッド映画について大所高所からご高説を垂れます。評論家としてのエントリーはこうした「著名人」と「内容」で競う前に、「検索結果」でも戦わなければならないのです。

わざわざ不利な土俵にあがって、書き続けるのは損な話ではないでしょうか。そしてこれは「見られるために書いている」という書き続ける上でもっとも大切な心得へとつながります。時には批判を受けることもあるでしょう。しかし、何が良くて何が悪かったのか、書き続けているからこそ見えてくることもあります。

ブログ(メルマガも同じ)は続ければ必ず勝ちます。精神論ではありません。まわりが脱落していくからです。続けるというのはそれだけで大プロジェクト。しかし、名もなき凡人でも達成できる夢のある挑戦です。

今回のポイント

自転車の漕ぎ方を覚えれば長く続く。

書き続けるとは「コンテンツ」を増やし続けること。

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