もしも、「NTTドコモ」を解析するなら(下)[第36回]
最後はふたたび機種選定へ
最後は機種選定だ。機種は図20の月々サポート「対象機種」に掲載しているスマートフォンから、それぞれリンクをたどって見ていく感じだ。
例えば型番からメーカー名がわかるF-12CやP-07C(最後にCがつくのはサムスン電子製)、広告や宣伝で見たことのあるようなGALAXY S Ⅱ SC-02C、Xperia arc SO-01Cなどをざっと見て、まあどれも機能的にはあまりかわらないのかなあという思いつつ、トップページに戻って、再度、前々回行った「自分に合った機種を探す」(図2)をトライする。
- フルブラウザ
- メインディスプレイ3.0インチ以上
- 無線LAN
という、前々回と同じ条件で検索したところ、上記4機種は1ページ目に表示されたため、それにチェックをして比較ボタンを押してみた。
予想どおり、仕様の比較をしても、選択した4機種ともそれほど代わり映えがしないものだった。やはりここで価格比較ができればいいのになあと思った。
あとは[左へ][右へ]のボタン(図24の赤枠で囲んだ部分)が何だろうと一瞬気になったが、横スクロールのためのナビゲーションだった。ブラウザには横スクロールのスクロールバー表示が出ていない。このナビゲーションでしか右側の表示ができないのは、ユーザビリティとしてどうかなと感じた。
左上の「一覧で大きく表示」というボタン(図24の青枠で囲んだ部分の左)を押すと、別ウィンドウで横スクロール可能なブラウザ表示になる。印刷用画面を表示のボタン(図24の青枠で囲んだ部分の右)を押すと、3機種が横並びで表示したA4での印刷に最適化したモードで、新しいブラウザで表示される。一覧表の下部にある注釈の文章は細かすぎて読む気も起らず、もうどうでもいいという感じになってしまった。
筆者はもはやこれ以上、その他の割引やキャンペーン情報を駆使して最適な料金を見つけようとするのは断念した。お店で店員さんに聞いた方がよい気もするのだが、対面対応でも、相当なベテランでもない限り、最適な解を見つけることは、困難なのではないだろうかと想像する。
3回分のまとめ&アクセス解析でチェックすべきポイント
最後にアクセス解析的な視点で見るべきポイントをまとめておこう。
- 主要ページのリンク構造
トップページや「製品」「サービス・機能」「料金・割引」などの主要ページで、クリックした場所やスクロールの状態を知ることのできるツールなどを利用して、ユーザー行動を検証したい。例えばトップページであれば、
- お知らせや新着情報エリアの利用が低くないか
- 目的から探すのエリアのクリックされるリンクの相対的な割合
- おススメコンテンツやメインビジュアルの利用程度
などを調べたい。
また、前回紹介した「スマートフォンの「使い方別 プランの組み合わせ」ページでは、URLが変化しないタブを使っていた(図9)。
このパターンは、どのタブが見られたのかをアクセス解析できるようにしておく必要があるので、注意がいる。例えば、ビーコン型のアクセス解析ツールであれば、タブをクリックした動作があったらリクエストを飛ばすという方法で対処する。OnClick(JavaScriptでクリックした動作を把握)のときに、リクエスト(ページビュー)が飛ぶようなJavaScriptを追記するような形にカスタマイズすればいいだろう。
- 人気ページはどれか?
「製品」「サービス・機能」「料金・割引」のコンテンツを中心に、どういう内容のコンテンツが見られているのか、見られているコンテンツの組み合わせなどを知りたい。どのような順番で見るか経路分析しても、あまりにも多くのパターンに分散すると思うので、得るものは少ないだろう。
- サイトでの問題解決の有無
末端の様々なページで、「探している情報はこのページで見つかったか」というアンケートを行っているので、どのページでの不満が多いのかを洗い出しておこう。そしてなぜ問題解決に結び付いていないのかは、次のユーザーテストとも絡めて分析するのがよいだろう。
- 各種タスクによるユーザーテスト
おそらく最も有効なのは、特定のタスクをやってもらうユーザーテストを行うことだろう。タスクは単純なものではなく、多岐にわたる様々な課題を解決できるかどうか、つまり実際のユーザーの訪問動機に近いものを設定しよう。そのうえで、どのページで困っているのかといったフィードバックをしっかりつかむのがよいだろう。これだけサービスや機能、仕様が複雑だと、まずは課題の発見はユーザーテストで洗い出すのが早いように思われる。
◇◇◇
今回は3回にわたって「NTTドコモ」のサイトを見てきた。正直、サイト上で、求める条件に合致するような機種や料金プランを選ぶのは、かなり大変だった。サイトの複雑さの原因は、情報設計がうまくできていないということもあるが、それに加えて、携帯電話・スマートフォンの機種や料金プラン自体の複雑さによるものも大きいように思う。
ほとんどのユーザーは、サイトで情報収集はするものの、最終的にはどこかのショップや、家電量販店で購入することになる。だとすると、新規契約や機種変更などの場合、ユーザーがどこに関心を持つのか、疑問を持つのか、不満を持つのかは、対面によるヒアリングが情報収集の場としては有効だ。お客さんへのサービス提供、携帯電話の販売もしながら、サイトの改善に役に立ちそうな情報収集もすべきだ。
対面販売の際にヒアリングを行うとすれば、ショップに買いに来る前に直接的にサイトでの調べ物をしたかどうかとか、サイトを見た人がいれば問題解決はどこができなかったのか、どこがわかりやすかったのかなどの項目が必要だろう。
Webサイトの担当だからといって、アクセス解析やユーザーテストしか使ってはいけないという決まりなどない。サイトの改善や売上アップに役立ちそうな情報収集は、サイト上に限らず積極的に行おう。
◇◇◇
さて、この連載では、
- Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
- 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論
などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。
コメント
ドコモユーザー暦13年
ドコモユーザー暦13年の一般人です。最近、ドコモのHPで調べものを、と思いアクセスしたのですがユーザー中心どころかお役所的なHPの構成で悲しくなった事がありました。衣袋様レビュー、的確すぎるほど的確と思います。ドコモの人に読んでもらうべきだと思います。
コメントありがとう
コメントありがとうございます。編集部の安田です。
ドコモさんは、サイトのトップページとかはよくできていると思うんですけどね。
やっぱりケータイのプランの複雑さとか、製品バリエーションの多さとかが問題なのでしょうか。
記事に対する同意の表明、ありがとうございます。
今後ともこのコーナーをよろしくお願いします。