【コラム】ベテランが語る!運用型広告の変遷から学ぶ「昨日までの正解を疑う」大切さ・前編
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2008年からキーワードマーケティングに在籍し、以降10年以上広告運用に携わっている小島です。今回は検索連動型広告を中心とした運用型広告の歴史を振り返りたいと思います。
運用型広告の歴史を振り返ると変化が早く、その変化の大きさに驚かされます。しかしビジネスにおいて変化はチャンスです。
それを承知の上でも、自分が経験を通じて学んできたことが通用しないと感じると、かなり心が折れます。10年以上の運用経験がある私でさえ、何度も「あぁ、もうダメだ」と思ったことがあります。
しかしそんな状況を乗り越えてきたからこそ、広告運用を続けていきたいと思っている方に向けて、ここで先に以下の言葉をお伝えしておこうと思います。
「運用型広告を続けたければ、昨日までの正解を疑え」
何をいきなり!と思った方もいるかもしれませんが、運用型広告は人間が考え出したシステムなので、社会の変化や技術の進歩により、しばしば大きな変化が訪れます。その時、過去の成功体験にしがみついていると、簡単に振り落とされてしまうのです。
そこで、自分にとってどんなに大切な成功体験でも、さっと捨てられる覚悟が必要になります。この点を意識しながら、さっそく運用型広告の歴史を振り返っていきたいと思います。以下は、運用型広告が日本で動き出した2002年から、発展してきた2010年頃までの流れになっています。
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時系列に見ていきますが、この記事では運用型広告を「検索連動型」と「検索連動型以外」に分けて説明しています。その理由は「検索連動型」だけプル型の広告だからです。この点で検索連動型広告は、他の広告と一線を画しているため、別の発展の流れになっています。
検索連動型広告の始まり
日本では、2002年から検索連動型広告のサービス提供が始まります。それまでネットでの広告は、バナー形式の枠売り型(Yahoo! カテゴリやアフィリエイトなど)しかありませんでした。
そのため、広告効果の高そうな「枠(場所)」を事前に決まっている金額で買うことが、ネット広告の全てだったのです。
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枠を買う際に、そのメディアが提供する「どんな客層にアプローチできるか」などの情報は参考にできます。しかし、今のネット広告の常識からするとかなり粗い情報で、とても「ターゲティングする」というイメージとは程遠いものでした。
そんな中、ユーザーが検索するキーワードでターゲティングができる「検索連動型広告」が登場するのです。
2002年日本にも「検索連動型広告」が現る
2002年、日本で「検索連動型広告」が世に躍り出た年です。ここから運用型広告の全てが始まります。
2002年2月 Google が検索連動型広告をリリース
2002年2月、Google はアメリカで「検索連動型広告」をリリースします。この検索連動型広告は「キーワードでターゲティングする」広告です。
検索している方が検索に使用したキーワードをターゲティングし、設定した広告をオークション形式で決まった順位で表示させる、まさに運用型の広告です。
この Google の広告は「AdWords」と呼ばれていました。まさに「Words に Adする」なのですね。この Google AdWords は、日本でも2002年9月に開始しています。
2002年11月 Overture が検索連動型広告をリリース
同じく2002年11月、Overture も日本でサービスを開始します。「Overture って何?」と疑問符が頭についている方もいるかもしれませんね。
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Overture とは、最初に「検索連動型広告」を世に出した会社です。管理画面には「Overture」と記載されており、その広告は「スポンサードサーチ」と呼ばれていました。
その Overture スポンサードサーチの結果を、Yahoo! が表示させていたんですね。この Overture スポンサードサーチは、Yahoo! 以外にも Infoseek や MSN など、当時の日本での検索サイトのほとんどに広告を表示できました。
さらに Yahoo! は日本の検索サイトのシェア6割を取っており、まさに一強の時代でした。当時は感覚的に「検索連動型広告=Overture スポンサードサーチ」と言っていいほどで、これだけ押さえれば日本制覇くらいの勢いでした。
なお、あくまで私見ですが、この時代の名残で Yahoo! のコンバージョン率は Google より高い場合が多いと感じます。
逆に言えば Yahoo! のクリック単価は高くなります。通常、広告主が目標とする CPA は Yahoo! でも Google でも同じですから、「CPA = クリック単価 ÷ コンバージョン率」から、コンバージョン率が高い Yahoo! の方がクリック単価が高くなるのです。
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2004年までは Yahoo! の検索結果に表示される広告は、Overture スポンサードサーチと Google Adwords の返す結果を交代で出していました。
参考:Yahoo! JAPANのキーワード検索と オーバーチュア、Googleの有料リスティングサービスが連動 | Yahoo! JAPAN
飛ぶ鳥を落とす勢いの Overture ですか、徐々に Google に押されていきます。
Google は検索エンジンそのものを持っていたのに対して、Overture はあくまで広告のシステムだけの会社でした。その広告のシステムを Yahoo! などの検索サイトに売る、BtoB の会社だったのです。
ですので、お客さまである Yahoo! などの媒体側の方が立場的に強く、価格交渉などのプレッシャーを受け続けます。
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また、後述する「広告ランク」の存在によって、結果的に Google AdWords の方が検索エンジンにとって中・長期の収益性が高かったという点も大きく影響しています。
2007年10月、日本の Yahoo! は米 Yahoo! の子会社であった Overture 株式会社(日本法人)を買収します。ここから「Yahoo! リスティング広告」へと変化していきました。(アメリカでは、Overture は早々と米 Yahoo! に買収されています)
「単純なオークション制」対「広告ランク」
Overture ですが、Yahoo! に買収されるまでは「単純なオークション制」でした。完全に「入札価格」が高い広告が一番上の目立つ場所に表示されるという鬼仕様です。
基本的に1位表示が1番目立つので、「〇〇というキーワードを買え!」と必死に入札価格を上げて食らいつくのです。
この Overture の「単純なオークション制」では、前提として「クリック数は未来に渡り一定」と考えていたようです。
媒体側の売上は「クリック単価 × クリック数」ですので、クリック数が一定ならクリック単価が上昇した分だけ売上は増えることになります。
上記の通り、原則「1位表示が1番コンバージョンを取れる」ので、広告主はどんどん入札価格を上げていきます。結果、広告主の体力が続く限りクリック単価は上昇し、Yahoo! の売上が増加します。ただし、あくまで広告主の体力が続くまでです。
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一方、Google AdWords が採用していた「広告ランク」では、このクリック数も最初から「成長する変数」として捉えられています。
ポイントは「媒体価値」です。人々に Google が認められれば認められるほど、つまり「媒体価値」が上昇すれば、検索数も増えます。検索数が増えれば、自ずとクリック数も増えるという算段です。
さらに、クリック数が増えるということは、コンバージョン数も増える可能性が高いため、広告主にとってもプラスになります。
人々に認められるためには、「Google では良い情報が得られる」と思われる必要があります。Google は広告も情報の一種と捉えて、AdWords に広告の評価をする「広告ランク」を取り入れたのです。
これは勇気のいる判断で、クリック単価が上がるだけの仕組みの方が手っ取り早く売上(お金)になります。しかし、一時的にクリック単価が下がる可能性があっても、将来的な媒体価値を上げるために広告ランクを導入したのだと思います。
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確かに、先行する Overture のシステムとの差別化という狙いもあったのかもしれません。しかし、売上を「目標」にしていないという意味では同じことです。あくまで売上は「結果」なのです。
Google に勤めたことがないので、外から見てきた感想でしかありませんが、Google は売上よりも「世界中の人々の満足度」を目標としているように見えます。
まさに創業者2人の使命、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」が顕在化したものだと思います。そして「結果」として、大きく売上を上げることになるのです。
ちなみに当時の広告ランクは、ほぼ過去のクリック率で決まっていました。それがサイトや広告の品質まで評価するように発展していくのです。
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運用型広告の発展
前述の AdWords と Overture のシェア争いを通じて、検索連動型広告はネット内に浸透していきます。ここまでは AdWords や Overture という広告システム提供者の視点から発展期(2002年から2010年頃)の歴史を見てきました。
次に広告主や運用担当者などの視点を中心に、発展期の歴史を見ていこうと思います。
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